ワイヤロープ
概要
編集日本の高規格幹線道路の暫定二車線区間では、車線分離にセンターポール(ガイドポスト)と縁石を用いる[1]。ただ、対向車線の車の飛び出しを防止できない[1]。したがって、正面衝突事故が発生しやすく、重大事故に至りやすい[1]。そのような事故を減少させるために、2010年からワイヤロープの研究が行われた[2]。
特徴
編集高い安全性 ワイヤロープに車両が衝突した際、支柱が倒れ、ワイヤロープのたるみが衝撃を緩和する[3]。したがって、乗員が受ける衝撃が小さく、高い安全性が確保される[3]。
- 工事費用の削減
ワイヤロープ式防護柵は、細い支柱にワイヤロープを通す構造であるので設置幅が少ない[3]。したがって、設置に伴う工事費用削減が可能である[3]。
- 緊急時対応のしやすさ
緊急時には人力でワイヤロープと支柱を取り外すことができる[3]。したがって、開口部を設置することが容易である[3]。
- 復旧作業の効率化
事故後の復旧作業は、破損した支柱を取り外し、新たな支柱を舗装の下の穴に挿入しワイヤロープを張るというものである[3]。この作業は、人力で短時間で完了することが可能である[3]。
課題と対策
編集- 接触事故発生時
事故車両が自走不能となる確率が高い[4]。対策として、導流レーンマーク[注釈 1]の施工が行われている[4]。ただ、自走不能となった車両が滞留したとしてもその側方を通行できる[4]。
- 維持管理
接触事故の増加によって、復旧工事のための通行止め回数が増加している[4][5]。この事案には、復旧時間の短縮を図ることにより、交通への影響を最小限にしている[4]。
- 長大橋およびトンネル区間
土工部及び中小橋に比べ幅員が狭い[6]。そのため、以下の課題があげられる。
整備状況
編集2019年4月1日現在、暫定二車線の高速道路の有料区間の22路線、約180kmに設置されている[9]。また、計10の中小橋において設置されており、その他は土工部に設置されている[9]。暫定二車線の高速道路の有料区間の供用延長は約2,517kmであるため[9]、約7%の設置にとどまる。また、北海道や東北では、ワイヤロープにLEDを巻き付けるという試行がなされている[10]。そのワイヤロープは、暴風雪によるホワイトアウトが原因の交通事故の防止につながる[10]。
脚注
編集注釈
編集- ^ 写真の中央線付近の白く太い線の部分
出典
編集- ^ a b c d 平澤匡介, 齊田光, 高田哲哉, 石田樹「暫定2車線区間におけるワイヤロープ式防護柵の導入可能性について」『土木学会論文集D3(土木計画学)』第73巻第5号、土木学会、2017年、I_981-I_992、doi:10.2208/jscejipm.73.I_981、NAID 130006286577。
- ^ 平澤匡介, 武本東, 葛西聡「2車線道路における緩衝分離構造の導入可能性の検討」『土木計画学研究・論文集』第27巻、土木学会、2010年、1035-1044頁、doi:10.2208/journalip.27.1035、ISSN 0913-4034、NAID 130006275168。
- ^ a b c d e f g h "ワイヤロープ開発と試行結果"国土交通省高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会第一回2016年12月26日、2021年4月13日閲覧
- ^ a b c d e "ワイヤロープ試行設置箇所の交通状況について(中小橋・冬期状況を含む評価)"国土交通省高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会第三回2018年5月14日、2021年4月13日閲覧
- ^ 「秋田道横手―大曲間の通行止め解除 ワイヤロープ復旧完了」『秋田魁新報』2021年4月2日
- ^ "暫定二車線区間の現状と課題"国土交通省高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会第一回2016年12月26日、2021年4月13日閲覧
- ^ a b c d "正面衝突事故防止対策の取組方針"国土交通省高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会第一回2016年12月26日、2021年4月13日閲覧
- ^ 青野昌行、「ワイヤ式防護柵で飛び出し激減―暫定2車線の高速道で効果、長大橋用も開発へ」『日経コンストラクション』2017年12月25日号、22頁
- ^ a b c "ワイヤロープ設置箇所の交通状況について(土工部のモニタリング評価)"国土交通省高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会第四回2019年7月19日、2021年4月13日閲覧
- ^ a b 「理研興業、光る中央分離帯ロープ―暴風雪時の視界不良防ぐ」『日本経済新聞』2018年10月30日