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「ケヤキ」の版間の差分

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'''ケヤキ'''(欅{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}、[[学名]]: {{Snamei||Zelkova serrata}})は、[[ニレ科]][[ケヤキ属]]の[[落葉高木]]。
[[画像:Zelkova Spring.jpg|thumb|200px|<!--ケヤキの-->樹形(3月)]]
[[画像:Sennen keyaki (thousand-year-Japanese-zelkova).JPG|thumb|200px|<!--東京都中野区立桃花小学校前の「千年けやき」の-->葉と枝(4月)]]
[[画像:Zelkova serrata in Oasa HigashimachiPark Ebetsu, Hokkaido 1.jpg|thumb|200px|<!--ケヤキの-->樹形(6月)[[北海道]][[江別市]]大麻東町公園]]
'''ケヤキ'''(欅{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}、[[学名]]: {{Snamei||Zelkova serrata}})は、[[ニレ科]][[ケヤキ属]]の[[落葉高木]]。'''ツキ'''(槻)ともいう<ref name="YList"/>。日本では代表的な広葉樹の一つで、枝ぶりが整った樹形が好まれて植栽や街路樹にも使われる。材は建築材として良材で、寺社建築によく使われる


== 名称 ==
== 形態 ==
[[落葉広葉樹]]の高木で{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}、高さ15 - 25[[メートル]] (m) になり{{sfn|林将之|2008|p=22}}{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}、大きなものでは幹径3&nbsp;m、高さ30 - 50&nbsp;mほどの個体もある{{sfn|辻井達一|1995|p=130}}。開けた場所に生える個体は、枝が扇状に大きく斜めに広がり、独特の美しい樹形になる{{sfn|田中潔|2011|p=114}}{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。[[樹皮]]は灰白色から灰褐色で、若木のうちは滑らかで横長の皮目があるが{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}、老木になるとモザイク状や鱗片状、あるいは大きく反り返って剥がれるなど、剥がれ方は一様ではなく、幹の表面はまだら模様になる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。一年枝は褐色で無毛、ジグザグ状に伸びて皮目がある{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。
[[和名]]「ケヤキ」の由来は、「ケヤ」は古語で「すばらしい」という意味があり、「けやしの木」が転訛したものだといわれる{{sfn|亀田龍吉|2014|p=87}}。[[中国語|中国名]]は「櫸樹」<ref name="YList"/>。


花期は4 - 5月ごろ{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。開花は目立たないが、葉が出る前に本年枝に数個ずつ薄い[[黄緑色]]の花が咲く{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}。[[雌雄同株]]で雌雄異花。本年枝の下部に数個ずつ[[雄花]]が、上部の[[葉腋]]に1 - 3個の[[雌花]]がつき{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}、雄花と雌花をつけた短い枝を「着果短枝」という{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。花後に長枝が伸びて、本葉が出る{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。
== 分布 ==
[[朝鮮半島]]、[[中国]]、[[台湾]]と[[日本]]に分布し{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}、日本では[[本州]]、[[四国]]、[[九州]]に分布する<ref>{{Cite book|和書|author=中村 享|title=万葉鉢づくり|date=1990-06-30|year=|accessdate=|publisher=立風書房|isbn=4-651-86010-9|pages=62, 63}}</ref>。山野に生え{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}、暖地では[[丘陵]]部から[[山地]]{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}、[[寒冷地]]では[[平地]]まで自生する


[[葉]]は[[互生]]し、葉身は長さ3 - 10[[センチメートル]] (cm) の卵形から卵状披針形で、[[葉縁]]にある[[鋸歯]]は曲線的に葉先に向かう特徴的な形であり、鋸歯の先端は尖る{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}。葉の正面はざらつく{{sfn|林将之|2008|p=22}}。春の[[新緑]]や秋の[[紅葉]](黄葉)が美しい[[樹木]]でもある{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。都市部ではあまり鮮やかに紅葉せず黄褐色から褐色になって落葉してしまうが、寒冷地では個体によって色が異なり、黄色・橙色・赤色など色鮮やかに紅葉する{{sfn|亀田龍吉|2014|p=87}}。若木や徒長枝の葉は大きく、赤色に紅葉する傾向が強い{{sfn|亀田龍吉|2014|p=87}}。紅葉は褐色を帯びるのが比較的早く、落ち葉もすぐに褐色になる{{sfn|林将之|2008|p=22}}。
自然分布の他に、人の手によって街路や公園、人家のまわりにも植えられたものもよく見られる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}。日本では特に[[関東平野]]に多く見られ、屋敷林に使われることが多い{{sfn|辻井達一|1995|p=130}}。[[北海道]]には自然分布はないが、函館や札幌などの都市部で、庭園樹や公園樹として植えられたものもある{{sfn|辻井達一|1995|p=131}}。


葉は[[ハルニレ]]や[[ムクノキ]]に若干似る。ハルニレは鋸歯の形が特徴的で二重鋸歯になること、ムクノキは葉が大きく光沢があり、葉脈は三行脈で側脈がしばしば分岐することから見分けられる<ref>岡村はた, 橋本光政, [[室井綽]] (1993) 図解植物観察事典. [[地人書館]], 東京. {{国立国会図書館書誌ID|000002275747}}</ref>。ムクノキはかつてはケヤキやハルニレと同じくニレ科に入れられていたが、APG分類体系では[[アサ科]]に移動されている。
== 形態・生態 ==
[[落葉広葉樹]]の高木で{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}、高さ20 - 25[[メートル]] (m) になり{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}、大きなものでは幹径3&nbsp;m、高さ30 - 50&nbsp;mほどの個体もある{{sfn|辻井達一|1995|p=130}}。開けた場所に生える個体は、枝が扇状に大きく斜めに広がり、独特の美しい樹形になる{{sfn|田中潔|2011|p=114}}{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。[[樹皮]]は灰白色から灰褐色で、若木のうちは滑らかで横長の皮目があるが{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}、老木になるとモザイク状や鱗片状、あるいは大きく反り返って剥がれるなど、剥がれ方は一様ではなく、幹の表面はまだら模様になる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。一年枝は褐色で無毛、ジグザグ状に伸びて皮目がある{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。

花期は4 - 5月ごろ{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。開花は目立たないが、葉が出る前に本年枝に数個ずつ薄い[[黄緑色]]の花が咲く{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}。[[雌雄同株]]で雌雄異花。本年枝の下部に数個ずつ[[雄花]]が、上部の[[葉腋]]に1 - 3個の[[雌花]]がつき{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}、雄花と雌花をつけた短い枝を「着果短枝」という{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。花後に長枝が伸びて、本葉が出る{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。

[[葉]]は[[互生]]し、葉身は長さ3 - 10[[センチメートル]] (cm) の卵形から卵状披針形で、[[葉縁]]にある[[鋸歯]]は曲線的に葉先に向かう特徴的な形であり、鋸歯の先端は尖る{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}。春の[[新緑]]や秋の[[紅葉]](黄葉)が美しい[[樹木]]でもある{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。都市部ではあまり鮮やかに紅葉せず黄褐色から褐色になって落葉してしまうが、寒冷地では個体によって色が異なり、黄色・橙色・赤色など色鮮やかに紅葉する{{sfn|亀田龍吉|2014|p=87}}。若木や徒長枝の葉は大きく、赤色に紅葉する傾向が強い{{sfn|亀田龍吉|2014|p=87}}。


果期は10月{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。[[果実]]は長さ約5[[ミリメートル]] (mm) の平たい球形をした[[痩果]]で、秋に暗褐色に熟す{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}。小枝についた葉が翼となって、果実がついたまま長さ10 - 15&nbsp;cmの小枝ごと木から離れ、風に乗って遠く運ばれて分布を広げる{{sfn|亀田龍吉|2014|p=87}}{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。
果期は10月{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。[[果実]]は長さ約5[[ミリメートル]] (mm) の平たい球形をした[[痩果]]で、秋に暗褐色に熟す{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}。小枝についた葉が翼となって、果実がついたまま長さ10 - 15&nbsp;cmの小枝ごと木から離れ、風に乗って遠く運ばれて分布を広げる{{sfn|亀田龍吉|2014|p=87}}{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。
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冬芽は互生し、小さな卵形で暗褐色の8 - 10枚の芽鱗に包まれており、横に副芽を付けることがある{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。枝先には仮頂芽がつき、側芽は枝に沿わずに開出してつく{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。冬芽の横には、しばしば副芽がつく{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。冬芽のわきにある葉痕は半円形で、[[維管束]]痕が3個ある{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。
冬芽は互生し、小さな卵形で暗褐色の8 - 10枚の芽鱗に包まれており、横に副芽を付けることがある{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。枝先には仮頂芽がつき、側芽は枝に沿わずに開出してつく{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。冬芽の横には、しばしば副芽がつく{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。冬芽のわきにある葉痕は半円形で、[[維管束]]痕が3個ある{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=183}}。


[[発芽]]は地上性(英:epigeal germination)で[[子葉]]は地上に出てくる。このタイプの子葉は胚乳の栄養を吸い取る吸器、および最初に光合成をおこなう器官という2つの役割がある<ref>ヴェルナー・ラウ著, 中村信一・[[戸部博]]訳 (2009) 新装版 植物形態の事典. [[朝倉書店]], 東京. {{国立国会図書館書誌ID|000010550996}}</ref><ref>[[清水建美]] (2001) 図説 植物用語事典. [[八坂書房]], 東京. {{国立国会図書館書誌ID|000003030201}}</ref>。
葉の裏と柄に短毛の密生する変種をメゲヤキという。

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Zelkova Spring.jpg|樹形(落葉期)
けやき.JPG|[[樹皮]]
Zelkova leaves and seeds.jpg|[[]]
Zelkova serrata in Oasa HigashimachiPark Ebetsu, Hokkaido 1.jpg|樹形(着期)
けやき.JPG|樹皮は比較的平滑で灰褐色。うろこ状に剥がれる
Zelkova leaves and seeds.jpg|葉は羽状脈。丸みを帯びた鋸歯が目立つ。
Zelkova serrata5.jpg|新芽と雄花序
Zelkova serrata5.jpg|新芽と雄花序
File:Japanese Zelkova with autumn leaves 02.jpg|紅葉した梢
File:Japanese Zelkova with autumn leaves 02.jpg|紅葉した梢
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{{節スタブ}}
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== 人間との関わり ==
== 生態 ==
比較的湿潤環境を好み、斜面下部から中部に分布することが多い<ref>石崎尚人 (1996) 阿武隈山地中北部におけるケヤキの分布. 地理学評論 69(11), p.892-906. {{doi|10.4157/grj1984a.69.11_892}}</ref><ref>朴志〓, 吉木岳哉 (2002) 仙台近郊の丘陵地小流域における斜面微地形とケヤキ分布. 季刊地理学 54(2), p.105-110. {{doi|10.5190/tga.54.105}}</ref>。[[スギ]]も同じような環境を好むので、スギと混交させた時の反応なども調べられている。土壌を分析した結果ケヤキが優先する林分では[[C/N比]]が低く微生物の餌として魅力的だと見られている<ref>小柳信宏, 千原麻由, 生原喜久雄, 戸田浩人 (2002) 分解程度の異なる樹種別リターの炭素および窒素無機化特性. 日本土壌肥料学雑誌 73(4), p.363-372. {{doi|10.20710/dojo.73.4_363}}</ref>。
箒を逆さにしたような樹形が美しく、[[街路樹]]や公園樹としてよく親しまれ、防火や防風の目的で[[庭木]]などとしてもよく植えられる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}。特に[[関東地方]]での利用が多い{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}。巨木が国や[[地方政府|地方自治体]]の[[天然記念物]]になっていることがある。朝鮮半島では、ケヤキの春の若葉を茹でて食べることもあり、餅にも入れられる{{sfn|辻井達一|1995|p=131}}。


陽樹と見られており、露岩地帯にもよく出現する。多くの樹木は日陰では葉の厚さを変える(いわゆる陰葉)ことが知られているが、ケヤキはこの切り替えがあまりうまくない樹種だと見られれている<ref>田中格, 松本陽介 (2002) 光環境の変化に伴う落葉広葉樹10種の個葉の解剖学的構造の変化. 日本生態学会誌 52(3), p.323-329. {{doi|10.18960/seitai.52.3_323}}</ref>。
ケヤキの[[花言葉]]は、「幸運」{{sfn|田中潔|2011|p=114}}「長寿」{{sfn|田中潔|2011|p=114}}とされる。


花芽原基の形成は前年の夏に行われる<ref>橋詰隼人, 谷口真吾 (2003) ケヤキの花芽の分化と発育. 森林応用研究 12(1), p.35-39. {{doi|10.20660/applfor.12.1_35}}</ref>。ブナやミズナラと同じく、ケヤキも結実には極端な豊凶があるという<ref>丹原哲夫 (1999) 落葉広葉樹数種の結実特性 : 落葉広葉樹8種の広葉樹母樹林での数年間の種子落下量. 森林応用研究 8, p.137-142. {{doi|10.20660/applfor.8.0_137}}</ref>

枝葉と一緒に落ちることで種子だけの時より1/3以下に減速し、風に飛ばされやすくなっている。下から巻き上げるような風に乗ると80m程度とぶこともあるという<ref>星野義延 (1996) ケヤキの果実散布における風散布体としての結果枝. 日本生態学会誌 40(1), p.35-41. {{doi|10.18960/seitai.40.1_35}}</ref>。小さい個体でも結実するが、発芽率はよくないという<ref>谷口真吾 (1997) 兵庫県におけるケヤキの結実について(I) : 豊作年の着果度,種子品質,形質および稔性. 森林応用研究 6, p.95-98. {{doi|10.20660/applfor.6.0_95}}</ref>。

葉はオゾン暴露により黄変する<ref>野内勇, 大平俊男, 沢田正, 小口邦子, 古明地哲人 (1973) オゾンによる植物被害症状. 大気汚染研究 8(2), p.113-119. {{doi|10.11298/taiki1966.8.113}}</ref>

== 分布 ==
東アジア地域に分布。[[朝鮮半島]]、[[中国]]、[[台湾]]と[[日本]]に分布し{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}、日本では[[本州]]、[[四国]]、[[九州]]に分布する<ref>{{Cite book|和書|author=中村 享|title=万葉鉢づくり|date=1990-06-30|year=|accessdate=|publisher=立風書房|isbn=4-651-86010-9|pages=62, 63}}</ref>。

自然分布の他に、人の手によって街路や公園、人家のまわりにも植えられたものもよく見られる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}。日本では特に[[関東平野]]に多く見られ、屋敷林に使われることが多い{{sfn|辻井達一|1995|p=130}}。[[北海道]]には自然分布はないが、函館や札幌などの都市部で、庭園樹や公園樹として植えられたものもある{{sfn|辻井達一|1995|p=131}}<ref>生方正俊 (2006) 北限のケヤキ. 森林科学 47, p.55-59. {{doi|10.11519/jjsk.47.0_55}}</ref>

== 人間との関わり ==
=== 木材 ===
=== 木材 ===
ケヤキは国産広葉樹としては[[ブナ科]]の[[ミズナラ]]と並ぶ有用木材である。ミズナラが比較的山の木であるのに対し、ケヤキは人里近い所にもよく適応し親しまれた。木材の気乾比重は平均0.7程度、[[道管]]の配置は環孔材で年輪ははっきり出る。環孔材の木材に共通であるが、成長が良く年輪幅が広いほど良材で硬く重くなる。これはミズナラも同じである。辺材は黄褐色、心材は赤褐色で色の違いは明瞭に出る。辺材部、心材部共に水を通しにくいことが特長の一つである<ref>林昭三, 西本幸一 (1965) 国産広葉樹材の水の透過性に関する研究. 木材研究 : 京都大學木材研究所報告 35, p.33-43. {{hdl|2433/52970}}</ref><ref>矢田茂樹 (2021) 木材中への液体浸透と細胞壁中への溶質拡散に関わる基礎研究を顧みて ―保存処理や薬剤開発に携わる若い技術者のために―. 木材保存 47(1), p.12-21. {{doi|10.5990/jwpa.47.12}}</ref>。広葉樹の一部は辺材部の細胞が死んで心材化していく過程においてチロースを形成し、水の通動静を低下させることが知られている<ref>浅野猪久夫 編 (1982) 木材の事典. 朝倉書店, 東京.{{国立国会図書館書誌ID|000001591314}}</ref>。一方この性質上、水が抜けにくく乾燥には非常に時間がかかる。乾燥時に狂いも生じやすく扱いの難しい木材である。ケヤキは幹の途中から大きく分岐するので、丸太の歩留まりをよくするためには高い所での分岐が望ましい。一般に樹形には密度効果が現れるとされており、スギとの混植の場合はケヤキは7,000本/ha以上での植栽が望ましいという<ref>谷口真吾 (2002) ケヤキの枝の分岐角と枝長に植栽密度が及ぼす影響. 日本緑化工学会誌 28(1), p.244-247. {{doi|10.7211/jjsrt.28.244}}</ref>。
[[画像:Zelkova serrata wood.jpg|thumb|200px|ケヤキ無垢板塗装済み]]
日本の材としては、ジャパニーズ・ウイスキーの樽に使われることで有名な[[ミズナラ]]とともに、導管を塞ぐ「[[チロース]]」と呼ばれる物質が発達しており、水を通さない。そのため、材は狂いが少なく湿気に強いのが特徴で、幅広い用途に使われる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}。木目が美しく、磨くと著しい[[光沢]]を生じる。堅くて[[摩耗]]に強いので、[[家具]]・[[建具]]等の[[指物]]に使われる。[[日本家屋]]の[[建築]]用材としても古くから多用され、[[神社仏閣]]などにも用いられた。ケヤキ材からは仏像も作られる{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。現在は高価となり、なかなか庶民の住宅には使えなくなっている。


硬すぎて明治期に成るまで薪炭材以外ではあまり使われなかったミズナラに比べれば、加工も容易であったケヤキは古くからよく利用されていた。製材時すると稀に表面に水玉模様が現れることがあり、「玉杢」「泡杢」などと呼ばれ珍重される。また、磨くと艶が出て、頑丈で壊れにくい。このような性質から手元においておける家具、木工品、板材としての評価が特に高い樹種である。
寺社建築に盛んに使われるようになったのは、[[鋸|縦引き鋸]]が使われ出した[[室町時代]]以降のことである{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。[[ヒノキ]]や[[スギ]]は縦に割って使うことができたが、ケヤキの材はかたく、割るのは困難であったためである{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。材の強度は、ヒノキとは反対に伐採後から次第に低下していくといわれ、[[薬師寺]]東塔に使われたケヤキ材は1200年を経過していて、破断状態にあったという{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。広葉樹、特にケヤキは[[道管]]が環状に並んで[[年輪]]がはっきりと見える板となり、年輪幅が広い方がかたくて、重い良材となる{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。


強度があること、手に入れやすさから建材としてもよく利用された。大建築への利用は[[鋸|縦引き鋸]]が使われ出した[[室町時代]]以降のことといわれる{{sfn|田中潔|2011|p=114}}。ヒノキほどの寿命は無く、建築後1200年経過した奈良・[[薬師寺]]東塔に使われていたケヤキ材は破断状態にあったという{{sfn|田中潔|2011|p=114}}が、建築後250年経過のケヤキ材は強度的に問題はないという報告もある<ref>平嶋義彦, 杉原未奈, 佐々木康寿, 安藤幸世, 山崎真理子 (2005) 古材の強度特性 (第3報) ケヤキおよびアカマツの静的曲げ強度特性および衝撃曲げ強さ. 木材学会誌 51(3), p.146-152. {{doi|10.2488/jwrs.51.146}}</ref>。京都・[[清水寺]]の舞台も太いケヤキの柱で支えられている。現在のものは江戸時代初期に作られたといわれ、建築後約400年が経過している。地際部の腐った部分だけを定期的に切り取って新しい部材に入れ替える「根継」という技法で維持しているが、建築後800年を目途に上部も含めてすべて新しいケヤキ材で作り変えることを予定しているという。
チロースが発達しているので、伐採後も長い間導管内に水分が閉じ込められたままになる。そのため、伐採してから、乾燥し枯れるまでの間、右に左にと、大きく反っていくので、何年も寝かせないと使えない。特に[[大黒柱]]に大木を使った場合、家を動かすほど反ることがあるので[[大工]]泣かせの木材である。また、中心部の赤身といわれる部分が主に使われ、周囲の白太は捨てられるので、よほど太い原木でないと立派な柱は取れない。


[[1940年]]、戦時色の強まった日本では、用材生産統制規則により特定の樹種について用途指定を実施。ケヤキ材の使用用途については軍需、内地使用の船舶、車両用に限られることとなった<ref>香田徹也「昭和15年(1940年)林政・民有林」『日本近代林政年表 1867-2009』p420 日本林業調査会 2011年 {{全国書誌番号|22018608}}</ref>
[[電柱]]が木製だった時代は用材としてケヤキが高く評価されていた<ref name="平井(1998)">平井信二 (1996) 木の大百科. 朝倉書店. 東京. {{国立国会図書館書誌ID|000002559074}}</ref>。
[[1940年]]、戦時色の強まった日本では、用材生産統制規則により特定の樹種について用途指定を実施。ケヤキ材の使用用途については軍需、内地使用の船舶、車両用に限られることとなった<ref>香田徹也「昭和15年(1940年)林政・民有林」『日本近代林政年表 1867-2009』p420 日本林業調査会 2011年 {{全国書誌番号|22018608}}</ref>

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Zelkova serrata wood.jpg|ケヤキ無垢板塗装済み)。右の木口面には不明瞭な杢が見える
Sendai Tansu.jpg|ケヤキ材を使う仙台箪笥
Yakushiji Nara11s5bs4200.jpg|薬師寺の東塔
Kiyomizu-dera, Kyoto, November 2016 -02.jpg|清水の舞台を支える柱はケヤキである
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=== 防災・風致 ===
防風効果を期待して家屋の周りに植栽する、いわゆる屋敷林、生け垣として用いられることがあり、この点も里の木として親しまれた。ケヤキとカシ類を併用した屋敷林は特に関東地方で知られる<ref>緑川祿 (1926) 郷土造園としての屋敷林. 造園學雑誌 2(10), p.684-687. {{doi|10.5632/jila1925.2.684}}</ref><ref>勝野武彦, 葉山嘉一 (1986) 都市近郊農業地域の屋敷林構造とその保全に関する研究. 造園雑誌 50(5), p.191-196. {{doi|10.5632/jila1934.50.5_191}}</ref>。強靭で剪定にもよく耐える点も評価されている。

箒を逆さにしたような樹形が美しく、[[街路樹]]としてよく使われる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=107}}{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=99}}。

盆栽に使われることもある。ケヤキの盆栽は幹は太く枝は細い方が高評価といわれ、これを実現するために梅雨頃に新芽を摘み取り、再度芽吹くのを促すという<ref>[[有岡利幸]] (2005) 資料 日本植物文化誌. 八坂書房, 東京. {{国立国会図書館書誌ID|000007770399}}</ref>。

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Grove of Zelkova Trees and Hedges Yanagikubo.jpg|家の裏手に植えられるケヤキ(幹が灰色の大木3本)(多摩地域)
Japanese Zelkova bonsai 16, 30 April 2012.JPG|ケヤキの盆栽
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=== 食用 ===
朝鮮半島では、ケヤキの春の若葉を茹でて食べることもあり、餅にも入れられる{{sfn|辻井達一|1995|p=131}}。

=== 象徴 ===
各地に伝わるケヤキの巨木の逸話には、蛇や水にまつわることがしばしば登場するという<ref>有岡利幸 (2016) ものと人間の文化史176 欅. [[法政大学出版局]], 東京.{{国立国会図書館書誌ID|027287673}}</ref>。

ケヤキの[[花言葉]]は、「幸運」{{sfn|田中潔|2011|p=114}}「長寿」{{sfn|田中潔|2011|p=114}}とされる。


=== シンボル ===
==== シンボル ====
多くの[[地方公共団体|自治体]]が、「県の木」「市の木」といった[[シンボル]]にケヤキを指定している。
多くの[[地方公共団体|自治体]]が、「県の木」「市の木」といった[[シンボル]]にケヤキを指定している。
* ケヤキをシンボルに指定している都道府県
* ケヤキをシンボルに指定している都道府県
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*** 福島県:[[福島市]]、[[南相馬市]]
*** 福島県:[[福島市]]、[[南相馬市]]
** [[関東地方]]
** [[関東地方]]
*** 茨城県:[[日立市]]、[[古河市]]、[[常陸太田市]]、[[つくば市]]、[[土浦市]](合併した[[新治村 (茨城県)|新治村]]を引き継ぐ)、[[河内町]]、[[坂東市]]
*** 茨城県:[[日立市]]、[[古河市]]、[[常陸太田市]]、[[つくば市]]、[[土浦市]]、[[河内町]]、[[坂東市]]
*** 栃木県:[[真岡市]]、[[茂木町]]、[[芳賀町]]
*** 栃木県:[[真岡市]]、[[茂木町]]、[[芳賀町]]
*** 群馬県:[[前橋市]]、[[高崎市]]、[[神流町]]、[[中之条町]]、[[東吾妻町]]、[[大泉町]]
*** 群馬県:[[前橋市]]、[[高崎市]]、[[神流町]]、[[中之条町]]、[[東吾妻町]]、[[大泉町]]
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*** 大阪府:[[高槻市]]、[[能勢町]]
*** 大阪府:[[高槻市]]、[[能勢町]]
*** 奈良県:[[川西町 (奈良県)|川西町]]
*** 奈良県:[[川西町 (奈良県)|川西町]]
** [[四国地方]]
*** 徳島県:[[阿波市]]
** [[九州地方]]
** [[九州地方]]
*** 福岡県:[[久留米市]]
*** 福岡県:[[久留米市]]
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*** 宮崎県:[[都城市]]、[[日之影町]]
*** 宮崎県:[[都城市]]、[[日之影町]]
* ケヤキをシンボルに指定していた廃止市町村<!--町の木となったのには何かしらの文化的背景があると思うので、合併して現在存在しない自治体だからといって機械的に除去せず、残した方かいいと思います-->
* ケヤキをシンボルに指定していた廃止市町村<!--町の木となったのには何かしらの文化的背景があると思うので、合併して現在存在しない自治体だからといって機械的に除去せず、残した方かいいと思います-->
** 岩手県:[[江刺市]]
** 茨城県:[[新治村 (茨城県新治郡2006年)|新治村]]
** 栃木県:[[西方町]]
** 栃木県:[[西方町]]
** 埼玉県:[[大宮市]]、[[岩槻市]]
** 埼玉県:[[大宮市]]、[[岩槻市]]
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[[画像:Senpukuji ookeyaki.jpg|thumb|専福寺の大ケヤキ]]
[[画像:Senpukuji ookeyaki.jpg|thumb|専福寺の大ケヤキ]]
* [[特別天然記念物]]
* [[特別天然記念物]]
** [[東根の大ケヤキ]]([[山形県]][[東根市]])- 樹齢1500年、「日本三大ケヤキ」
** [[東根の大ケヤキ]]([[山形県]][[東根市]])- 幹周12.6&nbsp;m、樹高28&nbsp;m、樹齢1500年以上、「日本三大ケヤキ」{{sfn|小山洋二|2024|p=39}}
* 天然記念物(国指定)
* 天然記念物(国指定)
** [[文下のケヤキ|文下(ほうだし)のケヤキ]](山形県[[鶴岡市]])
** [[文下のケヤキ|文下(ほうだし)のケヤキ]](山形県[[鶴岡市]])
** 高瀬の大木(ケヤキ)([[福島県]][[会津若松市]])
** 高瀬の大木(ケヤキ)([[福島県]][[会津若松市]])
** 原町の大ケヤキ([[群馬県]][[東吾妻町]])-「日本三大ケヤキ」、樹勢の衰え顕著、
** [[原町の大ケヤキ]]([[群馬県]][[東吾妻町]])-「日本三大ケヤキ」、樹勢の衰え顕著、
** [[練馬白山神社の大ケヤキ]]([[東京都]][[練馬区]])
** [[練馬白山神社の大ケヤキ]]([[東京都]][[練馬区]])
** [[御岳ノ神代欅|御岳の神代ケヤキ]](東京都[[青梅市]])
** [[御岳ノ神代欅|御岳の神代ケヤキ]](東京都[[青梅市]])
** 鵜川神社の大ケヤキ([[新潟県]][[柏崎市]])
** 鵜川神社の大ケヤキ([[新潟県]][[柏崎市]]) - 幹周10.6&nbsp;m、樹高21.5&nbsp;m、樹齢伝承1000年{{sfn|高橋弘|2014|p=61}}
** 専福寺の大ケヤキ([[福井県]][[大野市]])
** 専福寺の大ケヤキ([[福井県]][[大野市]])
** [[上野原の大ケヤキ]]([[山梨県]][[上野原市]])
** [[上野原の大ケヤキ]]([[山梨県]][[上野原市]])
** [[三恵の大ケヤキ]](山梨県[[南アルプス市]])- 樹齢1000年、「日本三大ケヤキ」
** [[三恵の大ケヤキ]](山梨県[[南アルプス市]])- 樹齢1000年、「日本三大ケヤキ」
** [[根古屋神社の大ケヤキ]](山梨県[[北杜市]])- 樹齢1000年
** [[根古屋神社の大ケヤキ]](山梨県[[北杜市]])- 「畑木」「田木」と呼ばれる2本の大ケヤキ、樹齢1000年{{sfn|小山洋二|2024|p=104}}
** [[八代の大ケヤキ]]([[兵庫県]][[朝来市]])- 樹齢1600年
** [[八代の大ケヤキ]]([[兵庫県]][[朝来市]])- 樹齢1600年
** [[野間の大ケヤキ]]([[大阪府]][[能勢町]])- 樹齢1000年
** [[野間の大ケヤキ]]([[大阪府]][[能勢町]])- 幹周14.6&nbsp;m、樹高26&nbsp;m、樹齢1000年{{sfn|高橋弘|2014|p=86}}{{sfn|小山洋二|2024|p=162}}
** 竹の熊の大ケヤキ([[熊本県]][[南小国町]])
** 竹の熊の大ケヤキ([[熊本県]][[南小国町]])
** 下野八幡宮の大ケヤキ([[宮崎県]][[高千穂町]])
** 下野八幡宮の大ケヤキ([[宮崎県]][[高千穂町]])
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ShimuraKen Wood 202008.jpg|志村けんの木(東京都東村山市)
ShimuraKen Wood 202008.jpg|志村けんの木(東京都東村山市)
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== 名称 ==
[[和名]]「ケヤキ」の由来は、「ケヤ」は古語で「すばらしい」という意味があり、「けやしの木」が転訛したものだといわれる{{sfn|亀田龍吉|2014|p=87}}。[[中国語|中国名]]は「櫸樹」<ref name="YList"/>。

別名を'''ツキ'''(槻)ともいう。木材業界などでは良材を「ケヤキ」、材質の劣るものを「ツキ」と呼んでいるという<ref name="平井(1998)"/>。ケヤキとツキの呼び分けは時代であり、ツキの方が古いという説もある。欅の右辺は「挙」の旧字体であり、樹形が手を挙げるところに似ていたからという説もある<ref>広葉樹文化協会 編, 岸野潤, 作野友康, 古川郁夫 監修 (2010) 広葉樹の文化-雑木林は宝の山である-. 海青社, 東京.</ref>

種小名 ''serrata'' は「鋸歯のある」という意味<ref>[[豊国秀夫]] 編 (2009) 復刻・拡大版 植物学ラテン語辞典. [[ぎょうせい]], 東京. {{国立国会図書館書誌ID|023049688}}</ref>で、丸みを帯びて特徴的な葉の鋸歯に因む。台湾の変種は鋸歯がないことで知られる。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=小山洋二|title=巨樹・巨木図鑑:一度は訪れたい、全国の大樹たち|publisher=[[日本文芸社]]|date=2024-03-01|isbn=978-4-537-22193-0|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =亀田龍吉|title =落ち葉の呼び名事典|date=2014-10-5|publisher =[[世界文化社]]|isbn=978-4-418-14424-2|page =87|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =亀田龍吉|title =落ち葉の呼び名事典|date=2014-10-5|publisher =[[世界文化社]]|isbn=978-4-418-14424-2|page =87|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|title =樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種|date=2014-10-10|publisher =[[誠文堂新光社]]|series=ネイチャーウォチングガイドブック|isbn=978-4-416-61438-9|page =183|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|title =樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種|date=2014-10-10|publisher =[[誠文堂新光社]]|series=ネイチャーウォチングガイドブック|isbn=978-4-416-61438-9|page =183|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=高橋弘|title=日本の巨樹:1000年を生きる神秘|publisher=[[宝島社]]|date=2014-08-21|isbn=978-4-8002-2942-7|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =田中潔|title =知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち|date=2011-07-31|publisher =[[主婦の友社]]|series=主婦の友ベストBOOKS|isbn=978-4-07-278497-6|page =114|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =田中潔|title =知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち|date=2011-07-31|publisher =[[主婦の友社]]|series=主婦の友ベストBOOKS|isbn=978-4-07-278497-6|page =114|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =[[辻井達一]]|title =日本の樹木|date =1995-04-25|publisher =[[中央公論社]]|series =中公新書|isbn =4-12-101238-0|pages =127 - 131|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =[[辻井達一]]|title =日本の樹木|date =1995-04-25|publisher =[[中央公論社]]|series =中公新書|isbn =4-12-101238-0|pages =127 - 131|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =西田尚道監修 学習研究社編|title =日本の樹木|date=2009-08-04|publisher =[[学習研究社]]|series=増補改訂 ベストフィールド図鑑|volume= 5|isbn=978-4-05-403844-8|page =99|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =西田尚道監修 学習研究社編|title =日本の樹木|date=2009-08-04|publisher =[[学習研究社]]|series=増補改訂 ベストフィールド図鑑|volume= 5|isbn=978-4-05-403844-8|page =99|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=林将之|title=紅葉ハンドブック|publisher=[[文一総合出版]]|date=2008-09-27|page=|ISBN=978-4-8299-0187-8|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =平野隆久監修 永岡書店編|title =樹木ガイドブック|date=1997-05-10|publisher =[[永岡書店]]|isbn=4-522-21557-6|page 107|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =平野隆久監修 永岡書店編|title =樹木ガイドブック|date=1997-05-10|publisher =[[永岡書店]]|isbn=4-522-21557-6|page 107|ref=harv}}
{{参照方法|date=2022-02-05|section=1}}
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* {{Cite book|和書
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* [[ムクノキ]]
* [[木の一覧]]
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* [[植物天然記念物一覧]]
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [https://db.kahaku.go.jp/webmuseum 標本・資料統合データベース > 植物研究部 > 維管束植物(標本)] [[国立科学博物館]]。押葉・押花標本等を公開。
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2024年9月4日 (水) 03:35時点における版

ケヤキ
野間の大ケヤキ
樹齢約1,000年といわれる野間の大ケヤキ
大阪府豊能郡能勢町
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : 真正バラ類I Eurosids I
: バラ目 Rosales
: ニレ科 Ulmaceae
: ケヤキ属 Zelkova
: ケヤキ Z. serrata
学名
Zelkova serrata (Thunb.) Makino (1903)[1]
英名
Japanese zelkova

ケヤキ(欅[2]学名: Zelkova serrata)は、ニレ科ケヤキ属落葉高木

形態

落葉広葉樹の高木で[3]、高さ15 - 25メートル (m) になり[4][5]、大きなものでは幹径3 m、高さ30 - 50 mほどの個体もある[6]。開けた場所に生える個体は、枝が扇状に大きく斜めに広がり、独特の美しい樹形になる[7][2]樹皮は灰白色から灰褐色で、若木のうちは滑らかで横長の皮目があるが[2]、老木になるとモザイク状や鱗片状、あるいは大きく反り返って剥がれるなど、剥がれ方は一様ではなく、幹の表面はまだら模様になる[3][5][2]。一年枝は褐色で無毛、ジグザグ状に伸びて皮目がある[2]

花期は4 - 5月ごろ[2]。開花は目立たないが、葉が出る前に本年枝に数個ずつ薄い黄緑色の花が咲く[3][5]雌雄同株で雌雄異花。本年枝の下部に数個ずつ雄花が、上部の葉腋に1 - 3個の雌花がつき[5]、雄花と雌花をつけた短い枝を「着果短枝」という[7]。花後に長枝が伸びて、本葉が出る[7]

互生し、葉身は長さ3 - 10センチメートル (cm) の卵形から卵状披針形で、葉縁にある鋸歯は曲線的に葉先に向かう特徴的な形であり、鋸歯の先端は尖る[5]。葉の正面はざらつく[4]。春の新緑や秋の紅葉(黄葉)が美しい樹木でもある[5][7]。都市部ではあまり鮮やかに紅葉せず黄褐色から褐色になって落葉してしまうが、寒冷地では個体によって色が異なり、黄色・橙色・赤色など色鮮やかに紅葉する[8]。若木や徒長枝の葉は大きく、赤色に紅葉する傾向が強い[8]。紅葉は褐色を帯びるのが比較的早く、落ち葉もすぐに褐色になる[4]

葉はハルニレムクノキに若干似る。ハルニレは鋸歯の形が特徴的で二重鋸歯になること、ムクノキは葉が大きく光沢があり、葉脈は三行脈で側脈がしばしば分岐することから見分けられる[9]。ムクノキはかつてはケヤキやハルニレと同じくニレ科に入れられていたが、APG分類体系ではアサ科に移動されている。

果期は10月[7]果実は長さ約5ミリメートル (mm) の平たい球形をした痩果で、秋に暗褐色に熟す[5]。小枝についた葉が翼となって、果実がついたまま長さ10 - 15 cmの小枝ごと木から離れ、風に乗って遠く運ばれて分布を広げる[8][2]

冬芽は互生し、小さな卵形で暗褐色の8 - 10枚の芽鱗に包まれており、横に副芽を付けることがある[2]。枝先には仮頂芽がつき、側芽は枝に沿わずに開出してつく[2]。冬芽の横には、しばしば副芽がつく[2]。冬芽のわきにある葉痕は半円形で、維管束痕が3個ある[2]

発芽は地上性(英:epigeal germination)で子葉は地上に出てくる。このタイプの子葉は胚乳の栄養を吸い取る吸器、および最初に光合成をおこなう器官という2つの役割がある[10][11]

生態

比較的湿潤環境を好み、斜面下部から中部に分布することが多い[12][13]スギも同じような環境を好むので、スギと混交させた時の反応なども調べられている。土壌を分析した結果ケヤキが優先する林分ではC/N比が低く微生物の餌として魅力的だと見られている[14]

陽樹と見られており、露岩地帯にもよく出現する。多くの樹木は日陰では葉の厚さを変える(いわゆる陰葉)ことが知られているが、ケヤキはこの切り替えがあまりうまくない樹種だと見られれている[15]

花芽原基の形成は前年の夏に行われる[16]。ブナやミズナラと同じく、ケヤキも結実には極端な豊凶があるという[17]

枝葉と一緒に落ちることで種子だけの時より1/3以下に減速し、風に飛ばされやすくなっている。下から巻き上げるような風に乗ると80m程度とぶこともあるという[18]。小さい個体でも結実するが、発芽率はよくないという[19]

葉はオゾン暴露により黄変する[20]

分布

東アジア地域に分布。朝鮮半島中国台湾日本に分布し[3]、日本では本州四国九州に分布する[21]

自然分布の他に、人の手によって街路や公園、人家のまわりにも植えられたものもよく見られる[3]。日本では特に関東平野に多く見られ、屋敷林に使われることが多い[6]北海道には自然分布はないが、函館や札幌などの都市部で、庭園樹や公園樹として植えられたものもある[22][23]

人間との関わり

木材

ケヤキは国産広葉樹としてはブナ科ミズナラと並ぶ有用木材である。ミズナラが比較的山の木であるのに対し、ケヤキは人里近い所にもよく適応し親しまれた。木材の気乾比重は平均0.7程度、道管の配置は環孔材で年輪ははっきり出る。環孔材の木材に共通であるが、成長が良く年輪幅が広いほど良材で硬く重くなる。これはミズナラも同じである。辺材は黄褐色、心材は赤褐色で色の違いは明瞭に出る。辺材部、心材部共に水を通しにくいことが特長の一つである[24][25]。広葉樹の一部は辺材部の細胞が死んで心材化していく過程においてチロースを形成し、水の通動静を低下させることが知られている[26]。一方この性質上、水が抜けにくく乾燥には非常に時間がかかる。乾燥時に狂いも生じやすく扱いの難しい木材である。ケヤキは幹の途中から大きく分岐するので、丸太の歩留まりをよくするためには高い所での分岐が望ましい。一般に樹形には密度効果が現れるとされており、スギとの混植の場合はケヤキは7,000本/ha以上での植栽が望ましいという[27]

硬すぎて明治期に成るまで薪炭材以外ではあまり使われなかったミズナラに比べれば、加工も容易であったケヤキは古くからよく利用されていた。製材時すると稀に表面に水玉模様が現れることがあり、「玉杢」「泡杢」などと呼ばれ珍重される。また、磨くと艶が出て、頑丈で壊れにくい。このような性質から手元においておける家具、木工品、板材としての評価が特に高い樹種である。

強度があること、手に入れやすさから建材としてもよく利用された。大建築への利用は縦引き鋸が使われ出した室町時代以降のことといわれる[7]。ヒノキほどの寿命は無く、建築後1200年経過した奈良・薬師寺東塔に使われていたケヤキ材は破断状態にあったという[7]が、建築後250年経過のケヤキ材は強度的に問題はないという報告もある[28]。京都・清水寺の舞台も太いケヤキの柱で支えられている。現在のものは江戸時代初期に作られたといわれ、建築後約400年が経過している。地際部の腐った部分だけを定期的に切り取って新しい部材に入れ替える「根継」という技法で維持しているが、建築後800年を目途に上部も含めてすべて新しいケヤキ材で作り変えることを予定しているという。

電柱が木製だった時代は用材としてケヤキが高く評価されていた[29]

1940年、戦時色の強まった日本では、用材生産統制規則により特定の樹種について用途指定を実施。ケヤキ材の使用用途については軍需、内地使用の船舶、車両用に限られることとなった[30]

防災・風致

防風効果を期待して家屋の周りに植栽する、いわゆる屋敷林、生け垣として用いられることがあり、この点も里の木として親しまれた。ケヤキとカシ類を併用した屋敷林は特に関東地方で知られる[31][32]。強靭で剪定にもよく耐える点も評価されている。

箒を逆さにしたような樹形が美しく、街路樹としてよく使われる[3][5]

盆栽に使われることもある。ケヤキの盆栽は幹は太く枝は細い方が高評価といわれ、これを実現するために梅雨頃に新芽を摘み取り、再度芽吹くのを促すという[33]

食用

朝鮮半島では、ケヤキの春の若葉を茹でて食べることもあり、餅にも入れられる[22]

象徴

各地に伝わるケヤキの巨木の逸話には、蛇や水にまつわることがしばしば登場するという[34]

ケヤキの花言葉は、「幸運」[7]「長寿」[7]とされる。

シンボル

多くの自治体が、「県の木」「市の木」といったシンボルにケヤキを指定している。

日本の著名なケヤキ

専福寺の大ケヤキ

なお、東京競馬場の第3コーナー内側に、俗に「大欅」と呼ばれる大木がある。数々の逸話があり、「欅ステークス」という名の特別競走まで開催されているが、実際は(エノキ)であってケヤキではない。

日本の著名なケヤキ並木

名称

和名「ケヤキ」の由来は、「ケヤ」は古語で「すばらしい」という意味があり、「けやしの木」が転訛したものだといわれる[8]中国名は「櫸樹」[1]

別名をツキ(槻)ともいう。木材業界などでは良材を「ケヤキ」、材質の劣るものを「ツキ」と呼んでいるという[29]。ケヤキとツキの呼び分けは時代であり、ツキの方が古いという説もある。欅の右辺は「挙」の旧字体であり、樹形が手を挙げるところに似ていたからという説もある[41]

種小名 serrata は「鋸歯のある」という意味[42]で、丸みを帯びて特徴的な葉の鋸歯に因む。台湾の変種は鋸歯がないことで知られる。

脚注

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Zelkova serrata (Thunb.) Makino ケヤキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 183.
  3. ^ a b c d e f 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 107.
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参考文献

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関連項目

外部リンク