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'''EMDR'''
== 医療適応 ==
PTSDを始めとして、[[パニック障害]]、[[恐怖症]]、[[強迫性障害]]などへの適用も報告されている心理療法である<ref name="pmid30166975"/>。
開発の初期の1989年にも、EMD (Eye Movement Desensitization) の[[ランダム化比較試験]]による有効性の報告<ref>{{cite journal| last1=Shapiro| first1=Francine| title=Efficacy of the eye movement desensitization procedure in the treatment of traumatic memories| journal=Journal of Traumatic Stress| volume=2| issue=2| year=1989| pages=199–223| doi=10.1002/jts.2490020207}}</ref>が行われEMDRとなり<ref name="pmid30166975"/>、その後もいくつものEMDRの有効性についての研究が繰り返し行われてきた。国際トラウマティック・ストレス学会は、[[2000年]]にEMDRを有効なトラウマ治療法として認定した。
2000年代にはイギリス、オーストラリアなどのPTSDの診療ガイドラインで、EMDRは[[トラウマ]]に焦点化した[[認知行動療法]] (CBT) と共に根拠のある治療法として推奨されるようになった<ref>{{Cite journal |和書|author=飛鳥井望 |date=2008-03-25 |title=エビデンスに基づいたPTSDの治療法 |journal=精神神經學雜誌 |volume=110 |issue=3 |pages=244-249 |url=https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1100030244.pdf |format=PDF}}</ref>。2011年の[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)の[[臨床ガイドライン]]では、PSTD治療にCBTおよびEMDRを推奨している<ref name="CG123">{{Cite report|df=ja|title=CG123 Common mental health disorders: Identification and pathways to care |author=[[英国国立医療技術評価機構]] |date=May 2011 |url=http://www.nice.org.uk/guidance/CG123 }}</ref>。
2018年に、PTSD患者に対するCBTとEMDRの効果を比較した[[ランダム化比較試験]](RCT)の[[メタアナリシス]]が論文発表されている。その結果によれば、11件のRCT(n = 547)のメタアナリシスから、PTSDの改善においてEMDRはCBTよりも優れていた[SDM(95%CI)= -0.43(-0.73 --- 0.12)、p = 0.006]。一方、3か月のフォローアップでの4つのRCT(n = 186)のメタアナリシスでは、両者に統計的に有意な差は見られなかった[SDM(95%CI)= -0.21(-0.50-0.08)、p = 0.15]。 EMDRは、不安症状の軽減においてCBTよりも優れていた[SDM(95%CI)= -0.71(-1.21 --- 0.21)、p = 0.005]。残念ながら、抑うつ症状の軽減においてCBTとEMDRの間に違いはなかった[SDM(95%CI)= -0.21(-0.44-0.02)、p = 0.08]。<ref name="pmid30416901">{{cite journal| last1=Khan| first1=Ali M| last2=Dar| first2=Sabrina| last3=Ahmed| first3=Rizwan| last4=Bachu| first4=Ramya| last5=Adnan| first5=Mahwish| last6=Kotapati| first6=Vijaya Padma| title=Cognitive Behavioral Therapy versus Eye Movement Desensitization and Reprocessing in Patients with Post-traumatic Stress Disorder: Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials| journal=Cureus| year=2018| doi=10.7759/cureus.3250 |pmid=30416901 |pmc=6217870 |url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6217870/ }}</ref>。
== 技法 ==
左右に振られるセラピストの指を目で追いながら、過去の外傷体験を想起するという手続きを用いる。正規の方法では、アセスメントや日誌記録などを含む8段階から構成されており、眼球運動による介入が行われるのはそのうちの第4から6段階である。また、想起された記憶だけでなく身体感覚や自己否定的認知なども眼球運動による脱感作のターゲットになる。
近年では、指を左右方向に振って追従させることに必ずしもこだわらず、クライエントの特性([[視覚障害者]]、[[ADHD]]児など)に合わせた工夫も提案されている。子どものトラウマに対する心理療法であるバタフライハグも、EMDRの変法である。
治療効果が生起するメカニズムについては諸説があり、なお解明の途上である。外傷体験に対する脳の処理プロセスが促進されるとも言われ、[[レム睡眠]]や定位反射といった生理過程との関連も論じられている。[[マインドフルネス]]やリフレーミングといった[[認知行動療法]]的な技法、[[行動療法]]のエクスポージャー、[[精神分析]]の自由連想などに類似した要素も関わっているとされてきた<ref>シャピロ F.『EMDR 外傷記憶を処理する心理療法』、市井雅哉監訳、二瓶社、2004年</ref>。
2018年の調査では、そのメカニズムを探った研究が32あり、その中でも27研究が[[ワーキングメモリ]]を検討している<ref name="pmid30166975">{{cite journal| last1=Landin-Romero| first1=Ramon| last2=Moreno-Alcazar| first2=Ana| last3=Pagani| first3=Marco| last4=Amann| first4=Benedikt L.| title=How Does Eye Movement Desensitization and Reprocessing Therapy Work? A Systematic Review on Suggested Mechanisms of Action| journal=Frontiers in Psychology| volume=9| year=2018| doi=10.3389/fpsyg.2018.01395| pmid=30166975 | pmc=6106867 |url=https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.01395 }}</ref>。
シャピロは眼球運動を制御することで苦痛な記憶に関する不安を減少させることを、公園を歩いている時に偶然発見した<ref name="pmid30166975"/>。
== 関連項目 ==
* [[市井雅哉]]
* [[神霊狩/GHOST HOUND]] - [[WOWOW]]で放送されたテレビアニメ。第2話にEMDRが施行される場面がある。
== 出典 ==
<references/>
== セルフヘルプ文献 ==
* フランシーン・シャピロ著 市井雅哉訳「過去をきちんと過去にする:EMDRのテクニックでトラウマから自由になる方法」二瓶社, 2017年
== 外部リンク ==
[[category:心理学|EMDR]]▼
* [http://www.emdria.org/ EMDR国際協会]
* [http://www.emdr.jp/ 日本EMDR学会]
* [https://turboemdr.com/ 無料emdrオンライン]
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