土人

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土人(どじん)は、その土地に土着の人間のこと。ほぼ英語のnativeネイティブ)に等しい。

転じて、野蛮、未開の生活形態を残す先住民族を指す。更に転じて俗に(主にインターネットスラングとして)、品位教養の無い様、非礼・無礼な有様を指す侮蔑的な意味合いで用いられる事もある。

変遷

語源としては単にその土地の人、土着民であり、原義は先住民原住民と変らない。

日本では、古くは713年(和銅6年)の『風土記』から近世では例えば1829年(文政12年)の『新編武蔵風土記稿』に至るまで、「土人云はく」や「村名の起を尋るに土人の傳ふる所」のように単に「現地の人びと」を意味した。

ただし近代に入って植民地における統治・被統治との関係から、未開・非文明的・粗野という差別感を伴うこともあるようになった。例えば北海道樺太などの開拓に伴いアイヌなどを「北方土人」とし、明治末以降には公式に「旧土人」と称していた[1]

辞書の例では、1889年(明治22年)の『言海』から1952年(昭和27年)の『辞海』まで差別的な語義は見られない。1955年(昭和30年)の『広辞苑』で初めて「原始的生活をする土着の人種」が第二語義に登場する。第一語義として差別的な表現を載せるのは1973年(昭和48年)の『広辞林』である(「原始的生活をしている蛮人」)。

現在でも「土地の人」を第一語義とする辞書も多いが、放送等における表現の自主規制としては、差別用語としての扱いが固定化した。

用例・規制

  • 「土人」ということばで有名なものに『土人のお祭り』というパラオの夜祭をほのぼのと唄いあげた童謡があった。しかし太平洋戦争後にパラオが日本の委任統治下から離脱し身近でなくなったことや、歌詞に「土人」以外に「くろんぼ」といった今日差別的とされる用語が頻出するので忌避されるようになる。ただし同曲の歌詞にはパラオ島や、そこに生活する先住民族を貶める意図は一切見当たらない。同曲はその後歌詞を一新し、『森の小人』に改題される。改題以降は短調ながらも賑やかで親しみやすいその曲調からかなりの人気を得たが、やがて「こびと」も差別的として扱われるようになり、今日では歌われることはほとんどなくなった。
  • 中田喜直作曲の「土人のおどり」というピアノ曲もある。この曲は現在もこの題名で子供向けのピアノ教本などに載っている。
  • 2000年には岩波書店から出版されたアルベルト・シュバイツァーの著書「水と原生林のはざまで」が、市民団体「黒人差別をなくす会」の抗議を受けて出版を停止している[2]

規制例には他に以下がある。

脚注

  1. ^ 北海道旧土人保護法旧土人給与地。ただし、3文字の「旧土人」については土人の派生語として「旧の土人」と解釈する場合のほか、「旧土の人」と解釈する意見もある(1968年5月9日衆議院内閣委員会での厚生省社会局保護課長曾根田郁夫答弁)。
  2. ^ 土人

関連項目