大衆食堂
日本の大衆食堂
編集煮魚、焼魚、とんかつ、から揚げ、野菜炒めなど和洋中華の一般的な料理に加え、単品としての焼きめし、カレーライス、オムライス、各種丼もの、ラーメン、焼きそば、うどん、蕎麦などの麺類も定番である。 定食を中心としたメニュー構成の店舗は、定食屋、定食店とも呼ばれる。酒類としてはビール、日本酒、チューハイなどが置かれている事が多く、夜間には居酒屋として機能する店もある。
大衆食堂の多くは、駅前や街道沿い、学生街、オフィス街、工場街等に立地し、外食、特に昼食で利用される。出前を行う店舗も多い。また、市場周辺や歓楽街(かつての花街を含む)では、労働者や朝帰りの客向けに朝食を中心にした営業を行なっている店もある。
第二次世界大戦中、戦後には日本の食糧事情が悪化し、大衆食堂でも都道府県が指定する外食券食堂(米穀通帳と引き換えに交付される外食券を要する食堂)以外での営業が困難となる時代もあった[1]。
もともと零細な自営業の多かった業種だが、20世紀後半以降、チェーン展開を全国規模で行う大資本のファミレス、弁当店、コンビニ、ファーストフード、スーパーマーケットの惣菜の充実等の影響によって、メニュー面、価格面での対抗が難しくなっている。
日本標準産業分類
編集日本標準産業分類では「小分類7611-食堂、レストラン(専門料理店を除く)」に分類され「主として主食となる各種の料理品をその場所で飲食させる事業所」と定義されている[2]。かつては「一般食堂」という分類も用いられたが2007年(平成19年)11月の改定により再編された[3]。
沖縄県の大衆食堂
編集沖縄県の大衆食堂は本土と大きく異なるメニューが存在する。たとえば、「そば」とあれば沖縄そばのことであり、「肉そば」は肉野菜炒めの載った沖縄そばのことを指す。チャンポン、カツ丼、すき焼きなども、本土とは内容が違う。チャンプルーやポーク玉子は必ずメニューにある。「ランチ」は洋食揚げ物のセットで、昼でなくても食べられる。24時間営業の店では、真夜中や早朝からステーキをオーダーする客も珍しくはない。
また、一見単品のようなメニューも基本的には定食である。以下のような本土で見慣れないセットメニューが多くの店舗で提供されている。
たとえば「ご飯とおかずとみそ汁」を注文すると、どんぶり飯がひとつ(ご飯)、野菜炒めと卵焼きの皿とみそ汁とご飯(おかず)、それに丼に山盛りのみそ汁とご飯(みそ汁)、さらに漬物の小皿が3つに、時には定食の副菜やしーぶんまでもが運ばれてくる。予備知識のない観光客がこのような注文をして驚くことがしばしば見受けられる。
日本以外の大衆食堂
編集ホーカーセンター
編集東アジアや東南アジアでは大衆食堂が集中していることが多く、ホーカーセンターと呼ばれる。
ビストロ
編集フランスではビストロ(bistro, bistrot)がこれに当たるが、現在ではビストロと呼ばれる店でも高級料理店ならずともある一定の格式や雰囲気を持つ店も多く、ビストロという言葉が即大衆食堂に当たるとは限らない。日本に於いてはフランス料理店が自らの店に『ビストロ』の名を付与していることが多い。日本料理では割烹に相当する。
ビストロの語源はロシア語の方言という都市伝説がある。1814年にナポレオン戦争でパリが陥落した際、駐屯してきたロシア兵がカフェで酒を「早く(ブィストロ、быстро)出せ」と言ったことが語源とされる[4]が、実際には「ビストロ」という語はロシア兵がフランスに来る前から使われていて、「安酒 (bistouille)」という語と関係しているとされる[5]。
多くのビストロは近所の住人を主な客層としており、テラスや路上に藤椅子とテーブルを出して憩いの場を提供するなど、カフェと同様の業態や機能をもつ[6]。これらのビストロには固有の屋号が無い店が多く、客からは単に「ル・ビストロ」と呼ばれる[6]。
出典
編集- ^ 「東京の前食堂を三種に区分」1944年(昭和19年)4月10日 毎日新聞(東京版)(昭和ニュース編纂委員会編『昭和ニュース事典第8巻 昭和17年/昭和20年』p41 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
- ^ “大分類M-宿泊業,飲食サービス業”. 総務省. 2020年11月6日閲覧。
- ^ “平成23年表における飲食サービス関連部門の設定について”. 総務省. 2020年11月6日閲覧。
- ^ 「悲しき酒場のある都市コロンバス」、法政大学教養部紀要、中島時哉、1993年
- ^ NHKラジオ「まいにちロシア語」テキスト 2020年11月号
- ^ a b レイ・オルデンバーグ『サードプレイス』忠平美幸訳 みすず書房 2013 ISBN 9784622077800 pp.244-251.