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{{工事中}}
{{記紀の人・神
|時 = [[神代 (日本神話)|神代]]
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| 三備 = 巻一[[陰陽本紀]]
}}
[[Image:Creation mythsDescendants of JapanIzanami 4alone.svg|thumb|right|200px|イザナミの病と死によって生まれた神々(『古事記』に基づく) [[メディア:Creation mythsDescendants of JapanIzanami 4alone.svg|SVGで表示(対応ブラウザのみ)]]]]
 
'''ハニヤス'''は、[[日本神話]]に登場する神。『[[古事記]]』では'''ハニヤスビコ'''・'''ハニヤスヒメ'''という一対の神として登場し、『[[日本書紀]]』では'''ハニヤマヒメ'''や'''ハニヤスノカミ'''の異称で登場する。[[祝詞]]ではハニヤマヒメ。土の神、土壌の神、肥料の神、農業神として祀られるほか、陶芸の神、鎮火の神、土木工事や造園工事の守護神、便所の神としても祭祀される。
 
==概要==
記紀には[[イザナミ]]の大便からハニヤスがたという挿話がある。[[イザナギ]]とイザナミによる[[神産み]]により様々な自然物の神々を誕生させる過程で、イザナミは[[カグツチ|火の神]]を生む<!--ここは「産む」と変換すると記紀解釈上の問題が生じ起きるため「生む」としておく-->際に大火傷をしてしまい、死に至る。その死の間際の苦しみのなか、イザナミは嘔吐や脱糞・失禁をする。その吐物からは鉱山の神[[カナヤマヒコ]]が、大便からは土の神ハニヤスが、小便からは水の神[[ミヅハノメ]]が生まれる。記紀ではこのようなハニヤスの誕生譚が語られるのみで、その後のハニヤスの動向は描かれない。
 
古代語の「ハニ」は、土器や陶器のもとになる粘土を示す語であり、ハニヤスは粘土を神格化したものと考えられている。記紀の語るハニヤス誕生譚では、火の神、(金属)鉱石の神、粘土の神、水の神、食物の神が連続して誕生しており、一連のエピソードは火によって人類が金属加工技術や土器・陶器の焼成技術を獲得したことや、焼畑農業のような原始的な農耕文化の誕生を象徴していると考えられている。このためハニヤスは陶芸上達・陶工の守護神として祭祀されることもある。
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ハニヤスは「土の神」として土壌一般の守護神とも考えられており、農耕・開墾・田畑の守護神ともされる。大便から生まれたことから、農業神の一種として農耕に役立つ肥料の神として祭祀されたり、便所の神として祀られることもある。土に関わる土木業・造園業の守護神ともされる。
 
『[[延喜式]]』所載の[[祝詞]]には、記紀と異なり、荒ぶる火の神の害から民を守るためにイザナミが火鎮めの神としてハニヤスを生んだという挿話がある。このためハニヤスは「鎮火の神」としても祀られ、[[愛宕神社]]や[[秋葉神社]]など火除の神社でも重要な祭神となっている。ハニヤスが鎮火の神功を有するのは、古代には火災の消火に土や泥が用いられていたことを象徴していると考えられている。
 
===さまざまな呼称・表記===
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;ハニヤスヒメ、ハニヤスビメ、ハニヤスヒメノカミ、ハニヤスビメノカミ
*波邇夜須毘賣神(『[[古事記]]』)<ref name="日本神名辞典-ハニヤスビメノカミ"/>
*埴安姫(『[[日本書紀]]』第五段第二の一書、『[[先代旧事本紀]]』「[[陰陽本紀]]」)<ref name="日本神名辞典-ハニヤスヒメ"/>
 
;ハニヤスビコ、ハニヤスヒコノカミ
83 ⟶ 82行目:
 
;ハニヤマヒメ、ハニヤマビメ、ハニヤマヒメノカミ、ハニヤマヒミノカミ
*埴山姫(『日本書紀』第五段第二の一書、第五段第三の一書、『[[延喜式]]』「祝詞・鎮火祭」)<ref name="日本神名辞典-ハニヤマヒメ"/>
*埴山媛(『日本書紀』第五段第四の一書)
*埴山姫神(『先代旧事本紀』、[[榛名神社]])<ref name="日本神名辞典-ハニヤマヒメノカミ"/>
*波尓移麻比弥(『[[延喜式神名帳]]』)<ref name="日本の神仏-ハニヤマヒミノカミ"/>
*波爾移麻比禰([[波爾移麻比禰神社]])
 
;ハニヤマノカミ
*埴山神(『日本書紀』第五段第六の一書)
 
;その他、同一視される神
137 ⟶ 133行目:
|次に、<ruby>[[金山毘売神]]<rt>かなやまびめのかみ</rt></ruby>。
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
|次於<sub>レ</sub><ruby>屎<rt>クソ</rt></ruby>成神名<sub>二</sub><span style="color:red;"em><ruby><u>'''波邇夜須毘古'''</u><rt>ハニヤスビコ</rt></ruby><ruby><u>''''''</u><rt>ノカミ</rt></ruby></spanem>。<span style="font-size:0.8em;">此神名以<sub>レ</sub>音</span>
|次に、<ruby>屎<rt>くそ</rt></ruby>に成りし神の名は、<rubyem><uruby>[[波邇夜須毘古神]]</u><rt>はにやすびこのかみ</rt></ruby></em>。
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
|次<span style="color:red;"em><ruby><u>'''波邇夜須毘賣'''</u><rt>ハニヤスビメ</rt></ruby><ruby><u>''''''</u><rt>ノカミ</rt></ruby></spanem>。<span style="font-size:0.8em;">此神名亦以<sub>レ</sub>音。</span>
|次に、<rubyem><uruby>[[波邇夜須毘売神]]</u><rt>はにやすびめのかみ</rt></ruby></em>。
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
|次於<sub>レ</sub><ruby>尿<rt>ユマリ</rt></ruby>成神名<sub>二</sub><ruby>彌都波能賣<rt>ミツハノメ</rt></ruby><ruby>神<rt>ノカミ</rt></ruby><sub>一</sub>。
182 ⟶ 178行目:
|colspan="2"|次に(吐瀉物から)<ruby>[[金山毘売神]]<rt>かなやまびめのかみ</rt></ruby>が生まれた。
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"|次に、(苦しんで)大便を漏らすと、それが<rubyem><uruby>[[波邇夜須毘古神]]</u><rt>はにやすびこのかみ</rt></ruby></em>という名の神になった。
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"|次に(大便から)<rubyem><uruby>[[波邇夜須毘売神]]</u><rt>はにやすびめのかみ</rt></ruby></em>が生まれた。
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"|次に、(苦しんで)小便を漏らすと、それが<ruby>[[弥都波能売神]]<rt>みつはのめのかみ</rt></ruby>という名の神になった。
198 ⟶ 194行目:
|colspan="2"|とうとう神去って(死んで)しまった。
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"|(注)[[天鳥船]]から豊宇気毘売神までを数えると、全文で8神となる。
|-
|}
224 ⟶ 220行目:
| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第二の一書
|-
|原文<ref name="名前なし-20230316103043">国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第1巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref>
|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-38"/>
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
236 ⟶ 232行目:
| <ruby>其<rt>そ</rt></ruby>の<ruby>終<rt>かむさ</rt></ruby>りまさむとする間に、
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 臥生土神<span style="color:red;"><uem>埴山姫</u></spanem>及水神罔象女。
| 臥しながら<ruby>土神<rt>つちのかみ</rt></ruby><span style="color:red;"em><ruby><u>[[埴山姫]]</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></spanem>及び<ruby>水神<rt>みづのかみ</rt></ruby><ruby>[[ミヅハノメ|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>を生む。
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 即軻遇突智娶<em>埴山姬</em>
| 即ち軻遇突智、<em>埴山姫</em>を<ruby>娶<rt>ま</rt></ruby>きて、{{refnest|group="※"|イザナギとイザナミによる神生み以降で、男女として交接するのはカグツチとハニヤマヒメが最初となる<ref name="通釈-178"/>。平田篤胤はカグツチとハニヤマヒメが同母兄妹であることを指摘し、こうした近親相姦は人間世界では禁忌であるが、神の世界については「人智を以て料知へき事にはあらず」とした<ref name="通釈-178"/>。}}
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 生稚産靈、
262 ⟶ 258行目:
|colspan="2"|その死のうという時に
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"|横たわったまま、土の神<span style="color:red;"em><ruby><u>[[埴山姫]]</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></spanem>と水の神<ruby>[[ミヅハノメ|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>を生んだ。
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"|<ruby>[[軻遇突智]]<rt>かぐつち</rt></ruby>は<em><ruby>[[埴山姫]]<rt>はにやまひめ</rt></ruby></em>を娶って、
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"| <ruby>[[稚産霊]]<rt>わくむすひ</rt></ruby>を生んだ。
285 ⟶ 281行目:
| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第三の一書
|-
|原文<ref name="名前なし-20230316103043"/>
|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第1巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref>
|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-38"/>
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
300 ⟶ 296行目:
| 其の<ruby>神<rt>かむ</rt></ruby><ruby>退<rt>さ</rt></ruby>りまさむとする時に、
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 則生水神罔象女及土神<span style="color:red;"><uem>埴山姫</u></spanem>、
| 則ち<ruby><rt></rt></ruby><ruby>水神<rt>みづのかみ</rt></ruby><ruby>[[ミヅハノメ|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>、及び<ruby>土神<rt>つちのかみ</rt></ruby><span style="color:red;"em><ruby><u>[[埴山姫]]</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></spanem>を生み、
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 又生天吉葛。
325 ⟶ 321行目:
|colspan="2"| その<ruby>神退<rt>かむさ</rt></ruby>ろう(死なれよう)とするときに、
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"| 水の神<ruby>[[ミヅハノメ|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>と土の神<span style="color:red;"em><ruby><u>[[埴山姫]]</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></spanem>を生み、
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"| また、<ruby>天吉葛<rt>あまのよさつら</rt></ruby>{{refnest|group="※"|天吉葛(=アマノヨサヅラ=ヨソヅラ)とは、古語で「天」=[[高天原]]に存在する、「よい(=便利な)[[つる植物]]」を意味し、神格化された植物と考えられている<ref>[[小学館]]『[[日本国語大辞典]]』「あまの吉葛」([[JapanKnowledge]]版)</ref><ref name="小学日本書紀-40上8"/>。「天」「吉」いずれも美称辞とし、葛類の祖神とみる説もある<ref name="新釈全訳日本書紀-103-1"/>。具体的には様々な解釈があり、[[クズ]]のように食材としての[[デンプン]]を採るための植物(農耕が定着する以前には重要な植物だった)とする説<ref name="岩波日本書紀-39-14"/><ref name="小学日本書紀-40上8"/><ref name="新釈全訳日本書紀-103-1"/>のほか、祝詞(後述)との関連で(水を汲む道具としての)[[ヒョウタン]]と解釈する説([[忌部正通]]『[[神代巻口訣]]』)もある<ref name="新釈全訳日本書紀-103-1"/>。}}をお生みになった。
|colspan="2"| また、<ruby>天吉葛<rt>あまのよさつら</rt></ruby>をお生みになった。
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"| ここでは<ruby>天吉葛<rt>あまのよさつら</rt></ruby>は、アマノヨサヅラという。
343 ⟶ 339行目:
| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第四の一書
|-
|原文<ref name="名前なし-20230316103043"/>
|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第1巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref>
|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-38"/>
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
361 ⟶ 357行目:
| 次に<ruby>小便<rt>ゆまり</rt></ruby>まる{{refnest|group="※"|「-まる」は「排泄する」の意<ref name="口語訳古事記-24"/>。『[[今昔物語集]]』「此の殿に候ふ女童の大路に屎(くそ)まり居て候」<ref name="糞尿学-33"/>。この語は現代語の「[[おまる]]」などに残っている<ref name="口語訳古事記-24"/>。}}。神と<ruby>化為<rt>な</rt></ruby>る。名を<ruby>[[罔象女神|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>と<ruby>曰<rt>まう</rt></ruby>す。
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 次大便、化爲神、名曰<span style="color:red;"em><ruby><u>埴山媛</u><rt>はにやまびめ</rt></ruby></spanem>。
| 次に<ruby>大便<rt>くそ</rt></ruby>まる。神と<ruby>化為<rt>な</rt></ruby>る。名を<em><ruby>[[埴山姫|埴山媛]]<rt>はにやまびめ</rt></ruby></em>と<ruby>曰<rt>まう</rt></ruby>す。
|-
| style="line-height:2.0em;" colspan=2 |(現代語訳)
376 ⟶ 372行目:
|colspan="2"| 次に小便した。これが神となった。名付けて<ruby>[[ミヅハノメ|罔象女]]<rt>みつはのめ</rt></ruby>という。
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"| 次に大便した。これが神となった。名付けて<span style="color:red;"em><ruby><u>[[埴山姫|埴山媛]]</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></spanem>という。
|-
| colspan=2 | <references group="※"/>
388 ⟶ 384行目:
| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻一(神代紀・上)第五段・第六の一書
|-
|原文<ref name="名前なし-20230316103043"/>
|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第1巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref>
|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-38"/>
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
430 ⟶ 426行目:
| <ruby>木神<rt>きのかみ</rt></ruby><ruby>等<rt>たち</rt></ruby>を<ruby>[[句句廼馳]]<rt>くくのち</rt></ruby>と<ruby>号<rt>まう</rt></ruby>し、
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 土神號<span style="color:red;"><uem>埴安神</u></spanem>。
| <ruby>土神<rt>つちのかみ</rt></ruby>を<span style="color:red;"em><ruby><u>[[埴安神]]</u><rt>はにやすのかみ</rt></ruby></spanem>と<ruby>号<rt>まう</rt></ruby>す。
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 然後、悉生萬物焉。
470 ⟶ 466行目:
|colspan="2"| 木の神たちを名付けて<ruby>[[句句廼馳]]<rt>くくのち</rt></ruby>という。
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"| 土の神名付けて<span style="color:red;"em><ruby><u>[[埴安神]]</u><rt>はにやすのかみ</rt></ruby></spanem>という。
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"| その後にことごとく万物を生んだ。
494 ⟶ 490行目:
 
===鎮火の祝詞===
{| style="width:90%;background-color:rgba( 0, 13571, 64193, 0.08 );margin:0 auto;border: 1px #404040 solid;padding:1.0em;width:90%;"
|-
| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |鎮火の祝詞(一部抜粋)
519 ⟶ 515行目:
| <ruby>川菜<rt>かはな</rt></ruby>、
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| <span style="color:red;"em><ruby><u>埴山姫</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></spanem>、
| <span style="color:red;"em><ruby><u>埴山姫</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></spanem>、
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 四種物<sub>乎</sub>生給<sub>氐</sub>、
528 ⟶ 524行目:
| 「此の心悪しき子の心<ruby>荒<rt>あら</rt></ruby>びなば、
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 水神、瓠{{refnest|group="※"|ここは「乎持氐」(を持ちて)が省略されている。<ref name="祝詞新講-372ヒサゴ"/>}}、 <span style="color:red;"><uem>埴山姫</u></spanem>、川菜<sub>乎</sub>持<sub>氐</sub>、
| style="padding-left:1.0em;"| 水<sub>ノ</sub>神、<ruby>瓠<rt>ひさご</rt></ruby>、<ruby>川菜<rt>かはな</rt></ruby>、 <span style="color:red;"em><ruby><u>埴山姫</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></spanem>を持ちて、
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
| 鎭奉<sub>禮止</sub>、事教悟給<sub>支</sub>、
546 ⟶ 542行目:
|colspan="2"| 水を汲むためのヒサゴ([[ひょうたん]])、{{refnest|group="※"|飯田武郷は、ヒョウタンが水に浮き、水に漬けても腐らず、水を汲むのに適しているのはイザナミの神力によるものだと考えられた、と指摘した<ref name="通釈-181"/>。}}
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"| それから<span style="color:red;"em><ruby><u>埴山姫</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></spanem>と、
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2"| 火消しに用いる川菜([[ミズゴケ]])であった。
554 ⟶ 550行目:
|colspan="2"| 「この心の悪い子が暴れ(て現世に害を及ぼす<ref name="祝詞新講-注心悪"/>)ならば、
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2" style="padding-left:1.0em;"|水の神はひょうたんで水をかけ、 <span style="color:red;"em><ruby><u>埴山姫</u><rt>はにやまひめ</rt></ruby></spanem>は川菜を持って
|- style="line-height:2.0em;"
|colspan="2" style="padding-left:1.0em;"|これを鎮めよ」と教え悟し置かれたことである。
575 ⟶ 571行目:
 
===「ハニ」と「黄土」「埴」===
[[File:LoessVicksburg.jpg|180px|thumb|黄色の顔料にもなった[[黄土]]]]
 
「ハニ」とは古語で黄色がかった粘土のことを指し、漢字では「黄土」「埴」などがあてられてきた。平安時代の9世紀末に編纂された、最古の漢和辞典とされる『[[新撰字鏡]]』には、「埴黏土也波爾」とある<ref name="神道史-ハニヤスヒメ"/><ref name="通釈-175"/>。10世紀成立の『[[和名類聚抄]]』では「土黄にして細密なるを埴と曰ふ、和名、{{読み仮名|波爾|はに}}」とある<ref name="平田篤胤-丹土"/><ref name="通釈-175"/><ref name="神道史-ハニヤスヒメ"/><ref name="アジア女神-ハニヤスビメ"/><ref name="岩波日本書紀-39-7"/>{{refnest|group="注"|『[[和名類聚抄]]』(二十巻本)地部・塵土類、「埴 釈名云土黄而細密曰埴常職反[和名波爾]」。この部分は『和名類聚抄』が『釈名』を孫引きしている。<ref name="新釈全訳日本書紀-101-9"/>}}。
 
605 ⟶ 601行目:
 
===「ハニ」と「赤土」「埴」===
[[File:Periodo kofun, guardiano di tomba haniwa, 250-538 dc ca..JPG|100px|thumb|「ハニ」と同音をもつ[[埴輪]]]]
 
『古事記』や『日本書紀』「第四の一書」は、大便がハニヤスに化成したとしており、大便の外見からの連想で赤土の粘土とみることもある<ref name="読み解き-ハニヤスヒコ"/><ref name="わかる-176"/><ref name="ビジュアル-064"/>。
 
621 ⟶ 617行目:
 
===「ハニヤス」と「ハニヤマ」===
[[File:Fujiwara-kyo CosmosField01.jpg|thumb|right|天香久山]]
『日本書紀』に登場するハニヤスの神名は、第二・第三・第四の一書では「ハニヤマヒメ」、第六の一書では「ハニヤスノカミ」となっている。これについては、原初的な神名「ハニヤマ」が、のちに「ハニヤス」に改められたのかもしれない、と考える説がある<ref name="通釈-175"/><ref name="新釈全訳日本書紀-105-6"/>。
 
633 ⟶ 630行目:
| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻三(神武天皇即位前紀)戊午年九月
|-
|原文<ref name="名前なし-20230316103043-2">国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第3巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref>
|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-218"/>
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
679 ⟶ 676行目:
| style="border-bottom: 1px #404040 solid;" colspan=2 |([[国史大系]]第1巻)『日本書紀』巻三(神武天皇即位前紀)己未年二月
|-
|原文<ref name="名前なし-20230316103043-2"/>
|原文<ref>国立国会図書館デジタルコレクション 国史大系第3巻.日本書紀.{{NDLJP|991091}} コマ番号13</ref>
|訓み下し文<ref name="岩波日本書紀-218"/>
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
697 ⟶ 694行目:
|<ruby>遂<rt>つひ</rt></ruby>に<ruby>区宇<rt>あめのした</rt></ruby>を<ruby>安定<rt>しづ</rt></ruby>むること得たまふ。
|- style="font-family: serif;line-height:2.0em;"
|故號取土之處、曰<span style="color:red;"><uem>埴安</u></spanem>。
|<ruby>故<rt>かれ</rt></ruby>、<ruby>土<rt>はにつち</rt></ruby>取りし<ruby>処<rt>ところ</rt></ruby>を<ruby>号<rt>なづ</rt></ruby>けて、<span style="color:red;"em><ruby><u>埴安</u><rt>はにやす</rt></ruby></spanem>と<ruby>曰<rt>い</rt></ruby>ふ。
|-
| style="line-height:2.0em;" colspan=2 |(現代語訳)
712 ⟶ 709行目:
|colspan="2"| そして今、遂に天下を平定した。
|-
|colspan="2"| そこで、その土を採った場所を<span style="color:red;"em><ruby><u>埴安</u><rt>はにやす</rt></ruby></spanem>というのである。
|-
| colspan=2 | <references group="※"/>
794 ⟶ 791行目:
 
===祭神となっている主な神社===
[[File:畝尾坐健土安神社拝殿 - DGYGae0UIAABNnZ.jpg|thumb|right|畝尾坐健土安神社]]
[[File:榛名神社 Haruna shrine - panoramio.jpg|thumb|right|榛名神社]]
[[File:Atago-jinja (Kyoto) entrance.JPG|thumb|right|愛宕神社]]
 
 
[[日本土壌肥料学会]]の2015年「土壌と東西の神々、日本の土地神」によれば、日本国内でハニヤス神を奉斎する神社の数は、「ハニヤスヒメ」286社、「ハニヤス」129社、「ハニヤスヒコ」24社である<ref name="土壌神々V3"/>。このうち、「ハニヤスヒコ」と「ハニヤスヒメ」の二神を祀る神社は12社ある<ref name="土壌神々V3"/>。
817 ⟶ 818行目:
*[[大井神社 (島田市)|大井神社]]([[静岡県]][[島田市]]))<ref name="日本の神仏-ハニヤスノカミ"/><ref name="ビジュアル-064"/><ref name="わかる-176"/>
 
*迩弊姫神社([[石見国]][[安濃郡 (島根県)|安濃郡]]/[[島根県]][[田市]])<ref name="わかる-176"/><ref name="ビジュアル-064"/> - 式内社
 
;ハニヤスビメノカミ
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*[[埴安媛|'''ハニヤスヒメ''']] - 記紀には、8代[[孝元天皇]]の妃の一人として、同じ名を持つ「[[埴安媛|ハニヤスヒメ]]」が登場する<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ"/>。『古事記』孝元記では「波邇夜須毘売」で、『日本書紀』孝元紀では「埴安媛」<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ"/>。父親は[[河内国|河内]]の豪族で、「[[河内青玉繋|青玉]]」(『古事記』)ないし「[[河内青玉繋|青玉繋]]」(『日本書紀』)である<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ"/>。、[[武埴安彦命|タケハニヤスヒコノミコト]](建波邇夜須毘古命または武埴安彦)の母<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ"/>。
 
*[[武埴安彦命|タケ'''ハニヤスヒコ'''ノミコト]] - 孝元天皇の皇子で、母は上記のハニヤスヒメ<ref name="日本古代神祇事典-ハニヤスヒメ"/>。記紀によると、叔父の[[崇神天皇]]に対する反乱を起こして鎮圧される{{refnest|group="注"|彼らは反乱を起こすに先立ち、密かに天香具山の土を採取して占いを行う。天香具山はヤマトの国(倭国)の象徴であり、その土を盗むのは国を盗むことを意味する。彼らが土を盗んだという事実を知った天皇は、反乱の企てを察知する。この逸話は、神武天皇がヤマトの国を攻め奪る前に天香具山の土を盗んで土器を焼き、神事を行った故事に呼応している。<ref name="クソマル-94"/>}}。負け戦となったときに反乱軍はクソを漏らして逃走する<ref name="うん古典-王"/>{{refnest|group="注"|亦其卒怖走、屎漏于褌」(『日本書紀』天皇紀十年九月条)<ref name="新釈全訳日本書紀-394"/>}}。[[大塚ひかり]](1961-)は、「タケハニヤス」という名は「勇ましいうんこ王」の意味になり、合戦の勝者が敗者に対し、クソを漏らした故事にちなんでクソと同一視される「ハニ」という汚名を与えたのではないか、とする<ref name="うん古典-王"/>{{refnest|group="注"|『日本書紀』では、この地を「屎褌」(くそばかま)と呼ぶようになり、これが転訛して「[[樟葉]]」(現在の[[大阪市]][[枚方市]][[くずは]]一帯)になったとする<ref name="新釈全訳日本書紀-394"/>。}}。
 
==関連項目==
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*<ref name="岩波日本書紀-39-6">岩波文庫『日本書紀(一)』、p.39、注6</ref>
*<ref name="岩波日本書紀-39-7">岩波文庫『日本書紀(一)』、p.39、注7</ref>
*<ref name="岩波日本書紀-39-14">岩波文庫『日本書紀(一)』、pp.39-40、注14</ref>
*<ref name="岩波日本書紀-218">岩波文庫『日本書紀(一)』、p.218</ref>
 
*<ref name="新釈全訳日本書紀-101-7">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.101、注7</ref>
*<ref name="新釈全訳日本書紀-101-9">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.101、注9</ref>
*<ref name="新釈全訳日本書紀-103-1">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.103、注1</ref>
*<ref name="新釈全訳日本書紀-103-5">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.103、注5及び注6</ref>
*<ref name="新釈全訳日本書紀-103-8">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、p.103、注8</ref>
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*<ref name="新釈全訳日本書紀-394">『新釈全訳 日本書紀 上巻(巻第一{{〜}}巻第七)』、pp.394-395</ref>
 
*<ref name="小学日本書紀-40上8">小学館([[新編日本古典文学全集]] 2)『日本書紀』、p.40上注8</ref>
 
 
<!--祝詞-->
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*『古事記と日本書紀』([[講談社現代新書]] 1436)、著:[[神野志隆光]]、講談社、1999年(第1刷)、2020年(第23刷)。ISBN 4-06-149436-8
 
*『複数の「古代」』([[講談社現代新書]] 1914)、著:[[神野志隆光]]、講談社、2007年(第1刷)。ISBN{{ISBN2| 978-4-06-2879142879149}}
 
*『日本書紀の世界』([[講談社学術文庫]] 2220)、著:[[山田英雄 (日本史学者)|山田英雄]]、[[講談社]]、2014年(1979年刊行『日本書紀』の文庫版)。ISBN 978-4-06-292220-3
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*「世界の神話と主な宗教に見られる土壌と大地」、著:[[陽捷行]]([[農業環境健康研究所]])([[日本土壌肥料学会]]、『日本土壌肥料学雑誌』87(4)、pp.267-277、2016年。
 
*『マンガでわかる日本の神様』、監修:[[東條英利]]、[[誠文堂新光社]]、2017年、2019年(第3刷)。ISBN 978-4-416-71711-0
 
*『神話のなかのヒメたち もうひとつの古事記』、著:産経新聞取材班、[[産経新聞出版]]、2018年。ISBN 978-4-8191-1336-6
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{{日本神話}}
{{神道 横}}
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[[Category:日本の神]]