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[[File:Dementia Prevalence in OECD.svg|thumb|right|400px|OECD各国の人口千人あたり認知症者]]
'''認知症'''(にんちしょう、{{lang-en-short|Dementia}}、{{lang-de-short|Demenz}})は、[[認知障害]]の一種であり、[[ヒトの脳]]の[[後天性|後天的]]な器質的障害により、いったん正常に発達した[[知能]]・[[知性]]が'''不可逆的に'''低下する状態である。初期段階は周囲にも、'''[[老化]]による[[健忘|物忘れ]]と混同'''されやすいが、どれかが並行して起きる(物忘れに自己対処出来ない、物忘れしたこと自体を忘却、[[妄想]]・[[幻覚]]、依存、徘徊、[[挑戦的行動|攻撃的行動]]、[[睡眠障害]]、[[介護]]への抵抗、異食・過食、[[抑うつ]]状態など)。人によって症状は様々であり、発症前より怒りっぽくなったり、不安な性格になったり、異常な行動が見られるようになる{{Sfn|世界保健機関|2012|loc=DEM}}<ref name="Kaplan">{{Cite |和書| |author=B.J.Kaplan |author2=V.A.Sadock |title=カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開 |edition=3 |publisher=メディカルサイエンスインターナショナル |date=2016-05-31 |isbn=978-4895928526 |at=Chapt.21.3}}</ref><ref name="nia">{{Cite report|df=ja|title=Alzheimer's Disease Fact Sheet |publisher=[[アメリカ国立老化研究所]] |date=August 2016 | url=https://www.nia.nih.gov/alzheimers/publication/alzheimers-disease-fact-sheet}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kanri.or.jp/article/2012/05/post_92.php|title=認知症について|accessdate=2021/09/20}}</ref>。
本項では主に[[ヒト]](人間)について記述するが、認知症は人間以外の動物([[イヌ|犬]]や[[ネコ|猫]]など)でも発症する。狭義では「知能が後天的に低下した状態」の事を指すが、医学的には「知能」の他に「[[記憶]]」「[[見当識]]」を含む[[認知障害]]や「人格変化」などを伴った[[症候群]]として定義される{{Sfn|世界保健機関|2012|loc=DEM}}{{r|nia}}。これに比し、先天的に脳の器質的障害があり、運動の障害や知能発達面での障害などが現れる状態は[[知的障害]]、先天的に[[認知]]の障害がある場合は[[認知障害]]という。単に[[老化]]に伴って物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、'''病的に能力が低下して性格の先鋭化、強い承認欲求、理性的思考力衰退、被害妄想を招く症状'''を指す<ref>{{Cite news|title=「突然キレる」「同じ昔話を繰り返す」――親に感じ始める「なぜ?」の原因と付き合い方 - Yahoo!ニュース 2018年8月31日}}</ref>{{Sfn|世界保健機関|2012|p=4}}。
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; 血圧降下剤による薬害
; 抗コリン剤による薬害
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; ベンゾジアゼピン短期使用
: ベンゾジアゼピンの短期使用は、認知症やアルツハイマー病のリスクを少し増加させる。しかし、長期使用はリスク増加に関連付けられていない。このことから、短期使用とリスク増加の関連は、前駆症状の治療を表した可能性が示唆される<ref name="pmid26837813">{{cite journal |author=Gray SL, ''et al''. |title=Benzodiazepine use and risk of incident dementia or cognitive decline: prospective population based study. |journal=[[:en:The BMJ]]. |volume=352 |issue= |page=i910 |date=2016-02-02 |url=http://www.bmj.com/content/352/bmj.i90 |doi=10.1136/bmj.i90 |pmc=4737849 |pmid=26837813}}</ref>。
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*[https://toyokeizai.net/articles/-/325700 睡眠薬で高齢者を「寝かせきり」病院・施設の闇 人手不足で現場は疲弊、危険性が伝わらない(東洋経済オンライン2020年1月26日記事)] ※ 記事では医療や介護の手間を省くため入所の高齢者にベンゾジアゼピン系の薬剤が恒常的に投与されている実態が報じられている。
; Z薬(アルファベットのZで始まる名称のものが多いことからの俗称。[[Z薬]]を参照。)
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=== 心理療法 ===
{{Seealso|心理療法|{{ill2|認知症患者への心理療法|en|Cognitive therapies for dementia}}}}
軽中程度の認知症患者(タイプを問わない)に対しては、NICEは投薬(認知機能改善を目的とする)の有無に関わらず、[[認知療法|認知刺激グループ療法]](Cognitive Stimulation Therapy)プログラムへの参加機会が与えられるべきであるとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2006|loc=Chapt.1.6.1}}。日中の散歩等の[[運動療法]]や、[[作業療法]]などで昼夜リズムを整える([[光療法]])<ref>[https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/attach/1333542.htm 光の治療的応用―光による生体リズム調節]</ref>、思い出の品や写真を手元に置き安心させる[[回想法]]や[[テレビ回想法]]なども有効な場合がある。
患者の不安感など精神状態の影響を受ける周辺症状は、介護者がそれらを取り除く事で発症を抑制することが可能となることもある([[ユマニチュード]])。
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* {{仮リンク|米国老年医学会|en|American Geriatrics Society}} (AGS) は、2014年に、認知症状改善と消化器系の副作用についての定期評価なしには、AChEを処方してはならないとしている<ref name="AGS">{{Cite report|df=ja|author=American Geriatrics Society|title=Ten Things Physicians and Patients Should Question |publisher=ABIM Foundation |year=2014 |url=http://www.choosingwisely.org/doctor-patient-lists/american-geriatrics-society/ }}</ref>。
* オーストラリア総合医学会の2006年のガイドラインでは、AChEを投与しても最初の6か月間にて状態が安定・改善しない患者については、投与を続けても利益を得られる可能性は低いとされている{{Sfn|王立オーストラリア総合医学会|2006|p=32}}。
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==== 薬物でのBPSD管理 ====
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[[日本]]については、65歳以上高齢者の[[有病率]]は3.0〜8.8%(調査によってばらつきが大きい)とされ、OECDでは2009年では6.1%と報告されている{{Sfn|OECD|2013|loc=Chapt.8.4}}。2026年には10%に上昇するとの推計もある。
2010年には、日本での認知症患者数は'''約462万人'''(65歳以上人口の15%)、その前段階の[[軽度認知障害]](MCI)は約400万人(13%)と推定された<ref>{{Cite news|title=認知症、高齢者4人に1人 「予備軍」400万人含め |newspaper=日経 |url=
認知症高齢者は厚生労働省の統計で、2012年は462万人、2020年は602万人、2025年は'''675万人'''、2030年は'''744万人'''と推定されている<ref name=kouroushou /><ref>{{Cite news |url=https://www.asahi.com/articles/DA3S14385413.html|title=(介護とわたしたち 保険制度20年:上)「介護の社会化」実現できたか:朝日新聞デジタル:朝日新聞デジタル:朝日新聞デジタル|newspaper=|date=2020-03-01}}</ref>。
{{Seealso|日本の精神保健#人口高齢化に伴う認知症の増加}}
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=== 所在不明者をめぐる問題 ===
警察庁のまとめによると、2013年、捜索願([[失踪者|行方不明者]]届)が出された認知症の人の数は1万322人であり<ref>{{PDFlink|[https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/H25yukuehumeisha.pdf 平成25年中における行方不明者の状況]}} - 警察庁</ref>、2012年度と2013年度に届出のあった19,929人の不明者のうち、2014年4月現在所在が確認できていない人数が258人である<ref>[
2019年6月20日の警察庁の発表によれば、2018年中に警察に届け出があった認知症の行方不明者はのべ16,927人で、前年比1064人増であり、統計を取り始めた2012年から連続で増加、最多となった。行方不明者全体87,962人に占める割合は19.2パーセントで過去最大。70歳以上が9割を占めた。<ref>[https://www.asahi.com/articles/DA3S14064203.html 認知症不明、最多1万6927人 遺体で見つかった人、508人 昨年] 朝日新聞デジタル </ref>
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2023年6月14日、認知症に関する初の法律「[[共生社会の実現を推進するための認知症基本法]]」が成立した。社会活動に参加する機会の確保など様々な認知症の施策に取り組み、認知症の人が暮らしやすくするのが狙い。「世界アルツハイマーデー」の9月21日を「認知症の日」と定めるとした。
国民の責務として「共生社会実現への寄与」を盛り込み、認知症施策の基本理念として7項目を掲げ、具体策として、バリアフリー化の推進、意欲や能力に応じた雇用の継続や就職に資する施策、保健医療や福祉サービスの切れ目ない提供、認知症の早期発見や早期診断や早期対応を推進、などを挙げた。政府に具体的目標や達成時期を入れて基本計画を作るよう義務づけ、自治体に計画策定の努力義務を課した<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.asahi.com/articles/ASR6G4FM7R6GUTFL004.html|title=認知症に関する初の法律が成立 社会活動に参加する機会を確保へ:朝日新聞デジタル|accessdate=2023-06-15|publisher=朝日新聞}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.asahi.com/articles/DA3S15662219.html|title=認知症基本法、成立 社会活動の機会確保盛る:朝日新聞デジタル|accessdate=2023-06-15|publisher=朝日新聞}}</ref>。
2017年12月、愛知県大府市は、基本理念や各関係主体の役割、市の責務や施策などを定めた全国初となる「大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例」を制定した<ref>[https://www.city.obu.aichi.jp/kenko/koureishashien/ninchisho/1011077.html 大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例|大府市]</ref>。
==脚注==
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