カメレオン座
カメレオン座 (カメレオンざ、Chamaeleon) は現代の88星座の1つ。16世紀末に考案された新しい星座で、カメレオンをモチーフとしている[1][3]。天の南極の近くにあるため、日本国内からは見ることができない。
Chamaeleon | |
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属格形 | Chamaeleontis |
略符 | Cha |
発音 | 英語発音: [kəˈmiːliən]、属格:/kəˌmiːliˈɒntɨs/ |
象徴 | カメレオン[1] |
概略位置:赤経 | 07h 26m 36.5s - 13h 56m 26.7s[1] |
概略位置:赤緯 | −75.29° - −83.12°[1] |
広さ | 131.592平方度[2] (79位) |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 16 |
3.0等より明るい恒星数 | 0 |
最輝星 | α Cha(4.066等) |
メシエ天体数 | 0 |
確定流星群 | 無し |
隣接する星座 |
はえ座 りゅうこつ座 とびうお座 テーブルさん座 はちぶんぎ座 ふうちょう座 |
主な天体
編集全天で10番目に小さな星座[2]で、肉眼で見えるめぼしい天体はない。
恒星
編集5つの4等星がある程度で、特に目立つ恒星はない。
2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって2個の恒星に固有名が認証されている[4]。
- HD 63454:国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でウルグアイ東方共和国に命名権が与えられ、主星はCeibo、太陽系外惑星はIbirapitáと命名された[5]
そのほか、以下の恒星が知られる。
- α星:見かけの明るさ4.047等の4等星[6]。カメレオン座で最も明るく見える恒星。
- β:見かけの明るさ4.229等の4等星[7]。
- γ星:見かけの明るさ4.12等の4等星[8]。カメレオン座で2番目に明るく見える。
- δ2星:見かけの明るさ4.433等の4等星[9]。
- θ星:見かけの明るさ4.337等の4等星[10]。
- Cha 110913-773444:2004年にハッブル宇宙望遠鏡、セロトロロ汎米天文台、スピッツァー宇宙望遠鏡の赤外線観測データから発見された、星周円盤を伴う低質量の前主系列天体で、準褐色矮星または自由浮遊惑星であると考えられている[11]。
星団・星雲・銀河
編集由来と歴史
編集カメレオン座は、1603年にヨハン・バイエルが出版した星図『ウラノメトリア』で世に知られるようになったためバイエルが新たに設定した星座と誤解されることがある[14]が、実際は1598年にフランドル生まれのオランダの天文学者ペトルス・プランシウスが、オランダの航海士ペーテル・ケイセルとフレデリック・デ・ハウトマンが1595年から1597年にかけての東インド航海で残した観測記録を元に、オランダの天文学者ヨドクス・ホンディウスと協力して製作した天球儀にカメレオンの姿を描き、ラテン語で Chamaeleon という星座名を記したことに始まる[3]。そのため近年はケイセルとデ・ハウトマンが考案した星座とされている[15]。モチーフとされたカメレオンは、東インド航海の際に立ち寄ったマダガスカル島で見たものと考えられている[3]。
ホンディウスやバイエルは、カメレオンの四肢を天の南極に向けた姿で描いているが、18世紀フランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユは、カメレオンの背を天の南極に向けた姿で描いた[3]。
- バイエル『ウラノメトリア』の Chamaeleon とラカイユの星図の le Cameleon の比較。
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『ウラノメトリア』に描かれた Chamaeleon。天の南極に対して四肢を向けている。
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ラカイユの星図(1756年)に描かれた le Cameleon。天の南極に対して背を向けている。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Chamaeleon、略称は Cha と正式に定められた[16]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
中国
編集現在のカメレオン座の領域は、中国の歴代王朝の版図からはほとんど見ることができなかったため、三垣や二十八宿には含まれなかった。この領域の星々が初めて記されたのは明代末期の1631年から1635年にかけてイエズス会士アダム・シャールや徐光啓らにより編纂された天文書『崇禎暦書』であった[17]。清代の1752年に編纂された天文書『欽定儀象考成』では『崇禎暦書』の近南極星区がほぼそのまま取り入れられており、カメレオン座の星は「小斗」という星官に配されていた[17]。これは、カメレオン座が北斗や南斗のようにひしゃくのような形をしていることから名付けられたとされる[17]。
呼称と方言
編集日本では明治末期には既に「カメレオン」という訳語が充てられていた。これは、1910年(明治43年)2月に刊行された日本天文学会の会誌『天文月報』の第2巻11号に掲載された、星座の訳名が改訂されたことを伝える「星座名」という記事で確認できる[18]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも引き継がれ[19]、1944年(昭和19年)に天文学用語が見直された際も変わらず継続して採用された[20]。戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[21]とした際に、Chamaeleon の日本語の学名は「カメレオン」と正式に定まり[22]、以降「カメレオン」が星座名として継続して用いられている。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d “The Constellations”. 国際天文学連合. 2023年2月26日閲覧。
- ^ a b “星座名・星座略符一覧(面積順)”. 国立天文台(NAOJ). 2023年1月1日閲覧。
- ^ a b c d Ridpath, Ian. “Chamaeleon”. Star Tales. 2023年2月26日閲覧。
- ^ Mamajek, Eric E.. “IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2023年2月26日閲覧。
- ^ “Approved names” (英語). Name Exoworlds. 国際天文学連合 (2019年12月17日). 2022年11月4日閲覧。
- ^ "alp Cha". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年2月26日閲覧。
- ^ "bet Cha". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年2月26日閲覧。
- ^ "gam Cha". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年2月26日閲覧。
- ^ "del02 Cha". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年2月26日閲覧。
- ^ "tet Cha". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年2月26日閲覧。
- ^ Luhman, K. L.; Adame, Lucía; D'Alessio, Paola; Calvet, Nuria; Hartmann, Lee; Megeath, S. T.; Fazio, G. G. (2005-11-29). “Discovery of a Planetary-Mass Brown Dwarf with a Circumstellar Disk”. The Astrophysical Journal (American Astronomical Society) 635 (1): L93-L96. arXiv:astro-ph/0511807. Bibcode: 2005ApJ...635L..93L. doi:10.1086/498868. ISSN 0004-637X.
- ^ "NGC 3195". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年2月26日閲覧。
- ^ Frommert, Hartmut (2006年8月22日). “The Caldwell Catalog”. SEDS Messier Database. 2023年2月26日閲覧。
- ^ 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、26-30頁。ISBN 978-4-7699-0825-8。
- ^ 山田陽志郎「星座」『天文年鑑 2013年版』誠文堂新光社、2012年11月25日。ISBN 978-4-416-21285-1。
- ^ Ridpath, Ian. “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations”. Star Tales. 2023年2月11日閲覧。
- ^ a b c 大崎正次「清時代の星座」『中国の星座の歴史』雄山閣出版、1987年5月5日、106-114頁。ISBN 4-639-00647-0。
- ^ 「星座名」『天文月報』第2巻第11号、1910年2月、11頁、ISSN 0374-2466。
- ^ 東京天文台 編『理科年表 第1冊』丸善、1925年、61-64頁 。
- ^ 学術研究会議 編「星座名」『天文術語集』1944年1月、10頁。doi:10.11501/1124236 。
- ^ 『文部省学術用語集天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日、316頁。ISBN 4-8181-9404-2。
- ^ 「星座名」『天文月報』第45巻第10号、1952年10月、158頁、ISSN 0374-2466。
- ^ a b 大崎正次「辛亥革命以後の星座」『中国の星座の歴史』雄山閣出版、1987年5月5日、115-118頁。ISBN 4-639-00647-0。