コンテンツにスキップ

「高等学校物理基礎/熱」の版間の差分

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
削除された内容 追加された内容
セルシウス温度: これは旧定義で、現在はボルツマン定数を使った定義に置換わっています。
タグ: 2017年版ソースエディター
編集の要約なし
 
(3人の利用者による、間の4版が非表示)
38 行 38 行


なお、熱量の単位にはジュール(J)の他に、'''カロリー'''(記号はcal)という単位もある。カロリーは、水1gの温度を1K上昇させるのに必要な熱エネルギーのことである。栄養学の分野ではカロリーが用いられることが多い。
なお、熱量の単位にはジュール(J)の他に、'''カロリー'''(記号はcal)という単位もある。カロリーは、水1gの温度を1K上昇させるのに必要な熱エネルギーのことである。栄養学の分野ではカロリーが用いられることが多い。
:※ 栄養学などで上述の「カロリー」とは別の単位で「大カロリー」という単位もあるが(中学高校の家庭科などでも習うかもしれないが)、しかし高校や大学の「理科」系の教科・科目では「大カロリー」単位は用いない。本来、「大カロリー」単位は「カロリー」単位とは大きさが異なるのだが、しかし、大カロリーの呼称がしばしば「カロリー」と省略されることも多く、混乱の原因になっている。こういった事情もあり、理科では「大カロリー」単位の使用を控えるべきである。また実際、高校や大学の理科では「大カロリー」は紹介されないのが普通。
:「大カロリー」単位の具体的な定義については、混乱の原因になるので、本ページでは紹介しない事にする。





物理学や化学では、特に断りがない限り、熱量の単位には、ジュールを用いることが多い。本書でも、断らない限り、ジュールを用いる。

物理学や化学では、特に断りがない限り、熱量の単位には、ジュールを用いる。


なぜ、ジュールが、高校以降の物理や化学で原則的に用いられるのかというと、国際単位系にエネルギーの単位としてジュールが採用されているからである。
なぜ、ジュールが、高校以降の物理や化学で原則的に用いられるのかというと、国際単位系にエネルギーの単位としてジュールが採用されているからである。


カロリーとジュールの換算は、
カロリーとジュールの換算は、
:1cal = 4.18 J
:1cal = 4.184 J
である。
である。


133 行 133 行


==== 絶対零度 ====
==== 絶対零度 ====
シャルルの観測結果をグラフに書くと、マイナス273℃で、理論上では気体は体積が0になる。このマイナス273℃を'''絶対零度'''(ぜったいれいど、absolute zero)という。絶対零度以下の温度は、測定誤差の範囲程度を除けば、理論上は考えらない。
シャルルの観測結果をグラフに書くと、-273.15℃で、理論上では気体は体積が0になる。この-273.15℃を'''絶対零度'''(ぜったいれいど、absolute zero)という。絶対零度以下の温度は、測定誤差の範囲程度を除けば、理論上は考えらない。
また実験的にも絶対零度以下の温度は、測定誤差の範囲程度を除けば、確認されていない。たとえばマイナス300℃とかマイナス500℃とかは、実在しない。
また実験的にも絶対零度以下の温度は、測定誤差の範囲程度を除けば、確認されていない。たとえばマイナス300℃とかマイナス500℃とかは、実在しない。


なお、現代では、測定によって、絶対零度の、より正確な値がマイナス273.15℃だと、知られている。
<del>なお、現代では、測定によって、絶対零度の、より正確な値が-273.15℃だと、知られている</del><ins>現在、摂氏温度はケルビンから 273.15 を引いたものと定義されているので、絶対零度は(「約」は付かず正しく)-273.15 ℃です</ins>


なお、この節では。計算の都合上、特に断らない限り、絶対零度は273℃として扱うことにする。
なお、この節では。計算の都合上、特に断らない限り、絶対零度は273℃として扱うことにする。


絶対零度のマイナス273℃とは、熱運動の全くない状態である。
絶対零度の-273.15℃とは、熱運動の全くない状態である。


==== 絶対温度 ====
==== 絶対温度 ====
167 行 167 行




なお、273Kが0℃となる。つまり、T<sub>0</sub>=273[K]とすれば、
なお、273Kが0℃となる。つまり、T<sub>0</sub>=273Kとすれば、


:<math>\frac{V}{T} = \frac{V_0}{T_0}</math>
:<math>\frac{V}{T} = \frac{V_0}{T_0}</math>
361 行 361 行
== 内部エネルギー ==
== 内部エネルギー ==
物体が静止していても、物質内の分子は熱運動をしていて、温度が高いほど、その運動が激しくなるのであった。そのため、静止している物体でも、温度による熱運動のエネルギーを持っている。また、静止している物体でも、その物体を構成する分子どうしが起こす分子間引力による位置エネルギーを持っている。
物体が静止していても、物質内の分子は熱運動をしていて、温度が高いほど、その運動が激しくなるのであった。そのため、静止している物体でも、温度による熱運動のエネルギーを持っている。また、静止している物体でも、その物体を構成する分子どうしが起こす分子間引力による位置エネルギーを持っている。
このような物体内部の運動エネルギーや位置エネルギーの総和を'''内部エネルギー'''(ないぶエネルギー、internal energy)という。記号はUで表す。
このような物体内部の運動エネルギーや位置エネルギーの総和を'''内部エネルギー'''(ないぶエネルギー、internal energy)という。記号はUで表す。温度が高いほど熱運動は激しくなるから、温度Tが高くなるにつれて内部エネルギーUも大きくなる


=== 熱力学第一法則 ===
温度が高いほど熱運動は激しくなるから、温度Tが高くなるにつれて内部エネルギーUも大きくなる。

=== 熱力学第一法則 ===
理想気体に、外から熱をあたえたとすると、気体の漏れなどが無ければ、与えた熱量Q[J]の分だけ内部エネルギーU[J]は増加する。
理想気体に、外から熱をあたえたとすると、気体の漏れなどが無ければ、与えた熱量Q[J]の分だけ内部エネルギーU[J]は増加する。
また、外から圧縮などをして力学的仕事W[J]を加えた場合も、その分だけ内部エネルギーは増加する。気体が外部に仕事W[J]をした場合は、その分だけ内部エネルギーU[J]が減る。
また、外から圧縮などをして力学的仕事W[J]を加えた場合も、その分だけ内部エネルギーは増加する。気体が外部に仕事W[J]をした場合は、その分だけ内部エネルギーU[J]が減る。
これらをまとめると、内部エネルギーU[J]の増加量&Delta;U次の公式で表せる。外から加えた熱量をQ[J]として、外部との力学的仕事のやりとりをW[J]とした場合、
これらをまとめると、内部エネルギーU[J]の増加量&Delta;U、外から加えた熱量をQ[J]として、外部との力学的仕事のやりとりをW[J]とした場合、
:<math>\Delta U =Q-W\Longleftrightarrow Q=\Delta U+W</math>

:<math> \Delta U =Q+W </math>

となる。
となる。
(上式のWの符号は、気体が外部から圧縮をされて力学的仕事をされる場合は W>0 、気体が膨張して外部力学的仕事をる場合は W<0 とする。)
(上式のWの符号は、気体が膨張して外部力学的仕事をる場合は<math>W>0</math>、気体が外部から圧縮をされて力学的仕事をされる場合は<math>W<0</math>とする。)


この式<math> \Delta U =Q+W </math>は、気体の漏れなどが無ければ、必ず成り立つ。この式を、'''熱力学第一法則'''(first law of thermodynamics)という。
この式<math> \Delta U =Q-W </math>は、気体の漏れなどが無ければ、必ず成り立つ。この式を、'''熱力学第一法則'''(first law of thermodynamics)という。


なお、この記事では、Wの符号の向きとして、気体にされた仕事を正の向きに取ったが、他書によっては気体が行った仕事を正の向きに取る場合もある。その場合、式のWの符号がマイナス変わるので注意のこと。
なお、この記事では、Wの符号の向きとして、気体が行った仕事を正の向きに取ったが、他書によっては気体にされた仕事を正の向きに取る場合もある。その場合、式のWの符号がるので注意のこと。Wの符号をどちらに定義するにせよ、気体が圧縮などの仕事をされたら、内部エネルギーは増え、気体が膨張して外部に仕事をしたら内部エネルギーは減る
Wの符号をどちらに定義するにせよ、気体が圧縮などの仕事をされたら、内部エネルギーは増え、気体が膨張して外部に仕事をしたら内部エネルギーは減る。


=== 断熱変化 ===
=== 断熱変化 ===
469 行 464 行


となる。(以上、導出。)
となる。(以上、導出。)

[[カテゴリ:物理学]]

2024年9月23日 (月) 16:39時点における最新版

温度

[編集]
ブラウン運動の概念図(シミュレーション)。黒色の媒質粒子の衝突により、黄色の微粒子が不規則に運動している。

物体の温度(temperature)とは、実はその物体を構成している、それぞれの分子や原子の運動の強さのことである。この温度による運動は不規則である。

温度が低く固体の場合は熱運動(ねつうんどう、thermal motion)の強さが弱いので、分子は分子どうしの引力で抑えこまれ、物体は固体状の形状を保つ。 固体でも、分子は、結晶の格子点を中心に運動している。液体では、外部から力を加えると、体積は変わらないものの、流動して容易に形を変える事ができる。 固体を加熱するなどして温度を高めると、いずれ、固体から液体へ変わる。これは、熱運動が強まり、もはや結晶の構造を取るのが不可能になったからである。 液体を加熱していくと、いずれ、気体へ変わる。気体は熱運動が、分子間力よりもはるかに大きく、もはや、各分子がバラバラに離れて行動している状態である。したがって、液体から固体になると体積が増える。

なお、液体から気体への変化にかぎらず、一般に物体は温度が上がると、ほとんどの物質で体積が増える。

ここでは、温度とは、物質を構成している分子や原子の運動がどのくらい強いかという、状態を表す数値だということを理解して頂きたい。

物体の状態を表す、固体・液体・気体といった状態のことを(そう、phase)という。固体のことを固相と言ったり、液体のことを液相と言ったり、気体のことを気相と言ったりする場合もある。


セルシウス温度

[編集]
セルシウス温度計

温度の単位として実用上、多く用いられている℃単位の「摂氏温度」(せっしおんど)は、セルシウス温度(Celsius temperature)とも言う。

このセルシウス温度では、温度の値の基準として、大気圧 1atm(=約101.3kPa。Paとは圧力の単位のひとつ。)のもとで、純水と氷の共存する温度を0℃と定め、また、同じ大気圧1atmのもとで純水が沸騰するときの温度を100℃と定めらている。 そして、0℃と100℃の間の温度を100等分している。

これは旧定義で、現在はボルツマン定数を使った定義に置換わっています。

温度計の種類にアルコール温度計や水銀温度計などあるが、これらは物体の温度が上がることによる膨張を、温度の測定器として利用した器具である。 いっぽう、温度があがることで体積が膨張するのは、なにも液体に限らず、気体や固体でも温度が上がれば膨張する。

熱量

[編集]

1kgの物体と、べつの1kgの物体を合わせて、重量計に載せれば、測定値は2kgになる。だが、容器に入った10℃の水に、等量の10℃の水を注いでも、20℃にはならない。

いっぽう、温度を上げるには、エネルギーが必要だが、エネルギーは足しあわせができる。 このような理由から、加熱された物体に蓄えられた熱エネルギーと温度とを区別する必要がある。 そこで、熱エネルギーのことを熱量(heat quantity)といい、これは温度とは区別する。

熱量の単位は、熱量はエネルギーの一種なので、力学的エネルギーの単位(ジュール:J)と同じであり、熱量の単位にジュール(記号はJ )を用いる。


なお、熱量の単位にはジュール(J)の他に、カロリー(記号はcal)という単位もある。カロリーは、水1gの温度を1K上昇させるのに必要な熱エネルギーのことである。栄養学の分野ではカロリーが用いられることが多い。



物理学や化学では、特に断りがない限り、熱量の単位には、ジュールを用いる。

なぜ、ジュールが、高校以降の物理や化学で原則的に用いられるのかというと、国際単位系にエネルギーの単位としてジュールが採用されているからである。

カロリーとジュールの換算は、

1cal = 4.184 J

である。

気体と温度との関係

[編集]

ここでは、気体の膨張を利用した温度計について、説明したい。気体には様々な性質があるが、この節では、温度測定に必要なことを主に説明する。 まず、気体の力学的な性質について説明する。

大気について考えよう。大気とは地球を包む空気の層のことである。空気にも重さがあるので、大気の中にいる物体には、その物体の上方にある空気の重さによって、圧力がかかる。 我々は大気圧にさらされている。一般に、気体の力は、分布して力が掛かるので単位面積あたりの力で考える必要がある。この単位面積あたりの力を圧力(あつりょく、pressure)という。圧力の単位はN/m2で表す。 Nとは力の単位のニュートンであり、1ニュートン(1N)とは、質量1kgの物体に加速度1m/s2を増加できる力のことである。 mは長さの単位のメートルのことである。面積あたりの力を考えているので、mが2乗されてm2になっている。

このN/m2の単位を、そのままでも用いることもあるのだが、この単位N/m2のをPaと表す。Paの読みかたは、「パスカル」(Pascal)と読む。 1N/m2と1Paの大きさの基準は同じである。 つまり

1N/m2 = 1Pa

である。

なお、圧力の単位は、他にもある。 atmという大気圧の標準値を基準に考えた単位がある。1atmの大きさの基準は、

1atm = 1.013×105 N/m2= 1.013×105 Pa

である。 なお、実際の大気圧の測定値は、必ずしも1atmにピッタリとは限らない。 「atm」とはatmospherという「大気」を意味する語の略語である。

物理学では、0℃で1atmの状態を標準状態と呼び、物理学や化学などの分野で、常温付近での実験の測定結果の比較などの際に、広く用いられている。つまり、0℃で 1.013×105 Paの状態を標準状態という。 なお、わざわざ「物理学や化学などの分野で、・・・広く用いられている」というように、「物理学や化学などの分野で」と書いたのは、他の業界では、測定結果の比較の際に、べつの温度やべつの圧力を用いる場合があるからである。


ヘクトパスカル

なお、大気圧をパスカル表示したときに、指数部の桁数が105とやや計算には大きくて不便なので、補助単位として、気象分野ではヘクトパスカルを用いる場合がある。ヘクトパスカルはhPaと表す。

ヘクトとは100(百)を表す接頭語である。 つまり、

1hPa = 100Pa

である。 1atmをヘクトパスカルで換算すれば、

1atm = 1013 hPa

である。

mmHg

なお、水銀柱の上部の液面からの深さ760mmの底部に掛かる圧力の大きさが1atmの大きさに、ほぼ等しいので、この水銀柱の760mm深さの圧力を760mmHgというふうに書く。Hgとは、化学式の水銀の記号Hgに由来している。このように圧力の単位にはmmHgという単位もある。 1mmHgと1atmの大きさの関係は、

1atm = 760 mmHg

という関係である。


気体の熱膨張

[編集]

さて、この節で扱うのは、気体と温度との関係であった。たとえば、ピストンを用いて気体を封じたシリンダーなどで、内部の気体を熱した時に、内部気体がピストンを押して容積を膨らますことからの振る舞いを考えれば、気体は熱すれば膨張するのが分かるだろう。

(ここでは、シリンダーの細かい仕組みには考えない。シリンダーとピストンとの摩擦を減らすために多くの工夫がなされている。自動車などで実用されているのピストンシリンダの仕組みは、説明すると、けっこう長くなるので、この科目では省略する。興味のある人は、工業高校の科目「原動機」などを参照されたい。)

この節では、ピストンやシリンダといった場合は、小学校や中学校の理科の実験などで扱ったような、注射器のような形のピストンで、直感的に考えて構わない。

これらピストンとシリンダーの組み合わせと、似たような原理の装置で、気体の圧力が測定できる。ピストンに外部から、何らかの機構で力を加え、外部の力を変化させれば、その外部の力と内部の気体による力とが釣り合うときの外部の力を調べれば、内部の圧力も計算によって求まる。

ボイルの法則

[編集]
ボイルの法則
縦軸が圧力。横軸が体積。値はロバート・ボイル本人のオリジナルデータ。

ボイルという人物が、一定温度での気体の圧力と気体の体積との関係を調べたところ、法則性を発見した。

外部から、ピストンを押しこむなどして、気体の体積を半分にすると、気体の圧力が2倍になる。気体の体積をにすると、圧力が3倍になる。同様に、気体の体積をにすると、圧力が4倍になる。 以下、気体体積のでも同様に続く。べつに気体体積は整数倍でなくても、

とか、どんな数字でも、同様の法則が成り立つ。

これ等をまとめると、気体の圧力p[Pa]と体積V[m3]との関係には、以下の関係式がある。

pV=K

(Kは定数)


この関係式を、ボイルの法則(Boyle's law)という。

シャルルの法則

[編集]
シャルルの法則の概念図
縦軸は体積で、このグラフではミリリットル単位。横軸の温度はこのグラフでは℃単位。

さて、シャルルという人物が、温度と容積の関係を測って研究したところ、法則性を発見した。大気圧の状況下では、気体を1℃温、上昇させると、0℃の体積のずつ膨張することを、シャルルは発見した。

これを式で表すと、0℃のときの気体の体積をV0として、一般の温度の体積をVとすると、温度t[℃]のときの関係式は、

であることを、シャルルは発見した。

絶対零度

[編集]

シャルルの観測結果をグラフに書くと、-273.15℃で、理論上では気体は体積が0になる。この-273.15℃を絶対零度(ぜったいれいど、absolute zero)という。絶対零度以下の温度は、測定誤差の範囲程度を除けば、理論上は考えらない。 また実験的にも絶対零度以下の温度は、測定誤差の範囲程度を除けば、確認されていない。たとえばマイナス300℃とかマイナス500℃とかは、実在しない。

なお、現代では、測定によって、絶対零度の、より正確な値が-273.15℃だと、知られている現在、摂氏温度はケルビンから 273.15 を引いたものと定義されているので、絶対零度は(「約」は付かず正しく)-273.15 ℃です

なお、この節では。計算の都合上、特に断らない限り、絶対零度は273℃として扱うことにする。

絶対零度の-273.15℃とは、熱運動の全くない状態である。

絶対温度

[編集]

温度の新しい単位として、マイナス273℃を基準とした、新しい温度単位を考える。

絶対温度(ぜったいおんど、absolute temperature)を導入し、単位をケルビンとして、単位の記号は[K]で、絶対温度をT[K]と表した場合、ケルビン単位の絶対温度T[K]とセルシウス温度t[℃]との関係は、

T = t +273

とする。

絶対温度を用いて、気体の膨張式が

と書け、結論をまとめると、

となる。 変数どうしをまとめれば、

である。


なお、273Kが0℃となる。つまり、T0=273Kとすれば、


となり、つまり、は、大気圧のもとでは、定数であることがわかる。 この体積Vと温度Tの関係式は、なにも気体の圧力が大気圧でなくても成り立つことが、実験でも確認されて、分かっている。

定数をK2とまとめれば、


シャルルの法則(Charles's law)という。

なお、ケルビン温度の由来となった"Kelvin"とは人名で、彼は物理学者である。

ボイル・シャルルの法則

[編集]

ボイルの法則とシャルルの法則を、組み合わせることを考えてみよう。まずボイルの法則とは、圧力をp[Pa]として体積をV[m3]とすれば、ボイルの法則は、

   K1は定数。

であった。


シャルルの法則とは、温度をT[K]とすれば、

   K2は定数。

であった。(ここで、Tの単位は[K]である。[℃]では無いので間違えないように。)


これら、二つの法則から、どうやら、


   K3は定数。


という法則が、成り立ちそうな予感がしそうだろうと、読者は思うだろう。実際に、この法則は成り立つと、実験的に確認されている。

そこで、気体における法則の式、

   K3は定数。


を、ボイル・シャルルの法則(Boyle-Charles law)という。


このボイル・シャルルの法則は、気体が、「漏れ」などはしないかぎり、つまり容積の内部気体の物質が、一定量の場合に成り立つ。


気体の状態方程式

[編集]
モル

分子の数6.02×1023個を1モルと言う。モルの記号はmolである。もし、読者がモルについて知らなければ、化学Iを参照のこと。

アボガドロの法則

気体は、分子の種類によらず、温度0℃で圧力101kPaでは、分子量が1molあたり、体積22.4リットル(l)を取ることが、実験的に知られている。分子量が2molになれば、温度と圧力が同じなら、体積は2倍になるというふうに、体積は分子量に比例をする。

これをアボガドロの法則(Avogadro's law)という。

なお、22.4lをメートル単位で表せば、2.24×10^-2[m3]である。(1000L = 1m3 から導ける。)

気体の状態方程式

そこで、アボガドロの法則をボイル・シャルルの法則と組み合わせることを考えよう。

圧力をp[Pa]、体積をV[m3]、分子量をn[mol]、温度をT[K]としよう。

まず、ボイル・シャルルの法則とは、

   K3は定数。

という法則であった。

アボガドロの法則による、温度T一定かつ圧力P一定の条件下で、分子量nと体積Vが比例するということから、

   Rは定数。

と書ける。定数を、わざわざ R と書いたのは、この値は分子の種類によらず、一定だからである。また、Rは圧力にもよらず一定であり、温度や体積にもよらず一定である。つまり、Rは完全に定数である。この定数Rを普遍気体定数(universal gas constant)あるいは単に気体定数という。

この普遍気体定数Rの値は実験で求められ、測定結果は単位を [J/(mol・K)]で表した場合は

R = 8.31 [J/(mol・K)]

である。 分母のTを移項すれば、

と書ける。 この式 気体の状態方程式という。

一般に、気体の圧力・体積・温度の関係を計算する場合は、ボイルの式やシャルルの式などから計算するのではなく、気体の状態方程式から、必要な計算式を導く。

(※ 高校物理の範囲外、化学の範囲: ) 気体の状態方程式には、適用の限界があり、容器内に高濃度に封入された気体では誤差が大きくなってしまう。つまり、比較的に濃度のうすい気体でしか、気体の状態方程式は精度よくは使うことが出来ない。(なので大学入試問題とかでは通常、うすめの濃度になっている。)
高濃度の気体を精度よく計算でき公式としては「ファンデルワールスの方程式」があり、高校理科でも化学2の参考書(チャート式 化学)などでそのファンデルワールス方程式を習う(詳しくは 高等学校化学II/気体の性質 )。物理の範囲外なのでファンデルワールス方程式については当ページではこれ以上は言及しない。
※ ファンデルワールス方程式を用いなくても、物理2の熱力学で習う「気体分子運動論」などは学習可能であるし、実際に高校物理2の検定教科書でのカリキュラムはそうなっている。とりあえず、気体状態方程式には、高濃度では誤差が大きくなるという実験事実があるという、公式の適用限界がある事を読者は知っておけばいい。


状態方程式の変形

[編集]
モル濃度との関係で場合

なお、体積あたりのモル濃度をc[mol/m3]とすれば、 C=n/V なので

とも書ける。 こう書くと、気体の圧力はモル濃度に比例するとも考えられる。

密度との関係で表した場合

また、気体の密度ρ[kg/m3]は、分子1モルあたりの質量(これを分子量という。)をMとすればとなるので、この密度ρを用いて、状態方程式を表せば、

である。

ランフォードの考察

[編集]

今でこそ、熱はエネルギーの形態の一つであることが分かっている。しかし、昔の人類はそうでなかった。 ヨーロッパやアメリカでは、かつては力学的な仕事と熱とが別の量だと考えられていて、熱は「熱素」という架空の物質による現象だと思われていた時代があった。この熱素が熱や温度の原因であると考える仮説を熱素説という。 ランフォードという、1753年生まれのアメリカ人の科学者が、この熱素説に疑いを抱いた。彼は仕事柄、大砲の砲身の金属を削る実務に関わったことがあった。この金属を削る際の観察で、削るたびに金属から熱が発生することから、むしろ「削りの仕事こそが熱の発生原因であろう。熱素説は間違いだ。」と考え、熱素説を疑った。 彼は金属の削りくず(けずりくず)の比熱(ひねつ、specific heat)を実験で調べ、それが削る前の比熱と変わらないという実験結果から、「もしも熱素の流出が熱の原因ならば、削り屑からは熱素が流出しているので、比熱が変わらないと、おかしい。実験によると、削り屑の比熱は、もとの金属の比熱と変わらない。だから熱素説は間違いだ。」と結論づけた。

イギリスの化学者ハンフリー・デービーも、このランフォードの意見に賛同し、デービーも1799年、2個の氷を摩擦すると熱が発生して溶解するという実験を行った。

仕事当量

[編集]
落下する“おもり”の位置エネルギーを利用して、水を攪拌して場合の"温度"を調べることで、温度と位置エネルギーの関係を調べるための、ジュールによる実験装置。

ジュールが、水と温度を求めるため、右図のような羽根車で水をかき回す実験装置を用いて実験したところ、水の温度を1℃あげるには、位置エネルギーが4.19[J]ほど必要だということが分かった。 これは運動エネルギーや位置エネルギーといった力学的な仕事と、熱との関係を調べたので、4.19[J/cal]のことを熱の仕事等量という。

比熱

[編集]

水の場合は、1K上昇させるのに1gあたり4.19Jの仕事が必要ということが分かっているが、他の物質では、この値は異なる。物体の温度を1K上昇させるのに必要なエネルギーは、物体ごとよって異なる。

そこで、次のような、新しい物性値が定義された。

1gの物質を、温度を1Kだけ上昇させるのに、必要な熱量を、比熱(ひねつ、specific heat)という。比熱の単位はジュール毎グラムケルビン J/(g・K) である。

あるいは1kgあたりの熱量によって比熱を定義する場合もあり、この場合は単位は J/(kg・K) である。

式で表すと、物体に加えた熱量をQ[J]とし、その質量をm[g]とし、その物体の比熱をc[J/(g・K)]とし、その物体の温度上昇をΔT[K]とすれば、

Q = mc ΔT

である。


比熱の大きいほど、温度が変化しづらい。比熱の大きほど、温まりにくく、冷めにくい。

熱容量

[編集]

ある物体を1K上昇させるのに必要な熱エネルギーを熱容量(ねつようりょう、heat capacity)という。熱容量の単位は[J/K]である。(ジュール毎ケルビン)。

定義を数式で表せば、物体に加えた熱量をQ[J]とし、その物体の熱容量をC[J/K]とし、その物体の温度上昇をΔT[K]とすれば、

Q = C ΔT

である。


比熱と熱容量の関係

比熱c[J/(g・K)]と熱容量C[J/K]の関係は、質量をm[kg]とすれば、

C=mc

である。

熱伝導

[編集]

二つの固体の物体があったとして、その二物体は温度が異なるとしよう。高温の物体と、低温の物体とを接触させると、高温の物体から熱が低温の物体へ移動し、高温の物体は冷えて、低温の物体は温まる。 これは熱が、高温物体の側から、低温物体の側へと伝わったことになる。 この現象を熱伝導(heat conduction)という。

なお、比熱の概念と、熱伝導のしやすさは、べつの概念である。実際に物理学では、(高校物理や大学入試では立ち入らないが、)熱伝導のしやすさを表す物性値として、「熱伝導率」あるいは「熱伝導度」という物性値が存在する。間違えて、比熱と熱伝導とを混同しないように、注意が必要である。

熱の伝わり方

[編集]

熱(heat)は、外部から手を加えなければ、自然と温度の高い所から、温度の低いところへと移動していく。 その結果、温度の高かった場所は、熱を手放していき、だんだんと温度は低くなる。逆に、周囲と比べて温度の低かった場所は、しだいに温度が高くなる。そして、いつしか、ふたつの箇所の温度は同じになる。このような熱の移動が無い状態を熱平衡(ねつへいこう、thermal equilibrium)という。 いっぽう、熱が、温度の低いところから、温度の高い所へと自然に移動することは、無い。

さて、静止した物体での熱の伝わり方には、大きく分ければ、熱伝導対流熱放射の三つに分けられる。


対流

[編集]
上と下とで温度差のある流体での、対流の一例。下から入力された熱は、対流によって流体上部へと運ばれ、流体表面からの熱放出によって冷やされた後は流体下部へと潜る。

液体と気体とを総称して流体(fluid)という場合がある。文字通り、液体や気体は流れる事ができるから、流体という。静止している場合でも、便宜上、流体という場合がある。特に流体が静止していることを、呼称で明示したい場合には、静止流体などと呼ぶ場合もある。

気体や液体などの流体の一部に温度差があり、その流体が運動をすると、熱を持った物体そのものが運動をするので、結果的に熱を運ぶことになる。このような場合は、熱伝達(ねつでんたつ、heat transfer)といい、熱伝達と熱伝導とは区別される。(日本語での名前が似ているので混同しないように注意。) とくに、その運動する流体の、運動の発生源が温度差による密度変化による場合は、この流体の運動は循環運動をする場合が多い。なぜなら、暖められて密度が軽くることで浮力が発生し、そのため暖められた流体が上方に移動し、かわりに元から上部にあった冷たい流体が押しのけられ、押しのけられた冷たい物体は重力によって降りてくる。このように、温度差によって生じる流体の循環運動のことを対流(convection)という。

熱放射

[編集]
可視光の熱放射が、このような熱された金具で見ることができる。赤外線領域での放射は、人間の目と画像で撮影されたカメラには見えないが、赤外線カメラでは撮影できる。

実は、絶対零度以外の温度を持つ、どの物体も、電磁波を出している。その放射する電磁波が、人間の眼に見えないのは、単に放射電磁波の周波数が、人間の目の可視領域で無いからという理由である。 この放射する電磁波は、常温では周波数が低く、赤外線の領域である。高音になるほど、物体の放射電磁波の周波数が高くなり、可視領域へと入っていく。溶鉱炉などで、高温で溶けた金属が光るのは、この放射光によるものである。このような高温物体から電磁波がでることを熱放射(thermal radiation)、あるいは単に放射という。熱輻射(ねつふくしゃ)と言う場合もある。 この放射電磁波によっても、エネルギーが高温側の物体から低温側の物体に輸送される。低温側からも放射電磁波が出るが、高温側の物体のほうが放射電磁波のエネルギーが大きいので、差し引きして、結局は、高温側から低温側へとエネルギーが移る。


内部エネルギー

[編集]

物体が静止していても、物質内の分子は熱運動をしていて、温度が高いほど、その運動が激しくなるのであった。そのため、静止している物体でも、温度による熱運動のエネルギーを持っている。また、静止している物体でも、その物体を構成する分子どうしが起こす分子間引力による位置エネルギーを持っている。 このような物体内部の運動エネルギーや位置エネルギーの総和を内部エネルギー(ないぶエネルギー、internal energy)という。記号はUで表す。温度が高いほど熱運動は激しくなるから、温度Tが高くなるにつれて内部エネルギーUも大きくなる。

熱力学第一法則

[編集]

理想気体に、外から熱をあたえたとすると、気体の漏れなどが無ければ、与えた熱量Q[J]の分だけ内部エネルギーU[J]は増加する。 また、外から圧縮などをして力学的仕事W[J]を加えた場合も、その分だけ内部エネルギーは増加する。気体が外部に仕事W[J]をした場合は、その分だけ内部エネルギーU[J]が減る。 これらをまとめると、内部エネルギーU[J]の増加量をΔU、外から加えた熱量をQ[J]として、外部との力学的仕事のやりとりをW[J]とした場合、

となる。 (上式のWの符号は、気体が膨張して外部に力学的仕事をする場合は、気体が外部から圧縮をされて力学的仕事をされる場合はとする。)

この式は、気体の漏れなどが無ければ、必ず成り立つ。この式を、熱力学第一法則(first law of thermodynamics)という。

なお、この記事では、Wの符号の向きとして、気体が行った仕事を正の向きに取ったが、他書によっては気体にされた仕事を正の向きに取る場合もある。その場合、式のWの符号が逆になるので注意のこと。Wの符号をどちらに定義するにせよ、気体が圧縮などの仕事をされたら、内部エネルギーは増え、気体が膨張して外部に仕事をしたら内部エネルギーは減る。

断熱変化

[編集]

外部との熱のやりとりがない状態で、気体の圧力・体積・温度などの状態を変化させることを断熱変化(だんねつへんか)あるいは断熱過程という。断熱変化のとき、第一法則の式(ΔU=Q+W)は、Q=0なので、

である。 具体的に断熱変化と見なせる場合は、断熱性能の高い容器などに入れた気体で、特に熱源による加熱をせず、また冷却源による冷却などもしない場合は、気体の状態変化は断熱変化と見なして良い。また、断熱性能が通常の容器でも、特に熱源による加熱をせず、また冷却源による冷却などもしない場合なら、熱が伝わるにはある程度の時間が掛かるので、短時間的には断熱変化と近似しても良い場合もある。

定積変化

[編集]
定積変化

体積を変えずに温度や圧力を変化させることを定積変化という。他の呼びかたでは、「等積変化」や「等容変化」や「定容変化」という場合もある。物理では定積変化という呼び方が一般に用いられるので、本記事でも、その呼び方に合わせる。 体積が変わらないので、仕事Wは W=0 である。

等温変化

[編集]
等温変化。
黄色の面積が系が外部にする仕事になる。

気体が状態変化をするとき、温度が一定のまま、状態変化をすることを等温変化という。外部とは熱のやりとりが必要である。なぜならば、もし熱のやりとりが無いと、気体が膨張して外部に仕事をした場合は、仕事をした分だけ内部エネルギーが減ってしまい温度変化をしてしまう。だから、等温変化には外部との熱のやりとりが必要である。理想気体の場合は、

一定

である。

定圧変化

[編集]
定圧変化。
図の黄色の面積がW=PΔVとなる。

気体の圧力が一定のまま、体積や温度などの状態が状態変化をすることを定圧変化という。等圧変化ともいう。呼び方は、本記事では、なるべく「定圧変化」を用いるとする。

このとき、気体が行った力学的仕事Wと体積Vの関係は、

である。

熱膨張率

[編集]

物体は温度が上昇すると体積が膨張する。これを熱膨張(ねつぼうちょう、thermal expantion)という。温度が1[℃](あるいは1[K])上昇するに連れて体積の増加する割合を体膨張率(たいぼうちょうりつ、coefficient of cubical expansion)という。 いっぽう、長さが、温度の1℃増加あたりに、長さの膨張する割合を、線膨張率(せんぼうちょうりつ、coefficient of linear expantion)という。

金属は熱伝導率が高い。中でも銀Agが最も高く、Cu、Au、Al、などがこれに次いでいる。 線膨張率はプラスチックが最も高い。 線膨張率をαとして、長さをL、加熱後の長さの変化量をΔL、加熱後の温度上昇をΔTとすると、定義より

の関係式が成り立つ。

膨張量が小さい場合の近似式として、線膨張率αと体積膨張率βとの間に、以下の近似式が知られている。

  • 導出

導出は、物体の体積をV、その変化量をΔVとすると、

および

の関係より、

さらに、近似式

により、

両辺から1を引き、この問題設定では体積膨張率βが、

であり、線膨張率αが

なので、結局は

となる。(以上、導出。)