逆温度(ぎゃくおんど、英語: inverse temperature) は、統計力学において定義される物理量。統計集団を用いて平衡状態を記述する際、パラメーターとして現れる。逆温度β絶対温度Tボルツマン定数kBを用いて次のように定義される[1]

逆温度
thermodynamic beta, inverse temperature
量記号 β
次元 L −2 M −1 T 2
SI単位ジュール (J−1)
CGS単位エルグ (erg−1)
テンプレートを表示

統計力学における定義

編集

統計力学では、逆温度βは接触した二つのの平衡状態を考えることで定義される。

熱的に接触した二つの系1と2を考え、それぞれのエネルギーをE1E2とする。E1E2の和を一定であるとしてEとおく。それぞれの系の状態数をΩ1、Ω2とすると、状態数Ωiはエネルギー Ei を含む関数であるので、二つの結合した系の状態数は次のように表せる。

 

ここで、平衡状態に達した系の状態数は停留値英語版をとると仮定すると、平衡状態において上式の両辺をE1で微分して、

 

となる。一方、E1 + E2 = EEは定数)であるので、

 

となり、これを用いると、

 

すなわち、

 

となる。この関係式よりβを次のように定義する。

 

熱力学との関係

編集

上の項で統計力学的に定義したβを、熱力学の関係式と比較することで、逆温度βと絶対温度Tの関係式が求まる。

エントロピーの定義式

 

より、lnΩβの定義式へ代入すると、

 

となる。これを熱力学の公式

 

と比較すると、βTの関係式が次のように求まる。

 

脚注

編集
  1. ^ 田崎 p.112

参考文献

編集
  • 田崎晴明『統計力学Ⅰ』培風館、2008年。ISBN 978-4-563-02437-6 

関連記事

編集