テトラテーナイト
テトラテーナイト(英語: tetrataenite)は、鉄合金(フェロアロイ)の一種で、隕鉄に含まれる鉄とニッケルの合金相である。
概要
編集テトラテーナイトは鉱物学的な名称で、金属学的にはγ’と呼ばれ、結晶学ではL10型鉄ニッケルと呼ばれる[1]。テトラテーナイトは隕鉄特有の鉄ニッケル相で、通常、地上には存在せず、ウィドマンシュテッテン構造において、鉄リッチのα相とニッケルリッチのγ相の境界に層状に偏在しており、鉄とニッケルの構成比はニッケル50%、鉄50%で、それぞれの原子が単原子ごとにくりかえされる規則的な結晶構造を有しており、この結晶の規則性が、硬磁性をつくりだしている[1]。L10型結晶構造により、保磁力と垂直磁気異方性に優れていてレアメタルを含まないため、ハードディスク等の記憶媒体として期待される[2]。隕鉄の結晶構造としては古くから知られていたが[3][4]、近年、組成・結晶構造・磁区構造の空間分布をナノスケールで直接調査できる光電子顕微鏡のような分析技術の進歩により、特性が磁気記憶素子に適している事が判明した[1]。
応用例
編集磁性体記憶素子やハードディスク等の記憶媒体として期待される。
脚注
編集- ^ a b c 隕石で発見された夢の磁性材料 — SPring-8 Web Site
- ^ 星から生まれる次世代磁気デバイス - ナノテクと惑星科学の融合した未来志向のものづくり -
- ^ Clarke, Roy S; Scott, Edward RD (1980). “Tetrataenite—ordered FeNi, a new mineral in meteorites”. American Mineralogist (Mineralogical Society of America) 65 (7-8): 624-630 . ( 要購読契約)
- ^ Albertsen, JF (1981-03). “Tetragonal lattice of tetrataenite (ordered Fe-Ni, 50-50) from 4 meteorites”. Physica Scripta (IOP Publishing) 23 (3): 301. doi:10.1088/0031-8949/23/3/015 .
参考文献
編集- 永田武, 船木實「南極隕石ALH-77219メソシデライトの磁気分析」『南極資料』第79巻、国立極地研究所、1983年9月、1-10頁、CRID 1390853649613165824、doi:10.15094/00008363、ISSN 0085-7289。
- 墻内千尋, 斎藤嘉夫, 大塚一志「テトラテーナイト超微粒子の採集法と物性測定 : 評価II」『日本結晶成長学会誌』第18巻第1号、日本結晶成長学会、1991年、27頁、CRID 1390282680840235264、doi:10.19009/jjacg.18.1_27、ISSN 0385-6275。
- Kotsugi, Masato; Mitsumata, Chiharu; Maruyama, Hiroshi; Wakita, Takanori; Taniuchi, Toshiyuki; Ono, Kanta; Suzuki, Motohiro; Kawamura, Naomi; Ishimatsu, Naoki; Oshima, Masaharu; others (2009). “Novel magnetic domain structure in iron meteorite induced by the presence of L10-FeNi”. Applied physics express (IOP Publishing) 3 (1): 013001. doi:10.1143/APEX.3.013001 .
- 小嗣真人「隕石に由来する新しい磁性材料: 宇宙からのグリーンイノベーション」『学術の動向』第15巻第8号、日本学術協力財団、2010年、52-56頁、CRID 1390001204999091968、doi:10.5363/tits.15.8_52、ISSN 13423363。
- 小嗣真人, 三俣千春「招待講演 放射光を用いた鉄隕石の界面磁性解析とその応用研究」『電子情報通信学会技術研究報告』第112巻第249号、電子情報通信学会、2012年10月、59-63頁、CRID 1520009408177162496、ISSN 09135685、国立国会図書館書誌ID:000000050569。