(スジ)とは、麻雀における基本用語のひとつで、「あいだに2牌挟んだ2種類の牌」を1セットとして捉えた概念である。すなわち、例えば2と3を挟んだ1と4、3と4を挟んだ2と5、などを、それぞれ1-4のスジ、2-5のスジなどと言う。本稿ではスジおよびスジに関連する用語や概念について概説する。

単にスジと言った場合のスジ

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麻雀では、順に並んだ連続する3つの牌を1つの面子とする。これを順子と言う。順子になる一段階前の状態を搭子と言うが、そのうち隣り合う2つの牌でできた搭子で、1と9を含まない搭子を、両門搭子(リャンメンターツ)と言う。両門搭子にあと1牌くれば順子が完成するが、その「あと1牌」のことをスジと言う。以下は両門搭子とそのスジの対応である。

二索三索 → 一索四索(イースー)
三索四索 → 二索五索(リャンウー)
四索五索 → 三索六索(サブロー)
五索六索 → 四索七索(スーチー)
六索七索 → 五索八索(ウッパー)
七索八索 → 六索九索(ローキュー)

以上の6種が基本となるスジである。

23の両門搭子に456の順子がくっついている場合、牌理により「あと1牌」が1種類増える。34に567がくっついている場合や、45に678がくっついている場合も同様である。以下3種はその対応である。なお、以下3種は「ピアノスジ」と呼ばれることもある[1]

二索三索四索五索六索 → 一索四索七索(イースーチー)
三索四索五索六索七索 → 二索五索八索(リャンウッパー)
四索五索六索七索八索 → 三索六索九索(サブローキュー)

狭義には先に挙げた6種をスジと言い、広義には後に挙げた3種も含めてスジと言う。

表スジ

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表スジ(おもてすじ)とは、要するに以下の3種のことである。すなわち、

四筒に対する一筒七筒
五筒に対する二筒八筒
六筒に対する三筒九筒

これが表スジである。相手が両門で待っている時、

捨て牌に四筒があれば一筒四筒待ちと四筒七筒待ちはない。同じく、
捨て牌に五筒があれば二筒五筒待ちと五筒八筒待ちはない。同じく、
捨て牌に六筒があれば三筒六筒待ちと六筒九筒待ちはない。

したがって表スジは安全牌・危険牌の分類においては比較的安全であるとされる。また、表スジを頼りに通っていない牌を切ることを「スジを追う」と言う。

なお、

一筒に対する四筒は表スジとは言わない。同じく、
二筒に対する五筒
三筒に対する六筒
七筒に対する四筒
八筒に対する五筒
九筒に対する六筒

以上6種、いずれも表スジとは言わない。これらは片スジ(かたすじ)もしくは鈍らスジ(なまくらすじ)と呼ばれる[2][3]。また、一筒に対する七筒二筒に対する八筒三筒に対する九筒などを、俗に「遠いスジ」と言うことがある。

歴史的には「表スジ」はもともと単に「スジ」と呼ばれていたが、のちに裏スジという用語が使われるようになったために、裏スジに対応して「表スジ」という表現が使われるようになった[4]

中スジ

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中スジ(なかすじ)とは、要するに以下の3種のことである。すなわち、

一萬七萬に対する四萬
二萬八萬に対する五萬
三萬九萬に対する六萬

この3種が中スジである。中スジに該当する牌のことを筋心牌(きんしんぱい)と呼ぶこともある[4]

スジ引っかけ

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麻雀には、スジ(表スジ)は通りやすいという通念がある。それを逆手にとって、自分が既にに捨てた牌のスジで待つことを「スジ引っかけ」「スジ待ち」と言う。

(例)モロひっかけ

二萬三萬四萬六萬七萬八萬四筒五筒五筒六筒八筒六索七索   ツモ八索
ここから四筒を切ってリーチすると、待ちは七筒になる。すなわち、リーチ宣言牌のスジが待ちになっているリーチをモロ引っかけ(モロヒ、モロ掛け)と言う[5]

(例)中ひっかけ

二索三索三索四索四索五索南南六筒七筒八筒三萬赤五萬七萬 (切り番)   ドラ表示牌 東
捨て牌 九索東發一索二筒一筒一萬九萬
ここから三萬を切った場合、手の内に赤五萬七萬が残って待ちは六萬となり、河に三萬九萬が並んでいるのでスジ待ちになる。
ここから七萬を切った場合、手の内に三萬赤五萬が残って待ちは四萬となり、河に一萬七萬が並んでいるのでスジ待ちになる。
このように、中スジで待つことを「中ひっかけ」と言う。

(例)あと引っかけ

一索二索四索五索六索七索八索九索四筒四筒四萬五萬六萬   ドラ表示牌 八萬
捨て牌 西發一萬二筒五筒七萬六索中五萬
リーチを掛けた時点では無スジの辺張待ちだが、リーチ後に六索を引いたことで結果的に引っかけ待ちになっている。このようなケースを「あと引っかけ」と言う。無論リーチ後に都合よく引っかけになる牌を引くとは限らないが、引いた場合は当然引かなかった場合より有利になる。特に相手が安全牌に窮した場合、一萬七萬中スジである四萬や、五萬表スジである八萬二萬などが出てくる可能性が高まると同時に、六索の表スジである九索三索が切り出される可能性も高くなる。

(例)スジ待ちにできる牌姿

三萬三萬五萬六萬七萬二筒三筒四筒四筒四筒五筒中中   ツモ中
捨て牌 北白一索八索九萬六萬七筒
ここから四筒を切った場合、
三萬三萬五萬六萬七萬二筒三筒四筒四筒五筒中中中
この形が最終形になって待ちは三筒六筒である。しかし、四筒ではなく五筒を切った場合、
三萬三萬五萬六萬七萬二筒三筒四筒四筒四筒中中中
この形が最終形になって待ちは一筒四筒三萬エントツ三門張になる。自分の捨て牌には六萬があり、待ちに三萬が含まれるので、この形はスジ待ちとなる。

(例)七対子のスジ待ち

一筒一筒五筒赤五筒二索二索三索三索中中九索九筒西   ツモ西     ドラ表示牌南
捨て牌 七萬六索六筒二萬三萬九萬南北
ドラの西を先に引いてテンパイした牌姿。河に六索六筒と蒔いており、どちらの単騎に受けてもスジ待ちになる。ドラ3なのでリーチを掛けて跳満にしたいところだが、露骨に変則的な捨牌であり、上級者に七対子であることを看破されれば、スジ待ちといえど牌を止められる可能性はある。

無スジ

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無スジ(むすじ)とは、文字通りスジになっておらず、通っていないスジのことである。例えば下のようなリーチが掛った時、

牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背
捨て牌 東發九索一索六索三筒八筒九筒一萬七萬
二索二索三索四索四索五索五索二筒四筒四筒三萬四萬四萬   ツモ二萬
この場合、自分の手の内にある牌でスジとなる牌は三索四萬の2種だけで、それ以外の手持ちの牌はすべて無スジである。もちろん相手の待ちになっているのはたいていの場合1種類か2種類、広くて3種類程度の牌であり、無スジが全て危険に見えるのは守勢に回った者の幻想である。しかし、たいていのリーチは無スジのうちのいずれかのスジが当たりになっていることが多い。(この通念を逆手にとってスジに該当する牌で待つのが「スジ待ち」「スジ引っかけ」である。このケースでは中ひっかけ四萬待ちになっている可能性はある程度ある)

裏スジ

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裏スジ(うらすじ)とは、ある牌の隣の牌のスジのことである。

牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背
捨て牌 東發九索一索六索三筒八筒九筒一萬七萬
この捨て牌の場合、
一索の裏スジは二索五索
六索の裏スジは二索五索
三筒の裏スジは四筒七筒
八筒の裏スジは四筒七筒
一萬の裏スジは二萬五萬
七萬の裏スジは三萬六萬
裏スジが危険とされるのは、例えば手の内に三筒五筒六筒とあれば、通常三筒が切り出されて五筒六筒の形つまり四筒七筒の受け入れが残るためである。特に序盤から中盤では、手牌の他の部分が伸びた場合、いつまでも三筒五筒六筒の形を引っ張る(=持ち続ける/手の内に温存する)必要はなくなり、不要な三筒は遅かれ早かれ押し出される。また中盤以降でも、三筒五筒と持っているところに六筒を引けば、当然受け入れの広くなる三筒切りとなる。手の内に残るのは五筒六筒で、切り出された三筒に対し裏スジの四筒七筒が危険となる。つまり嵌張から両門に振り替わる時にも裏スジができる。これが、裏スジが危険とされるメカニズムである。
歴史的には、裏スジは古くから危険なスジであると認識されてはいたものの、「裏スジ」という用語自体がメディア上に登場したのは昭和中期の麻雀ブームの頃だという。浅見了は「曖昧な記憶で申し訳ないが」と前置きした上で、裏スジという用語が使われだしたのは昭和40年代半ば頃だったのではないか、と述べている[6]。当時の文献の中には、裏スジのことを指して「裏面子」(ウラメンツ)と言っているものもある[7]

間四間

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間四間(間四ケン、あいだよんけん)とは、「同色で4つ離れた数牌が切られている時の、その内側のスジ」[5]のこと。すなわち「裏スジを共有しているスジ」のことである。上で使った例と同じ例を使うと、

牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背
捨て牌 東發九索一索六索三筒八筒九筒一萬七萬
この捨て牌には間四ケンが2つある。
一索の裏スジであり六索の裏スジでもある二索五索
三筒の裏スジであり八筒の裏スジでもある四筒七筒
間四ケンが危険とされる理由は、基本的には裏スジが危険とされる理由と同じである。例えば手の内に一索三索四索六索とあった場合、手作りの進行に従って一索六索が切り出され、三索四索の形つまり二索五索受けが残る。最後までその部分が埋まらなかった場合は当然そこが待ちになる。三筒八筒九筒についても言うと、手の内にもともと三筒五筒六筒八筒九筒とあった場合、そこから手牌を整理するにあたってまず三筒が切り出されて五筒六筒八筒九筒の形になり、引き続き受け入れのかぶっているペンチャン受け八筒九筒が切り出されて、最終的に手の内には五筒六筒が残る。したがって、捨牌に並んでいる三筒八筒九筒に対し四筒七筒が危険となる。以上が、間四ケンが危険とされるメカニズムである。
間四ケンは危険牌の代表格であるとされる[5]。しかし、間四ケンが常に危険かと言うと、そうでない場合もある。まず、仮に上で述べた通りの牌の切り出しだったとしても、間四ケンの部分が先に完成してのリーチだったとしたら、当然間四ケンは通る。また、「偶然間四ケンになっているだけ」というパターンもある。例えば手の内に二筒三筒三筒六筒六筒六筒八筒九筒とあって、まず四筒を引いて三筒切り、次に他の部分との面子選択に迫られて、タンヤオのつかない八筒九筒を落とした、というパターンでも、河に並ぶのは同じく三筒八筒九筒(あるいは三筒九筒八筒である。その場合、手の内に筒子は持っているが、筒子部分は完成しており、他の部分が待ちになっている。以上のように、間四ケンといえども当てになる時とならない時がある。
表記揺れ「間四軒」
なお、間四ケンを「間四軒」と書いている場合があるが、これは「二軒リーチ」「三軒リーチ」といった用語からの混同と考えられる。六間積みなどの用語に見られるように、麻雀でも空間的な広がりにつける単位はである。とはいえ、「間四軒」も明らかな誤用と言えるほどの誤用ではない。

またぎスジ

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またぎスジ(跨ぎスジ)とは、文字通りある牌をまたぐスジのことである。

牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背   ドラ表示牌 二萬
捨て牌 西三索九索二筒一筒六筒北七萬
この例でいえば、まずリーチ宣言牌七萬のまたぎは五萬八萬六萬九萬である。あるいは、その前に切られている六筒のまたぎは四筒七筒五筒八筒である。また、ドラが三萬で捨て牌に萬子が少なく、どちらかと言えば萬子を多めに持っているようにも見える。特にドラのまたぎスジは「ドラまたぎ」と呼ばれ、比較的危険度が高いとされる。逆に、早い段階で切られた三索のまたぎは比較的安全であるとされる[8]。勿論あくまでそういう傾向があると言うだけで、序盤に切られた牌のまたぎが当たるケースもないわけではない。このあたりのことについては次節で詳述する。

序盤の裏スジ、中盤のまたぎスジ

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序盤に切られた牌についてはその裏スジが危険で、中盤以降に切られた牌についてはそのまたぎスジが危険、という意味の麻雀格言である。麻雀格言には「早いリーチはイースー索」「東緑憑きもの」といった何の根拠もないものが多い中、「序盤の裏スジ、中盤のまたぎスジ」はある程度信憑性のある経験則に基づいている。以下に「序盤の裏スジ、中盤のまたぎスジ」ができる手作りの一例を挙げる。

(例)東1局、北家、ドラ表示牌 二萬

 1巡目 三索五索六索八索九索一筒二筒五筒六筒四萬六萬七萬西     六筒
 2巡目 三索五索六索八索九索一筒二筒五筒六筒六筒四萬六萬七萬     二萬
 3巡目 五索六索八索九索一筒二筒五筒六筒六筒二萬四萬六萬七萬     八索
 4巡目 五索六索八索八索一筒二筒五筒六筒六筒二萬四萬六萬七萬     三萬
 5巡目 五索六索八索八索一筒五筒六筒六筒二萬三萬四萬六萬七萬     七萬
 6巡目 五索六索八索八索五筒六筒六筒二萬三萬四萬六萬七萬七萬     四索(一向聴)
 7巡目 四索五索六索八索八索五筒六筒二萬三萬四萬六萬七萬七萬     北安全牌を抱えず、完全一向聴の形を維持)
 8巡目 四索五索六索八索八索五筒六筒二萬三萬四萬六萬七萬七萬     八萬(テンパイ、即リーチ)

特に目立った切り牌もなく、まったくの手なりである。東1局であることから点棒状況による縛りもなく、牌効率に従って道なりに作った結果、捨て牌と最終形は以下のようになる。

捨て牌 西三索九索二筒一筒六筒北七萬
最終形 四索五索六索八索八索五筒六筒二萬三萬四萬六萬七萬八萬
  • 最終的な待ちは捨て牌の後半に切られている六筒のまたぎ。
  • 入り目は最後に切られた宣言牌七萬のまたぎ。
  • 一向聴になった時に引いた入り目は序盤に切られた三索の裏スジ。

まさに「序盤の裏スジ、中盤のまたぎスジ」の通りの捨て牌と手牌だが、これは別に例示のために作った牌姿だからこうなっているのではなく、手なりで手を進めれば必然的に「序盤の裏スジ、中盤のまたぎスジ」になる傾向が強くなるということである。すなわち手なりであればあるほど河は素直になり、「序盤の裏スジ、中盤のまたぎスジ」という判断材料が当てになる場合が多くなる。

もちろんこれもあくまで「当てになる場合が多い」というだけで、いつもいつも「序盤の裏スジ、中盤のまたぎスジ」通りになるわけではない。牌の来方によっては「中盤の裏スジ」が当たり牌になるケースも多く、場合によってはリーチ宣言牌の裏スジ(つまり最後に切られた牌の裏スジ)が当たりになることもある。逆に、比較的安全そうに見える「序盤のまたぎスジ」が当たりになっていることもある。以下に、同じような手なり派の打ち手でも、配牌やツモ牌の来方によっては「序盤の裏スジ、中盤のまたぎスジ」にならない例をあげておく。

(例)東1局、北家、ドラ表示牌 二萬

 1巡目 三索四索五索六索八索八索九索六筒六筒二萬三萬六萬西     七萬
 2巡目 三索四索五索六索八索八索九索六筒六筒二萬三萬六萬七萬     赤五筒
 3巡目 三索四索五索六索八索八索赤五筒六筒六筒二萬三萬六萬七萬     七萬
 4巡目 三索四索五索六索八索八索赤五筒六筒二萬三萬六萬七萬七萬     一筒
 5巡目 三索四索五索六索八索八索赤五筒六筒二萬三萬六萬七萬七萬     二筒
 6巡目 三索四索五索六索八索八索赤五筒六筒二萬三萬六萬七萬七萬     八萬(一向聴)
 7巡目 三索四索五索六索八索八索赤五筒六筒二萬三萬六萬七萬八萬     北(3-6索より北のほうが安全なので抱える)
 8巡目 四索五索六索八索八索赤五筒六筒二萬三萬六萬七萬八萬北     四萬(テンパイ、即リーチ)

最終形は同じでも、配牌がある程度整っていたり、ツモ牌の順番が違ったりするだけで、同じような手なりであるにもかかわらず上のケースとはまったく異なった捨牌相ができあがる。

捨て牌 西九索六筒一筒二筒七萬三索北             上のケースの捨て牌 西三索九索二筒一筒六筒北七萬
最終形 四索五索六索八索八索赤五筒六筒二萬三萬四萬六萬七萬八萬 (上のケースとほぼ同じ最終形)
  • 最終的な待ちは序盤に切られた六筒のまたぎ。
  • 入り目は捨て牌とは無関係な一萬四萬
  • 一向聴になった時の入り目は6巡目に切られた七萬のまたぎ。

上のケースで「序盤の裏スジ」だった三索は、このケースでは単なる余剰牌である[注 1]。いずれにせよ、どのキー牌よりも先に六筒が切られており、かつ、そのまたぎスジが当たり牌になっている。また、このケースでは引いた五筒が黒ではなく赤だった点も大きい。黒なら六筒をもう少し引っぱる可能性があるが、赤だからこそ赤が出てゆくことがないように[注 2]早々と赤五筒六筒の両門に固定している。

このように「序盤の裏スジ、中盤のまたぎスジ」が当てにならないケースもあるので、ある程度信憑性のある経験則といえども盲信しすぎるべきではない。

疝気スジ

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疝気スジ(せんきすじ)とは、裏スジの裏スジに当たるスジのことである[3]

牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背   ドラ表示牌 六萬
捨て牌 一筒南中二索九索三萬七筒
この捨て牌の場合、
一筒の疝気スジは二筒の裏スジである三筒六筒
二索の疝気スジは三索の裏スジである四索七索
九索の疝気スジは八索の裏スジである四索七索
三萬の疝気スジは四萬の裏スジである五萬八萬
七筒の疝気スジは六筒の裏スジである二筒五筒
まず序盤に切られた牌の疝気スジについてだが、手の内に一筒四筒を1枚ずつ持っていた場合、通常のメンツ手ならほぼ間違いなく一筒のほうが切られる[3]。そののち四筒に三筒がくっつけば手の内にできるのは三筒四筒の形で、切られた一筒裏スジ二筒五筒が受け入れになる。しかし三筒ではなく五筒のほうを引いてきた場合、手の内にできるのは四筒五筒の形で受け入れは三筒六筒つまり切られた一筒の疝気スジが受け入れになる。残した四筒に三筒がくっつくか五筒がくっつくかは半々の確率なので、序盤に切られた牌についてはその裏スジも疝気スジも同程度の危険度であると言える。
一方中盤以降に切られた牌の疝気スジについては、まず中盤以降までその牌を持っていたということは、その牌の近隣牌を手の内に持っている可能性が高い。ただし、その近隣牌が1つ隣りの牌なのか2つ隣りの牌なのか、またそれは何枚持ちなのか、どのような形で持っているか、といったことは、切り出しだけを見ても決定できない。また、裏スジの節でも述べたように、序盤からあった嵌張がようやく両門に振り替わったことで切られた牌かもしれない(つまりその場合は疝気スジではなく裏スジのほうが危険)。あるいは三萬三萬四萬といった形から三萬四萬の両門に固定するために切り出された牌かもしれない(つまりその場合は疝気スジではなくまたぎスジのほうが危険)。したがって、中盤以降に切られた牌については、その裏スジが危険なのか、そのまたぎスジが危険なのか、その疝気スジが危険なのか、あるいは面子が完成したことで切られた余剰牌なのか、簡単には判断できない
以下、参考までに「中盤に切られた牌の疝気スジ」が当たり目になっているケースを若干例挙げておく。ただしこれらもあくまで一例にすぎず、むしろ例示のようになっていないパターンのほうが圧倒的に多いということには重々留意されたし。

(例)三萬の疝気スジが当たり目 - 隣接牌が雀頭

四索五索六索六索七索八索四萬四萬六萬七萬六筒七筒八筒   ドラ表示牌 六萬
捨て牌 一筒南中二索九索三萬七筒
三萬四萬四萬六萬七萬七筒七筒八筒から三萬切りで完全一向聴の形に受け、そのあと六筒を引いてリーチ。

(例)三萬の疝気スジが当たり目 - 隣接牌が暗刻

四索五索六索八索八索四萬四萬四萬六萬七萬六筒七筒八筒   ドラ表示牌 六萬
捨て牌 一筒南中二索九索三萬七筒
三萬四萬四萬六萬七萬から四萬が暗刻っての三萬切り。そのあと筒子メンツが完成してリーチ。

(例)三萬の疝気スジが当たり目 - 多門張

四索五索六索五萬六萬七萬八萬九萬九萬九萬三筒四筒赤五筒   ドラ表示牌 六萬
捨て牌 一筒南中二索九索三萬七筒
複合四門張で四萬七萬 五萬八萬待ち。つまり三萬の裏スジと疝気スジが両方当たり。入り目四筒で即リーチ。

(例)宣言牌七筒の疝気スジが当たり目 - エントツ形

四索五索六索八索八索赤五萬六萬七萬三筒四筒五筒五筒五筒   ドラ表示牌 六萬
捨て牌 一筒南中二索九索三萬七筒
三萬赤五萬七萬の両嵌から六萬引きで三萬切り、そのあと索子メンツが完成して七筒切りのエントツ形リーチ。

(例)宣言牌七筒の疝気スジが当たり目 - 亜両門

二索三索四索七索七索七索二萬三萬四萬三筒四筒五筒五筒   ドラ表示牌 六萬
捨て牌 一筒南中二索九索三萬七筒
嵌六筒でノミ手をテンパイしていたところに雀頭だった七索を引いて手変わり、高目三色亜両門でリーチ。

ドラスジ

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ドラスジとは、文字通りドラを含むスジのことである。ドラスジが危険とされるメカニズムはいたって簡単で、多くの打ち手がドラの受け入れを積極的に嫌うことが少なく、場合によっては最後まで残るためである。

(例)ドラ雀頭の亜両門

六索六索七索八索     六筒六筒六筒   四萬三萬赤五萬   中中中   ドラ表示牌 五索
捨て牌 北一索九萬發白四筒七萬二索七筒二筒三索四索
中ポンで白切り、四筒手出しのあと四萬チーで七萬切り、二索七筒は手出し、二筒三索をツモ切りしたあと六筒ポンで四索切り。
すなわち七筒切りの時に六筒六筒四索六索六索七索八索の形でテンパイし、そのあと雀頭の六筒を鳴いて六索九索待ちに受け変え。最後に切った四索疝気スジでもあるドラスジが当たり。

(例)ドラ含みのノベタン

四萬五萬五萬六萬六萬七萬四索五索六索二筒三筒四筒五筒   ドラ表示牌 一筒
捨て牌 一萬西一索二索九筒七筒
雀頭ができないまま手なりでテンパイ。二筒五筒のノベタン。一旦この形を嫌ってしまうと、そのあと赤五筒を引いてもドラの二筒を引いても困るので、おそらくしばらくはこの形のまま膠着。

(例)ドラスジのドラではないほうで単騎待ち

二萬二萬四萬四萬五萬赤五萬三筒三筒七筒七筒六索六索八索   ドラ表示牌 四索
捨て牌 北發一萬七萬一筒三索四筒七索
タンピン志向で手を進めていたところ対子が増えてゆき、途中でタンヤオ七対子に方針転換。七索単騎か八索単騎かの選択で、ドラスジの八索単騎を選択した牌姿。巡目も熟してきており、八索単騎はダマに構えるならそれほど悪い待ちではない。
というのは、五索六索七索八索の形を持っている他家は、手が進めば必ずドラではないほうの八索を切る。あるいは、六索七索八索五索六索七索八索八索と持っているところにドラの五索を引けば、かなりの確率で八索と振り変える。ドラは出てこないが、ドラスジのもう片方は出てきやすいという理屈。
しかし、場合によっては、相手の最終的なテンパイもまたドラスジの待ちになるケースがありうる。その場合、ドラスジ単騎に受けていた牌は相手がテンパイした瞬間にまさに「切り遅れ」の牌になり、それ以降は他の単騎に振り替えた瞬間にフリコミとなる。

暗刻スジ

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暗刻スジ(あんこすじ)とは、自分が暗刻で持っている牌のスジのことである。自分が3枚あるいはそれ以上の枚数を固めて持っていることで、そのスジを受け入れる形を持っている他家はそのスジが最後まで引けず、結果としてそのスジが待ちになっている可能性が高い、という理屈[9]で危険とされる。

(例)暗刻スジが危険に見えるケース

東家 牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背   ドラ表示牌 五索
東家の捨て牌 南九索一筒二索四索三筒二萬五萬南六筒
西家 三索四索四索五索五索八索八索八索四筒四筒四筒六筒七筒   ツモ六索
東家の捨て牌を見ると、序盤に切られた九索四索でドラまたぎの間四ケンができている。五索八索のスジは自分が5枚殺しており、ドラ表示牌にも1枚あるから、残りは2枚である。したがって八索を一枚はずして雀頭にするという選択肢は取りづらい。四筒七筒は4枚殺しているが、宣言牌のまたぎ三筒裏スジでもあり、やはり切りづらい。かといって六筒切りの七筒単騎に受けるのはあまりにも分が悪い。いずれにせよ広いテンパイに受けるならどの牌も切りづらい。しかし、片方が当たるなら当然もう片方は当たらない。そしてこれは重要なことだが、両方とも当たらない場合もまた多いのである。
たしかに親の手牌が下のような一向聴だったとしたら、五索八索四筒七筒のどちらかが当たりになる。
東家 六索七索四萬赤五萬五萬六萬六萬七萬五筒六筒六筒八筒八筒   ツモ?
東家の捨て牌 南九索一筒二索四索三筒二萬五萬南
しかし、下のような牌姿になっている可能性とて決して低くはない。下のいずれの牌姿であれ捨て牌は上のようになる。
東家 六索六索七索七索四萬赤五萬六萬七萬八萬九萬六筒六筒七筒   ツモ七索
六筒切りリーチで五筒八筒待ち。五索八索は入り目かつ当たり目になりえたが、結果的には五索八索四筒七筒も当たらない。
東家 六索六索六索四萬五萬六萬六筒六筒七筒八筒八筒九筒九筒   ツモ八筒
嵌七筒の一盃口ドラ3でヤミテンに構えていたところ八筒を引いて手変わり、六筒切りリーチで六筒七筒八筒八筒八筒九筒九筒エントツ形かつスジ引っかけ五筒八筒九筒待ち。五索八索四筒七筒も当たらない。
東家 六索七索八索四萬赤五萬六萬七萬八萬六筒七筒七筒九筒九筒   ツモ九筒
ドラ面子はとうに完成していて、萬子の三門張と筒子の両門で完全一向聴に構えていたところ九筒引きでテンパイ。六筒切りリーチで待ちは三萬六萬九萬という形。やはり五索八索四筒七筒も当たらない。
以上のように、暗刻スジは危なくないとは言わないが、その危険度はそれほど高いわけではない。自分が殺している暗刻スジとは無関係なところで他家が搭子を構えていることも多い(むしろそっちのほうが多い)からである。仮に自分の殺している暗刻スジが他家の受け入れになっていたとしても、そもそも1つのスジは全部で8枚ある。8枚のうち3枚程度を殺したところで、他家は残り5枚あるうちの1枚さえ引ければよいのだから、暗刻スジを相手の当たり牌だと決めつけるのは短絡的すぎる。むしろ、暗刻を持っているなら、その牌の4枚目が誰の手の内にあるのかということを読むほうがよほど有効である。

また、プロ雀士の堀内正人は2013年4月発行の著書の中で、「単なる無スジと暗刻スジの無スジを比較した場合、暗刻スジの無スジのほうが安全である」と述べている[9]。例えば自分の手の内に

牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背牌背五索五索五索八索八萬

とあって、五索が場に1枚見えている場合、五索八索の筋は5枚見えている暗刻スジである。相手からヒントに乏しいリーチが掛かったとして、暗刻スジの八索と無スジの八萬のどちらが安全か比較する。このとき相手のリーチは、五索が4枚見えているため、

  • 五索六索七索八索 (ノベタン)
  • 三索四索五索六索七索 (単純三門張)
  • 五索五索五索六索七索東東 (エントツ三門張)

といった形でのリーチである可能性はゼロである。無論六索七索の単純リャンメンは大いにありうるし、エントツ形に関しては六索七索八索八索八索牌背牌背という逆の形がありうるが、ノベタンと単純三門張の形はありえない。これに対し八萬のほうは、単純リャンメンをはじめノベタンや単純三門張やエントツ形など、より多くの形がありうる。つまり「待ちになるパターン」がより多い八萬のほうが危険であり、八索のほうが安全であると言える、という論理である。堀内はこのことを「これまでの常識を覆す新セオリー」と述べている[9]。ただしこれはあくまで理論的な話であり、堀内も同所で「ケースバイケースで対応すべき」と締めくくっている。

脚注

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注釈

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  1. ^ 三索は結果的には余剰牌になっているが、七索引きに対応するために途中まで温存され、その結果切り出しが遅くなっている。
  2. ^ 3巡目 三索四索五索六索八索八索赤五筒六筒六筒二萬三萬六萬七萬   ツモ七萬   ドラ表示牌 二萬
    この形から何を切るかだが、七萬をツモ切ってしまうと、そのあと七索 → 一萬四萬と引いた場合に雀頭が六筒になり、赤五筒が出てゆく形での五萬八萬テンパイになる。七萬のかわりに六筒を切っておけば、七索 → 一萬四萬と引いても雀頭が七萬となり、赤の出てゆかない四筒七筒テンパイになる。

出典

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  1. ^ 井出洋介監修『東大式 麻雀点数計算入門』池田書店、2007年、136-137頁。ISBN 9784262107325 
  2. ^ 浅見了. “鈍ら筋”. 2012年6月1日閲覧。
  3. ^ a b c 浅見了. “疝気筋”. 2012年6月1日閲覧。
  4. ^ a b 浅見了. “表筋”. 2012年6月1日閲覧。
  5. ^ a b c 日本プロ麻雀協会. “日本プロ麻雀協会 麻雀用語講座バックナンバー”. 2012年5月31日閲覧。
  6. ^ 浅見了. “裏筋”. 2012年6月1日閲覧。
  7. ^ 大隈秀夫『マージャン金言集 敵に差をつける「読み」と「カン」光文社 カッパ・ブックス、1974年。 p108-p110の「裏面子を読め」という小題で裏スジについて解説があり、その中に「裏面子はふつう裏スジとも呼ばれているが」との記述がある。また、「裏面子は麻雀用語に正確を期するために天野大三によって名付けられた言葉である」との記述もある。
  8. ^ 浅見了. “跨ぎ筋”. 2012年6月1日閲覧。
  9. ^ a b c 堀内正人近代麻雀公認 麻雀 麒麟児の一打 鉄鳴き』竹書房、2013年。ISBN 9784812494400 p56。

関連項目

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