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[[2002年]]8月、[[平沢勝栄]]衆議院議員([[自由民主党 (日本)|自由民主党]])の元に、男性から「高校生の息子が成人向け漫画を読んでいる、なんとかして欲しい」との前代未聞の内容の投書が届いた。警察OBである平沢はその手紙をそまま[[警察庁]]に転送。これをもとに当局が捜査を行った結果、同年10月、「なぜか」その漫画ではなく、同社から発行されていた別の漫画単行本に対して、[[刑法]][[わいせつ|第175条(猥褻物頒布等)]]に抵触するわいせつ物であるとし、著者の漫画家、松文館の社長、編集局長を逮捕した。
[[2002年]]8月、[[平沢勝栄]]衆議院議員([[自由民主党 (日本)|自由民主党]])の元に、男性から「高校生の息子が成人向け漫画を読んでいる、なんとかして欲しい」との前代未聞の内容の投書が届いた。警察OBである平沢はその手紙に自身添え状を付けて[[警察庁]]に転送。これをもとに当局が捜査を行った結果、同年10月、「なぜか」その漫画ではなく、同社から発行されていた別の漫画単行本に対して、[[刑法]][[わいせつ|第175条(猥褻物頒布等)]]に抵触するわいせつ物であるとし、著者の漫画家、松文館の社長、編集局長を逮捕した。


その漫画だけが特別取り上げられた理由を、検察側は絵が上手すぎるからだと説明した。またこの漫画では生殖器を作画した部分には、範囲の40%に当たる面積を黒く隠蔽する「網掛け」が自主規制として行われており、これは成人向け漫画のなかで一般的な水準、ないしは厳しいほうであった。
その漫画だけが特別取り上げられた理由を、検察側は絵が上手すぎるからだと説明した。またこの漫画では生殖器を作画した部分には、範囲の40%に当たる面積を黒く隠蔽する「網掛け」が自主規制として行われており、これは成人向け漫画のなかで一般的な水準、ないしは厳しいほうであった。

2009年4月11日 (土) 02:03時点における版

松文館裁判(しょうぶんかんさいばん)とは松文館から発行された成人向け漫画の猥褻性をめぐる裁判である。松文館の社長貴志元則、編集局長及び契約漫画家が逮捕された事件の裁判である。

原審 東京地方裁判所刑事第2部 平成17年刑(わ)第3618号、控訴審 東京高等裁判所第6刑事部 平成16年(う)第458号。上告審 最高裁判所(第一小法廷)平成17年(あ)1508号。コミックマーケットのスタッフでもあり創作物に対する規制に反対する運動「NGO-AMI」にも理事として参加しコメントを寄せるなど、表現の自由の問題へは一際、積極的である山口貴士(リンク総合法律事務所)が主任弁護士である。

経緯

2002年8月、平沢勝栄衆議院議員(自由民主党)の元に、男性から「高校生の息子が成人向け漫画を読んでいる、なんとかして欲しい」との前代未聞の内容の投書が届いた。警察OBである平沢はその手紙に自身の添え状を付けて警察庁に転送。これをもとに当局が捜査を行った結果、同年10月、「なぜか」その漫画ではなく、同社から発行されていた別の漫画単行本に対して、刑法第175条(猥褻物頒布等)に抵触するわいせつ物であるとし、著者の漫画家、松文館の社長、編集局長を逮捕した。

その漫画だけが特別取り上げられた理由を、検察側は絵が上手すぎるからだと説明した。またこの漫画では生殖器を作画した部分には、範囲の40%に当たる面積を黒く隠蔽する「網掛け」が自主規制として行われており、これは成人向け漫画のなかで一般的な水準、ないしは厳しいほうであった。

2004年1月、東京地方裁判所刑事第2部中谷雄二郎裁判長は「被告人は、当公判廷において、本件漫画本を頒布したことは認めながらも、そのわいせつ性について争うばかりか、本件漫画の描写がリアルかどうかなどは専門家でない警察官や検察官には分からないなどと広言して、自己の行為が社会に与えた悪影響について反省する態度は全くみられない」として、初犯としては異例の懲役1年・執行猶予3年の判決を下したが、被告人側は即日控訴した(なお著者と編集局長については、逮捕直後に略式裁判によりそれぞれ罰金50万円が確定している)。 なお、判決文読み上げ中に不当判決を叫ぶ傍聴者が退廷を命じられる一幕もあった。


しかし、控訴審では一転、2005年6月に 東京高等裁判所第6刑事部田尾健二郎裁判長の判決文には「検察官の取調べにおいては、本件漫画本がわいせつ物に当たることを認め、本件犯行について謝罪の気持ちを有していたという事情もある」「漫画の猥褻性は実写に比べて相当の開きがあり懲役刑は重過ぎる」として一審判決を破棄、罰金150万円の判決を下した。


被告人側はあくまで無罪を主張し上告したが、2007年6月14日に、最高裁判所第一小法廷(才口千晴裁判長)は二審判決の漫画もわいせつ物に当たるという判断を支持。また、チャタレー事件の最高裁判決等を判例として、憲法における表現の自由の侵犯には当たらないと判断、上告不受理を決定。これにより、二審判決が確定した。

時間軸

  • 2002年8月 投書
  • 同年10月 逮捕
  • 同年12月 初公判
  • 2003年11月 最終弁論
  • 2004年1月 一審判決
  • 2005年6月 二審判決
  • 2007年6月 最高裁判決

関連項目

文学作品においてわいせつ性が論じられた裁判例

参考文献

  • 長岡義幸『「わいせつコミック」裁判 松文館事件の全貌』道出版、2004年1月、ISBN 486086011X

外部リンク