「ナショナル・トラスト」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
更新
#article-section-source-editor
タグ: モバイル編集 モバイルアプリ編集 iOSアプリ編集
 
(18人の利用者による、間の26版が非表示)
1行目:
{{Otheruses|イギリスのボランティア団体|本団体に範を取って各地で形成された運動|ナショナルトラスト運動}}
'''ナショナル・トラスト''' (National Trust) とは、[[史跡保護|歴史的建築物の保護]]を目的として[[イギリス|英国]]において設立されたボランティア団体。正式名称は'''歴史的名所や自然的景勝地のためのナショナル・トラスト''' (National Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty)。一般に略してナショナル・トラストと呼ばれる
 
ナショナル・トラストは設立の目的として「国民の利益のために、美しく、あるいは歴史的に意味のある土地や資産を永久に保存するよう促すこと、土地については、実行可能な限り、その土地本来の要素や特徴、動植物の生態を保存すること、そしてこの目的のために、資産の所有者から歴史的建造物や景勝地の寄贈を受け、獲得した土地や建物などの資産を国民の利用と楽しみのために信託財産として保持すること」を定めており{{sfn|水野|2005|pp=207-219}}、単なる環境保護ではなく、歴史的建造物や[[景勝地]]を[[国民]]の遺産として保持することで、愛国心や国民の一体感といったナショナル・アイデンティティを形成・強化することを意義としている{{sfn|水野|2005|pp=207-219}}。
'''ナショナル・トラスト''' (National Trust) とは、歴史的建築物の保護を目的として[[イギリス|英国]]において設立されたボランティア団体。正式名称は「'''歴史的名所や自然的景勝地のためのナショナル・トラスト'''」(National Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty)。一般に略してナショナル・トラストと呼ばれる。
 
本組織による保護活動が著名となったことから、同様の趣旨を持って活動する運動、あるいは理念そのものを「ナショナル・トラスト」と呼ぶこともある。同団体は2015年現在、424万人の会員と6万人超のボランティアが支える英国最大の[[自然保護団体]]となってしたいる<ref name=":0">[https://www.nationaltrust.org.uk/documents/annual-report-2014-15.pdf National Trust Annual Report 2014/15]</ref>。
[[File:Fountains Abbey - geograph.org.uk - 1510229.jpg|thumb|250px|イングランド[[ヨークシャー]]の[[ファウンテンズ修道院]]<br />1132年から建設された[[シトー会]]の修道院]]
[[File:Sissinghurst Gardens 1 (4907255329).jpg|thumb|250px|イングランド[[ケント州]]の[[シシングハースト・カースル・ガーデン]]]]
9 ⟶ 10行目:
[[File:Chartwell House.JPG|thumb|250px|イングランド[[ケント州]]の[[チャートウェル]]<br />[[ウィンストン・チャーチル]]が後半生を過ごした邸宅]]
[[File:Mendipsnationaltrust.JPG|thumb|250px|[[リヴァプール]]の[[:en:251 Menlove Avenue|メンディプス]]<br />[[ジョン・レノン]]の子供時代の家]]
 
==概要==
英国政府の公的機関である[[イングリッシュ・ネイチャー]]や、[[イングリッシュ・ヘリテッジ]]らと協力して活動をすすめている。
 
*対象
**自然遺産
**文化遺産
*手段
**寄付を募り、これを[[財団]]、[[NPO]]、[[非政府組織|NGO]]など税制上有利となる組織を通じて使う手法によって、対象の維持・保全・未来への引継ぎを図る。
**行政組織に働きかけ、[[経済]]上・行政上・法制上の手法を工夫することにより、対象の維持・保全・未来への引継ぎを図る。
 
==歴史==
*1895年に[[オクタヴィア・ヒル]]<!-- (Octavia Hill)-->、<!--サー・-->[[:en:Robert Hunter (National Trust)|ロバート・ハンター]]<!-- (Sir Robert Hunter) -->、[[:en:Hardwicke Rawnsley|ハードウィック・ローンズリー]]司祭<!-- (Canon Hardwicke Rawnsley) -->の三者によって設立された。組織が扱った最初の建築物および自然区はそれぞれ[[アフリストン・クラーギー・ハウス]]と[[ウィッケン・フェン]]であった。20世紀中頃になると[[貴族]]および[[ジェントリ]]層が農村に所有する邸宅であった[[カントリー・ハウス]]が、経済的な負担から維持できなくなるケースが増え、ナショナル・トラストもこれらの保護に力を注いだ
ヒルはロンドンのスラム街での住宅改良運動で成功を納めた女性であり、ハンターは環境保護団体での実績のある弁護士だった。ローンズリーは[[湖水地方]]の鉄道建設反対運動の指導者だった人物である。
 
設立の背景には、他のヨーロッパ諸国でのナショナリズムの高まりに比して[[大英帝国]]では国内統合が進んでいないという知的エリート層の危機感があった{{sfn|水野|2005|pp=207-219}}。トラストの運営には[[ジェイムズ・ブライス]]のような議員や大学教授、ジャーナリストなど幅広い知的専門職が集い、[[ウェストミンスター公爵]]をはじめとした伝統的支配階級が[[パトロン]]となった。
 
ナショナル・トラストは国家や自治体とは独立した[[公益法人]]だが、その活動には公的権力の介入が不可欠だった。トラストは評議会の議員たちと連携し、古記念物保護法の改正や[[1907年]]にナショナル・トラスト法を成立させるなど、国家による法的援助を受けることに成功した{{sfn|水野|2005|pp=207-219}}
*[[ピーターラビット]]の原作者である[[ビアトリクス・ポター]]が湖水地方の土地をナショナル・トラストに託した。
*[[ウィンストン・チャーチル]]が住んでいた家を未来へ残しておくためにナショナル・トラストに寄付した。
 
組織が扱った最初の建築物および自然区はそれぞれ[[アフリストン・クラーギー・ハウス]]と[[ウィッケン・フェン]]であった。20世紀中頃になると[[貴族]]および[[ジェントリ]]層が農村に所有する邸宅であった[[カントリー・ハウス]]が、経済的な負担から維持できなくなるケースが増え、ナショナル・トラストもこれらの保護に力を注いだ。
*目的あるいは発想
**自然や街並みや歴史的建造物など、「国民の(あるいは世界の)財産として次世代へ引き継ぎたいが、[[所有権]]や法的・経済的な問題により維持が困難なもの」を守り、次世代へ引き継いでいくこと。
 
==著名な施設==
2014年から2015年にかけての期間にナショナル・トラスト施設を訪れた人の総数は2130万人を数えた<ref>https name=":0" //www.nationaltrust.org.uk/documents/annual-report-2014-15.pdf</ref>。下のリストはその内で入場料を徴収するものの上位10施設である。
 
{| class="wikitable"
|-
! #順位 !! 施設 !! 位置 !! 訪れた人の総数
|-
! 1
| 1 || [[ジャイアンツ・コーズウェー]] || [[アントリム]] || {{Increase}} 549,066
|-
! 2
| 2 || [[:en:Stourhead|ストウヘッド庭園]] || [[ウィルトシャー]] || {{Increase}} 405,572
|-
! 3
| 3 || [[:en:Cliveden|クリーデン]] || [[バッキンガムシャー]] || {{Decrease}} 404,702
|-
! 4
| 4 || [[:en:Attingham Park|アッティンガムパーク]] || [[シュロップシャー]] || {{Increase}} 394,334
|-
! 5
| 5 || [[ファウンテンズ修道院]] || [[ノース・ヨークシャー]] || {{Increase}} 373,364
|-
! 6
| 6 || [[:en:Polesden Lacey|ポルズデン・レーシー]] || [[サリー (イングランド)|サリー]] || {{Increase}} 346,587
|-
! 7
| 7 || [[:en:Dunham Massey Hall|ダナム・マーシー]] || [[グレーター・マンチェスター]] || {{Increase}} 340,929
|-
! 8
| 8 || [[:en:Nymans|ナイマンズ庭園]] || [[ウェスト・サセックス]] || {{Increase}} 323,268
|-
! 9
| 9 || [[:en:Carrick-a-Rede|キャリック・ア・リード]] || [[アントリム]] || {{Increase}} 323,188
|-
! 10
| 10 || [[:en:Belton House|ベルトン・ハウス]] || [[リンカンシャー]] || {{Increase}} 321,776
|}
 
他にも著名な施設として
* [[湖水地方]]([[ピーター・ラビット]]の舞台)
* [[ヒル・トップ]] ([[ピーター・ラビット]]の作者[[ビアトリクス・ポター]]が絵本の[[印税]]で購入し、晩年を過ごした2階建ての家)
* [[ブラウンシー島]]([[ボーイスカウト]]発祥の地)
* [[レッド・ハウス]]([[アーツ・アンド・クラフツ]]運動発祥の地)
* [[:en:251 Menlove Avenue|メンディプス]] (元ビートルズのメンバー、[[ジョン・レノン]]の子供時代の家)
等があげられる。
[[ファイル:Castle Ward 2.JPG|左|サムネイル|『[[ゲーム・オブ・スローンズ]]』の撮影で使用された、北アイルランドにある[[キャッスル・ワード]] ]]
 
==概要==
英国政府の公的機関である[[イングリッシュ・ネイチャー]]や、[[イングリッシュ・ヘリテッジ]]らと協力して活動をすすめている。
 
*対象
**自然遺産
**文化遺産
 
*手段
**寄付を募り、これを[[財団]]、[[NPO]]、[[非政府組織|NGO]]など税制上有利となる組織を通じて使う手法によって、対象の維持・保全・未来への引継ぎを図る。
**行政組織に働きかけ、[[経済]]上・行政上・法制上の手法を工夫することにより、対象の維持・保全・未来への引継ぎを図る。
 
==イギリス以外の団体==
69 ⟶ 82行目:
 
* The Barbados National Trust: [[バルバドス]]
* The Bermuda National Trust: [[バミューダ諸島|バミューダ]]
* The Manx National Trust: [[マン島]]
* The National Trust for Historic Preservation: [[アメリカ合衆国]]
85 ⟶ 98行目:
* An Taisce: [[アイルランド|アイルランド共和国]]
* Heritage Canada: [[カナダ]]
* TheFAI - Fondo per l'Ambiente Italiano: [[イタリア]]
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references />
 
==関連 参考文献 ==
* {{Cite book ja-jp|和書 |author = 水野祥子 |title = 結社のイギリス史:クラブから帝国まで |year = 2005 |chapter = 環境保護運動の結社 |series = 結社の世界史 |publisher = 山川出版社 |editor = [[川北稔]] |isbn = 4634444402 |ref = harv }}
*[[緑のトラスト]]
*国民環境基金という訳語が公募で決まったが(昭和60年頃)現在のところ定着していない。公募当選者は、当時の宮内庁長官[[富田朝彦]]、肩書きなど書かずに応募し、当選してからそうとわかって記事になった。
 
==外部リンク==
98 ⟶ 114行目:
*[http://www.env.go.jp/hourei/syousai.php?id=18000058 国民環境基金(ナショナル・トラスト)活動に係る税制上の優遇措置の運用について ] - 環境省
 
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:なしよなるとらすと}}
[[Category:イギリ英国ナショナル・トラの文化遺産保護制度ト|*]]
[[Category:自然保護]]
[[Category:景観]]