「テトラカルボニルニッケル」の版間の差分

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{{Chembox
| Name = テトラカルボニルニッケル
| ImageFile = Nickel-carbonyltetracarbonyl-2D.png
| ImageSize = 150px
| ImageName = テトラカルボニルニッケルの構造式
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| ExternalMSDS = {{ICSC-small|0064}}<br/>{{PDFlink|[http://www.perkinelmer.co.jp/Portals/0/resource/tech/tech_ai/msds/02190071.pdf MSDS]}}
 
<!--旧規格なので隠しました。--><!--| EUClass = 強い可燃性 ('''F''')<br />猛毒 ('''T+''')<br />環境への危険性 ('''N''')<br />Carc. Cat. 3<br />Repr. Cat. 2
| RPhrases = {{R-phrases|R61|R11|R26|R40|R50/53}}
| SPhrases = {{S-phrases|S53|S45|S60|S61}}-->
| GHSPictograms = {{GHS06|Acutely toxic}} {{GHS health hazard|Health hazard}} {{GHS flame|Flammable}} {{GHS09|Dangerous for the environment}}
| GHSSignalWord = '''Danger''' <ref>[https://webwiser.nlm.nih.gov/substance?substanceId=377&identifier=Nickel%20Carbonyl&identifierType=name&menuItemId=184&catId=242 Nickel Carbonyl]</ref>
| HPhrases = {{H-phrases|225|300|310|330|351|360|400|410}}
| PPhrases = {{P-phrases|201|202|210|233|240|241|242|243|260|271|273|280|281|284|303+361+353|304+340|308+313|310|320|370+378|391|403+233|403+235|405|501}}
| NFPA-H = 4
| NFPA-F = 3
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| Autoignition = 60 {{℃}}
}}
| Section8 = {{Chembox OtherRelated
| Function = [[金属カルボニル]]
| OtherFunctn = [[ヘキサカルボニルクロム]]<br />[[デカカルボニル二マンガン]]<br />[[ペンタカルボニル鉄]]<br />[[オクタカルボニル二コバルト]]
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}}
}}
'''テトラカルボニルニッケル''' ({{lang-en-short|tetracarbonylnickel}}) または'''ニッケルカルボニル''' ({{lang-en-short|nickel carbonyl}}) は、[[ニッケル]]の[[一酸化炭素]][[錯体]]である。化学式 Ni(CO){{sub|4}} で表される、無色もしくは黄色で揮発性の液体である。毒性が非常に高く、「死の液体 ({{lang-en-short|liquid death}})」の異名を持つ。歴史、応用、理論の各方面で重要な化合物である。毒物及び劇物取締法により毒物に指定されている<ref>[http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe2.cgi?MODE=hourei&DMODE=SEARCH&SMODE=NORMAL&KEYWORD=%93%c5%95%a8&EFSNO=739&FILE=FIRST&POS=0&HITSU=293 毒物及び劇物取締法 昭和二十五年十二月二十八日 法律第三百三号 第二条 別表第一 二十]</ref>。
 
== 構造 ==
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== 合成法 ==
金属ニッケルは室温で[[一酸化炭素]] CO と反応してテトラカルボニル錯体を与える。暖かいガラス表面と接触させるなどして穏やかに加熱すると、分解して金属ニッケルと一酸化炭素に戻る。これらの反応は[[ルードウィッヒ・モンドプロセス|モンド法]]によって純粋なニッケルを得るための基礎的手法である。
 
<!--[[ファイル:NiCO4 synthesis.png|430px|center|テトラカルボニルニッケルの合成と分解]] -->
:<cechem>Ni\ + 4CO -> [\mathrm{25 deg. C}] Ni(CO)4 -> [\mathrm{100deg. C}] Ni\ + 4CO</cechem>
 
== 反応 ==
他の低原子価金属カルボニルと同様に CO の[[置換反応]]や[[酸化]]を受ける。[[トリフェニルホスフィン]] <cechem>PPh3</cechem> のような供与性の配位子と反応して <cechem>Ni(CO)3(PPh3)</cechem> や <cechem>Ni(CO)2(PPh3)2</cechem> を与える。[[ビピリジン]]などの配位子とも同様に反応する。これらの反応では、まず CO が脱離して高活性な16電子錯体 <cechem>Ni(CO)3</cechem> 中間体となり、これに配位子が結合する。
 
[[塩素]]により酸化されて CO が脱離し[[塩化ニッケル|塩化ニッケル(II)]] NiCl{{sub|2}} を与える。この反応はニッケルカルボニルを分解する簡単な方法である。
 
[[水酸化物イオン]]との反応では還元されて <cechem>[Ni5(CO)12]^2-</cechem> や <cechem>[Ni6(CO)12]^2-</cechem> のような[[クラスター (物質科学)|クラスター]]が生成する。
 
[[有機合成]]においては、[[ハロゲン化アルキル]]や[[ハロゲン化アリール]]との反応がしばしばカルボニル化された有機化合物を合成するのに用いられる。PhCH=CHBr のようなハロゲン化ビニルは、ニッケルカルボニル、[[ナトリウムメトキシド]] NaOMe と順次反応させることによって不飽和エステルに変換される。これらの反応も Ni(CO){{sub|3}} の発生と、これに対する[[酸化的付加]]を経て進行すると考えられている。
 
また、カルボニル配位子の炭素原子に対する求核攻撃も受ける。[[求核剤]] (Nu{{sup|−}}) と反応させるとアシル誘導体 <cechem>[Ni(CO3)C(O)Nu]^-</cechem> が得られる。
 
== 毒性と安全に関する注意 ==
ニッケルカルボニルは、[[労働安全衛生法]]の[[特定化学物質#第2類物質|第2類特定化学物質]]に指定されている。
 
ニッケルカルボニルは特に体内で発生するニッケルの影響により、配位子として含まれている一酸化炭素よりも危険性が高いと考えられている。体内への吸収経路は吸入、経皮がある。
まず皮膚から吸収された場合、表面を強く刺激し火傷を生じる。吸引した場合は致命的である。その存在を臭いで感じることなく、重大な毒性の徴候や症状が現れることが知られている。ニッケルカルボニルによって引き起こされる急性毒性の主要な標的は肺であると考えられるが、肺以外の臓器の関与も報告されている<ref>{{PDFlink|[httphttps://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/aegl/agj/ag_Nickelcarbonyl.pdf 急性曝露ガイドライン濃度]}}国立医薬品食品衛生研究所</ref>。蒸気は自然発火することがある。
 
中毒症状は2段階の症状によって特徴付けられる。第1期は数時間続く頭痛と胸の痛みで、通常すぐに収まる。第2期はおよそ16時間後に始まる[[間質性肺炎]]で、せき、息切れ、強い疲労感を伴う。これらの症状は4日後に最も重くなり、重症の場合には、[[肺水腫]]、[[チアノーゼ]]などになり,死亡するおそれがある。一心[[肺不全]]か[[腎不全]]によって死亡することが多い。回復期はしばしば著しく遅延し、疲労感、[[うつ病]]、呼吸困難との合併症もしばしば起こる。呼吸器への後遺症は一般的には見られない。発がん性については議論中であり、詳しくは知られていない。
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* 電池用電極板の発泡金属(ニッケル)基材原料として利用される事がある<ref>稲澤信二、細江晃久、真嶋正利 ほか、{{PDFlink|[http://www.sei.co.jp/technology/tr/bn177/pdf/sei10630.pdf 発泡金属と新たなめっき技術] 住友電工 SEIテクニカルレビュー 2010年7月号 No.177}}</ref>。
 
== 参考文献脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
 
== 参考文献 ==
* Lascelles, K.; Morgan, L. G.; Nicholls, D. '"Nickel Compounds", ''Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry''; John Wiley & Sons: New Jersey, 1991; vol. A17, chapt. 5, pp. 235&ndash;249.
* ''Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis''; Paquette, L. A. ed.; John Wiley & Sons: New Jersey, 2003.
 
{{ニッケルの化合物}}
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:てとらかるほにるにつける}}
[[Category:カルボニル錯体]]