「テトラカルボニルニッケル」の版間の差分
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{{Chembox
| Name = テトラカルボニルニッケル
| ImageFile = Nickel-
| ImageSize = 150px
| ImageName = テトラカルボニルニッケルの構造式
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}}
| Section2 = {{Chembox Properties
| Formula = Ni(CO)
| MolarMass = 170.7 g/mol
| Appearance = 無色もしくは黄色の液体<ref name="NIOSH">[http://www.cdc.gov/niosh/npg/npgd0444.html NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards-Nickel carbonyl]、[[国立労働安全衛生研究所]]</ref>、[[反磁性]]
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| Density = 1.3 g/ml, 液体
| Solubility = 不溶
| MeltingPt =
| BoilingPt = 43 {{℃}}
| Viscosity =
}}
| Section3 = {{Chembox Structure
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}}
| Section4 = {{Chembox Thermochemistry
| DeltaHf =
| DeltaHc =
| Entropy = 320 J K
}}
| Section7 = {{Chembox Hazards
| ExternalMSDS = {{ICSC-small|0064}}<br/>{{PDFlink|[http://www.perkinelmer.co.jp/Portals/0/resource/tech/tech_ai/msds/02190071.pdf MSDS]}}
| EUClass = 強い可燃性 ('''F''')<br />猛毒 ('''T+''')<br />環境への危険性 ('''N''')<br />Carc. Cat. 3<br />Repr. Cat. 2▼
▲<!--旧規格なので隠しました。--><!--| EUClass = 強い可燃性 ('''F''')<br />猛毒 ('''T+''')<br />環境への危険性 ('''N''')<br />Carc. Cat. 3<br />Repr. Cat. 2
| RPhrases = {{R-phrases|R61|R11|R26|R40|R50/53}}
| SPhrases = {{S-phrases|S53|S45|S60|S61}}-->
| GHSPictograms = {{GHS06|Acutely toxic}} {{GHS health hazard|Health hazard}} {{GHS flame|Flammable}} {{GHS09|Dangerous for the environment}}
| GHSSignalWord = '''Danger''' <ref>[https://webwiser.nlm.nih.gov/substance?substanceId=377&identifier=Nickel%20Carbonyl&identifierType=name&menuItemId=184&catId=242 Nickel Carbonyl]</ref>
| HPhrases = {{H-phrases|225|300|310|330|351|360|400|410}}
| PPhrases = {{P-phrases|201|202|210|233|240|241|242|243|260|271|273|280|281|284|303+361+353|304+340|308+313|310|320|370+378|391|403+233|403+235|405|501}}
| NFPA-H = 4
| NFPA-F = 3
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| Autoignition = 60 {{℃}}
}}
| Section8 = {{Chembox
| Function = [[金属カルボニル]]
| OtherFunctn = [[ヘキサカルボニルクロム]]<br />[[デカカルボニル二マンガン]]<br />[[ペンタカルボニル鉄]]<br />[[オクタカルボニル二コバルト]]
| OtherCpds = [[テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)]]<br />Ni(PF
}}
}}
'''テトラカルボニルニッケル''' ({{lang-en-short|tetracarbonylnickel}}) または'''ニッケルカルボニル''' ({{lang-en-short|nickel carbonyl}}) は、[[ニッケル]]の[[一酸化炭素]][[錯体]]である。化学式 Ni(CO)
== 構造 ==
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== 合成法 ==
金属ニッケルは室温で[[一酸化炭素]] CO と反応してテトラカルボニル錯体を与える。暖かいガラス表面と接触させるなどして穏やかに加熱すると、分解して金属ニッケルと一酸化炭素に戻る。これらの反応は[[
<!--[[ファイル:NiCO4 synthesis.png|430px|center|テトラカルボニルニッケルの合成と分解]] -->
:<chem>Ni\ + 4CO -> [\mathrm{25 deg. C}] Ni(CO)4 -> [\mathrm{100deg. C}] Ni\ + 4CO</chem>
== 反応 ==
他の低原子価金属カルボニルと同様に CO の[[置換反応]]や[[酸化]]を受ける。[[トリフェニルホスフィン]]
[[塩素]]により酸化されて CO が脱離し[[塩化ニッケル|塩化ニッケル(II)]] NiCl
[[水酸化物イオン]]との反応では還元されて
[[有機合成]]においては、[[ハロゲン化アルキル]]や[[ハロゲン化アリール]]との反応がしばしばカルボニル化された有機化合物を合成するのに用いられる。PhCH=CHBr のようなハロゲン化ビニルは、ニッケルカルボニル、[[ナトリウムメトキシド]] NaOMe と順次反応させることによって不飽和エステルに変換される。これらの反応も Ni(CO)
また、カルボニル配位子の炭素原子に対する求核攻撃も受ける。[[求核剤]] (Nu
== 毒性と安全に関する注意 ==
ニッケルカルボニルは、[[労働安全衛生法]]の[[特定化学物質#第2類物質|第2類特定化学物質]]に指定されている。
ニッケルカルボニルは特に体内で発生するニッケルの影響により、配位子として含まれている一酸化炭素よりも危険性が高いと考えられている。皮膚から吸収された場合、または高い揮発性をもつためにより可能性が高くなるが、吸引した場合は致命的である。蒸気は自然発火することがある。▼
▲ニッケルカルボニルは特に体内で発生するニッケルの影響により、配位子として含まれている一酸化炭素よりも危険性が高いと考えられている。
中毒症状は2段階の症状によって特徴付けられる。第1期は数時間続く頭痛と胸の痛みで、通常すぐに収まる。第2期はおよそ16時間後に始まる[[間質性肺炎]]で、せき、息切れ、強い疲労感を伴う。これらの症状は4日後に最も重くなり、心肺不全か腎不全によって死亡することが多い。回復期はしばしば著しく遅延し、疲労感、うつ病、呼吸困難との合併症もしばしば起こる。呼吸器への後遺症は一般的には見られない。発がん性については議論中であり、詳しくは知られていない。▼
まず皮膚から吸収された場合、表面を強く刺激し火傷を生じる。吸引した場合は致命的である。その存在を臭いで感じることなく、重大な毒性の徴候や症状が現れることが知られている。ニッケルカルボニルによって引き起こされる急性毒性の主要な標的は肺であると考えられるが、肺以外の臓器の関与も報告されている<ref>{{PDFlink|[https://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/aegl/agj/ag_Nickelcarbonyl.pdf 急性曝露ガイドライン濃度]}}国立医薬品食品衛生研究所</ref>。蒸気は自然発火することがある。
▲中毒症状は2段階の症状によって特徴付けられる。第1期は数時間続く頭痛と胸の痛みで、通常すぐに収まる。第2期はおよそ16時間後に始まる[[間質性肺炎]]で、せき、息切れ、強い疲労感を伴う。これらの症状は4日後に最も重くなり、重症の場合には、[[肺水腫]]、[[チアノーゼ]]などになり,死亡するおそれがある。一心[[肺不全]]か[[腎不全]]によって死亡することが多い。回復期はしばしば著しく遅延し、疲労感、[[うつ病]]、呼吸困難との合併症もしばしば起こる。呼吸器への後遺症は一般的には見られない。発がん性については議論中であり、詳しくは知られていない。
有機金属反応剤ハンドブック([[玉尾皓平]]編著、化学同人)によると、Ni(CO)<sub>4</sub>の作業環境の許容濃度は0.001ppmであり、[[シアン化水素]]ガス(10ppm)よりはるかに小さく、それだけ毒性が強いことを示している。▼
▲有機金属反応剤ハンドブック([[玉尾皓平]]編著、化学同人)によると、Ni(CO)
== 化学特性、分析方法 ==▼
反応生成速度は遅いが、CO濃度 = CO分圧が高く、温度が77-117 {{℃}}付近で生成しやすい。▼
もし漏洩してしまった場合、火気厳禁とし、通風換気を十分に行ったうえで、保護具着用の上、破損箇所をシールし吸着材をまいて掃き取った後、大量の水で洗う。保護具としては自給式呼吸具、保護衣、保護メガネ、ゴム手袋、ゴム長靴などが推奨される<ref>{{PDFlink|[http://www.kobe-kaibouken.or.jp/web/jap/data/kohin_data/0863_000.pdf ニッケルカルボニル]}} 神戸海難防止研究会</ref>。
生成温度範囲は、-128-150 {{℃}}と言われる。▼
▲== 化学特性、分析方法 ==
基本的には、CO と Ni 金属が存在すれば生成すると言われ、[[アーク溶接]]作業や、[[ステンレス鋼|SUS]]管に CO ガスを入れるだけでも発生する。▼
▲CO 濃度が低く、水素が共存する場合には、メタネーション反応 (CO + 2H{{sub|2}} → CH{{sub|4}}) が支配的である。基本的には、CO と Ni 金属が存在すれば生成すると言われ、[[アーク溶接]]作業や、[[ステンレス鋼|SUS]]管に CO ガスを入れるだけでも発生する。
塩素や臭素、ヨウ素水溶液にニッケルカルボニルガスを通すことで素早く分解できる。また、[[パラジウム]]触媒による分解、[[ゼオライト]]による吸着などの手法も知られている。
分析方法は、[[原子吸光]]光度計によるNi量の定量分析、[[赤外分光法|FT-IR]] による分析が一般的である。
== 利用 ==
* 電池用電極板の発泡金属(ニッケル)基材原料として利用される事がある<ref>稲澤信二、細江晃久、真嶋正利 ほか、{{PDFlink|[http://www.sei.co.jp/technology/tr/bn177/pdf/sei10630.pdf 発泡金属と新たなめっき技術] 住友電工 SEIテクニカルレビュー 2010年7月号 No.177}}</ref>。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
== 参考文献 ==
* Lascelles, K.; Morgan, L. G.; Nicholls, D. '"Nickel Compounds", ''Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry''; John Wiley & Sons: New Jersey, 1991; vol. A17, chapt. 5, pp. 235–249.
* ''Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis''; Paquette, L. A. ed.; John Wiley & Sons: New Jersey, 2003.
{{ニッケルの化合物}}
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:てとらかるほにるにつける}}
[[Category:カルボニル錯体]]
[[Category:ニッケルの化合物]]
[[Category:毒]]
== 外部リンク==
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