おやしお (潜水艦・2代)
おやしお(ローマ字:JS Oyashio, SS-590, TSS-3608)は、海上自衛隊の潜水艦。おやしお型潜水艦の1番艦。艦名は親潮から由来し、この名を受け継いだ日本の艦艇としては、旧海軍の陽炎型駆逐艦「親潮」、海上自衛隊初の国産潜水艦「おやしお」(SS-511)に続き3代目にあたる。
おやしお | |
---|---|
基本情報 | |
建造所 | 川崎重工業 神戸工場 |
運用者 | 海上自衛隊 |
艦種 | 通常動力型潜水艦 |
級名 | おやしお型 |
建造費 | 521億9,000万円 |
艦歴 | |
計画 | 平成5年度計画 |
発注 | 1993年 |
起工 | 1994年1月26日 |
進水 | 1996年10月15日 |
就役 | 1998年3月16日 |
退役 | 2023年3月17日 |
要目 | |
基準排水量 | 2,750t |
水中排水量 | 4,000t |
全長 | 82.0m |
最大幅 | 8.9m |
深さ | 10.3m |
吃水 | 7.4m |
機関 |
ディーゼル・エレクトリック方式 川崎 12V25/25Sディーゼルエンジン × 2基 発電機 × 2基 電動機 × 1基 蓄電池 × 480個 |
出力 |
水上 3,400PS 水中 7,750PS |
推進器 | 7翼スクリュープロペラ × 1軸 |
速力 |
水上 12kt 水中 20kt |
潜航深度 | 600mから650m程度 |
乗員 | 70名 |
兵装 |
HU-605 533mm魚雷発射管 × 6門 (89式長魚雷およびハープーン対艦ミサイルを発射可能) |
C4ISTAR | ZYQ-3潜水艦情報処理装置 |
レーダー | ZPS-6 対水上 |
ソナー | ZQQ-6 統合式 |
探索装置・ その他装置 | 潜望鏡 |
電子戦・ 対抗手段 | ZLA-7 ECM |
艦歴
編集「おやしお」は、中期防衛力整備計画に基づく平成5年度計画2700トン型潜水艦8105号艦[1]として、川崎重工業神戸工場で1994年1月26日に起工され、川崎重工業創立100周年記念日である1996年10月15日に進水、1997年7月10日に公試開始、1998年3月16日に就役し、第2潜水隊群第2潜水隊に編入され横須賀に配備された。
2006年1月11日から4月10日までの間、ハワイ派遣訓練に参加。
2009年1月10日、鹿児島県霧島市にある海上自衛隊鹿児島試験所南西4.6kmの沖合いにて性能試験中、海上自衛官が同乗した漁船「第二十八亀丸」と本艦マストが接触した。漁船の船尾の一部が損傷脱落したが負傷者等はなかった。漁船は海上自衛隊がチャーターし「おやしお」の性能試験中に他船舶が近づかないように警戒していた[2][3]。同年12月8日、鹿児島海上保安部が艦長以下3名を業務上過失往来危険の疑いで書類送検した。さらに同年6月17日午後0時15頃、尻屋崎東方約28kmの太平洋上で訓練中、経済産業省資源エネルギー庁調査船「資源」(1万395トン)の曳航する資源探査用ケーブル(4.8km)10本に接触し艦橋に絡まっていた1本を含む6本を切断する事故を起こす。翌年3月9日、八戸海上保安部は艦長を業務上過失往来危険容疑で書類送検した。
2015年3月6日、練習潜水艦「ふゆしお」(はるしお型潜水艦6番艦)が除籍されたことに伴い、同日付で練習潜水艦に種別変更され、潜水艦隊直轄第1練習潜水隊に編入。定係港が呉に転籍[4]。
2016年3月19日から4月27日までの間、護衛艦「ありあけ」、「せとぎり」とともに外洋練習航海(飛行)に参加[5]。、4月3日には、南シナ海に面するフィリピン・ルソン島のスービック湾に入港した[6]。
2022年3月10日午前6時20分ごろ、神戸市兵庫区の神戸和田岬防波堤灯台から南南東約1.1キロの海上で漂泊中、航行中の底引き網漁船「住吉丸」と接触した。双方とも顕著な損傷などは無く、負傷者もいなかった[7]。
2023年3月17日、呉基地において自衛艦旗を返納し、除籍となった[8][9]。自衛隊の潜水艦としては最も長い25年に渡る任務で、地球12周以上にあたるおよそ50万キロを航行した[10]。この除籍式には隊員や元乗組員など130人が出席した[11]。
歴代艦長
編集代 | 氏名 | 在任期間 | 出身校・期 | 前職 | 後職 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 池田聖一 | 1998.3.16 - 1999.3.25 | おやしお艤装員長 | 海上自衛隊幹部学校付 | ||
2 | 西村繁隆 | 1999.3.26 - 1999.12.19 | 防大23期 | あさしお艦長 | はやしお艦長 | |
3 | 佐藤俊也 | 1999.12.20 - 2001.7.31 | 防大27期 | 潜水艦教育訓練隊 | 東京業務隊付 | |
4 | 金子 弘 | 2001.8.1 - 2003.7.9 | 防大26期 | 潜水艦隊司令部 | 潜水艦隊司令部 | |
5 | 笹本敏成 | 2003.7.10 - 2004.8.1 | 広島工大・ 36期幹候 |
潜水艦隊司令部 | 海上幕僚監部防衛部装備体系課 | |
6 | 神 英司 | 2004.8.2 - 2005.6.19 | 専修大・ 38期幹候 |
潜水艦教育訓練隊 | 海上幕僚監部調査部調査課 | |
7 | 中谷文彦 | 2005.6.20 - 2008.3.25 | 防大32期 | 海上幕僚監部防衛部運用課 | 海上幕僚監部指揮通信情報部情報課 | |
8 | 峯村禎人 | 2008.3.26 - 2009.2.1 | 防大32期 | 潜水艦教育訓練隊 | 潜水艦隊司令部 | |
9 | 青井志学 | 2009.2.2 - 2010.7.4 | 防大34期 | 潜水艦隊司令部 | 自衛艦隊司令部 | |
10 | 中野 聡 | 2010.7.5 - 2011.7.31 | 防大35期 | 潜水艦教育訓練隊 | 海上幕僚監部指揮通信情報部指揮通信課 | |
11 | 戸井雄一郎 | 2011.8.1 - 2013.8.19 | 防大38期 | 潜水艦隊司令部 | ||
12 | 生嶋正智 | 2013.8.20 - 2015.8.19 | 防大33期 | 潜水艦隊司令部 | 潜水艦教育訓練隊副長 兼 研究室長 |
|
13 | 西岡哲郎 | 2015.8.20 - 2016.7.31 | 防大39期 | 潜水艦教育訓練隊 | 潜水艦教育訓練隊 | |
14 | 樋口賢吾 | 2016.8.1 - 2017.10.15 | 潜水艦隊司令部幕僚 | |||
15 | 兎澤 仁 | 2017.10.16 - 2019.10.14 | こくりゅう艦長 | 自衛艦隊司令部幕僚 兼 護衛艦隊司令部 |
||
16 | 渡邊忠士 | 2019.10.15 - 2021.7.8 | 海上自衛隊幹部学校防衛戦略教育研究部員 | そうりゅう艦長 | ||
17 | 兵藤健太郎 | 2021.7.9 - 2023.3.16 | なるしお艦長 |
脚注
編集- ^ DSI 現有艦艇一覧 Archived 2008年12月1日, at the Wayback Machine.
- ^ “概要-潜水艦おやしお警戒船第二十八亀丸衝突”. 運輸安全委員会. 2021年9月18日閲覧。
- ^ 読売新聞オンライン潜水艦「おやしお」、警戒船と接触…鹿児島沖で試験中[リンク切れ]2009年1月11日
- ^ 海上自衛隊呉地方隊 練習潜水艦おやしお 入港歓迎行事
- ^ 平成27年度外洋練習航海(飛行)について (PDF)
- ^ “練習潜水艦「おやしお」を南シナ海へ派遣 海自はあえて中国に痛烈なメッセージを放った”. 産経新聞. (2016年4月27日) 2016年5月26日閲覧。
- ^ “海上自衛隊潜水艦と漁船が接触 神戸沖 損傷や浸水などなし”. 神戸新聞. (2021年3月10日) 2022年3月12日閲覧。
- ^ 海上自衛隊 呉地方総監部【公式】 [@jmsdf_krh] (2023年3月16日). "令和5年3月17日(金)、呉基地にて練習潜水艦「おやしお」の自衛艦旗返納行事を実施しました。". X(旧Twitter)より2023年3月16日閲覧。
- ^ “「おやしお」25年の歴史に幕 「まきしお」が練習潜水艦に(2023年3月17日)”. 朝雲. (2023年5月8日). オリジナルの2023年5月9日時点におけるアーカイブ。 2023年5月9日閲覧。
- ^ “海自潜水艦「おやしお」が退役 25年の任務を終え 呉基地”. NHK 広島 NEWS WEB (2023年3月17日). 2023年3月17日閲覧。
- ^ (日本語) 現役の潜水艦では最年長25年間任務 海上自衛隊呉基地所属「おやしお」引退で除籍式 2023年3月17日閲覧。
参考文献
編集- 石橋孝夫『海上自衛隊全艦船 1952-2002』(並木書房、2002年)
- 『世界の艦船 増刊第66集 海上自衛隊全艦艇史』(海人社、2004年)
- 『世界の艦船 増刊第665集 海上自衛隊潜水艦史』(海人社、2006年)