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[[ファイル:SekienUngaikyo.jpg|right|thumb|215px200px|[[鳥山石燕]]『[[百器徒然袋]]』の下巻にて描くところの、より「雲外鏡]]
'''雲外鏡'''(うんがいきょう) は、特殊な[[江戸時代]]が長い年月を経たちに変じたという、[[日本]]の[[妖怪]]の一種。[[浮世絵師]]・[[鳥山石燕]]の妖怪画集『[[百器徒然袋]]』にある[[天明日本]]4年〈[[1784年妖怪]]〉)に描かれているの一つで、[[鏡]]の妖怪
 
== 概要 ==
'''雲外鏡'''(うんがいきょう) は、特殊な[[鏡]]が長い年月を経たのちに変じたという、[[日本]]の[[妖怪]]の一種。[[浮世絵師]]・[[鳥山石燕]]の妖怪画集『[[百器徒然袋]]』([[天明]]4年〈[[1784年]]〉)に描かれている。
石燕は、勾欄の後ろに立ち舌を出した顔のある鏡が描いており、『百器徒然袋』の解説文には、以下のように解説されている。
{{quotation|
照魔鏡(しやうまきやう)と言へるは もろもろの怪しき物の形をうつすよしなれば その影のうつれるにやとおもひしに 動(うごき)出るままに 此(この)かゞみの妖怪(ようくはい)なりと 夢の中におもひぬ<ref name="hyakki">{{Cite book|和書|editor1=稲田篤信|editor1-link=稲田篤信|editor2=田中直日|others=[[高田衛]]監修 |title=鳥山石燕 画図百鬼夜行|year=1992|publisher=[[国書刊行会]]|isbn=978-4-336-03386-4|page=312}}</ref>}}
 
[[照魔鏡]]とは、魔物の正体を明らかにするといわれている[[伝説]]上の[[鏡]]<ref>[[諸橋轍次]]『[[大漢和辞典]]』7巻 [[大修館書店]]</ref>で、[[高井蘭山]]の[[読本]]『絵本三国妖婦伝』では、[[殷]]の[[帝辛|紂王]]を堕落させた美女・[[妲己]]の正体を見破ったとされる<ref>{{Cite book|和書|author=多田克己|authorlink=多田克己|title=[[怪 (ムック)|怪]]|year=2005|publisher=[[角川書店]]|series=カドカワムック|volume=vol.0018|isbn=978-4-04-883912-9|page=390|chapter=絵解き 画図百鬼夜行の妖怪}}</ref>。『百器徒然袋』の雲外鏡は、その照魔鏡をもとにして石燕が創作した妖怪といわれており<ref name="murakami">{{Harvnb|村上|2005|p=52}}</ref><ref>{{Cite book|和書|editor=田神健一他|title=アニメ版 ゲゲゲの鬼太郎 完全読本|year=2006|publisher=[[講談社]]|isbn=978-4-06-213742-3|page=51}}</ref>、絵は化け物のような妖しい顔が浮かび上がった鏡として描かれている<ref name="genso">{{Harvnb|草野|1997|p=49}}</ref>(画像参照)。
[[民俗学]]的知見から、鏡の[[付喪神]](つくもがみ)と見られる。
 
[[平成]]以後の妖怪関連の書籍では、百年を経た鏡が妖怪と化した[[付喪神]](器物が化けた妖怪)であり、妖怪となった自分自身の顔を鏡面に映し出しているもの<ref name="genso" />、または照魔鏡に映された妖怪たちが照魔鏡を操って動かしているもの<ref name="gento" />、などと解釈され解説されることが多い。名称の雲外鏡(うんがいきょう)は、多くの妖怪について記述された[[中国]]の[[地理]]書である『[[山海経]]』(せんがいきょう)の名に掛けたものとの説もある<ref name="gento">{{Harvnb|妖怪ドットコム|2008|p=113}}</ref>。
== 本来の雲外鏡 ==
=== 石燕の雲外鏡 ===
化け物の正体を明らかにする「照魔鏡(しょうまきょう)」と呼ばれる鏡が、長い年月を経た末に妖怪化したものとされている<ref name="murakami">{{Cite book|和書|author=[[村上健司]]編著|title=妖怪事典|year=2000|publisher=[[毎日新聞社]]|isbn=978-4-620-31428-0|pages=63頁}}</ref>。『百器徒然袋』(右上の画像がそれ)では、怪しげな黒雲(あるいは、そのような意匠の鏡立て)を伴って[[公家]]の屋敷にあり、[[すだれ#御簾|御簾]](みす)の陰から半面のみ姿を見せる丸鏡として描かれており、その鏡面には邪(よこしま)な雰囲気を漂わせつつ舌を出してこちらに視線をくれる化け物の顔面が浮かび上がっている。
 
=== 研究者分析と知見怪物 ===
また、妖怪作品の多い[[漫画家]]・[[水木しげる]]の著書よれば、[[8月 (旧暦)|旧暦8月(葉月)]]の[[8月15日 (旧暦)#記念日・年中行事|十五夜]]に月明かりの下(もとで[[石英|水晶]]の[[トレイ|盆]]に水を張り、その水で鏡面に化け物の姿を描くと、鏡の中に化け物それが棲みつく。それが雲外鏡である伝説が記されている<ref>{{Cite book|和書|author=[[水木しげる|authorlink=水木しげる|title=決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様|year=2014|publisher=講談社([[講談社文庫]])|isbn=978-4-062-77602-8|page=115}}</ref><ref>{{Cite book|和書|author=水木しげる|authorlink=水木しげる|title=水木しげるの妖怪文庫|year=1984|publisher=[[河出書房新社]]|series=[[河出文庫]]|volume=2|isbn=978-4-309-47056-6|pagespage=145}}</ref>。
妖怪研究家([[作家]])・[[多田克己]]らの著書においては、雲外鏡は、鏡の付喪神と解釈されている<ref name="tada">{{Cite book|和書|author=[[多田克己]]|title=幻想世界の住人たち IV 日本編|year=1990|publisher=[[新紀元社]]|series=Truth in fantasy|isbn=978-4-915146-44-2|pages=302-304頁}}</ref>。
 
== 狸の形状をしたもの ==
また、妖怪作品の多い[[漫画家]]・[[水木しげる]]によれば、[[8月 (旧暦)|旧暦8月(葉月)]]の[[8月15日 (旧暦)#記念日・年中行事|十五夜]]に月明かりの下(もと)で[[石英|水晶]]の[[トレイ|盆]]に水を張り、その水で鏡面に化け物の姿を描くと、鏡の中に化け物が棲みつく。それが雲外鏡であると言う<ref>{{Cite book|和書|author=[[水木しげる]]|title=水木しげるの妖怪文庫|year=1984|publisher=[[河出書房新社]]|series=[[河出文庫]]|volume=2|isbn=978-4-309-47056-6|pages=145頁}}</ref>。
[[1968年]]の[[映画]]『[[妖怪大戦争 (1968年の映画)|妖怪大戦争]]』([[大映]])に登場している「雲外鏡」は[[タヌキ|狸]]の姿をした妖怪としてデザインされている。息を吸い込んで腹を大きくふくらませて様々な場所の様子を[[テレビ]]のように映す能力をもっており、劇中でもその能力を使用している<ref>{{Cite book|和書|title=甦れ!妖怪映画大集合|year=2005|publisher=[[竹書房]](BAMBOO MOOK)|isbn=978-4-81242-265-6|page=72}}</ref>。
 
[[昭和]]以降の児童向け妖怪図鑑では、雲外鏡は腹に鏡をつけた狸のような姿の妖怪であるとか、自らの体に様々なものを映し出すことができる、などと解説されることが少なくないが、妖怪探訪家・[[村上健司]]の指摘によれば、それらはこの映画における雲外鏡の影響下にあるものであるとしている<ref name="murakami" />。
== 今様の雲外鏡 ==
=== デフォルメ ===
現代的[[大衆文化]]に基づいて著される妖怪図鑑や画集<ref>これらの著作物が対象年齢とする読者層は子供ばかりではない。子供向け妖怪図鑑を読んで幼少期を過ごした人は、長じては大人向けの妖怪図鑑を手にする機会も多い。</ref>では、雲外鏡は腹に鏡をつけた(腹が鏡になっている)化け狸<ref>狸の妖怪については「[[タヌキ#伝承]]」が詳しい。</ref>のような姿の妖怪であるとか、自らの体に様々なものを映し出すことができる、などと解説されることが少なくない。しかし、妖怪研究家(作家)・[[村上健司]]の指摘によれば、そのような[[デフォルメ]]された形と能力を持った雲外鏡の原典は[[特撮]]映画『[[妖怪大戦争 (1968年の映画)|妖怪大戦争]]』([[昭和]]43年〈[[1968年]]〉)に登場する古狸(ふる-だぬき)様の雲外鏡<ref>当作品中の雲外鏡は、[[鉢巻|ねじり鉢巻]]を締め、[[法被]](はっぴ)をまとい、太鼓腹を抱えた巨漢の江戸職人風、あるいは、江戸火消し風である。</ref>にあり、以降のイメージはその影響下での[[二次創作物]]であるとされる<ref name="murakami" />。
 
== 脚注・出典 ==
== 不可思議な鏡の関連事象 ==
類似点が多いもの、および、類縁ではないが「不可思議な鏡」という点での相似性が見られるものをここに示す。
 
* [[照妖鏡]](照妖鑑とも称)は、中国[[明]]代の[[伝奇]]『[[封神演義]]』に登場する、本来の姿を映し出す鏡。終南山の[[仙人]]・[[雲中子]]の宝貝(パオペイ。仙術の武具)で、 人に化けた魔物の正体を看破することができる。妖怪化する以前の雲外鏡(照魔鏡)と類似点が多い。
* [[浄玻璃鏡]](じょうはりのかがみ)は、(日本の)[[地獄 (仏教)|地獄]]の[[閻魔]]が亡者の善悪を見極めるのに用いる水晶製の鏡。
* [[ドイツ]][[民話]]であり[[童話]]である『[[白雪姫]]』に登場する魔法の鏡は、鏡の[[精霊|精]]が宿ったもの。しかし、強い自我を持っており、[[西洋占星術]]で用いられる水晶球を鏡に変えたようなところもあって、雲外鏡とは大きく異なる。
* 古代[[中国]]や日本に実在する「[[魔鏡]]」は、光の屈折で像を映し出す仕掛けを持つ[[銅鏡]]([[青銅]]鏡)である。[[隠れ切支丹鏡]]。
 
== 脚注・出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=草野巧|title=幻想動物事典|year=1997|publisher=[[新紀元社]]|isbn=978-4-88317-283-2|ref={{SfnRef|草野|1997}}}}
* {{Cite book|和書|author=村上健司編著|authorlink=村上健司|title=日本妖怪大事典|year=2005|publisher=[[角川書店]]|series=Kwai books|isbn=978-4-04-883926-6|ref={{SfnRef|村上|2005}}}}
* {{Cite book|和書|author=妖怪ドットコム|title=図説 妖怪辞典|year=2008|publisher=[[幻冬舎コミックス]]|isbn=978-4-344-81486-8|ref={{SfnRef|妖怪ドットコム|2008}}}}
 
== 関連項目 ==
* [[日本の妖怪一覧]]
* [[紫の鏡]]
 
{{DEFAULTSORT:うんかいきよう}}
[[category:付喪神鳥山石燕の妖怪]]
[[category:鏡]]
[[Category:付喪神]]
 
[[zh:雲外鏡]]