米国の特許制度では、アメリカ合衆国特許制度について説明する。

米国の特許証

米国において特許制度について定めた法律は、米国特許法(35 U.S.C.、Title 35 of the United States Code)である。米国の特許制度は、先発明主義を採用するなど、日本をはじめとする他の国の特許制度と大きく異なる点を有してきた。2011年9月に先願制度への変更を含む「リーヒ・スミス米国発明法」(Leahy-Smith America Invents Act)が米議会で可決され、2013年3月までに順次施行されたこと等により相違点は小さくなっているが、依然として特異な制度が残っている。

概要

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先発明主義

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他の国が先願主義(同じ内容の複数の出願があった場合、先に出願した方が特許される)を採用しているのに対し、アメリカ合衆国は、世界で唯一先発明主義(first-to-invent system、先に発明した方が特許される)を採用してきた。

通常の審査では、出願日(あるいは、優先日)を発明日として審査が行われ、発明日の認定が必要な場合にのみインターフェアレンス手続が行われる。発明日の立証については、通常、発明者ノートブックが用いられる。

先発明主義だと、一方で、時間のかかる出願手続きよりも論文発表を優先できるので、先発明主義の国の研究者は先願主義の研究者よりはやく論文発表が可能になり、有利である。 しかし、他方で、二つ以上の出願が競合した場合、誰が最初にその発明をしたのかを決定するインターフェアレンス(interference)手続を経なければならず、莫大な費用・時間の負担を強いられてきた。また他方で、「先発明主義だ。申請しなくても、自宅(の本棚や引き出しや段ボール箱の奥など、他人にはあらかじめ確認のしようがない場所)にあるノートでも記述があれば認められるのだ」という(世界で他に例を見ない、奇妙な)理屈は、かなり汚い「サブマリン特許」の問題も生み、後から同様のものを(独自に)発明し、(先に同様の発明をした人いた、と)知らずにそれを用いた人々は苦境に追い込まれ(世界標準の先願主義であれば、公式記録を検索(調査)し、発明者に対して使用料の交渉やディスカウント交渉もした上で当該発明を使用したり、当該発明の使用は避けたり、あるいは他の発明を選んだり、あるいは自社での独自開発を検討する 等々等々、複数の選択肢から経済合理的に判断できるのだが、そうしたまっとうな機会が奪われてしまい)、後から「私は先に発明していた」と名乗り出て主張したり裁判に持ち込む者がいて(しかも、当該発明を含む製品が大量に出回った時期、製品を販売した企業が製品の回収を行うのがすでに困難である時期、他の選択肢を選ぶことが困難になる時期を、わざわざ意図的に、悪意を持って待った上で、裁判に持ち込む者がいて)、新製品を開発・販売した企業は莫大な金銭請求をされ、(本当は、ただまっとうな製品開発をし、まっとうな製品販売をしただけなのに)結果として莫大な損失を被ってしまう人や法人が後を絶たなかった。結果として、製品を販売した企業は、まるで「事故」のように、(先願主義ならば起きない)サブマリン特許訴訟に巻き込まれて、莫大な時間的金銭的費用を強いられる、という悪影響を生み続けた。製造企業経営者は新製品の開発や販売をするたびに、そしてそれが成功すればするほど、サブマリン特許関連の莫大な請求が突発的に発生するのではないか、と底知れぬ不安を感じざるを得ず、また製造企業(メーカー)の株主たちにとっても、当該企業の経営実績や財務諸表や株主向け公表資料などの内容などをまっとうに調査・分析したうえで堅実に経営に参加したり、堅実な投資をしたはずなのに、予測不能な「サブマリン特許」による巨額損失によって企業経営がゆきづまってしまったり、企業価値が大きく減じ株価が大幅下落してしまう(時には結果として当該企業が倒産してしまい、所有する株式が無価値になってしまう)という悲惨なこと、が後を絶たなかった。

製品のメーカーや販売者やその株主にとって、悪影響があまりに大きすぎるので、世界標準の先願主義、社会全体にとって やはり合理性のある先願主義へ修正することが長年に渡り検討されてきた。

先願制度を含む改革法案

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アメリカ連邦議会では長年にわたり、先発明主義から先願主義への移行のための特許法改正が検討されてきた。

2006年9月にジュネーヴで開催された「特許制度調和に関する先進国会合」では、米国は、日本、欧州諸国など41カ国と共に先願主義方式を採用することを同意しており、連邦議会では先願主義に関する改正を含む特許法改正案が審議されてきた。

2011年9月8日、先発明制度から先願制度への変更を含む特許法改正案「リーヒ・スミス米国発明法案」(Leahy-Smith America Invents Act)が米上院において可決された。先の6月に下院でも可決されていたもの[1]。法案の施行日は2013年3月16日で、この日以降の有効出願日を有した特許の出願に適用される[2]

この制度は、発明者が発明を公表してから1年以内に出願をした場合、自らの公表や、その間に第三者が行った開示は先行技術にならないという点で、他国の先願制度と異なっている[3]

サブマリン特許

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米国では、以前、特許の公開制度が無く、また、特許権の存続期間も特許権の付与から17年であったため、その点を利用して特許の成立を故意に遅らせるサブマリン特許が問題になった。 現在では、公開制度が導入されるとともに、特許権の存続期間は出願から20年になっている。しかしながら、米国出願以外の外国出願がない出願については公開しないことができるため、一部の米国内出願については最大20年の範囲で同様の問題が起こりうる。また、古くに出願された特許については旧法が適用されるため、旧法が有効だった最後の時期、つまり「リーヒ・スミス米国発明法」が施行された2011年ころから、(旧法での特許有効期限である)17年後にあたる2028年ころまではサブマリン特許の問題が起きる可能性がまだ残っている。その後に、そうした問題がようやくすっきりと解消されることになる。

出願手続

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  • 特許のカテゴリーとして、通常の特許(他のカテゴリーと区別する場合にはutility patentと呼ばれる)のほかに、植物特許(plant patent)とデザイン特許(design patent)を有する。
  • 日本の特許法と異なり、特許を受ける権利という考え方がなく、発明をした者だけが特許出願できる。つまり、特許出願人となれる。
  • 出願書類として、日本の特許法と大きく異なるのは、宣誓書・宣言書(Declaration or Oath)又は譲渡証(Assignment)が必要なことである。発明者が特許出願人であるが、多くの出願は、職務発明であり、出願した権利又は特許権を譲受人(Assignee)に受け渡す旨の書類を提出することができる。
  • 明細書には、最良の実施形態(Best mode)を記載する必要がある。
  • 出願の体をなさなくても出願日を確保できる仮出願(provisional application)制度がある。但し、仮出願後、1年以内に正規の出願(non-provisional application)をする必要がある。
  • 先発明主義と並ぶ特徴的な制度として、情報開示義務制度を有する。特許性に影響を与える先行技術を示した書面であるIDS(Information Disclosure Statement)をアメリカ特許商標庁に出願時から特許が発行されるまで、開示する義務を有する。この義務を怠った場合、権利行使が不能となる場合がある。

審査手続

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  • 審査請求制度を採用しておらず、全ての特許出願が審査される。
  • 先発明主義を取り、単一性に関しては、選択要求、限定要求という制度で代替される。
  • 日本の39条に相当する非法定上の重複特許違反(non-statutory double patenting )を受けた際、特許期間の一部を放棄する放棄書(Terminal Disclaimer)を提出することによって、上記の重複特許違反を解消できる。なお、statutory double patenting の場合、端末放棄書を提出することはできない。
  • 要約(Abstract)の記載については、日本特許法と異なり、審査におけるクレームの解釈や権利解釈の際に参酌されるので留意が必要である。
  • 特許発行後に一定の条件で、再度、審査される再審査制度(re-examination system)がある。

特許要件

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101条
101条は、特許となる対象の発明を規定している。日本特許法の第29条1項柱書に相当する。
102条
102条は、特許要件としての新規性(novelty)を定めている。日本特許法の第29条第1項及び第30条のような規定に相当する。
103条
103条は、特許要件としての非自明性(non-obviousness)を定めている。日本特許法の第29条第2項に相当する。
112条
112条は、特許要件としての記載要件を定めている。日本特許法の第36条に相当する。

継続的出願

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継続的出願(continuing application)は、日本特許法の分割出願に相当するものであるが、米国特許法では、継続出願(continuation application)と分割出願(divisional application)とを区別している。分割出願は、主に選択指令等(election requirement)の際、同一視できない発明として、別個に出願できるものであり、ダブルパテントの規定(statutory double patenting(法定重複特許) とnon-statutory double patenting非法定重複特許 )を受けない。 その他に米国特有の制度として、一部継続出願(Continuing-In-Part Application)というものがある。これは、出願継続中であれば、いつでも、新規な発明とともに、先の出願の優先権を伴って、出願できる制度である。

継続審査請求

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再発行出願・再審査出願

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特許期間の延長

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権利期間を出願から20年間に制限したことに対する補償として、審査期間が長引く他、特許庁のミスなどにより出願から特許発行までの期間が標準より長い場合に、遅れた分だけ権利期間を延長する制度。出願人の懈怠により遅れた場合はその分短縮される。1000日以上権利期間が延長される例もある。

脚注

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関連項目

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外部リンク

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