「広田の方法」の版間の差分
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'''広田の方法'''(ひろたのほうほう |
'''広田の方法'''(ひろたのほうほう、{{lang-en-short|Hirota's method}})は、[[ソリトン]]方程式の[[ソリトン]]解を求めるための方法の一つで、簡便にして強力なことで知られる。[[広田良吾]]が考案した。'''双線形化法''' (bilinearization method)、'''直接法''' (direct method) とも呼ばれる。 |
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Log微分などによる従属変数の変数変換により、非線形偏微差分方程式を双線形方程式に変換する。変換後の従属変数はしばしばτ関数と呼ばれる。τ関数は行列式またはパフィアン(Pfaffian)で、双線形方程式は |
{{math|Log}}微分などによる従属変数の変数変換により、非線形偏微差分方程式を双線形方程式に変換する。変換後の従属変数はしばしば {{mvar|τ}} 関数と呼ばれる。{{mvar|τ}} 関数は[[行列式]]またはパフィアン (Pfaffian) で、双線形方程式はPlucker関係式である。 |
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ソリトン方程式の可積分性を保ったまま方程式の独立変数を離散化する際にも |
[[ソリトン]]方程式の可積分性を保ったまま方程式の独立変数を離散化する際にも重要な役割を果たしている。 |
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重要な役割を果たしている。 |
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==広田微分== |
==広田微分== |
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===定義=== |
===定義=== |
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二つの関数の組''f'' |
二つの関数の組 {{math|''f''(''x'', ''t'')}}, {{math|''g''(''x'', ''t'')}} に対して、 |
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:<math> |
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D_x{}^{m}D_t{}^{n} f \cdot g= |
D_x{}^{m}D_t{}^{n} f \cdot g= |
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f(x, t)g(x',t') \right |_{x'=x, t'=t} |
f(x, t)g(x',t') \right |_{x'=x, t'=t} |
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で定義される演算を'''広田微分'''と呼ぶ。演算子 |
で定義される[[二項演算]]を'''[[広田微分]]'''と呼ぶ。演算子 {{mvar|D<sub>x</sub>}}, {{mvar|D<sub>t</sub>}} を'''広田のD演算子'''と呼ぶ。 |
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実際の広田微分の計算例は次のようになる。 |
実際の広田微分の計算例は次のようになる。 |
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*<math> |
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D_x f \cdot g=f_x g-fg_x |
D_x f \cdot g=f_x g-fg_x |
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D_x^{\,2} f \cdot g = f_{xx}g - 2f_xg_x+fg_{xx} |
D_x^{\,2} f \cdot g = f_{xx}g - 2f_xg_x+fg_{xx} |
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*<math> |
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D_x^{\,3} f \cdot g = f_{xxx}g - 3f_{xx}g_x + 3f_{x}g_{xx} - f g_{xxx} |
D_x^{\,3} f \cdot g = f_{xxx}g - 3f_{xx}g_x + 3f_{x}g_{xx} - f g_{xxx} |
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D_x^{\,4} f \cdot g = f_{xxxx}g- 4f_{xxx}g_x + 6f_{xx}g_{xx} - 4f_{x}g_{xxx} + f g_{xxxx} |
D_x^{\,4} f \cdot g = f_{xxxx}g- 4f_{xxx}g_x + 6f_{xx}g_{xx} - 4f_{x}g_{xxx} + f g_{xxxx} |
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D_xD_t f \cdot g = f_{tx}g - f_tg_x- f_xg_t + fg_{tx} |
D_xD_t f \cdot g = f_{tx}g - f_tg_x- f_xg_t + fg_{tx} |
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</math> |
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==双線形形式== |
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二つの関数の組に、[[広田微分]]を作用させた場合、各項は二つの関数の導関数について、どちらも一次式の形になっており、これを'''双線形形式''' (bilinear form) と呼ぶ。[[可積分系]]の非線形偏微分方程式は、適当な従属変数の変換の下、双線形形式の[[広田微分]]の方程式に変形できる。シンプルな形に表現された双線形形式の方程式に、[[広田微分]]の性質を組み合わせることで、見通しのよい計算で解を構成することが可能となる。 |
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!方程式!!変数変換!!双線形形式 |
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|[[KdV方程式]]: <math>u_{t}+6uu_{x}+u_{xxx}=0 \,</math>|| <math>u=2\frac{\partial^2}{\partial x^2}\log{f}</math>|| <math> D_x(D_t+D_x^{\,3}) f \cdot f=0</math> |
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|[[mKdV方程式]]: <math>u_{t}+6u^2u_{x}+u_{xxx}=0\,</math>|| <math>u=\frac{g}{f}</math>||<math> (D_t+D_x^{\,3}) g \cdot f=0, \, D_x^{\,2}f \cdot f=2g^2</math> |
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|[[非線形シュレディンガー方程式|非線形Schrödinger方程式]]: <math>iu_{t}+u_{xx}+2|u|^2u=0\,</math>|| <math>u=\frac{g}{f}</math> (<math>f\,</math>は実数値関数、<math>g\,</math>は複素数値関数)||<math> (iD_t+D_x^{\,2}) g \cdot f=0, \, D_x^{\,2}f \cdot f=2gg^{\ast}</math> |
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|サイン・ゴルドン方程式: <math>u_{tx}=\sin{u}\,</math>|| <math>u=2i\log{\frac{f^{\ast}}{f}}</math> (<math>f\,</math>は複素数値関数)|| <math> D_xD_t f \cdot f=-\frac{1}{2} |
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(f^{\ast\,2}-f^2)</math> |
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|戸田格子: <math>\frac{d^2}{dt^2}r_n=2e^{-r_n}-e^{-r_{n-1}}-e^{-r_{n+1}}\,</math>|| <math>V_n=e^{-r_n}-1, \,V_n=\frac{d^2}{dt^2}\log{\tau_n}</math>|| <math> \frac{1}{2}D_t^{\, 2} \tau_n \cdot \tau_n=\tau_{n+1}\tau_{n-1}-\tau_n^{\,2}</math> |
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|KP方程式: <math>\frac{\partial}{\partial x}\bigl ( u_{t}+6uu_{x}+u_{xxx} \bigr )+u_{yy}=0</math>|| <math>u=2\frac{\partial^2}{\partial x^2}\log{f}</math>|| <math> (D_xD_t+D_y^{\,2}+D_x^{\,4}) f \cdot f=0</math> |
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==広田の方法== |
==広田の方法== |
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広田の方法では、可積分系の非線形偏微分方程式に対し、対数微分などの従属変数の変換を行った後、広田微分を用いて、双 |
広田の方法では、[[可積分系]]の非線形偏微分方程式に対し、[[対数微分]]などの従属変数の変換を行った後、[[広田微分]]を用いて、双線形形式の微分方程式に帰着させる。さらに双線形形式の微分方程式を、べき級数の形式で展開し、各べき乗のオーダーを満たす関数形を定めていくことで解を構成する。[[逆散乱法]]では、非線形偏微分方程式を[[シュレディンガー方程式]]の[[散乱問題]]に帰着させ、散乱データから元の非線形偏微分方程式の解に対応するポテンシャル関数を構成するという数学的技巧を要するが、広田の方法では直接的なアプローチで元の方程式を解くことができ、簡便性が高い。 |
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===KdV方程式の例=== |
===KdV方程式の例=== |
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なる変数変換をすると、 |
なる変数変換をすると、 |
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:<math> D_x(D_t+D_x^{\,3}) f \cdot f=0</math> |
:<math> D_x(D_t+D_x^{\,3}) f \cdot f=0</math> |
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なる双 |
なる双線形形式の方程式に帰着される。ここで {{mvar|f}} を |
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ここで''f'' を |
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:<math>\epsilon^2: \,\, D_x(D_t+D_x^{\, 3})(f_2 \cdot 1+ f_1 \cdot f_1 + 1 \cdot f_2)=0</math> |
:<math>\epsilon^2: \,\, D_x(D_t+D_x^{\, 3})(f_2 \cdot 1+ f_1 \cdot f_1 + 1 \cdot f_2)=0</math> |
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:<math>\epsilon^3: \,\, D_x(D_t+D_x^{\, 3})(f_3 \cdot 1+ f_2 \cdot f_1+ f_1 \cdot f_2 + 1 \cdot f_3)=0</math> |
:<math>\epsilon^3: \,\, D_x(D_t+D_x^{\, 3})(f_3 \cdot 1+ f_2 \cdot f_1+ f_1 \cdot f_2 + 1 \cdot f_3)=0</math> |
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1ソリトン解を構成するには次のような解の構成を行う。まず、 |
1ソリトン解を構成するには次のような解の構成を行う。まず、 |
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:<math>f_1=e^{2(\kappa x-\omega t)} \,</math> |
:<math>f_1=e^{2(\kappa x-\omega t)} \,</math> |
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として、ε<sup>1</sup>の項を考えると |
として、{{math|''ε''<sup>1</sup>}} の項を考えると |
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:<math>\omega=4\kappa^3 \,</math> |
:<math>\omega=4\kappa^3 \,</math> |
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の関係 |
の関係が満される必要があることがわかる。また、高次の {{mvar|ε<sup>n</sup>}} の項については、特解として、 |
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:<math>f_n=0 \quad n\geq 2</math> |
:<math>f_n=0 \quad n\geq 2</math> |
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をとることができる。よって、解 |
をとることができる。よって、解 {{mvar|u}} としては |
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:<math> |
:<math> |
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u=2\frac{\partial^2}{\partial x^2} \log{(1+e^{2\kappa x-4\kappa^3 t})} |
u=2\frac{\partial^2}{\partial x^2} \log{(1+e^{2(\kappa x-4\kappa^3 t)})} |
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</math> |
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となる。 |
となる。 |
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==参考文献== |
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*R. Hirota, ''Phy. Rev. Lett.'', '''27''', p. 1192, 1971. {{doi|10.1103/PhysRevLett.27.1192}} |
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* 広田良吾, "直接法によるソリトンの数理", 岩波書店, 1992年, ISBN 978-4000056762 |
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== 関連事項 == |
== 関連事項 == |
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*[[ソリトン]] |
*[[ソリトン]] |
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*無限次元Grassmann多様体 |
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*Plucker関係式 |
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*[[行列式]] |
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*[[パフィアン]] |
*[[パフィアン]] |
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*[[可積分差分 |
*[[可積分アルゴリズム#可積分差分スキーム]] |
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{{DEFAULTSORT:ひろたのほうほう}} |
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[[Category:微分方程式]] |
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[[Category:数学に関する記事]] |
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{{Mathanalysis-stub}} |
2022年9月22日 (木) 07:37時点における最新版
微分方程式 |
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分類 |
解 |
広田の方法(ひろたのほうほう、英: Hirota's method)は、ソリトン方程式のソリトン解を求めるための方法の一つで、簡便にして強力なことで知られる。広田良吾が考案した。双線形化法 (bilinearization method)、直接法 (direct method) とも呼ばれる。
Log微分などによる従属変数の変数変換により、非線形偏微差分方程式を双線形方程式に変換する。変換後の従属変数はしばしば τ 関数と呼ばれる。τ 関数は行列式またはパフィアン (Pfaffian) で、双線形方程式はPlucker関係式である。
ソリトン方程式の可積分性を保ったまま方程式の独立変数を離散化する際にも重要な役割を果たしている。
広田微分
[編集]定義
[編集]二つの関数の組 f(x, t), g(x, t) に対して、
で定義される二項演算を広田微分と呼ぶ。演算子 Dx, Dt を広田のD演算子と呼ぶ。
実際の広田微分の計算例は次のようになる。
双線形形式
[編集]二つの関数の組に、広田微分を作用させた場合、各項は二つの関数の導関数について、どちらも一次式の形になっており、これを双線形形式 (bilinear form) と呼ぶ。可積分系の非線形偏微分方程式は、適当な従属変数の変換の下、双線形形式の広田微分の方程式に変形できる。シンプルな形に表現された双線形形式の方程式に、広田微分の性質を組み合わせることで、見通しのよい計算で解を構成することが可能となる。
方程式 | 変数変換 | 双線形形式 |
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KdV方程式: | ||
mKdV方程式: | ||
非線形Schrödinger方程式: | (は実数値関数、は複素数値関数) | |
サイン・ゴルドン方程式: | (は複素数値関数) | |
戸田格子: | ||
KP方程式: |
広田の方法
[編集]広田の方法では、可積分系の非線形偏微分方程式に対し、対数微分などの従属変数の変換を行った後、広田微分を用いて、双線形形式の微分方程式に帰着させる。さらに双線形形式の微分方程式を、べき級数の形式で展開し、各べき乗のオーダーを満たす関数形を定めていくことで解を構成する。逆散乱法では、非線形偏微分方程式をシュレディンガー方程式の散乱問題に帰着させ、散乱データから元の非線形偏微分方程式の解に対応するポテンシャル関数を構成するという数学的技巧を要するが、広田の方法では直接的なアプローチで元の方程式を解くことができ、簡便性が高い。
KdV方程式の例
[編集]可積分系の代表的な例であるKdV方程式で、広田の方法を説明する。KdV方程式
において、
なる変数変換をすると、
なる双線形形式の方程式に帰着される。ここで f を
と ε によるべき級数で展開する。これを双線形形式の方程式に代入し、各べき εn のオーダー毎にまとめると、
となる。
- 1ソリトン解
1ソリトン解を構成するには次のような解の構成を行う。まず、
として、ε1 の項を考えると
の関係が満される必要があることがわかる。また、高次の εn の項については、特解として、
をとることができる。よって、解 u としては
となる。
参考文献
[編集]- R. Hirota, Phy. Rev. Lett., 27, p. 1192, 1971. doi:10.1103/PhysRevLett.27.1192
- 広田良吾, "直接法によるソリトンの数理", 岩波書店, 1992年, ISBN 978-4000056762
関連事項
[編集]- ソリトン
- 無限次元Grassmann多様体
- Plucker関係式
- 行列式
- パフィアン
- 可積分アルゴリズム#可積分差分スキーム