アンソニー・クイン: Anthony Quinn, 1915年4月21日 - 2001年6月3日)は、メキシコ系アメリカ人[1]俳優画家作家である。野性的な役柄でさまざまな国籍の人物を演じ、1950年代と1960年代を中心に国際的に活躍した[2]

アンソニー・クイン
Anthony Quinn
Anthony Quinn
1955年のクイン
本名 アントニオ・ロドルフォ・クイン・オアハカ
Antonio Rodolfo Quinn Oaxaca
生年月日 (1915-04-21) 1915年4月21日
没年月日 (2001-06-03) 2001年6月3日(86歳没)
出生地 メキシコの旗 メキシコ チワワ州チワワ
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 カリフォルニア州ロサンゼルス
死没地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 マサチューセッツ州ボストン
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
身長 185 cm
職業 俳優
ジャンル 映画舞台
活動期間 1936年 - 2001年
配偶者 キャサリン・デミル英語版(1937年 - 1965年)
Jolanda Addolori(1966年 - 1997年)
Kathy Benvin(1997年 - 2001年)
主な作品
革命児サパタ』(1952年)
』(1954年)
ナバロンの要塞』(1961年)
アラビアのロレンス』(1962年)
その男ゾルバ』(1964年)
受賞
アカデミー賞
助演男優賞
1952年革命児サパタ
1956年炎の人ゴッホ
ゴールデングローブ賞
セシル・B・デミル賞
1986年
その他の賞
テンプレートを表示

来歴

編集

生い立ち

編集

メキシコチワワ州チワワアントニオ・ルドルフォ・オアハカ・クインAntonio Rudolfo Oaxaca Quinn)として生まれた。父はアイルランド系メキシコ人[3]、母がアステカ族メキシコ[4]

少年時代にカリフォルニア州ロサンゼルスに移住。早く父親を亡くし、クインは俳優になる前には靴磨きやプロボクサーのスパーリング・パートナーや画家など転々とする。

演劇活動

編集

クインの俳優としての経歴は、1936年にデビュー作の『Parole』や『The Milky Way』を含む幾つかの作品に出演したことから始まる。短期間の劇場出演の後、セシル・B・デミルの目にとまり、1940年代にパラマウント映画の幾つかの作品で様々な人種の悪人を演じることを依頼された。

デミルの養女キャサリン・デミルと結婚するが人脈は通用せず出世にはつながらず、舞い込む役は大抵悪役で、それも、ほんの僅かな時間登場して即殺される役ばかりだった。

1947年には彼は50本以上の作品でインディアンマフィアのドン、ハワイの酋長、中国人ゲリラ、など様々な役を演じたが、大物俳優ではなかった。彼は劇場に戻り、ブロードウェーで3年間を過ごし、『欲望という名の電車』のスタンリー・コワルスキー役などを務めている。

1952年の『革命児サパタ』でサパタの兄役を演じたあたりから次第に評価が高まり、1956年の『炎の人ゴッホ』でゴーギャンを演じてアカデミー助演男優賞を受賞し、ようやくキャリアが上向くようになる。また、1986年にはゴールデングローブ賞の生涯功労賞(セシル・B・デミル賞)を受賞している。

また、『アラビアのロレンス』でのアウダ・アブー・ターイー、『ザ・メッセージ』のハムザ・イブン・アブド・アル=ムッタリブ、『砂漠のライオン』ではオマル・モフタールといった、実在した歴史上のアラブ人を演じた。

一方で、1969年の『サンタ・ビットリアの秘密』では脳天気な酔いどれ市長を演じた他、1970年代以降は性格俳優としても開眼した。晩年はテレビ作品にも多数主演し、中でも異色SFドラマ『スター・レジェンド』や20世紀のギリシャの豪商の生涯を描いた大河作品『海運王オナシス』、神話をモチーフにした娯楽ファンタジー『勇者ヘラクレス』シリーズでは全能の神ゼウスを演じた。映画でも脇役ながら出演を続け、『リベンジ』や『雲の中で散歩』などの作品では、幅広い年齢層のファンを多く獲得し続けた。

ゲーリー・クーパー、ヘンリー・フォンダ、エロール・フリン、ジョン・ウェイン、ビング・クロスビー、ボブ・ホープ、ロバート・テイラー、グレゴリー・ペック、マーロン・ブランド、カーク・ダグラス、デヴィッド・ニーヴン等々の大スターと互角に張り合い名声を高めていった。

尚、「海賊」から20年後Technicolor&VistaVisionによるリメイク「大海賊」(1958)は同じデミル監督でクランクインしたが病気で倒れ途中からクインが監督代行を務め本編もポスターも<アンソニー・マン監督>とクレジットされている。

家族

編集

クイン自身は3回結婚して子供が13人[要出典]いる。息子のフランチェスコ、ロレンツォ、アレックス、娘のヴァレンチナは俳優になった。また、末子であるライアン・ニコラス(1996年7月5日生まれ)は81歳のときに生まれている。2011年、フランチェスコはジョギング中に心臓発作で亡くなった。

ギャラリー

編集

主な出演作

編集
公開年 邦題
原題
役名 備考
1936 ロイドの牛乳屋
The Milky Way
仇敵
Sworn Enemy
平原児
The Plainsman
殺人都市
Night Waitress
1937 スイング
Swing High, Swing Low
ワイキキの結婚
Waikiki Wedding
マドリッド最終列車
The Last Train from Madrid
ほろ酔い市長候補
Partners in Crime
1938 海賊
The Buccaneer
恐怖のハイウェイ
Tip-Off Girls
マーティ
センチメンタルな殺人
Hunted Men
レッグス
十一人の脱獄者
King of Alcatraz
ルー
1939 大平原
Union Pacific
ジャック
1940 緊急待機命令
Emergency Squad
ニック
ならず者の紐
Parole Fixer
フランシス
シンガポール珍道中
Road to Singapore
シーザー
栄光の都
City for Conquest
マーレイ・バーンズ
続・テキサス決死隊
The Texas Rangers Ride Again
ジョー
1941 血と砂
Blood and Sand
マノロ・デ・パルマ
壮烈第七騎兵隊
They Died with Their Boots
クレイジー・ホース
1942 詐欺請負会社
Larceny, Inc.
レオ・デクスター
モロッコへの道
Road to Morocco
海の征服者
The Black Swan
1943 牛泥棒
The Ox-Bow Incident
フアン・マルティネス
ガダルカナル・ダイアリー
Guadalcanal Diary
1944 西部の王者
Buffalo Bill
イエロー・ハンド
1945 バターンを奪還せよ
Back to Bataan
1947 船乗りシンバッドの冒険
Sinbad, the Sailor
エミイル
カリフォルニア
California
ルイス
タイクーン
Tycoon
リッキー
1952 革命児サパタ
Viva Zapata!
ユーフェミオ・サパタ アカデミー助演男優賞 受賞
世界を彼の腕に
The World in His Arms
ポーテュギー
すべての旗に背いて
Against All Frags
ロック
1953 海底の大金塊
City Beneath the Sea
トニー・バートレット
最後の酋長
Seminole
オシオラ
荒原の疾走
Ride, Vaquero!
ホセ・コンスタンティノ・エスクエダ
吹き荒ぶ風
Blowing Wild
パコ
1954 ユリシーズ
Ulisse
アンチノオ
指紋なき男
The Long Wait
ジョニー・マクブライド

La Strada
ザンパノ
侵略者
Attila
アッティラ
1955 灼熱の勇者
The Magnificent Matador
ルイス・サントス
黄金の都
Seven Cities of Gold
1956 炎の人ゴッホ
Lust for Life
ポール・ゴーギャン アカデミー助演男優賞 受賞
デルリオの決闘
Man from Del Rio
デイヴ
ノートルダムのせむし男
Notre-Dame de Paris
カジモド
1957 舞い散った札束/断崖の河
The River's Edge
ベン・キャメロン
野性の息吹き
Wild Is the Wind
ジーノ
インディアン峠の死闘
The Ride Back
ボブ・カレン
1958 黒い蘭
The Black Orchid
フランク
1959 ワーロック
Warlock
トム・モーガン
ガンヒルの決斗
Last Train From Gun Hill
クレイグ・ベルデン
1960 西部に賭ける女
Heller in Pink Tights
トム
バレン
The Savage Innocents
イヌク
黒い肖像
Portrait in Black
デイヴィッド・リベラ
1961 ナバロンの要塞
The Guns of Navarone
アンドレア・スタブロス大佐
1962 バラバ
Barabbas
バラバ
アラビアのロレンス
Lawrence of Arabia
アウダ・アブー・ターイー
1964 訪れ
The Visit
サージ 兼製作
その男ゾルバ
Zorba the Greek
アレクシス・ゾルバ 兼共同製作
日曜日には鼠を殺せ
Behold a Pale Horse
ヴィニョラス
1965 海賊大将
A High Wind in Jamaica
チャベス
マルコ・ポーロ大冒険
La fabuleuse aventure de Marco Polo
クビライ
1966 名誉と栄光のためでなく
Lost Command
ラスペギー
1967 25時
La vingt-cinquième heure
ヨハン・モリッツ
真昼の衝動
The Happening
ロック
残虐の掟
L'avventuriero
ペイロール
1968 サン・セバスチャンの攻防
La Bataille de San Sebastian
栄光の座
The Shoes of the Fisherman
キリル
怪奇と幻想の島
The Magus
モーリス
1969 サンタ・ビットリアの秘密
The Secret of Santa Vittoria
イタロ・ボンボリーニ
オリンポスの詩
A Dream of Kings
マツーカス
春の雨の中を
A Walk in the Spring Rain
ウィル
1970 最後のインディアン
Flap
フラッピング・イーグル
1972 110番街交差点
Across 110th Street
フランク・マテリ刑事 兼製作総指揮
歴史を変えた人びと(3) 「ローマの英雄シーザー」
El asesinato de Julio César
シーザー
1973 ロス・アミーゴス
Los amigos
デフ・スミス
ザ・ファミリー
The Don Is Dead
ドン・アンジェロ
1974 マルセイユ特急
The Maseille Contact
スティーヴ
1976 ブラッフ
Bluff storia di truffe e di imbroglioni
フィリップ・バング
1977 沈黙の官能
L'eredità Ferramonti
グレゴリオ
大統領誘拐作戦
Target of an Assassin
エルネスト
ザ・メッセージ
The Message
ハムザ・イブン・アブド・アル=ムッタリブ
ナザレのイエス
Jesus of Nazareth
大祭司カヤパ テレビシリーズ
1978 愛はエーゲ海に燃ゆ
The Greek Tycoon
テオ・トマシス
1979 パッセージ/死の脱走山脈
The Passage
バスク
1981 砂漠のライオン
Lion in the Desert
オマル・モフタール
ダーティー・ソルジャー/野良犬軍団
High Risk
マリアノ
1982 バレンチナ物語
Valentina
1987 スター・レジェンド
L'isola del tesoro
ロング・ジョン・シルバー テレビシリーズ
1988 海運王オナシス
Onassis: The Richest Man in the World
ソクラテス・オナシス テレビシリーズ
1990 ゴースト・ラブ
Ghosts Can't Do It
スコット
リベンジ
Revenge
ティブロン“ティビー”メンデス
老人と海
The Old Man and the Sea
サンティアゴ テレビ映画
1991 ジャングル・フィーバー
Jungle Fever
ルー・カーボン
モブスターズ/青春の群像
Mobsters
ジョー・マッセリア
オンリー・ザ・ロンリー
Only the Lonely
ニック
1993 ラスト・アクション・ヒーロー
Last Action Hero
トニー・ビバルディ
1994 ヘラクレス/魔境の女戦士
Hercules and the Amazon Women
ゼウス テレビ映画
勇者ヘラクレス/呪われた王国の美しき姫を救え!
Hercules: The Legendary Journeys - Hercules and the Lost Kingdom
ゼウス テレビ映画
サムバディ・トゥ・ラブ
Somebody to Love
エミリオ
1995 雲の中で散歩
A Walk in the Crouds
ドン・ペドロ・アラゴン
1996 ゴッチ・ザ・マフィア
Gotti
ニール・デラクロス テレビ映画
2002 シルベスター・スタローン ザ・ボディガード
Avenging Angelo
アンジェロ・アリギエーリ

受賞歴

編集

アカデミー賞

編集
受賞
1953年 アカデミー助演男優賞:『革命児サパタ[5]
1957年 アカデミー助演男優賞:『炎の人ゴッホ
ノミネート
1958年 アカデミー主演男優賞:『野性の息吹き
1965年 アカデミー主演男優賞:『その男ゾルバ

英国アカデミー賞

編集
ノミネート
1963年 最優秀外国男優賞:『アラビアのロレンス
1966年 最優秀外国男優賞:『その男ゾルバ』

ゴールデングローブ賞

編集
受賞
1987年 セシル・B・デミル賞
ノミネート
1957年 助演男優賞:『炎の人ゴッホ』
1963年 主演男優賞 (ドラマ部門):『アラビアのロレンス』
1965年 主演男優賞 (ドラマ部門):『その男ゾルバ』
1970年 主演男優賞 (ミュージカル・コメディ部門):『サンタ・ビットリアの秘密
1997年 助演男優賞 (テレビシリーズ部門):『Gotti

脚注

編集
  1. ^ Anthony Quinn”. Britannica.com. 2021年8月26日閲覧。
  2. ^ 宮本高晴「クイン、アンソニー」『世界映画大事典』、日本図書センター、2008年7月、p. 286。
  3. ^ The films of Anthony Quinn – Alvin H. Marill – Google Boeken. Google Books. https://books.google.co.jp/books?id=AgMvAAAAMAAJ&dq=%5C%22anthony+quinn%5C%22+sabina+cork&q=cork&redir_esc=y&hl=ja January 7, 2012閲覧。 
  4. ^ "Anthony Quinn Biography (1915–2001)". – Film Reference.com.
  5. ^ なお、この式典にクイン本人は出席しておらず、代理人であり彼の当時の妻のキャサリン・デミルが受賞した。

外部リンク

編集