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[[File:Federspiel Austrian World Music Awards 2015 Encore 06.jpg|thumb|[[:de:Austrian World Music Awards|Austrian World Music Awards]] 2015でのアンコール。[[音楽バンド]] [[:de:Federspiel (Band)|Federspiel]]]]
'''アンコール''' ([[フランス語|仏]]:''encore'') とは、コンサートやリサイタルにおいて追加演奏を要望するかけ声のことであり、またその再演奏や、時にはアンコールで演奏された曲目のことも指す。転じて、一度済ませたことを再び行うこと(例えば、「アンコール放映」といった使われ方)。
'''アンコール''' ([[フランス語|仏]]:''encore'') とは、[[コンサート]][[リサイタル]]において追加[[演奏]]を要望するかけ声のことであり、またその再演奏や、時にはアンコールで演奏された[[曲目]]のことも指す。転じて、一度済ませたことを再び行うこと(例えば、「アンコール[[放映]]」といった使われ方)。


== クラシック音楽におけるアンコール ==
== クラシック音楽におけるアンコール ==
=== コンサート ===
=== コンサート ===
クラシック音楽のコンサート、リサイタルにおけるアンコールはほとんどの場合、プログラムに載った正規の演目がすべて終了した後に行われる。ただし、オーケストラのコンサートの前半で独奏者を招いての[[協奏曲]]を組んだ場合、途中休憩前に独奏者単独でのアンコール曲が演奏されることもくある。
[[クラシック音楽]][[コンサート]][[リサイタル]]におけるアンコールはほとんどの場合、プログラム(一覧)に載った正規の演目がすべて終了した後に行われる。ただし、[[オーケストラ]]のコンサートの前半で[[独奏]]者を招いての[[協奏曲]]を組んだ場合、途中休憩前に独奏者単独でのアンコール曲が演奏されることもくある。


演奏家や声楽家通常アンコールを行う場合、再登場をねだる聴衆の[[スタンディング・オベーション]]や[[拍手]]喝采(時には拍手が揃うこともあり、それが習慣となっている都市や演奏会場もある)を合図とし、聴衆の好意的な反応に感謝して、アンコールの曲目を披露する。拍手がいつまでも続くような場合に、思いがけずアンコールの曲目が増えて、演奏時間が長引くいうケース起こりうる。
演奏がアンコールを行う場合、通常、再登場をねだる聴衆の[[スタンディング・オベーション]]や[[拍手]]喝采(時には拍手が揃うこともあり、それが習慣となっている演奏会場もある)を合図とし、聴衆の好意的な反応に感謝して、アンコールの曲目を披露する。拍手が途切れずに続く場合、さらにアンコールの曲目が増えることもる。


アンコールは、レパートリー中から、人口に膾炙した小曲(いわゆ通俗名曲)になること普通だ、当日のプログラムを繰り返したり、あまり有名ではないが印象深い作品がり上げられることもある。ピアニストやヴァイオリニストは、自分や他人が編曲した作品(原曲が歌曲だったりポピュー音楽だったりすことも間々ある)を好む
アンコールの曲目は、知名度高い小曲(長くとも数分程度)や[[編曲|編曲作品]]が準備されている場合多いが、あまり有名ではない作品がり上げられることもある。演奏者が準備していない場合は、当日のプログムを繰すこともある。


行事によっては、定番のアンコール曲目が存在する場合もある(たとえば、[[ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団]]のニューイヤー・コンサートにおける《[[ラデツキー行進曲]]》や《[[美しく青きドナウ]]》は、両曲ともプログラムには記載されないが、伝統的に毎年演奏されている)。演奏家が同時に作曲家でもある場合、自作自演をするまでアンコールを求める拍手が繰り返されることもある(例:[[ラフマニノフ]]《[[前奏曲嬰ハ短調 (ラフマニノフ)|前奏曲 嬰ハ短調]]》作品3-2)。
アンコールの前に、演奏する曲目を聴衆に向かって語りかける演奏家もいるが、演奏会場の空間やエコー、マイク、空調などの理由で、演奏家の声が聴衆に広く行き渡らない場合もしばしばである。このため、演奏会場によっては気を利かせ、演奏終了後にアンコール曲目を掲示することも行われる。


なお、アンコールで採り上げられる楽曲も、当然に[[著作権|著作権保護]]の対象となる。したがって、プログラム外であることを理由に曲名や[[著作者|著作者名]]を周知せずに演奏すれば、曲名については[[著作者人格権#同一性保持権|同一性保持権]]の侵害、著作者名については[[著作者人格権#氏名表示権|氏名表示権]]の侵害となりうる。演奏される曲名やその著作者名の周知は、単に演奏者が聴衆の欲求を満たすために行うサービスにとどまる性質のものではなく、[[著作者人格権]]を保護するために必須のものである。周知の方法は口頭による場合もあり、曲名や著作者名を聴衆に語りかける演奏者もいるが、演奏会場の音響により、その声が聴衆に広く行き渡らない事態も想定される。このため、終演後に会場出口付近などに曲名や著作者名を掲示することも行われている。
独奏者・独唱者や[[オーケストラ]]などのアンサンブルは、アンコール曲目を早く大きく正確演奏することで、技術的な能力を誇示することがある。あるいは拍手の波が引くうに、ゆくりと静かに余韻を残して演奏することもある。決まりきった行事に定番のアンコール曲目が習慣づいている場合もある(たとえば、ウィーンのニューイヤー・コンサートにおける《[[ラデツキー行進曲]]》や《[[美しく青きドナウ]]》両曲ともプログラムには記載されないが、伝統的に毎年演奏されている)。演奏家が同時に偉大な作曲家でもある場合、自作自演をするまでアンコールを求める拍手が繰り返されることもある(たとえばラフマニノフ《[[前奏曲嬰ハ短調 (ラフマニノフ)|前奏曲 嬰ハ短調]]》作品3-2)。


=== オペラ ===
=== オペラ ===
[[オペラ]]におけるアンコールは上記のコンサート、リサイタルのそれとは大きく異なり、独唱者に対してアリア再唱してほしいとの要求となって現れる。[[17世紀]]の[[ヴェネツィア]]ではにそれが習慣として確立していたことが知られている。
[[オペラ]]におけるアンコールは、独唱者に対するアリア再唱の要求となって現れる。[[17世紀]]の[[ヴェネツィア]]ではすでにそれが習慣として確立していたことが知られている。アリアが完全に切れて番号付けされているイタリアオペラにこの傾向が強い


この習慣は音楽上そしてドラマ進行の流れを損ねるという点[[指揮者]]に嫌悪されていた。[[アルトゥーロ・トスカニーニ|トスカニーニ]]は1910年代頃より[[ミラノ]]・[[スカラ座]]やその他の大劇場で一切のアンコールを拒絶する態度に出て、物議を醸した。1950年代以降、オペラ公演における[[指揮者]]の、そして[[演出家]]の地位が相対的に向上るに及んでこのようなアリアのみのアンコールは次第に減少の傾向にある。
この習慣は音楽ドラマ進行の流れを損ねるという点から、[[指揮者]]に嫌悪されていた。[[アルトゥーロ・トスカニーニ|トスカニーニ]]は[[1910年代]]頃より一切のアンコールを拒絶する態度に出て、物議を醸した。[[1950年代]]以降、オペラ公演における[[指揮者]][[演出家]]の地位が向上したために、またオペラの長い上演時間から歌手の声を守ためこのようなアリアのみのアンコールは減少の傾向にある。


== ポピュラー系音楽におけるアンコール ==
== ポピュラー系音楽におけるアンコール ==
[[ロック (音楽)|ロック]]や[[ポップ・ミュージック|ポップス]]の場合、ミュージシャンがアンコールをいわば第2部のように扱うケースも見受けられる(例えば[[ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ]]による、[[1979年]]と[[1980年]]のコンサートにおけるものなど)。もっとも、事前に発表されたプログラムに基づいてコンサートを行うという習慣はクラシック音楽におけるほどは確立していないので、「アンコール曲」と「第2部」の区別は必ずしも明確ではないこともある。コンセプト・アルバムに「アンコール」に相当する楽曲を好んで配置するアーティストも見受けられる。
[[ロック (音楽)|ロック]]や[[ポップ・ミュージック|ポップス]]の場合、ミュージシャンがアンコールをいわば第2部のように扱うケースも見受けられる(例えば[[ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ]]による、[[1979年]]と[[1980年]]のコンサートにおけるものなど)。もっとも、事前に発表されたプログラムに基づいてコンサートを行うという習慣はクラシック音楽におけるほどは確立していないので、「アンコール曲」と「第2部」の区別は必ずしも明確ではないこともある。コンセプト・アルバムに「アンコール」に相当する楽曲を好んで配置するアーティストも見受けられる。


== 語源について ==
== 語源 ==
[[フランス語]]''encore ''(もう一度、といった意)に由来する言葉であるが、現在これを再演の要求に用いるのは[[英語]]圏の住人がほとんどで、[[フランス]]ではもっぱら''bis ''(ビス)<ref>これは[[ラテン語]]の「2回、もう一回」に由来する。イタリアなど他の大陸ヨーロッパ諸国でも同様。</ref>が用いられている。
[[フランス語]]''encore ''(もう一度、といった意)に由来する言葉であるが、{{要出典範囲|現在これを再演の要求に用いるのは[[英語]]圏の住人がほとんどで、[[フランス]]ではもっぱら''Une autre'' (もう一つ)あるいは''bis ''(ビス)<ref>{{要出典範囲|これは[[ラテン語]]の「2回、もう一回」に由来する。イタリアなど他の大陸ヨーロッパ諸国でも同様|date=2023年11月}}。</ref>が用いられている|date=2023年11月}}


英語圏にあってもいつからこの言葉が再演の要求に用いられたのは定かではないが、[[1711年]] - 12年に[[イングランド]]で発行されていた日刊紙「スペクテイター」(''[[w:en:The Spectator (1711)|The Spectator]] '')の1712年2月のある号に
{{要出典範囲|英語圏にあってもいつからこの言葉が再演の要求に用いられたのは定かではないが、[[1711年]] - 12年に[[イングランド]]で発行されていた日刊紙「スペクテイター」(''[[w:en:The Spectator (1711)|The Spectator]] '')の1712年2月のある号に
:「聴衆がある歌に特に喜んだ場合、彼らはいつでも''encore ''または''altro volto ''<ref>[[イタリア語|伊語]]''altra volta ''(もう一回)のイギリス人による誤用、あるいは記者の誤記かと考えられる</ref>と叫び、演奏者は親切にもそれを最初から繰り返すことが習慣となっていると記者は発見した」
「聴衆がある歌に特に喜んだ場合、彼らはいつでも''encore ''または''altro volto ''<ref>{{要出典範囲|[[イタリア語|伊語]]''altra volta ''(もう一回)のイギリス人による誤用、あるいは記者の誤記かと考えられる|date=2023年11月}}。</ref>と叫び、演奏者は親切にもそれを最初から繰り返すことが習慣となっていると記者は発見した」とあるので、18世紀初めのこの頃の流行ではないかとされている|date=2023年11月}}。

とあるので、18世紀初めのこの頃の流行ではないかとされている。
なおドイツ語ではツーガーベ(Zugabe)。イタリア語ではアンコーラ(Ancora)だが、{{要出典範囲|ダ・カーポ(Da capo)「頭から」とねだる聴衆もいる|date=2023年11月}}。


== 脚注 ==
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2024年9月6日 (金) 21:31時点における最新版

Austrian World Music Awards 2015でのアンコール。音楽バンド Federspiel

アンコール (encore) とは、コンサートリサイタルにおいて追加演奏を要望するかけ声のことであり、またその再演奏や、時にはアンコールで演奏された曲目のことも指す。転じて、一度済ませたことを再び行うこと(例えば、「アンコール放映」といった使われ方)。

クラシック音楽におけるアンコール

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コンサート

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クラシック音楽コンサートリサイタルにおけるアンコールはほとんどの場合、プログラム(一覧)に載った正規の演目がすべて終了した後に行われる。ただし、オーケストラのコンサートの前半で独奏者を招いての協奏曲を組んだ場合、途中休憩前に独奏者単独でのアンコール曲が演奏されることもよくある。

演奏者がアンコールを行う場合、通常、再登場をねだる聴衆のスタンディング・オベーション拍手喝采(時には拍手が揃うこともあり、それが習慣となっている演奏会場もある)を合図とし、聴衆の好意的な反応に感謝して、アンコールの曲目を披露する。拍手が途切れずに続く場合、さらにアンコールの曲目が増えることもある。

アンコールの曲目は、知名度の高い小曲(長くとも数分程度)や編曲作品が準備されている場合が多いが、あまり有名ではない作品が採り上げられることもある。演奏者が準備していない場合は、当日のプログラムを繰り返すこともある。

行事によっては、定番のアンコール曲目が存在する場合もある(たとえば、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートにおける《ラデツキー行進曲》や《美しく青きドナウ》は、両曲ともプログラムには記載されないが、伝統的に毎年演奏されている)。演奏家が同時に作曲家でもある場合、自作自演をするまでアンコールを求める拍手が繰り返されることもある(例:ラフマニノフ前奏曲 嬰ハ短調》作品3-2)。

なお、アンコールで採り上げられる楽曲も、当然に著作権保護の対象となる。したがって、プログラム外であることを理由に曲名や著作者名を周知せずに演奏すれば、曲名については同一性保持権の侵害、著作者名については氏名表示権の侵害となりうる。演奏される曲名やその著作者名の周知は、単に演奏者が聴衆の欲求を満たすために行うサービスにとどまる性質のものではなく、著作者人格権を保護するために必須のものである。周知の方法は口頭による場合もあり、曲名や著作者名を聴衆に語りかける演奏者もいるが、演奏会場の音響により、その声が聴衆に広く行き渡らない事態も想定される。このため、終演後に会場出口付近などに曲名や著作者名を掲示することも行われている。

オペラ

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オペラにおけるアンコールは、独唱者に対するアリア再唱の要求となって現れる。17世紀ヴェネツィアではすでにそれが習慣として確立していたことが知られている。アリアが完全に切れて番号付けされているイタリアオペラにこの傾向が強い。

この習慣は音楽やドラマ進行の流れを損ねるという点から、指揮者に嫌悪されていた。トスカニーニ1910年代頃より一切のアンコールを拒絶する態度に出て、物議を醸した。1950年代以降、オペラ公演における指揮者演出家の地位が向上したために、またオペラの長い上演時間から歌手の声を守るために、このようなアリアのみのアンコールは減少の傾向にある。

ポピュラー系音楽におけるアンコール

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ロックポップスの場合、ミュージシャンがアンコールをいわば第2部のように扱うケースも見受けられる(例えばボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズによる、1979年1980年のコンサートにおけるものなど)。もっとも、事前に発表されたプログラムに基づいてコンサートを行うという習慣はクラシック音楽におけるほどは確立していないので、「アンコール曲」と「第2部」の区別は必ずしも明確ではないこともある。コンセプト・アルバムに「アンコール」に相当する楽曲を好んで配置するアーティストも見受けられる。

語源

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フランス語encore (もう一度、といった意)に由来する言葉であるが、現在これを再演の要求に用いるのは英語圏の住人がほとんどで、フランスではもっぱらUne autre (もう一つ)あるいはbis (ビス)[1]が用いられている[要出典]

英語圏にあってもいつからこの言葉が再演の要求に用いられたのは定かではないが、1711年 - 12年にイングランドで発行されていた日刊紙「スペクテイター」(The Spectator )の1712年2月のある号に 「聴衆がある歌に特に喜んだ場合、彼らはいつでもencore またはaltro volto [2]と叫び、演奏者は親切にもそれを最初から繰り返すことが習慣となっていると記者は発見した」とあるので、18世紀初めのこの頃の流行ではないかとされている[要出典]

なおドイツ語ではツーガーベ(Zugabe)。イタリア語ではアンコーラ(Ancora)だが、ダ・カーポ(Da capo)「頭から」とねだる聴衆もいる[要出典]

脚注

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  1. ^ これはラテン語の「2回、もう一回」に由来する。イタリアなど他の大陸ヨーロッパ諸国でも同様[要出典]
  2. ^ 伊語altra volta (もう一回)のイギリス人による誤用、あるいは記者の誤記かと考えられる[要出典]