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== 気孔の挙動 ==
=== 二酸化炭素交換の調節 ===
[[光合成]]の基質である[[二酸化炭素]](CO<sub>2</sub>)の[[大気]]中濃度は、2008年3月現在、約384ppmである。多くの植物は、日中に気孔を開いており、夜間には閉鎖するといった、[[光周性#例|日周性]]を持つことが知られている。これは、光のあたる日中に、光合成に必要な二酸化炭素を多く取り込むためであると考えられるが、一方で、気孔が開かれることにより葉からの蒸散量は増加することになる。<
なお2013年には気孔の開閉をコントロールするPATROL1という遺伝子が発見されている。これを活性化することで人為的に気孔を開き二酸化炭素の吸収を促進することに成功している。<ref>朝日新聞2013年8月1日7面</ref>
==== C3植物 ====
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気孔の開閉には日周性があるが、それ以外でも様々な環境条件に左右される。例えば、光、湿度や二酸化炭素濃度などである。これらの環境に対する気孔の応答がどのような機構でなされているかは、いまだ完全な解明には至っていないが、孔辺細胞の[[浸透圧]]調節を介した基礎的な気孔開閉の機構については解明されつつある。
強光や多湿といった、気孔の'''開口'''が促進されるような条件においては、[[プロトンポンプ]]が活性化され[[水素イオン]](プロトン、H<sup>+</sup>)を孔辺細胞外へと排出することが知られている。水素イオンが排出されることで、[[膜電位#静止膜電位|静止膜電位]]からマイナスの方向に[[膜電位]]が変化するが([[膜電位#脱分極と過分極|過分極]])、これを埋め合わせるため、アポプラストから[[カリウム]][[イオン (化学)|イオン]](K<sup>+</sup>)が細胞内に取り込まれる。結果として、孔辺細胞内の[[浸透圧]]が上がり、水が細胞内に流れ込むことで細胞の体積と[[浸透圧#生物における浸透圧|膨圧]]が上昇する。孔辺細胞の[[細胞壁]]は環状の[[セルロース]]ミクロフィブリルを形成しているため、体積の上昇に伴い細胞は横ではなく縦に伸長する。両端は隣接する表皮細胞により堅く固定されているため、向かい合う二つの孔辺細胞は伸長すると互いとは逆方向に湾曲することとなり、結果的に孔辺細胞間に隙間が開くこととなる<ref>{{cite journal
|journal=Annals of Botany
|volume=89
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}}</ref>。
[[File:Opening and Closing of Stoma.svg|400px|thumb|left|気孔の開閉]]
一方、気孔の'''閉鎖'''に関しては、[[アブシジン酸]]を介した機構がよく研究されている。アブシジン酸が孔辺細胞に作用すると(アブシジン酸受容体が孔辺細胞に存在すると考えられているが特定されていない)、[[液胞]]から[[カルシウムイオン]](Ca<sup>2+</sup>)が放出されたり、[[細胞膜]]に存在する[[イオンチャネル|カルシウムイオンチャネル]](取り込みに働く)が活性化されることで、孔辺細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇する<ref>{{cite journal▼
一方、気孔の'''閉鎖'''に関しては、[[アブシジン酸]]を介した機構がよく研究されている。孔辺細胞において、アブシジン酸受容体であるPYR/PYL/RCARタンパク<ref>{{cite journal
|journal=Annual Review of Plant Biology
|volume=61
|pages=651-679
|month=June
|year=2016
|title=Abscisic Acid: Emergence of a Core Signaling Network
|author=Sean R. Cutler
|url=https://www.annualreviews.org/doi/abs/10.1146/annurev-arplant-042809-112122
}}
</ref>がアブシジン酸を受容すると、[[イオンチャネル|陰イオンチャネル]]が活性化され、[[塩化物イオン]](Cl<sup>-</sup>)等の細胞外への放出を引き起こし、膜電位が[[膜電位#脱分極と過分極|脱分極]]する。アブシシン酸による細胞膜の脱分極は、細胞膜の[[ATPアーゼ|H+-ATPase]]の阻害によっても促進されることが示唆されている<ref>{{cite journal
|journal=Annual Review of Plant Biology
|volume=58
|pages=219-247
|month=June
|year=2007
|title=Light Regulation of Stomatal Movement
|author=Ken-ichiro Shimazak
|url=https://www.annualreviews.org/doi/10.1146/annurev.arplant.57.032905.105434
}}
</ref>。
この脱分極により[[カリウムチャネル|電位依存性カリウムイオンチャネル]]が開口し、[[カリウムイオン]]の細胞外への排出も促進される。これらのイオンが細胞外に排出されることで、孔辺細胞の浸透圧が低下し細胞内の水が流出するため、細胞の体積と膨圧が低下する。結果的に孔辺細胞が萎れる形となり、孔辺細胞間の隙間がなくなる(気孔が閉鎖する)こととなる。
<!--
▲
|journal=Journal of Experimental Botany
|volume=52
84 ⟶ 108行目:
|pmid=11559731
|doi=10.1093/jexbot/52.363.1959
}}</ref>。カルシウムイオン濃度の上昇により、細胞膜[[陰イオン]]チャネルが活性化され、[[塩化物イオン]](Cl<sup>-</sup>)が孔辺細胞外に排出され
-->
大気中の二酸化炭素濃度に応答して、気孔の開閉を調節するたんぱく質として、SLAC1タンパク質が同定された。このタンパク質は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇に伴い、孔辺細胞から塩化物イオンやリンゴ酸を排出して、気孔を閉鎖する役割を担っていることが明らかになった。このタンパク質の基質が、[[リンゴ酸]]であることは、[[メタボロミクス]]によって解明された<ref>{{cite journal | author=Negi J, Matsuda O, Nagasawa T, Oba Y, Takahashi H, Kawai-Yamada M, Uchimiya H, Hashimoto M and Iba K| title=CO2 regulator SLAC1 and its homologues are essential for anion homeostasis in plant cells.| journal=Nature| volume=452 | issue=7186 | year=2008 | pages=483–486 | id=PMID 18305482}}</ref>。
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{{植物学}}
{{Authority control}}
{{デフォルトソート:きこう}}
[[Category:植物解剖学]]
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[[Category:組織 (生物)]]
[[Category:植物細胞]]
[[Category:葉]]
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