牛乳豆腐
牛乳豆腐(ぎゅうにゅうどうふ)は、牛乳や初乳を原料に加熱したり酢やレモン汁やにがりを加え豆腐やそぼろの様に固めた乳製品である[1]。初乳豆腐、チッコ豆腐、チッコカタメターノとも呼ぶ[2]。脂肪と蛋白質が豊富に含まれる。製法は様々で牛の乳を凝固させ乳清の一部を除去し非熟成の場合フレッシュチーズである[3]。(乳清を除去しない製法の場合はチーズではない)
牛乳豆腐 | |
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牛乳のpHが酢の添加により変化すると、カゼインミセルの凝析が現れる | |
原料 | 初乳,牛乳と酸またはにがり |
原産国 | 日本 |
脂肪分 | 約20% |
タンパク質 | 約20% |
表皮 | 柔らかい |
概要
編集分娩後五日以内の牛の初乳は「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(通称「乳等省令」)別表ニの(一)の(2)1」によってヒトへの食品利用が制限されており、出荷[4]ができない。この出荷できない初乳を有効利用するために酪農家の間で作られている[5]。
3~4日以内の初乳は加熱のみで固まる[1][6]。3~4日以降の初乳以外のもの、生乳、牛乳(種類別牛乳)、無調整牛乳、特別牛乳などは、凝固に必要なホエイや脂質の成分が初乳より薄い理由で固まり辛く、酢やにがりなどの凝固剤で固めて作られている[1][6]。
牛乳は牛乳蛋白質が凝固するが、加熱によってホエイが固まり、凝乳酵素や酸の添加によりカゼインが固まる[6]。(乳清を除去していない状態も含め)固まった物をカード(凝乳)と呼ぶ。
酸で固める製法のチーズは世界ではアジアや南米など比較的高温な地域で食べられている。
大豆で出来た豆腐と同等に扱われ同様の調理法で食べられる。豆腐と名乗ってはいるが豆は使用していない。これは、柔らかく豆腐状の食品を「-豆腐」と呼ぶ為で、杏仁豆腐などと同じ理由である。
歴史
編集千葉県安房鴨川地方の峯岡牧で江戸時代8代将軍徳川吉宗公がインド産と言われる白牛(セブ一種)を飼育し、白牛の乳から「白牛酪」という乳製品をつくったことが、日本酪農の始まりと言われている。白牛は、ラクダのようなコブがあり、長く垂れた耳、白い毛色の、日本では現在鴨川市でしか見られない珍しい品種である[7](ただし江戸時代から飼育されてきたものは明治時代の牛疫で姿を消し、現在飼育されているものは1995年に千葉県酪農のさとがオープンしてからの導入である[8])。このように古くから酪農がおこなわれてきた千葉県安房鴨川地方で産後の牛の初乳を火にかけ固めたものをチッコ豆腐と呼んで昔から食べられてきた[7]。しかしながら、省令で出荷出来ない初乳を使っているため、一般には流通せずに、郷土料理として酪農家の間で親しまれてきた日本の伝統的なチーズである[7]。地域によって、「乳っこ固めたもの」に由来するとされるチッコカタメターノや、峯岡豆腐とも呼ばれている[7]。初乳ではなく常乳を使用して販売出来るように加工されたものを、牛乳豆腐と呼ぶこともある。製法も呼び名も様々であるが、昔から酪農が盛んであった地域で生まれた食文化である[7]。
製法
編集牛乳のみを使う場合
編集- 加熱
- 産後すぐの初乳を入れたボールなどの容器を蒸し器に入れ、30分程度蒸すと豆腐と同じ様に固まる。鍋で煮ておぼろやそぼろ状に固める方法もある。固まった後、ざるなどでホエー(乳清)と呼ばれる透明な液体を取り除くこともある。産後3~4日以降からは加熱だけでは固まり辛くなるため酸を加えると作りやすい。[1]
凝固剤を加える場合
編集消費
編集そのまま利用
編集- 普通の豆腐のように生姜醤油で食べる。
- 煮込み御飯の中に野菜等と共にきざんで炊き込む。
- 野菜サラダや、ぬた、酢合え等に卵や魚の代用にする。
- 煮つけや、そぼろのように炒りつける。
- 野菜や魚のかき揚げの中に加えて揚げる。
味噌漬けの作り方
編集- 牛乳豆腐を2cm位の厚さで 5cm角位の大きさに切っておき、清潔な容器を用いて味噌の中に漬け込む。
- 隙間なく漬け終ったら更に隙間なく蓋をして、涼しい場所にたくわえておく。
- 一カ月頃から美味しく食べられる。
脚注
編集- ^ a b c d e 「農家の生活改善(4) : 初乳で作る常備食 : 酪農農家の食生活改善のために」『岡山畜産便り 昭和39年』、岡山県畜産協会、1964年5月、1頁、NDLJP:8388247。
- ^ “チッコ豆腐/牛乳豆腐 千葉県 | うちの郷土料理:農林水産省”. www.maff.go.jp. 2023年7月1日閲覧。
- ^ “チーズの表示に関する公正競争規約”. findNew 牛乳乳製品の知識. 2023年7月1日閲覧。
- ^ 牛の初乳については、人の健康に与える影響等についての情報が十分得られていない(平成14年5月8日付文書(厚生労働省))
- ^ 荒川弘『百姓貴族. 2』2号、新書館〈Wings comics〉、2012年3月。国立国会図書館書誌ID:023405475 。[要ページ番号]
- ^ a b c 仁木良哉「牛乳酸性ゲルの物性」『ミルクサイエンス』第51巻第3号、日本酪農科学会、2002年、111-120頁、doi:10.11465/milk.51.111、ISSN 1343-0289。
- ^ a b c d e “チッコ豆腐/牛乳豆腐 千葉県”. うちの郷土料理. 農林水産省. 2023年12月21日閲覧。
- ^ “「あんぐる」今年の顔です 嶺岡牧の拍牛(千葉県南房総市)”. 日本農業新聞. 2024年6月6日閲覧。