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'''テアニン'''（<small>L</small>-Theanine）は、[[茶]]に多量に含まれる[[アミノ酸]]の一種で[[グルタミン酸]]の[[誘導体]]。
 
'''テアニン'''（<small>L</small>-Theanine）とは、[[茶]]に多量に含まれる[[アミノ酸]]の1種で、[[グルタミン]]の[[アミド]]の部分の相手が、[[アンモニア]]から[[エチルアミン]]に変わった化合物である。[[グルタミン酸]]の[[側鎖]]のカルボキシ基に、エチルアミンのアミノ基が脱水縮合した化合物とも説明できる。
植物の中でも[[チャノキ]]（''Camellia sinensis''）とそのごく近縁種、そしてキノコ(菌類)の一種である[[ニセイロガワリ]]（''Boletus badius''）にしか見つかっていない[[アミノ酸]]であり<ref name="casimir">{{cite journal |author=Casimir J, Jadot J, Renard M |title=Séparation et caractérisation de la N-éthyl-γ-glutamine à partir de ''Xerocomus badius'' |journal=Biochim. Biophys. Acta |volume=39 |pages=462–468 |year=1960 |pmid=13808157 |doi=10.1016/0006-3002(60)90199-2}}</ref>
<ref>アマゾンの熱帯雨林に生育するセイヨウヒイラギ の仲間、[[:en:Ilex guayusa]]もテアニンを含むという。</ref>
、茶の[[うま味|旨味]]成分の一つである。テアニンは乾燥茶葉中に1～2%含まれ、特に上級なお茶に多く含まれている。また、テアニンは茶の等級に関わらず、全遊離アミノ酸の約半量を占めている。
 
== 所在 ==
1950年に京都府立農業試験場茶業研究所（現在の[[京都府農林水産技術センター]]農林センター茶業研究所（宇治茶部））の所長[[酒戸弥二郎]]により[[玉露]]から発見された<ref>[http://www.pref.kyoto.jp/chaken/ayumi.html 茶業研究所のあゆみ]、京都府農林水産技術センター 農林センター 茶業研究所（宇治茶部）</ref>のち分離[[精製]]されて構造が明らかになり、日本では1964年7月に[[食品添加物]]として指定された。テアニンはお茶に含まれるアミノ酸であることから、茶の旧学名”''Thea sinensis''”にちなんで“Theanine（テアニン）”と命名されたといわれている。▼
テアニンは植物の中でも[[チャノキ]]（''Camellia sinensis''）とそのごく近縁種、そしてキノコ(菌類)の1種である[[ニセイロガワリ]]（''Boletus badius''）にしか見つかっていない[[アミノ酸]]であり<ref name="casimir">{{cite journal |author=Casimir J, Jadot J, Renard M |title=Séparation et caractérisation de la N-éthyl-γ-glutamine à partir de ''Xerocomus badius'' |journal=Biochim. Biophys. Acta |volume=39 |pages=462–468 |year=1960 |pmid=13808157 |doi=10.1016/0006-3002(60)90199-2}}</ref><ref group="注釈">アマゾンの熱帯雨林に生育するセイヨウヒイラギ の仲間、[[:en:Ilex guayusa]]もテアニンを含むという。</ref>、茶の[[うま味|旨味]]成分の1つである。テアニンは乾燥茶葉中に1％から2％程度含まれ、特に上級な[[緑茶]]に多く含まれている。また、テアニンは茶の等級に関わらず、全遊離アミノ酸の約半量を占めている。テアニンは茶葉が含有する窒素の過半を占めており、チャノキが、吸収したアンモニア態窒素を植物体にとって安全な形態にして、蓄積するために合成している物質と考えられている。茶でテアニンは根で生成され、幹を経由して葉に蓄えられる。テアニンに太陽光が当たると[[カテキン]]に変化する。特にテアニンを多く含有する[[玉露]]や[[抹茶]]の原料となる茶葉は、収穫の前（最低2週間程度）日光を遮る被覆を施される。これにより、煎茶の旨味の原因とされるテアニンなどのアミノ酸が増加し、逆に渋みの原因とされるカテキン類（いわゆる[[タンニン]]）が減少する<ref name=nogeikagaku1924.72.153>小林加奈理, 長戸有希子, 青井暢之 ほか、「[https://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.72.153 L-テアニンのヒトの脳波に及ぼす影響]」『日本農芸化学会誌』 72巻 2号 1998年 p.153-157, {{doi|10.1271/nogeikagaku1924.72.153}}</ref>
 
== 体内動態・生理作用 ==
テアニンは茶葉が含有する[[窒素]]の過半を占めており、チャノキが、吸収した[[アンモニア]]態窒素を植物体にとって安全な形態にして、蓄積するために合成している物質と考えられている。茶に施用される肥料成分のうちアンモニア態窒素は、土壌中で酸化されて[[硝酸]]に変化するのだが、それが起こりにくいよう覆いをかぶせることによってテアニン含量の高い茶を作ることが出来る（例・[[玉露]]、[[碾茶]]、[[抹茶]]）。
テアニンは、経口摂取すると小腸からアミノ酸トランスポーターに乗り吸収され<ref name="Yoko_B">横越英彦, 「[https://doi.org/10.11427/jhas.6.1_6 脳の機能と栄養]」『心身健康科学』 6巻 1号 2010年 p.1_6-1_12, 日本心身健康科学会, {{doi|10.11427/jhas.6.1_6}}</ref>、さらに[[血液脳関門]]を通過できるため、脳へ直接入ることが可能であり<ref name="yokogoshi">{{cite journal |author=Yokogoshi H, Kobayashi M, Mochizuki M, Terashima T |title=Effect of theanine, r-glutamylethylamide, on brain monoamines and striatal dopamine release in conscious rats |journal=Neurochem. Res. |volume=23 |issue=5 |pages=667–73 |year=1998 |pmid=9566605 |doi=10.1023/A:1022490806093}}</ref>、さらに、精神に影響を与える作用が認められる<ref name="gomez">{{cite journal |author=Gomez-Ramirez M |title=The Deployment of Intersensory Selective Attention: A High-density Electrical Mapping Study of the Effects of Theanine |journal=Clin. Neuropharmacol. |volume=30 |issue=1 |pages=25–38 |year= 2007 |pmid=17272967 |doi=10.1097/01.WNF.0000240940.13876.17 |last2=Higgins |first2=BA |last3=Rycroft |first3=JA |last4=Owen |first4=GN |last5=Mahoney |first5=J |last6=Shpaner |first6=M |last7=Foxe |first7=JJ}}</ref>。また、脳以外でも生理作用を発揮する。加えて「[[#薬物相互作用|薬物相互作用の節]]」にあるように、脳でも末梢でも、薬物相互作用が起こることが知られている<ref>{{Cite web|和書|title=お茶/緑茶 カテキンとテアニンの効果/効能まとめ一覧 - 日本一の八女茶専門店『向抹茶』（むこうまっちゃ）Mukoh Matcha / Mukou Mathca |url=https://mukohmatcha.com/2022/03/23/%e5%b0%82%e9%96%80%e5%ae%b6%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e8%8c%b6%e3%82%ab%e3%83%86%e3%82%ad%e3%83%b3%e3%81%ae%e7%a0%94%e7%a9%b6%e8%ab%96%e6%96%87%e7%b7%8f%e3%81%be%e3%81%a8%e3%82%81/ |date=2022-03-23 |access-date=2022-10-02 |language=ja |last=mukohmatcha}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Unno|first=Keiko|last2=Nakamura|first2=Yoriyuki|date=2021-08-12|title=Green Tea Suppresses Brain Aging|url=https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34443485/|journal=Molecules (Basel, Switzerland)|volume=26|issue=16|pages=4897|doi=10.3390/molecules26164897|issn=1420-3049|pmid=34443485|pmc=8401650}}</ref>。
 
=== 生理効果作用 ===▼
テアニンを摂取することにより、[[リラックス]]の指標である[[アルファ波|α波]]の発生が30-分から40分後に確認されている。50mgおり、50 mg摂取では不安傾向の低い人に、200mg200 mg摂取では不安傾向の高い人においてもリラックス効果が認められている<ref>{{cite journal|和書|authorname=小林加奈理, 長戸有希子, Lnogeikagaku1924.R72.ジュネジャ,153 金武祚, 山本武彦, 杉本助男|title= L-テアニンのヒ/>。▼
抗ストレス作用についても同様に効果が確認されており、ヒトに[[内田クレペリン精神検査|クレペリン型暗算課題]]でストレスをかけ、ストレス負荷により変動する心拍数、唾液中の[[免疫グロブリンA]]、主観的ストレス感をみたところ、テアニン摂取でストレスの抑制が認められた<ref>{{cite journal|journal=Biol. Psychol. |year=2007|volume= 74|issue= 1|pages= 39-45|title=<small>L</small>-Theanine reduces psychological and physiological stress responses|author=Kimura K, Ozeki M, Juneja LR, Ohira H|pmid= 16930802 |doi=10.1016/j.biopsycho.2006.06.006}}</ref>。リラックスや抗ストレス作用に随伴して、血圧降下作用も見られる<ref name="yokogoshi-5hydroxyindoles" /><ref name="Yoko_B" />。睡眠に関しては、テアニン摂取により睡眠の質の改善が報告されており、中途覚醒の減少が認められた他にも、被験者へのアンケートにより起床時の爽快感、熟眠感、疲労回復感の改善が認められている<ref>{{cite journal|和書|author=小関誠, L.R.ジュネジャ, 白川修一郎|title= アクチグラフを用いたL-テアニンの睡眠改善効果の検討|url=https://doi.org/10.20718/jjpa.9.4_143|journal=日本生理人類学会誌|volume=9|issue=4|pages= 143-150 |year=2004|naid = 110002510948|doi=10.20718/jjpa.9.4_143}}</ref>。[[月経前症候群|月経前症候群（PMS）]]に関しては、PMS時のイライラ、憂鬱、集中力の低下等の精神的症状を改善することが報告されている<ref>{{cite journal|和書|author=上田智子, 小関誠, 大久保勉, 朱政治, L.R.ジュネジャ, 横越英彦, 松本清一|title= PMSと健康食品: L-テアニンの月経前症候群改善効果に関する研究|url=https://doi.org/10.18977/jspog.6.2_234|journal=女性心身医学|volume=6|issue=2|pages= 234-239 |year=2001 |naid=110004012542|doi=10.18977/jspog.6.2_234}}</ref>。
 
またテアニンは、あるラットの実験では神経系の変性・衰退を防止する効果が見られた。テアニンは、脳梗塞を繰り返すことで引き起こさせたラットの記憶障害を防止するという。<ref name="Egashira">{{cite journal |author=Egashira N, Ishigami N, Pu F, ''et al.'' |title=Theanine prevents memory impairment induced by repeated cerebral ischemia in rats |journal=Phytother Res |volume=22 |issue=1 |pages=65–8 |year=2008 |pmid=17705146 |doi=10.1002/ptr.2261}}</ref>。▼
 
=== 考えられる作用機序 ===
▲== 生理効果 ==
構造的にはグルタミン酸（、ヒトなどでは脳内で興奮性の神経伝達物質）と関係はして作用する[[グルタミン酸]]と類似性があるものの、テアニンのシナプス後部細胞の[[グルタミン酸レセプタ受容体]]との親和性は低い。上に、むしろテアニンの主な効果としては、抑制神経伝達物質のGABAを増加させているように見受けられる<ref>{{cite journal|journal=Biosci. Biotechnol. Biochem.|year= 2002|volume=66| issue=12|pages=2683-2686|title= Inhibition by theanine of binding of [<sup>3</sup>H]AMPA, [<sup>3</sup>H]kainate, and [<sup>3</sup>H]MDL 105,519 to glutamate receptors|author= Kakuda T, Nozawa A, Sugimoto A, Niino H|pmid=12596867|doi= 10.1271/bbb.66.2683}}</ref>。研究者は、テアニンがグルタミン酸の[[興奮毒性]]を防ぐかもしれないとも予測している<ref name="nathan" />。テアニンは脳内のドーパミンの濃度を上昇させ、グルタミン酸受容体（[[AMPA型グルタミン酸受容体|AMPA型]]、[[NMDA型グルタミン酸受容体|NMDA型]]、[[カイニン酸型グルタミン酸受容体|カイニン酸型]]）への親和性は低い<ref name="nathan">{{cite journal |author=Nathan P, Lu K, Gray M, Oliver C |title=The neuropharmacology of L-theanine(N-ethyl-L-glutamine): a possible neuroprotective and cognitive enhancing agent |journal=J. Herb. Pharmacother. |volume=6 |issue=2 |pages=21–30 |year=2006 |pmid=17182482 |doi=10.1300/J157v06n02_02}}</ref>。▼
テアニンは臨床試験において、様々な効果が確認されている。
 
脳内のセロトニンにかかわ対するテアニンの影響は、学者の中でも議論となっている。同様な実験法を用いるにもかかわらず、研究によって脳内で増加を示したり、減少を示したりするからである<ref name="yokogoshi"/><ref>{{cite journal|author=Yokogoshi H, Mochizuki M, Saitoh K|title= Theanine-induced reduction of brain serotonin concentration in rats|journal= Biosci. Biotechnol. Biochem.|year= 1998|volume=62|issue= 4|pages=816-817|pmid=9614715|doi=10.1271/bbb.62.816}}</ref><ref>Yokogoshi H, Kobayashi M, Mochizuki M, Terashima T. Effect of theanine, γ-glutamylethylamide, on brain monoamines and striatal dopamine release in conscious rats. Neurochem Res. 1998;23(5):667-73.</ref>。高血圧マウスを用いて注射した研究では、著しく5-ヒドロキシインドール類（セロトニンの分解物）が減少していたことが明らかになった<ref name="yokogoshi-5hydroxyindoles">{{cite journal |author=Yokogoshi H, Kato Y, Sagesaka YM, Takihara-Matsuura T, Kakuda T, Takeuchi N |title=Reduction effect of theanine on blood pressure and brain 5-hydroxyindoles in spontaneously hypertensive rats |journal=Biosci. Biotechnol. Biochem. |volume=59 |issue=4 |pages=615–618 |year=1995 |pmid=7539642 |doi=10.1271/bbb.59.615}}</ref>。▼
▲テアニンを摂取することにより、[[リラックス]]の指標である[[アルファ波|α波]]の発生が30-40分後に確認されている。50mg摂取では不安傾向の低い人に、200mg摂取では不安傾向の高い人においてもリラックス効果が認められている<ref>{{cite journal|和書|author=小林加奈理, 長戸有希子, L.R.ジュネジャ, 金武祚, 山本武彦, 杉本助男|title= L-テアニンのヒ
トの脳波に及ぼす影響|journal=日本農芸化学会誌|volume=72| issue=2|pages= 19-23 |year=1998 }}</ref>。
 
=== 危険性・安全性の評価 ===
抗ストレスについても同様に効果が確認されている。人にクレペリン型暗算課題でストレスをかけ、ストレス負荷により変動する心拍数、唾液中の[[免疫グロブリンA]]、主観的ストレス感をみたところ、テアニン摂取でストレスの抑制が認められている<ref>{{cite journal|journal=Biol. Psychol. |year=2007|volume= 74|issue= 1|pages= 39-45|title=<small>L</small>-Theanine reduces psychological and physiological stress responses|author=Kimura K, Ozeki M, Juneja LR, Ohira H|pmid= 16930802 |doi=10.1016/j.biopsycho.2006.06.006}}</ref>。
ラットの研究を通じて、非常に高濃度テアニンを繰り返し使用しても、心身共に無害であるとされている<ref name="borzelleca">{{cite journal |author=Borzelleca J, Peters D, Hall W |title=A 13-week dietary toxicity and toxicokinetic study with L-theanine in rats |journal=Food Chem Toxicol |volume=44 |issue=7 |pages=1158–66 |year=2006 |pmid=16759779 |doi=10.1016/j.fct.2006.03.014}}</ref>。[[アメリカ食品医薬品局]] (FDA)は、食品添加物としてテアニンをGRAS (一般に安全と認められる）に分類している<ref>{{cite web|url=http://www.nutraingredients-usa.com/Industry/FDA-confirms-GRAS-status-of-Suntheanine|title=FDA confirms GRAS status of Suntheanine|date=2007-03-22|accessdate=2013-03-16|publisher=NutraIngredients-USA.com}}</ref>。一方、ドイツの連邦リスク評価研究所 (BfR) は単離されたテアニンを飲料に添加することに反対している<ref>{{cite journal |doi=10.4088/JCP.09m05324gre |title=L-Theanine Relieves Positive, Activation, and Anxiety Symptoms in Patients with Schizophrenia and Schizoaffective Disorder |year=2011 |last1=Ritsner |first1=Michael S. |last2=Miodownik |first2=Chanoch |last3=Ratner |first3=Yael |last4=Shleifer |first4=Tatyana |last5=Mar |first5=Maria |last6=Pintov |first6=Leonid |last7=Lerner |first7=Vladimir |journal=The Journal of Clinical Psychiatry |volume=72 |pages=34–42 |pmid=21208586 |issue=1}}</ref>。
 
== 薬物相互作用 ==
睡眠に関しては、テアニン摂取により睡眠の質の改善が報告されている。中途覚醒の減少が認められたほか、被験者へのアンケートにより起床時の爽快感、熟眠感、疲労回復感の改善が認められている<ref>{{cite journal|和書|author=小関誠, L.R.ジュネジャ, 白川修一郎|title= アクチグラフを用いたL-テアニンの睡眠改善効
既述の通り、テアニンはチャノキに含有され、玉露などの茶葉にも含まれている。加えて、茶葉には[[カフェイン]]も含有されている。したがって、テアニンとカフェインとを、同時に経口摂取することはありがちなことと言える。これらをヒトが同時に摂取した場合、テアニンとカフェインとの相乗効果もあいまって、認知活動や気分の改善が見られることが見い出された<ref name="pmid18006208">{{cite journal |author=Haskell CF, Kennedy DO, Milne AL, Wesnes KA, Scholey AB |title=The effects of L-theanine, caffeine and their combination on cognition and mood |journal=Biol. Psychol. |volume=77 |issue=2 |pages=113–22 |year=2008 |pmid=18006208 |doi=10.1016/j.biopsycho.2007.09.008}}</ref>。
果の検討|journal=日本生理人類学会誌|volume=9|issue=4|pages= 143－150 |year=2004|naid = 110002510948}}</ref>。
 
また、統合失調症の治療において、投薬中の抗精神病薬にテアニンを併用することで、いくつか症状が減少することが、プラセボ対照試験で示されている。<ref name="BfR">{{cite | author=Egashira N, Ishigami N, Pu F, ''et al.'' |web|url=http://www.stanleyresearch.org/Trial/Drug/awardedtrialdetail.aspx?id=252 |title=L-Theanine relieves positive, activation, and anxiety symptoms in patients with schizophrenia and schizoaffective disorder: an 8-week, randomized, double-blind, placebo-controlled, 2-center study, J Clin Psychiatry 2010;71:1-9. |publisher=Stanley Research}}</ref>ほか、精神疾患の予防にも有用である<ref> 緑茶成分テアニンの向精神作用について 日本生物学的精神医学会誌 27 巻 4 号 p177-181 功刀浩，太田深秀，若林千里，秀瀬真輔， 小澤隼人，大久保勉 </ref>▼
[[月経前症候群|月経前症候群（PMS）]]に関しては、PMS時のイライラ、憂鬱、集中力の低下等の精神的症状を改善することが報告されている<ref>{{cite journal|和書|author=上田智子, 小関誠, 大久保勉, 朱政治, L.R.ジュネジャ, [[横越英彦]], 松本清一|title= PMSと健康食品: L-テアニンの月経前症候群改善効果に関する研究|journal=女性心身医学|volume=6|issue=2|pages= 234-239 |year=2001 |naid=110004012542}}</ref>。
その他にも[[カフェイン]]拮抗作用、血圧降下作用、記憶学習能力の向上、制癌剤の増強効果、脳血管障害に対する効果などが報告されている。
 
== 研究 ==
テアニンは、[[血液脳関門]]を通過でき<ref name="yokogoshi">{{cite journal |author=Yokogoshi H, Kobayashi M, Mochizuki M, Terashima T |title=Effect of theanine, r-glutamylethylamide, on brain monoamines and striatal dopamine release in conscious rats |journal=Neurochem. Res. |volume=23 |issue=5 |pages=667–73 |year=1998 |pmid=9566605 |doi=10.1023/A:1022490806093}}</ref>、精神に影響を与える作用がある<ref name="gomez">{{cite journal |author=Gomez-Ramirez M |title=The Deployment of Intersensory Selective Attention: A High-density Electrical Mapping Study of the Effects of Theanine |journal=Clin. Neuropharmacol. |volume=30 |issue=1 |pages=25–38 |year= 2007|pmid=17272967 |doi=10.1097/01.WNF.0000240940.13876.17 |last2=Higgins |first2=BA |last3=Rycroft |first3=JA |last4=Owen |first4=GN |last5=Mahoney |first5=J |last6=Shpaner |first6=M |last7=Foxe |first7=JJ}}</ref>。また精神や肉体的ストレスを減少させ、[[カフェイン]]との相乗効果もあいまって認知活動や気分の改善もみられる<ref name="pmid18006208">{{cite journal |author=Haskell CF, Kennedy DO, Milne AL, Wesnes KA, Scholey AB |title=The effects of L-theanine, caffeine and their combination on cognition and mood |journal=Biol. Psychol. |volume=77 |issue=2 |pages=113–22 |year=2008 |pmid=18006208 |doi=10.1016/j.biopsycho.2007.09.008}}</ref>。
テアニンは、免疫系への効果についも影響を与える可能性が示唆されており、テアニンはガンマ・デルタT細胞の防衛機能を増強することで、感染に対する生体の免疫反応を助けるかもしれない。この研究は、被験者は4週間にわたって毎日600cc600 mLのコーヒーまたはお茶をの飲むものである。結果、血液の分析では抗菌タンパク質の産生はお茶を飲む群のほうが5倍高まっており、より高い免疫反応を示すものであった。<ref>{{cite journal |author=Kamath A, Wang L, Das H, Li L, Reinhold V, Bukowski J |title=Antigens in tea-beverage prime human Vgamma 2Vdelta 2 T cells in vitro and in vivo for memory and nonmemory antibacterial cytokine responses |journal=Proc Natl Acad Sci USA |volume=100 |issue=10 |pages=6009–14 |year=2003 |pmid=12719524 |doi=10.1073/pnas.1035603100 |pmc=156317}}</ref>▼
 
== 歴史 ==
▲構造的にはグルタミン酸（興奮性の神経伝達物質）と関係はあるものの、テアニンのシナプス後部細胞のグルタミン酸レセプタとの親和性は低い。むしろ主な効果は抑制神経伝達物質のGABAを増加させているように見受けられる<ref>{{cite journal|journal=Biosci. Biotechnol. Biochem.|year= 2002|volume=66| issue=12|pages=2683-2686|title= Inhibition by theanine of binding of [<sup>3</sup>H]AMPA, [<sup>3</sup>H]kainate, and [<sup>3</sup>H]MDL 105,519 to glutamate receptors|author= Kakuda T, Nozawa A, Sugimoto A, Niino H|pmid=12596867|doi= 10.1271/bbb.66.2683}}</ref>。
▲テアニンは1950年に京都府立農業試験場茶業研究所（現在の[[京都府農林水産技術センター]]・農林センター茶業研究所（宇治茶部））の所長[[酒戸弥二郎]]により[[玉露]]から発見された<ref>[http://www.pref.kyoto.jp/chaken/ayumi.html 茶業研究所のあゆみ]、京都府農林水産技術センター 農林センター 茶業研究所（宇治茶部）</ref>。そのち後、分離[[精製]]されて構造が明らかになり、日本では1964年7月に[[食品添加物]]として指定された。テアニンはお茶に含まれるアミノ酸であることから、茶の旧学名”“''Thea sinensis''”にちなんで“Theanine（テアニン）”と命名されたとい言われている。
テアニンは脳内のドーパミンレベルを上昇させ、グルタミン酸レセプタ（AMPA型NDMA型）、カイニン酸レセプタへの親和力性は低い。<ref name="nathan">{{cite journal |author=Nathan P, Lu K, Gray M, Oliver C |title=The neuropharmacology of L-theanine(N-ethyl-L-glutamine): a possible neuroprotective and cognitive enhancing agent |journal=J. Herb. Pharmacother. |volume=6 |issue=2 |pages=21–30 |year=2006 |pmid=17182482 |doi=10.1300/J157v06n02_02}}</ref>。
 
▲セロトニンにかかわる影響は、学者の中でも議論となっている。同様な実験法を用いるにもかかわらず、研究によって脳内で増加を示したり、減少を示すからである<ref name="yokogoshi"/><ref>{{cite journal|author=Yokogoshi H, Mochizuki M, Saitoh K|title= Theanine-induced reduction of brain serotonin concentration in rats|journal= Biosci. Biotechnol. Biochem.|year= 1998|volume=62|issue= 4|pages=816-817|pmid=9614715|doi=10.1271/bbb.62.816}}</ref><ref>Yokogoshi H, Kobayashi M, Mochizuki M, Terashima T. Effect of theanine, γ-glutamylethylamide, on brain monoamines and striatal dopamine release in conscious rats. Neurochem Res. 1998;23(5):667-73.</ref>。
高血圧マウスを用いて注射した研究では、著しく5-ヒドロキシインドール類（セロトニンの分解物）が減少していたことが明らかになった<ref name="yokogoshi-5hydroxyindoles">{{cite journal |author=Yokogoshi H, Kato Y, Sagesaka YM, Takihara-Matsuura T, Kakuda T, Takeuchi N |title=Reduction effect of theanine on blood pressure and brain 5-hydroxyindoles in spontaneously hypertensive rats |journal=Biosci. Biotechnol. Biochem. |volume=59 |issue=4 |pages=615–618 |year=1995 |pmid=7539642 |doi=10.1271/bbb.59.615}}</ref>。
 
研究者は、テアニンがグルタミン酸の興奮毒性を防ぐかもしれないとも予測している<ref name="nathan" />。また、テアニンは脳内のアルファ波の生成を促進する<ref name="gomez" />。
 
ラットの研究を通じて、非常に高濃度テアニンを繰り返し使用しても心身ともに無害であることが明らかにされている<ref name="borzelleca">{{cite journal |author=Borzelleca J, Peters D, Hall W |title=A 13-week dietary toxicity and toxicokinetic study with L-theanine in rats |journal=Food Chem Toxicol |volume=44 |issue=7 |pages=1158–66 |year=2006 |pmid=16759779 |doi=10.1016/j.fct.2006.03.014}}</ref>。
 
▲またあるラットの実験では神経系の変性・衰退を防止する効果が見られた。テアニンは、脳梗塞を繰り返すことで引き起こさせたラットの記憶障害を防止するという。<ref name="Egashira">{{cite journal |author=Egashira N, Ishigami N, Pu F, ''et al.'' |title=Theanine prevents memory impairment induced by repeated cerebral ischemia in rats |journal=Phytother Res |volume=22 |issue=1 |pages=65–8 |year=2008 |pmid=17705146 |doi=10.1002/ptr.2261}}</ref>
 
▲統合失調症の治療において、投薬中の抗精神病薬にテアニンを併用することで、いくつか症状が減少することが、プラセボ対照試験で示されている。<ref name="BfR">{{cite | author=Egashira N, Ishigami N, Pu F, ''et al.'' |web|url=http://www.stanleyresearch.org/Trial/Drug/awardedtrialdetail.aspx?id=252|title=L-Theanine relieves positive, activation, and anxiety symptoms in patients with schizophrenia and schizoaffective disorder: an 8-week, randomized, double-blind, placebo-controlled, 2-center study, J Clin Psychiatry 2010;71:1-9.|publisher=Stanley Research}}</ref>
 
 
▲免疫系への効果について、テアニンはガンマ・デルタT細胞の防衛機能を増強することで、感染に対する生体の免疫反応を助けるかもしれない。この研究は、被験者は4週間にわたって毎日600ccのコーヒーまたはお茶をのむものである。結果、血液の分析では抗菌タンパク質の産生はお茶を飲む群のほうが5倍高まっており、より高い免疫反応を示すものであった。<ref>{{cite journal |author=Kamath A, Wang L, Das H, Li L, Reinhold V, Bukowski J |title=Antigens in tea-beverage prime human Vgamma 2Vdelta 2 T cells in vitro and in vivo for memory and nonmemory antibacterial cytokine responses |journal=Proc Natl Acad Sci USA |volume=100 |issue=10 |pages=6009–14 |year=2003 |pmid=12719524 |doi=10.1073/pnas.1035603100 |pmc=156317}}</ref>
 
== 利用 ==
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日本国外の飲料メーカーではテアニンを含む飲料を販売しているが、その宣伝は精神集中を助けると謳うもの、リラックス・鎮静を謳うもの、まちまちである。
 
日本国外のサプリメントとしての<small>L</small>−テアニン原料として、日本の[[太陽化学]]<ref>{{cite web|url=http://www.taiyokagaku.com/|title=太陽化学株式会社|accessdate=2011-02-10}}</ref>の製造しているサンテアニンがよく用いられる。原料表示に<small>L</small>-Theanine (Suntheanine) と記載されていることが多い<ref>{{cite web|url=http://www.suntheanine.com/products/ |title=Suntheanine Buyer's Guide|author=Taiyo International|accessdate=2011-02-10}}</ref>。製造過程では、チャノキ由来の原料は用いず、微生物(Pseudomonas nitroreducens)の作る[[グルタミナーゼ酵素]]を利用した発醗酵によって合成されている。<ref>{{Cite web |date=20132006-02-2507 |url=http://wwwwayback.accessdataarchive-it.org/7993/20171031055704/https://www.fda.gov/scriptsdownloads/fcnFood/gras_noticesIngredientsPackagingLabeling/615880AGRAS/NoticeInventory/UCM263912.pdf |title=gras_noticesGRAS Notice 000209: L-theanine |format=PDF | accessdate=20132020-0211-25 }}</ref>。
 
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
<references group="注釈"/>
 
=== 出典 ===
{{reflist|2}}
 
==外部リンク 関連人物 ==
* [[村田敏郎]]
*[http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv_agreement.html?622 テアニン(グルタミン酸エチルアミド) - 「健康食品」の安全性・有効性情報] （[[国立健康・栄養研究所]]）
 
== 外部リンク ==
* {{Hfnet|622|テアニン(グルタミン酸エチルアミド)}}
 
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[[Category:Α-アミノ酸]]
[[Category:茶]]
[[Category:食品添加物]]
[[Category:NMDA受容体作動薬]]
 
[[Category:カルボキサミド]]
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