「ボレル総和」の版間の差分
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| 要改訳 = 2020年8月 |
| 要改訳 = 2020年8月 |
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}}{{Quote box|align=right|width=33%|quote=当時あまり知られていなかった[[Émile Borel|Borel]]は、多くの古典的な発散級数に対して「正しい」答えを与える手法である総和法を発明した。 彼は複素解析の権威として認知されていた[[Gösta Mittag-Leffler|Mittag-Leffler]]に会うためにストックホルムを訪れた。 Mittag-LefflerはBorelの話を快く聞き入れた後、教師であった[[Karl Weierstrass|Weierstrass]]の全作品に手置き,ラテン語で 'The Master forbids it'と言った.|source=[[Mark Kac]], quoted by {{harvtxt|Reed|Simon|1978|p=38}}}} 数学では、 '''ボレル総和'''は{{harvs|txt|first=Émile|last=Borel|year=1899|authorlink=Émile Borel}}によって導入された[[発散級数|発散級数の]] [[総和法]]です。 これは、 発散漸近級数を足しあげるのに特に役立ちます。ある意味で、そのような級数とって最も良い可能な総和を与えます。 この方法には、Borel総和とも呼ばれるいくつかのバリエーションがあり、一般化してMittag-Leffler総和と呼ばれます。 |
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{{Quote box |
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| align=right |
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| width=33% |
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| quote=[[Emile Borel|Borel]], then an unknown young man, discovered that his summation method gave the 'right' answer for many classical divergent series. He decided to make a pilgrimage to Stockholm to see [[Gosta Mittag-Leffler|Mittag-Leffler]], who was the recognized lord of complex analysis. Mittag-Leffler listened politely to what Borel had to say and then, placing his hand upon the complete works by [[Karl Weierstrass|Weierstrass]], his teacher, he said in Latin, 'The Master forbids it'. |
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(編集者訳す)当時あまり知られていなかった[[エミール・ボレル|ボレル]]は、古典的な発散級数の多くに対して「正しい」答えを与える手法となる総和法を発見した。彼は[[複素解析]]の権威として認知されていた[[ヨースタ・ミッタク=レフラー|ミッタク=レフラー]]に会うためにストックホルムを訪れた。ミッタク=レフラーはボレルの話を礼儀正しく聞いた後、レフラーの師であった[[カール・ワイエルシュトラス|ワイエルシュトラス]]の全作品に手を置き、ラテン語で「この手法を使うことを禁じる」と言った。| source=[[マーク・カッツ]]、{{Harv|Reed|Simon|1978|p=38}}より |
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[[数学]]、特に[[解析学]]において、'''ボレル総和'''(ボレルそうわ、{{lang-en-short|Borel summation}})とは[[エミール・ボレル]]によって[[1899年]]に導入された、[[発散級数]]に対する[[総和法]]のひとつである。これは発散するような[[漸近展開|漸近級数]]に対して有用で、級数に対してある意味で最適な「和」と呼ばれる値を与える。同じ「ボレル総和」という語で呼ばれる数種類の手法があり、さらにその一般化に[[ミッタク=レフラー総和法]]がある。 |
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== 定義 == |
== 定義 == |
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ボレル総和にはわずかに異なる(少なくとも)3種類の方法がある。それらは適用できる級数の範囲が異なるものの、[[発散級数#総和法の性質|一貫性]]がある。すなわち、同じ級数に対して以下のうちの2種類の方法で総和した場合、収束するならば同じ値を与える。 |
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全体を通して、 |
記事全体を通して、{{math|''A''(<var>z</var>)}} で[[形式的冪級数|形式的べき級数]] |
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: <math>A(z) = \sum_{k = 0}^\infty |
: <math> |
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A(z) = \sum_{k = 0}^{\infty} a_{k}z^{k} |
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</math> |
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''A''のボレル変換を |
を表すことにし、{{math|''A''(<var>z</var>)}} のボレル変換 {{math|{{mathcal|B}}(<var>A</var>)}} を指数型の形式的べき級数 |
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: <math>\mathcal{B}A(t) \ |
: <math> |
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\mathcal{B}(A)(t) \colon = \sum_{k = 0}^{\infty} \frac{a_{k}}{k!} t^{k} |
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</math> |
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として定義する。 |
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=== ボレルの指数総和法 === |
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''A'' <sub>''n''</sub> ( ''z'' )が部分和を表すとする |
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=== ボレルの指数型総和法 === |
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: <math>A_n(z) = \sum_{k=0}^n a_k z^k.</math> |
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非負整数{{mvar|n}}に対して、{{math|''A''(<var>z</var>)}} の第 {{mvar|n}} 部分和を {{math|<var>A<sub>n</sub></var>(<var>z</var>)}} で表す: |
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: <math> |
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ボレルの総和法の弱形式は、 ''Aの''ボレル和を次''の''ように定義します。 |
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A_{n}(z) = \sum_{k = 0}^{n} a_{k}z^{k}. |
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</math> |
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{{math|''A''(<var>z</var>)}} の'''弱-ボレル総和'''は以下のように定義される。まず、{{math|''A''(<var>z</var>)}} のボレル和を次で定義する: |
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: <math> \lim_{t\rightarrow\infty} e^{-t}\sum_{n=0}^\infty \frac{t^n}{n!}A_n(z). </math> |
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: <math> |
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これが''zで''収束する場合 ∈ '''C'''をある''a'' ( ''z'' )に変換すると、 ''Aの''弱いボレル和は''z''に収束すると言い、 <math> {\textstyle \sum} a_kz^k = a(z) \, (\boldsymbol{wB}) </math> 。 |
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\lim_{t \to \infty} e^{-t} \sum_{n = 0}^{\infty} \frac{A_{n}(z)}{n!} t^{n}. |
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</math> |
|||
この {{math|<var>t</var> → ∞}} での極限がある {{math|<var>z</var> ∈ '''C'''}} で値 {{math|''a''(<var>z</var>)}} に収束するとき、{{math|''A''(<var>z</var>)}} の弱-ボレル総和は {{mvar|z}} で収束すると言い、 |
|||
=== ボレルの積分加算法 === |
|||
すべての正の実数についてボレル変換が次の積分が(不定積分として)明確に定義されるほどゆっくりと成長する関数に収束すると仮定すると、 ''A''の'''ボレル総和'''は次のようになります。 |
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: <math> |
|||
: <math>\int_0^\infty e^{-t} \mathcal{B}A(tz) \, dt. </math> |
|||
\sum a_{k}z^{k} = a(z) \qquad (\textbf{wB}) |
|||
</math> |
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と書く。 |
|||
積分が''zで''収束する場合 ∈ '''C'''をある''a'' ( ''z'' )に変換すると、 ''A''のボレル和は''z''に収束すると言い、 <math> {\textstyle \sum} a_kz^k = a(z) \,(\boldsymbol B) </math> 。 |
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=== |
=== ボレルの積分総和法 === |
||
すべての正の実数について、{{math|''A''(<var>z</var>)}} のボレル変換 {{math|{{mathcal|B}}(<var>A</var>)}} が、次の広義積分が[[Well-defined|well-defined]]になるほど緩やかに増加する関数に収束すると仮定する。このとき、{{math|''A''(<var>z</var>)}} の'''ボレル総和'''を次で定義する: |
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これは、Borelの積分合計法に似ていますが、Borel変換はすべての''t''について収束する必要はありませんが、 正の実軸に沿って[[解析接続]]できる0に近い''tの'' [[解析関数]]に収束します 。 |
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: <math> |
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== 基本特性 == |
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\int_{0}^{\infty} e^{-t} \mathcal{B}(A)(tz) \, dt. |
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</math> |
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この積分がある {{math|<var>z</var> ∈ '''C'''}} で値 {{math|''a''(<var>z</var>)}} に収束するとき、{{math|''A''(<var>z</var>)}} のボレル総和は {{math|<var>z</var>}} で収束すると言い、 |
|||
=== 規則性 === |
|||
メソッド( '''B''' )と( '''wB''' )はどちらも[[発散級数|通常の]]総和法です。つまり、 ''A'' ( ''z'' )が(標準的な意味で)収束するたびに、ボレル和とウィークボレル和も収束し、同じ値になります。すなわち |
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: <math> |
|||
: <math> \sum_{k=0}^\infty a_k z^k = A(z) < \infty \quad \Rightarrow \quad {\textstyle \sum} a_kz^k = A(z) \,\, (\boldsymbol{B},\,\boldsymbol{wB}). </math> |
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\sum a_{k}z^{k} = a(z) \qquad (\textbf{B}) |
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</math> |
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と書く。 |
|||
( '''B''' )の規則性は、積分の順序を変更することで簡単に確認できます。これは、絶対収束により有効です''。A'' ( ''z'' )が''z''に収束する場合、 |
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=== 解析接続を伴うボレルの積分総和法 === |
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: <math> A(z) = \sum_{k=0}^\infty a_k z^k = \sum_{k=0}^\infty a_k \left( \int_{0}^\infty e^{-t}t^k dt \right) \frac{z^k}{k!} = \int_{0}^\infty e^{-t} \sum_{k=0}^\infty a_k \frac{(tz)^k}{k!}dt, </math> |
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これはボレルの積分総和法と同様であるが、すべての {{mvar|t}} についてボレル変換が収束することまでは要求しない。しかし、正の実軸に沿って[[解析接続]]した結果が {{math|<var>t</var> {{=}} 0}} の近傍においてある[[解析関数]]に収束することは要求する。 |
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== 基本性質 == |
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ここで、右端の式は正確に''zでの''ボレル和です。 |
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=== 正則性 === |
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弱-ボレル総和('''wB''')とボレル総和('''B''')はどちらも[[発散級数#総和法の性質|正則]]な総和法である。すなわち、{{math|''A''(<var>z</var>)}} が通常の意味で収束するならば、弱-ボレル総和とボレル総和も同じ値に収束する: |
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: <math> |
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A(z) = \sum_{k=0}^{\infty} a_{k}z^{k} < \infty |
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\quad \Rightarrow \quad |
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\sum a_{k}z^{k} = A(z) \qquad (\textbf{wB}, \textbf{B}). |
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</math> |
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ボレル総和('''B''')の正則性は積分と級数の順序を変更することで簡単に確認できる。これは[[絶対収束|絶対収束性]]により妥当であって、今 {{math|''A''(<var>z</var>)}} が {{mvar|z}} で収束すると仮定すれば、 |
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: <math> |
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A(z) |
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= \sum_{k=0}^{\infty} a_{k}z^{k} |
|||
= \sum_{k=0}^{\infty} a_{k} \left(\int_{0}^{\infty} e^{-t}t^{k} \, dt\right) \frac{z^{k}}{k!} |
|||
= \int_{0}^{\infty} e^{-t} \sum_{k=0}^{\infty} \frac{a_{k}}{k!} (tz)^k \, dt |
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= \int_{0}^{\infty} e^{-t} \mathcal{B}(A)(tz) \, dt |
|||
</math> |
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と計算でき、最右辺は {{mvar|z}} における {{math|''A''(<var>z</var>)}} のボレル総和である。 |
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( '''B''' )と( '''wB''' )の規則性は、これらの総和法が''A'' ( ''z'' )の解析接続を与えることを意味します。 |
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弱-ボレル総和('''wB''')とボレル総和('''B''')の正則性から {{math|''A''(<var>z</var>)}} の解析接続が得られる。 |
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=== ボレルの非等価性と弱いボレル総和 === |
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''zで''加算可能な弱いボレルである系列''A'' ( ''z'' ) ∈ ''C''も''zで''ボレル加算可能です。 しかし、弱いボレル総和の下で発散するがボレル総和可能であるシリーズの例を作ることができます。 次の定理は、2つの方法の同値性を特徴付けます。 |
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=== 弱-ボレル総和とボレル総和の非等価性 === |
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: '''定理''' ( {{Harv|Hardy|1992}} )。 |
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ある {{math|<var>z</var> ∈ '''C'''}} で弱-ボレル総和可能な任意の級数 {{math|''A''(<var>z</var>)}} は、常に同じ点 {{mvar|z}} でボレル総和可能である。しかし弱-ボレル総和法では発散し、かつボレル総和可能であるような級数の例を構築できる。次の定理により2つの方法はある条件の下で同値となることが示される。 |
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: ''A'' ( ''z'' )を正式なべき級数とし、 ''z''を修正します。 ∈ ''C'' 、次に: |
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:# もし<math> {\textstyle \sum} a_kz^k = a(z) \, (\boldsymbol{wB}) </math> 、その後<math> {\textstyle \sum}a_kz^k = a(z) \, (\boldsymbol{B})</math> 。 |
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:# もし<math> {\textstyle \sum} a_kz^k = a(z) \, (\boldsymbol{B}) </math> 、および<math> \lim_{t \rightarrow \infty} e^{-t}\mathcal B A(zt) = 0, </math>その後<math> {\textstyle \sum} a_kz^k = a(z) \, (\boldsymbol{wB}) </math> 。 |
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: '''定理''' {{Harv|Hardy|1992}} |
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=== 他の合計方法との関係 === |
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: {{math|''A''(<var>z</var>)}}を形式的べき級数とし、{{math|<var>z</var> ∈ '''C'''}}を固定する。このとき: |
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:#('''wB''')の意味で<math>\sum a_{k}z^{k} = a(z)</math>ならば、('''B''')の意味で<math>\sum a_{k}z^{k} = a(z)</math>である。 |
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:#('''B''')の意味で<math>\sum a_{k}z^{k} = a(z)</math>であり、かつ<math>\lim_{t \to \infty} e^{-t} \mathcal{B}(A)(tz) = 0</math>であるならば、('''wB''')の意味で<math>\sum a_{k}z^{k} = a(z)</math>である。 |
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=== 他の総和法との関係 === |
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* ( '''B''' )は、αを使用したMittag-Leffler総和の特殊なケースです。 = 1。 |
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*('''B''')は、[[ミッタク=レフラー総和法]]において {{math|<var>α</var> {{=}} 1}} とした場合に相当する。 |
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* '''(WB)は、'''一般の限定的なケースとして見ることができるオイラー総和法 ''q''とするという意味で'''''(E、Q)''''' → ∞ ( '''E''' 、 ''q'' )総和法の収束領域は( '''B''' )の収束領域まで収束します。 <ref name="Hardy1992">Hardy, G. H. (1992). ''Divergent Series''. AMS Chelsea, Rhode Island.</ref> |
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* [[オイラー総和法]] {{math|('''E''', <var>q</var>)}} の収束領域が {{math|<var>q</var> → ∞}} の極限において('''B''')の収束領域へ収束するという意味で、('''wB''')は一般化オイラー総和法の極限ケースとみなせる<ref name="Hardy1992">Hardy, G. H. (1992). ''Divergent Series''. AMS Chelsea, Rhode Island.</ref>。 |
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== 一意性定理 == |
== 一意性定理 == |
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与えられた漸近展開 |
与えられた関数が[[漸近展開]]となるような関数は常に多く存在する。ただし、ある領域における有限次元での近似誤差が可能な限り小さいという意味で、最良の関数が存在する場合がある。以下に提示する[[ワトソンの定理]]と[[カーレマンの定理]]は、漸近級数に対する「最良の和」をボレル総和が与えることを示す。 |
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=== ワトソンの定理 === |
=== ワトソンの定理 === |
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ワトソンの定理は、関数がその漸近級数のボレル和になる条件を与え |
ワトソンの定理は、関数がその漸近級数のボレル総和になる条件を与える。{{mvar|f}} が次の条件を満たす関数であると仮定する。 |
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# ある正の定数 {{mvar|R}} と {{mvar|ε}} が存在して、領域 {{math|{{abs|<var>z</var>}} < <var>R</var>}}、{{math|{{abs|arg(<var>z</var>)}} < {{pi}}/2 + <var>ε</var>}} 上で {{mvar|f}} が正則となる。 |
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* ''f''はある領域で正則です| ''z'' | < ''R'' 、| arg( ''z'' )| < {{Pi}} / 2 + ''εは'' 、いくつかの正の''R''および ''ε'' 。 |
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# ある定数 {{mvar|C}} が存在して、上述の領域の任意の点 {{mvar|z}} で |
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* この領域では、 ''f''に漸近系列''a'' <sub>0があります</sub> + ''a'' <sub>1</sub> ''z'' + ...が次の誤差 |
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::: <math> |
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: <math>|f(z)-a_0 -a_1z -\cdots -a_{n-1}z^{n-1}|</math> |
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\left\vert f(z) - a_{0} - a_{1}z - \cdots - a_{n-1}z^{n-1} \right\vert |
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< C^{n+1}n! \left\vert z \right\vert^{n} |
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</math> |
|||
:: を満たす漸近展開 {{math|<var>a</var><sub>0</sub> + <var>a</var><sub>1</sub><var>z</var> + …}} を持つ。 |
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によって評価され |
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このとき、この領域で {{mvar|f}} は漸近級数のボレル和によって与えられるというのがワトソンの定理の主張である。より正確には、ボレル変換された級数が原点の近傍上で収束し、正の実軸に沿って[[解析接続]]可能であり、ボレル和('''B''')を定義する積分はこの領域で {{math|''f''(<var>z</var>)}} に収束する。 |
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: <math>C^{n+1}n!|z|^n</math> |
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やや一般的には、{{mvar|f}} の漸近展開に対する誤差評価を {{math|<var>n</var>!}} から {{math|(<var>kn</var>)!}} に緩めても、領域の条件を {{math|{{abs|arg(<var>z</var>)}} < <var>k</var>{{pi}}/2 + <var>ε</var>}} へ強めることで {{math|''f''(<var>z</var>)}} は決定できる。これは最良の評価であって、{{math|<var>k</var>{{pi}}/2}} をより小さい数に置き換えた場合には反例が存在する。 |
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領域内のすべての''zに対して'' (いくつかの正の定数''Cに対して'' )。 |
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=== カーレマンの定理 === |
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次に、ワトソンの定理は、この領域では''f''は漸近級数のボレル和によって与えられると述べています。 より正確には、ボレル変換の系列は原点の近傍に収束し、分析的に正の実軸に継続でき、ボレル和を定義する積分は、上の領域で''zの'' ''f'' ( ''z'' )に収束します。 |
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カーレマンの定理は、扇状領域内における有限次近似の近似誤差が急速に増大しない限り、関数は漸近級数によって一意的に定まることを示す。より正確には以下の通りである。 |
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# {{mvar|f}} が扇状領域 {{math|{{abs|<var>z</var>}} < <var>C</var>}}、{{math|Re(<var>z</var>) > 0}} の内部で解析的である。 |
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少し一般的に言えば、 ''f''は''n'' !上記の誤差推定では''knに''置き換えられます!条件を提供| arg( ''z'' )| < {{Pi}} / 2 + ''ε''は| arg( ''z'' )|に置き換えられます''{{Pi}}'' 2 + ''ε'' 。 数''{{Pi}}'' 2は、任意の小さい番号に置き換えている場合反例があるので、これは、可能な限り最高のいくつかの意味です。 {{要説明|date=July 2017}} |
|||
# この領域内においてすべての非負整数 {{mvar|n}} に対して {{math|{{abs|''f'' (<var>z</var>)}} < {{abs|<var>b<sub>n</sub>z</var>}}<var><sup>n</sup></var>}} が成り立つ。 |
|||
このとき、逆数和 {{math|1/<var>b</var><sub>0</sub> + 1/<var>b</var><sub>1</sub> + …}} が発散するならば {{math|''f'' ≡ 0}} が成立する、ということを主張する。 |
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=== カールマンの定理 === |
|||
カールマンの定理は、有限次数近似の誤差があまり大きくならない限り、関数は領域の漸近級数によって一意に決まることを示しています。 より正確には、 ''f''が領域の内部で分析的である場合、 ''z'' | < ''C'' 、Re( ''z'' ) > 0と| ''f'' ( ''z'' )| < | ''b'' <sub>''n''</sub> ''z'' | <sup>''n''</sup>全ての''n''について、この領域では、級数1 / ''B'' <sub>0</sub> + 1 / ''b'' <sub>1</sub> + ...が発散するならば<math>f</math>は0です。 |
|||
カー |
カーレマンの定理は、各項がそれほど急速に増加しないような漸近級数に対する総和法を与え、その和は適切な扇状領域が存在する場合には漸近級数から一意的に定まる関数の値として求められる。ボレル総和法はカーレマンの定理において {{math|<var>b<sub>n</sub></var> {{=}} <var>cn</var>}}({{mvar|c}} はある定数)としたものより弱い。より一般的には、数列 {{math|<var>b<sub>n</sub></var>}} を {{math|<var>b<sub>n</sub></var> {{=}} <var>c′n</var> log <var>n</var> log log <var>n</var>}}({{mvar|c′}} はある定数)などとすることにより、ボレル総和法よりもわずかに強い総和法を定義できる。しかし、この方法が適用できるようなボレル総和できない自然な例がほとんど無いため、この一般化はあまり有用ではない。 |
||
=== 例 === |
=== カーレマンの定理の具体例 === |
||
関数''f'' |
関数 {{math|''f''(<var>z</var>) {{=}} exp(−1/<var>z</var>)}} は、任意の{{math|θ < {{pi}}/2}} に対する領域 {{math|{{abs|arg(<var>z</var>)}} < <var>θ</var>}} において、上述のような誤差範囲をもつ漸近級数 {{math|0 + 0<var>z</var> + …}} を持つが、この漸近級数のボレル総和にならない。ここからもワトソンの定理における {{math|{{pi}}/2}} は誤差項がより小さくできない限り最良の値であることが示される。 |
||
== 例 == |
== 具体例 == |
||
幾何級数 |
=== 幾何級数 === |
||
次のような[[幾何級数]] |
|||
: <math>A(z) = \sum_{k = 0}^\infty z^k |
: <math> |
||
A(z) = \sum_{k = 0}^{\infty} z^{k} |
|||
</math> |
|||
は通常の意味で {{math|{{abs|<var>z</var>}} < 1}} に対して {{math|1/(1 − <var>z</var>)}} に収束する。このボレル変換は |
|||
: <math> |
|||
: <math>\mathcal{B}A(tz) \equiv \sum_{k=0}^\infty \frac{z^k}{k!}t^k = e^{zt},</math> |
|||
\mathcal{B}(A)(tz) |
|||
= \sum_{k = 0}^{\infty} \frac{z^{k}}{k!} t^{k} |
|||
= e^{tz} |
|||
</math> |
|||
であり、ここからより広い領域 {{math|Re(<var>z</var>) < 1}} で収束するボレル和 |
|||
そこからボレル和を得る |
|||
: <math> |
|||
: <math>\int_0^\infty e^{-t}\mathcal{B}A(tz) \, dt = \int_0^\infty e^{-t} e^{tz} \, dt =\frac{1}{1-z}</math> |
|||
\int_{0}^{\infty} e^{-t} \mathcal{B}(A)(tz) \, dt |
|||
= \int_{0}^{\infty} e^{-t} e^{tz} \, dt |
|||
= \frac{1}{1-z} |
|||
</math> |
|||
が得られ、これは元の級数の[[解析接続]]を与える。 |
|||
代わりに弱 |
この代わりに弱-ボレル変換を考えると、{{math|''A''(<var>z</var>)}} の部分和 {{math|''A''<sub><var>n</var></sub>}} は {{math|<var>A<sub>n</sub></var> {{=}} (1 − <var>z<sup>n+1</sup></var>)/(1 − <var>z</var>)}} と与えられるから、弱-ボレル和は |
||
: <math> |
|||
: <math> \lim_{t \rightarrow \infty}e^{-t} \sum_{n=0}^\infty \frac{1 -z^{n+1}}{1-z} \frac{t^n}{n!} = \lim_{t \rightarrow \infty} \frac{e^{-t}}{1-z} \big( e^t - z e^{tz} \big) = \frac{1}{1-z}, </math> |
|||
\lim_{t \to \infty} e^{-t} \sum_{n = 0}^{\infty} \frac{1-z^{n+1}}{1-z} \frac{t^{n}}{n!} |
|||
= \lim_{t \to \infty} \frac{e^{-t}}{1-z} \left(e^{t}-ze^{tz}\right) |
|||
= \frac{1}{1-z} |
|||
</math> |
|||
となり、再び {{math|{{abs|<var>z</var>}} < 1}} に対して {{math|1/(1 − <var>z</var>)}} に収束する。あるいは[[ボレル総和#弱-ボレル総和とボレル総和の非等価性|上記の定理]]の2によって、{{math|Re(<var>z</var>) < 1}} において |
|||
ここでも、Re( ''z'' )< 1 で収束します。 あるいは、このRe''(Z) < 1''のために、等価定理のパート2を主張することによってわかります |
|||
: <math> |
|||
: <math> \lim_{t \rightarrow \infty} e^{-t} (\mathcal{B} A)(zt) = e^{t(z-1)} = 0. </math> |
|||
\lim_{t \to \infty} e^{-t} \mathcal{B}(A)(tz) |
|||
= \lim_{t \to \infty} e^{-t(1-z)} |
|||
= 0 |
|||
</math> |
|||
が成立することからも示される。 |
|||
=== 交代階乗級数 === |
=== 交代階乗級数 === |
||
次の級数を考える |
次の級数を考える。 |
||
: <math>A(z) = \sum_{k = 0}^\infty k!(-1 \cdot z)^k |
: <math> |
||
A(z) = \sum_{k = 0}^{\infty} k!(-1 \cdot z)^{k} |
|||
</math> |
|||
この級数は {{math|<var>z</var> {{=}} 0}} を除く {{math|<var>z</var> ∈ '''C'''}} で収束しない。このボレル変換は {{math|{{abs|<var>t</var>}} < 1}} において |
|||
: <math> |
|||
: <math>\mathcal{B}A(t) \equiv \sum_{k=0}^\infty \left(-1 \cdot t\right)^k = \frac{1}{1+t} </math> |
|||
\mathcal{B}(A)(t) |
|||
= \sum_{k = 0}^{\infty} \left(-1 \cdot t\right)^{k} |
|||
= \frac{1}{1+t} |
|||
</math> |
|||
の| |
となり、これはすべての {{math|<var>t</var> ≥ 0}} に対して解析接続できる。したがってボレル和は |
||
: <math> |
|||
: <math>\int_0^\infty e^{-t}\mathcal{B}A(tz) \, dt = \int_0^\infty \frac{e^{-t}} {1+tz} \, dt = \frac 1 z \cdot e^{1/z} \cdot \Gamma\left(0,\frac 1 z \right)</math> |
|||
\int_{0}^{\infty} e^{-t} \mathcal{B}(A)(tz) \, dt |
|||
= \int_{0}^{\infty} \frac{e^{-t}} {1+tz} \, dt |
|||
= \frac{e^{1/z}}{z} \cdot \Gamma \left(0, \frac{1}{z}\right) |
|||
</math> |
|||
(ここに {{math|Γ(*, *)}} は[[不完全ガンマ関数|第二種不完全ガンマ関数]]を表す)となる。この積分はすべての {{math|<var>t</var> ≥ 0}} に対して収束するので、元の発散級数もすべての {{math|<var>t</var> ≥ 0}} に対してボレル総和可能となる。この関数は {{math|<var>z</var> → 0}} の極限において元の級数を[[漸近展開]]にもつ。これは、時として発散するような漸近展開をボレル総和法が「正しく」総和するという事実の典型的な例である。 |
|||
(ここで、Γは[[不完全ガンマ関数]]です )。 |
|||
再び、 |
|||
この積分はすべての''zに対して''収束します ≥ 0、したがって、元の発散級数は、そのようなすべてに対してBorel総和可能です ''z'' 。 この関数は、 ''z''が元の発散級数によって与えられる0になる傾向があるため、 [[漸近展開]]を持っています。 これは、ボレル総和が発散漸近展開を「正しく」合計することがあるという事実の典型的な例です。 |
|||
: <math> |
|||
また、 |
|||
\lim_{t to \infty} e^{-t} \mathcal{B}(A)(tz) |
|||
= \lim_{t \to \infty} \frac{e^{-t}}{1+tz} |
|||
= 0 |
|||
</math> |
|||
がすべての {{math|<var>t</var> ≥ 0}} に対して収束することと上記の同値性定理から、同じ領域 {{math|<var>t</var> ≥ 0}} において弱-ボレル総和可能であることが保証される。 |
|||
: <math> \lim_{t \rightarrow \infty} e^{-t} (\mathcal B A)(zt) = \lim_{t \rightarrow \infty} \frac{e^{-t}}{1 + zt} = 0, </math> |
|||
=== 同値性が成り立たない例 === |
|||
すべての''z''について、等価定理は弱いボレル総和が同じ収束領域''z''を持つことを保証します ≥ 0。 |
|||
次の例は{{Harv|Hardy|1992}}での例を拡張したものである。次の級数 |
|||
: <math> |
|||
=== 等価性が失敗する例 === |
|||
A(z) = \sum_{k = 0}^{\infty} \left(\sum_{l = 0}^{\infty} \frac{(-1)^{l} (2l + 2)^{k}}{(2l + 1)!}\right) z^{k} |
|||
次の例は、 {{Harv|Hardy|1992}} 例を拡張したものです。 検討する |
|||
</math> |
|||
を考える。和の順序を変更することで、ボレル変換は |
|||
: <math>A(z) = \sum_{k = 0}^\infty \left( \sum_{\ell=0}^\infty \frac{(-1)^\ell(2\ell + 2)^k}{(2\ell+1)!} \right) z^k. </math> |
|||
総和の順序を変更した後、ボレル変換は次のように与えられます |
|||
: <math> |
: <math> |
||
\begin{align} |
\begin{align} |
||
\mathcal |
\mathcal{B}(A)(t) |
||
\left( |
&= \sum_{l = 0}^{\infty} \left(\sum_{k = 0}^{\infty} \frac{\bigl((2l+2) t\bigr)^{k}}{k!}\right) \frac{(-1)^l}{(2l+1)!} \\ |
||
&= \sum_{ |
&= \sum_{l = 0}^{\infty} e^{(2l+2)t} \frac{(-1)^l}{(2l+1)!} \\ |
||
&= e^t \sum_{ |
&= e^{t} \sum_{l = 0}^{\infty} (-1)^{l} \frac{\big(e^{t}\big)^{2l+1}}{(2l+1)!} \\ |
||
& = e^t \sin(e^t) |
& = e^{t} \sin(e^{t}) |
||
\end{align} |
\end{align} |
||
</math> |
|||
と計算できる。{{math|<var>z</var> {{=}} 2}} におけるボレル和は |
|||
: <math> |
|||
: <math> \int_0^\infty e^t \sin(e^{2t}) \, dt = \int_1^\infty \sin(u^2) \, du = \sqrt{\frac{\pi}{8}} - S(1) < \infty, |
|||
\int_{0}^{\infty} e^{t} \sin(e^{2t}) \, dt |
|||
= \int_{1}^{\infty} \sin(u^2) \, du |
|||
= \sqrt{\frac{\pi}{8}} - S(1) < \infty |
|||
</math> |
</math> |
||
ここ |
となる(ここに、{{math|''S''(<var>x</var>)}} は[[フレネル積分]]を表す)。線分に沿って収束定理を適用することにより、ボレル積分は {{math|<var>z</var> ≤ 2}} を満たすすべての {{mvar|z}} に対して収束する(明らかに {{math|<var>z</var> > 2}} を満たす {{mvar|z}} に対しては積分は発散する)。 |
||
弱-ボレル和について、 |
|||
: <math> |
|||
弱いボレル和については、 |
|||
\lim_{t \to \infty} e^{-t(1-z)} \sin(e^{tz}) = 0 |
|||
</math> |
|||
が成立するのは {{math|<var>z</var> < 1}} のみであるから、弱-ボレル和はこの領域でのみ収束する。 |
|||
: <math> \lim_{t \rightarrow \infty} e^{(z-1)t}\sin(e^{zt}) = 0 </math> |
|||
== 存在性定理と収束領域 == |
|||
''z'' < 1でのみ成立するので、弱いボレル和はこの小さな領域に収束します。 |
|||
=== 線分上での総和可能性 === |
|||
形式的べき級数 {{math|''A''(<var>z</var>)}} がある {{math|<var>z</var> {{=}} <var>z</var><sub>0</sub> ∈ '''C'''}} でボレル総和可能であるとすれば、それはまた[[複素平面]]において原点 {{mvar|O}} と {{math|<var>z</var><sub>0</sub>}} を結ぶ線分 {{math|<var>Oz</var><sub>0</sub>}} 上の任意の点でボレル総和可能である。さらに、線分 {{math|<var>Oz</var><sub>0</sub>}} を半径とする円盤上で解析的かつ {{math|<var>θ</var> ∈ {{closed-closed|0, 1}}}} を満たす任意の点 {{math|<var>z</var> {{=}} <var>θz</var><sub>0</sub>}} で |
|||
: <math> |
|||
== 存在の結果と収束の領域 == |
|||
\sum a_{k}z^{k} = a(z) \qquad (\textbf{B}) |
|||
</math> |
|||
が成立するような関数 {{math|''a''(<var>z</var>)}} が存在する。 |
|||
=== コードの総和性 === |
|||
形式的な級数''A'' ( ''z'' )が<math>z_0</math>∈ '''Cで'''ボレル総和可能である場合、それはまた、 ''z'' <sub>0</sub>を原点に接続する弦O ''z'' <sub>0</sub>上のすべての点でBorel総和可能です。 さらに、次のような半径O ''z'' <sub>0</sub>の円盤全体に関数''a'' ( ''z'' )が存在します<sub>。</sub> |
|||
直ちに得られる結果として、ボレル和の[[収束領域]]は'''C'''上の[[星状領域]]になることがあげられる。この星状収束領域はボレルポリゴンと呼ばれ、級数 {{math|''A''(<var>z</var>)}} の特異点により決定される。 |
|||
: <math> {\textstyle \sum} a_kz^k = a(z) \, (\boldsymbol B), </math> |
|||
すべての''z'' = ''θZ'' <sub>0、θ</sub> ∈ [0,1]。 |
|||
すぐに得られる帰結として、ボレル和の収束[[星状領域|領域]]は'''Cの''' [[星状領域|スター領域]]になります。ボレルの和の収束領域については、ボレルポリゴンと呼ばれる星形の領域であるというよりは、級数''A'' ( ''z'' )の特異点によって決定されます。 |
|||
=== ボレルポリゴン === |
=== ボレルポリゴン === |
||
'''' |
級数 {{math|''A''(<var>z</var>)}} の収束半径が厳密に正であると仮定すると、{{math|''A''(<var>z</var>)}} は原点を含む非自明な領域で解析的となる。今、{{mvar|S<sub>A</sub>}} を {{mvar|A}} の特異点集合とすると、{{math|<var>P</var> ∈ '''C'''}} が {{math|<var>P</var> ∈ <var>S<sub>A</sub></var>}} を満たすということと {{mvar|A}} が原点 {{mvar|O}} から {{mvar|P}} への開線分に沿って解析接続できるということが同値となる。{{math|<var>P</var> ∈ <var>S<sub>A</sub></var>}} に対して、{{mvar|L<sub>P</sub>}} で {{mvar|P}} を通り直線 {{mvar|OP}} に垂直な直線の集合とする。集合 {{math|Π<var><sub>P</sub></var>}} を |
||
: <math> |
|||
: <math> \Pi_P = \{z \in \mathbb{C} \, \colon \, Oz \cap L_P = \varnothing \}, </math> |
|||
\Pi_{P} = \{ z \in \mathbf{C} \, \colon \, Oz \cap L_{P} = \varnothing \} |
|||
</math> |
|||
と定めると、この集合の元は原点と {{mvar|L<sub>P</sub>}} が同じ側にあるような点からなる。{{mvar|A}} のボレルポリゴン {{math|Π<var><sub>A</sub></var>}} は |
|||
: <math> |
|||
: <math> \Pi_A = \operatorname{cl}\left( \bigcap_{P \in S_A} \Pi_P \right). </math> |
|||
\Pi_{A} = \operatorname{cl} \left(\bigcap_{P \in S_{A}} \Pi_{P} \right) |
|||
</math> |
|||
となる。 |
|||
別の定義がボレルとプラグメンによって使用されました{{Harv|Sansone|Gerretsen|1960}} 。 <math> S \subset \mathbb{C} </math> を''Aの''解析的拡張がある最大のスター領域を表しているとしましょう。 <math> \Pi_A </math>の最大の部分集合<math> S </math>で、すべての直径''OP''の円の内部<math> P \in \Pi_A </math>が<math>S </math>に含まれています 。 集合<math> \Pi_A </math>は多角形である必要がないため、多角形はやや誤称です。ただし、 ''A'' ( ''z'' )に有限数の特異点しかない場合は、 <math> \Pi_A </math>実際にはポリゴンになります。 |
|||
ボレルと Phragmén の手による別の定義が用いられることもある{{Harv|Sansone|Gerretsen|1960}}。{{mvar|S}} を {{mvar|A}} が解析的となるような最大の星型領域とするとき、{{math|Π<var><sub>A</sub></var>}} は任意の点 {{math|<var>P</var> ∈ Π<var><sub>A</sub></var>}} に対して{{mvar|OP}} を直径とする円の内部が{{mvar|S}} に含まれるような、{{mvar|S}} の最大の部分集合となる。この集合 {{math|Π<var><sub>A</sub></var>}} は[[多角形]]とは限らないので、「ポリゴン」と呼ぶことはいささか不適切ではあるが、しかし {{math|''A''(<var>z</var>)}} が特異点を有限個しか持たなければ {{math|Π<var><sub>A</sub></var>}} は実際に多角形となる。ボレルと Phragmén による次の定理はボレル総和法に対する収束判定法を与える。 |
|||
次の定理は、BorelとPhragménによるもので、Borel総和の収束基準を提供します。 |
|||
: '''定理''' {{ |
: '''定理''' {{harv|Hardy|1992|loc=8.8}} |
||
: ('''B''')の意味において、級数 {{math|''A''(<var>z</var>)}} は {{math|int(Π<var><sub>A</sub></var>)}} 上総和可能であり、{{math|'''C''' {{setminus}} <var>Π<sub>A</sub></var>}} 上発散する。 |
|||
: シリーズ''A'' ( ''z'' )は( '''B''' )合計可能です<math>z \in \operatorname{int}(\Pi_A)</math> 、および( '''B''' )まったく分岐している<math>z \in \mathbb{C}\setminus \Pi_A</math> 。 |
|||
境界上の点 {{math|<var>z</var> ∈∂ Π<var><sub>A</sub></var>}} での総和可能性については、その点における級数の性質に依存する。 |
|||
==== 例1 ==== |
==== 例1 ==== |
||
正の整数 {{mvar|m}}に対し、{{math|<var>ω<sub>i</sub></var> (<var>i</var> {{=}} 1, 2, …, <var>m</var>)}} は1の {{mvar|m}} 乗根を表すとする。次の級数 |
|||
<sub>ωI</sub> ∈ '''C''' ''が1のm乗根を''表すとしよう i = 1、 ...、 ''m'' 、そして |
|||
: <math>\begin{align} |
: <math> |
||
\begin{align} |
|||
A(z) |
|||
A(z) & = \sum_{k=0}^\infty (\omega_1^k + \cdots + \omega_m^k)z^k \\ |
|||
& |
&= \sum_{k = 0}^{\infty} \left(\omega_{1}^{k} + \cdots + \omega_{m}^{k}\right) z^{k} \\ |
||
&= \sum_{i = 1}^{m} \frac{1}{1-\omega_{i}z} |
|||
\end{align} </math> |
|||
\end{align} |
|||
</math> |
|||
は[[球体#一般の距離空間における球体|開球]] {{math|''B''(0, 1) ⊂ '''C'''}} 上収束する。{{math|'''C'''}} 上の関数として {{math|''A''(<var>z</var>)}} は {{math|<var>S<sub>A</sub><var> {{=}} {{mset|''ω<sub>i</sub>''|<var>i</var> {{=}} 1, 2, …, <var>m</var>}}}} を特異点に持ち、したがってボレルポリゴン {{math|Π<var><sub>A</sub></var>}} は原点を中心とし、{{math|1 ∈ '''C'''}} を辺の中心とする[[正多角形|正{{math|<var>m</var>}}角形]] として与えられる。 |
|||
==== 例2 ==== |
==== 例2 ==== |
||
次の形式的級数 |
次の形式的べき級数 |
||
: <math> |
: <math> |
||
A(z) = \sum_{k = 0}^{\infty} z^{2^{k}} |
|||
</math> |
|||
は {{math|{{abs|<var>z</var>}} < 1}} で収束する(たとえば、幾何級数との[[比較判定法]]による)。しかし、ある非負整数 {{mvar|n}}に対して {{math|<var>z</var><sup>2<sup><var>n</var></sup></sup> {{=}} 1}} を満たすような任意の {{math|<var>z</var> ∈ '''C'''}} に対しては収束しないことが示される<ref>{{Cite web|title=Natural Boundary|url=http://mathworld.wolfram.com/NaturalBoundary.html|website=MathWorld|accessdate=19 October 2016}}</ref>。このような {{mvar|z}} は単位円上で稠密に存在するため、{{math|''A''(<var>z</var>)}} を {{math|''B''(0, 1) ⊂ '''C'''}} の外部へ[[解析接続#自然な境界(自然境界)|解析接続することはできない]]。従って、{{math|''A''(<var>z</var>)}} を解析接続できる最大の星型領域は {{math|''S'' {{=}} ''B''(0, 1)}} であり、ここからボレルポリゴン {{math|Π<var><sub>A</sub></var>}} は {{math|Π<var><sub>A</sub></var> {{=}} ''B''(0, 1)}} となる。特に、ボレルポリゴンは必ずしも[[多角形]]とはならないことが判る。 |
|||
=== タウ |
=== タウバー型定理 === |
||
タウ |
タウバー型定理は、ある総和法の収束性が別の総和法の収束性を導く条件を提示する。ボレル総和に対する主なタウバー型定理は、弱-ボレル総和法での総和可能性から級数の収束性が導かれる十分条件を与える。 |
||
: '''定理''' {{Harv|Hardy|1992}} |
|||
: {{math|''A''(<var>z</var>)}} が {{math|<var>z</var><sub>0</sub> ∈ '''C'''}} において('''wB''')の意味で収束して<math>\sum a_{k}z_{0}^{k} = a(z_{0})</math>となり、かつすべての {{math|<var>k</var> ≥ 0}} において |
|||
:: <math> |
|||
: '''定理''' {{Harv|Hardy|1992}} ''A''が( '''wB''' ) ''z'' <sub>0</sub>で総和可能である場合 ∈ '''C''' 、 <math>{\textstyle \sum}a_kz_0^k = a(z_0) \, (\boldsymbol{wB}) </math> 、および |
|||
a_{k}z_{0}^{k} = O(k^{-1/2}) |
|||
</math> |
|||
: が成立するとき、<math>\sum_{k = 0}^{\infty} a_{k}z_{0}^{k} = a(z_{0})</math>が成立してかつ {{math|{{abs|<var>z</var>}} < {{abs|<var>z</var><sub>0</sub>}}}} を満たすすべての {{mvar|z}} で収束する。 |
|||
:: <math> a_kz_0^k = O(k^{-1/2}), \qquad \forall k \geq 0, </math> |
|||
: すると<math> \sum_{k=0}^\infty a_kz_0^k = a(z_0) </math> 、級数はすべての| ''z'' | < | ''z'' <sub>0</sub> |で収束します。 |
|||
== 応用 == |
== 応用 == |
||
ボレル総和は、場の量子論における摂動展開へ |
ボレル総和は、場の量子論における[[摂動#量子力学における摂動論|摂動展開]]へ応用される。特に、2次元ユークリッド場の理論では、しばしばボレル総和法を利用することで摂動級数から{{仮リンク|シュウィンガー関数|en|Schwinger function}}を復元できることがある{{Harv|Glimm|Jaffe|1987}}。ボレル変換の特異点には、場の量子論における{{仮リンク|インスタントン|en|Instanton}}や{{仮リンク|リノーマロン|en|Renormalon}}と関連するものもある{{Harv|Weinberg|2005}}。 |
||
== 一般化 == |
|||
ボレル総和では、係数の成長が速すぎないことが必要です。より正確には、 ''a'' <sub>''n''</sub>は''n''によって制限されている必要があります。 一部の''Cでは'' ''C'' <sup>''n'' +1</sup> 。階乗''n''を置き換えるボレル総和のバリエーションがあります!と( ''kn'' )!いくつかの正の整数''kの''場合、( ''kn'' )で制限され''た'' <sub>''nの''</sub>ある級数が可能です! 一部の''Cでは'' ''C'' <sup>''n'' +1</sup> 。この一般化はMittag-Leffler summationによって与えられます。 |
|||
最も一般的なケースでは、ボレル総和は、境界関数が指数型ではなく、一般型(psi型)である場合に使用できるNachbin総和によって一般化されます。 |
|||
== こちらもご覧ください == |
|||
== 脚注 == |
|||
* [[アーベル総和法]] |
|||
* [[アーベルの連続性定理|アベルの定理]] |
|||
* アベルプラナの公式 |
|||
* オイラー総和 |
|||
* [[チェザロ和|セサロ総和]] |
|||
* ランベルト総和 |
|||
* ナハビン再開 |
|||
* アーベルとタウベリアの定理 |
|||
* ヴァンウィンガーデン変換 |
|||
== ノート == |
|||
<references /> |
<references /> |
||
== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
||
* {{Citation|last=Borel|first1=E.|title=Memoire sur les series divergentes|journal=Ann. Sci. Ec. Norm. Super.|series=Series 3|volume=16|year=1899|pages=9?131|url=http://www.numdam.org/item?id=ASENS_1899_3_16__9_0|doi=10.24033/asens.463}} |
|||
* {{Citation|last=Borel|first1=E.|title=Mémoire sur les séries divergentes|journal=Ann. Sci. Éc. Norm. Supér.|series=Series 3|volume=16|year=1899|pages=9–131|url=http://www.numdam.org/item?id=ASENS_1899_3_16__9_0|doi=10.24033/asens.463}} |
|||
* {{Citation|last=Glimm|first1=James|last2=Jaffe|first2=Arthur|title=Quantum physics|publisher=Springer-Verlag|place=Berlin, New York|edition=2nd|isbn=978-0-387-96476-8|mr=887102|year=1987|doi=10.1007/978-1-4612-4728-9}} |
* {{Citation|last=Glimm|first1=James|last2=Jaffe|first2=Arthur|title=Quantum physics|publisher=Springer-Verlag|place=Berlin, New York|edition=2nd|isbn=978-0-387-96476-8|mr=887102|year=1987|doi=10.1007/978-1-4612-4728-9}} |
||
* {{Citation|last=Hardy|first1=Godfrey Harold|author-link=G. H. Hardy|title=Divergent Series|origyear=1949|url=https://books.google.com/books?isbn=0821826492|publisher=Chelsea|place=New York|isbn=978-0-8218-2649-2|mr=0030620|year=1992}} |
* {{Citation|last=Hardy|first1=Godfrey Harold|author-link=G. H. Hardy|title=Divergent Series|origyear=1949|url=https://books.google.com/books?isbn=0821826492|publisher=Chelsea|place=New York|isbn=978-0-8218-2649-2|mr=0030620|year=1992}} |
||
257行目: | 335行目: | ||
* {{Citation|last=Weinberg|first1=Steven|author-link=Steven Weinberg|title=The quantum theory of fields.|volume=II|publisher=Cambridge University Press|isbn=978-0-521-55002-4|mr=2148467|year=2005|url=https://archive.org/details/quantumtheoryoff00stev}} |
* {{Citation|last=Weinberg|first1=Steven|author-link=Steven Weinberg|title=The quantum theory of fields.|volume=II|publisher=Cambridge University Press|isbn=978-0-521-55002-4|mr=2148467|year=2005|url=https://archive.org/details/quantumtheoryoff00stev}} |
||
* Zakharov, A. A. (2001) [1994], "Borel summation method", Encyclopedia of Mathematics, EMS Press |
* Zakharov, A. A. (2001) [1994], "Borel summation method", Encyclopedia of Mathematics, EMS Press |
||
[[Category:量子色力学]] |
|||
== 関連項目 == |
|||
* [[アーベル総和法]] |
|||
* [[アーベルの連続性定理]] |
|||
* {{仮リンク|アーベル・プラナの公式|en|Abel-Plana formula}} |
|||
* {{仮リンク|オイラー総和法|en|Euler summation}} |
|||
* [[チェザロ和|チェザロ総和法]] |
|||
* {{仮リンク|ランベルト総和法|en|Lambert summation}} |
|||
* {{仮リンク|ナハビンの定理|en|Nachbin's theorem}} |
|||
* {{仮リンク|アーベル型・タウバー型定理|en|Abelian and Tauberian theorems}} |
|||
* {{仮リンク|Van Wijngaarden変換|en|Van Wijngaarden transformation}} |
|||
{{DEFAULTSORT:ほれるそうわ}} |
|||
[[Category:級数]] |
[[Category:級数]] |
||
[[Category:総和法]] |
[[Category:総和法]] |
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[[Category:漸近解析]] |
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[[Category:解析学]] |
|||
[[Category:数学に関する記事]] |
[[Category:数学に関する記事]] |
||
[[Category:量子色力学]] |
2020年8月25日 (火) 15:34時点における版
数学、特に解析学において、ボレル総和(ボレルそうわ、英: Borel summation)とはエミール・ボレルによって1899年に導入された、発散級数に対する総和法のひとつである。これは発散するような漸近級数に対して有用で、級数に対してある意味で最適な「和」と呼ばれる値を与える。同じ「ボレル総和」という語で呼ばれる数種類の手法があり、さらにその一般化にミッタク=レフラー総和法がある。
定義
ボレル総和にはわずかに異なる(少なくとも)3種類の方法がある。それらは適用できる級数の範囲が異なるものの、一貫性がある。すなわち、同じ級数に対して以下のうちの2種類の方法で総和した場合、収束するならば同じ値を与える。
記事全体を通して、A(z) で形式的べき級数
を表すことにし、A(z) のボレル変換 B(A) を指数型の形式的べき級数
として定義する。
ボレルの指数型総和法
非負整数nに対して、A(z) の第 n 部分和を An(z) で表す:
A(z) の弱-ボレル総和は以下のように定義される。まず、A(z) のボレル和を次で定義する:
この t → ∞ での極限がある z ∈ C で値 a(z) に収束するとき、A(z) の弱-ボレル総和は z で収束すると言い、
と書く。
ボレルの積分総和法
すべての正の実数について、A(z) のボレル変換 B(A) が、次の広義積分がwell-definedになるほど緩やかに増加する関数に収束すると仮定する。このとき、A(z) のボレル総和を次で定義する:
この積分がある z ∈ C で値 a(z) に収束するとき、A(z) のボレル総和は z で収束すると言い、
と書く。
解析接続を伴うボレルの積分総和法
これはボレルの積分総和法と同様であるが、すべての t についてボレル変換が収束することまでは要求しない。しかし、正の実軸に沿って解析接続した結果が t = 0 の近傍においてある解析関数に収束することは要求する。
基本性質
正則性
弱-ボレル総和(wB)とボレル総和(B)はどちらも正則な総和法である。すなわち、A(z) が通常の意味で収束するならば、弱-ボレル総和とボレル総和も同じ値に収束する:
ボレル総和(B)の正則性は積分と級数の順序を変更することで簡単に確認できる。これは絶対収束性により妥当であって、今 A(z) が z で収束すると仮定すれば、
と計算でき、最右辺は z における A(z) のボレル総和である。
弱-ボレル総和(wB)とボレル総和(B)の正則性から A(z) の解析接続が得られる。
弱-ボレル総和とボレル総和の非等価性
ある z ∈ C で弱-ボレル総和可能な任意の級数 A(z) は、常に同じ点 z でボレル総和可能である。しかし弱-ボレル総和法では発散し、かつボレル総和可能であるような級数の例を構築できる。次の定理により2つの方法はある条件の下で同値となることが示される。
- 定理 (Hardy 1992)
- A(z)を形式的べき級数とし、z ∈ Cを固定する。このとき:
- (wB)の意味でならば、(B)の意味でである。
- (B)の意味でであり、かつであるならば、(wB)の意味でである。
他の総和法との関係
- (B)は、ミッタク=レフラー総和法において α = 1 とした場合に相当する。
- オイラー総和法 (E, q) の収束領域が q → ∞ の極限において(B)の収束領域へ収束するという意味で、(wB)は一般化オイラー総和法の極限ケースとみなせる[1]。
一意性定理
与えられた関数が漸近展開となるような関数は常に多く存在する。ただし、ある領域における有限次元での近似誤差が可能な限り小さいという意味で、最良の関数が存在する場合がある。以下に提示するワトソンの定理とカーレマンの定理は、漸近級数に対する「最良の和」をボレル総和が与えることを示す。
ワトソンの定理
ワトソンの定理は、関数がその漸近級数のボレル総和になる条件を与える。f が次の条件を満たす関数であると仮定する。
- ある正の定数 R と ε が存在して、領域 |z| < R、|arg(z)| < π/2 + ε 上で f が正則となる。
- ある定数 C が存在して、上述の領域の任意の点 z で
- を満たす漸近展開 a0 + a1z + … を持つ。
このとき、この領域で f は漸近級数のボレル和によって与えられるというのがワトソンの定理の主張である。より正確には、ボレル変換された級数が原点の近傍上で収束し、正の実軸に沿って解析接続可能であり、ボレル和(B)を定義する積分はこの領域で f(z) に収束する。
やや一般的には、f の漸近展開に対する誤差評価を n! から (kn)! に緩めても、領域の条件を |arg(z)| < kπ/2 + ε へ強めることで f(z) は決定できる。これは最良の評価であって、kπ/2 をより小さい数に置き換えた場合には反例が存在する。
カーレマンの定理
カーレマンの定理は、扇状領域内における有限次近似の近似誤差が急速に増大しない限り、関数は漸近級数によって一意的に定まることを示す。より正確には以下の通りである。
- f が扇状領域 |z| < C、Re(z) > 0 の内部で解析的である。
- この領域内においてすべての非負整数 n に対して |f (z)| < |bnz|n が成り立つ。
このとき、逆数和 1/b0 + 1/b1 + … が発散するならば f ≡ 0 が成立する、ということを主張する。
カーレマンの定理は、各項がそれほど急速に増加しないような漸近級数に対する総和法を与え、その和は適切な扇状領域が存在する場合には漸近級数から一意的に定まる関数の値として求められる。ボレル総和法はカーレマンの定理において bn = cn(c はある定数)としたものより弱い。より一般的には、数列 bn を bn = c′n log n log log n(c′ はある定数)などとすることにより、ボレル総和法よりもわずかに強い総和法を定義できる。しかし、この方法が適用できるようなボレル総和できない自然な例がほとんど無いため、この一般化はあまり有用ではない。
カーレマンの定理の具体例
関数 f(z) = exp(−1/z) は、任意のθ < π/2 に対する領域 |arg(z)| < θ において、上述のような誤差範囲をもつ漸近級数 0 + 0z + … を持つが、この漸近級数のボレル総和にならない。ここからもワトソンの定理における π/2 は誤差項がより小さくできない限り最良の値であることが示される。
具体例
幾何級数
次のような幾何級数
は通常の意味で |z| < 1 に対して 1/(1 − z) に収束する。このボレル変換は
であり、ここからより広い領域 Re(z) < 1 で収束するボレル和
が得られ、これは元の級数の解析接続を与える。
この代わりに弱-ボレル変換を考えると、A(z) の部分和 An は An = (1 − zn+1)/(1 − z) と与えられるから、弱-ボレル和は
となり、再び |z| < 1 に対して 1/(1 − z) に収束する。あるいは上記の定理の2によって、Re(z) < 1 において
が成立することからも示される。
交代階乗級数
次の級数を考える。
この級数は z = 0 を除く z ∈ C で収束しない。このボレル変換は |t| < 1 において
となり、これはすべての t ≥ 0 に対して解析接続できる。したがってボレル和は
(ここに Γ(*, *) は第二種不完全ガンマ関数を表す)となる。この積分はすべての t ≥ 0 に対して収束するので、元の発散級数もすべての t ≥ 0 に対してボレル総和可能となる。この関数は z → 0 の極限において元の級数を漸近展開にもつ。これは、時として発散するような漸近展開をボレル総和法が「正しく」総和するという事実の典型的な例である。
再び、
がすべての t ≥ 0 に対して収束することと上記の同値性定理から、同じ領域 t ≥ 0 において弱-ボレル総和可能であることが保証される。
同値性が成り立たない例
次の例は(Hardy 1992)での例を拡張したものである。次の級数
を考える。和の順序を変更することで、ボレル変換は
と計算できる。z = 2 におけるボレル和は
となる(ここに、S(x) はフレネル積分を表す)。線分に沿って収束定理を適用することにより、ボレル積分は z ≤ 2 を満たすすべての z に対して収束する(明らかに z > 2 を満たす z に対しては積分は発散する)。 弱-ボレル和について、
が成立するのは z < 1 のみであるから、弱-ボレル和はこの領域でのみ収束する。
存在性定理と収束領域
線分上での総和可能性
形式的べき級数 A(z) がある z = z0 ∈ C でボレル総和可能であるとすれば、それはまた複素平面において原点 O と z0 を結ぶ線分 Oz0 上の任意の点でボレル総和可能である。さらに、線分 Oz0 を半径とする円盤上で解析的かつ θ ∈ [0, 1] を満たす任意の点 z = θz0 で
が成立するような関数 a(z) が存在する。
直ちに得られる結果として、ボレル和の収束領域はC上の星状領域になることがあげられる。この星状収束領域はボレルポリゴンと呼ばれ、級数 A(z) の特異点により決定される。
ボレルポリゴン
級数 A(z) の収束半径が厳密に正であると仮定すると、A(z) は原点を含む非自明な領域で解析的となる。今、SA を A の特異点集合とすると、P ∈ C が P ∈ SA を満たすということと A が原点 O から P への開線分に沿って解析接続できるということが同値となる。P ∈ SA に対して、LP で P を通り直線 OP に垂直な直線の集合とする。集合 ΠP を
と定めると、この集合の元は原点と LP が同じ側にあるような点からなる。A のボレルポリゴン ΠA は
となる。
ボレルと Phragmén の手による別の定義が用いられることもある(Sansone & Gerretsen 1960)。S を A が解析的となるような最大の星型領域とするとき、ΠA は任意の点 P ∈ ΠA に対してOP を直径とする円の内部がS に含まれるような、S の最大の部分集合となる。この集合 ΠA は多角形とは限らないので、「ポリゴン」と呼ぶことはいささか不適切ではあるが、しかし A(z) が特異点を有限個しか持たなければ ΠA は実際に多角形となる。ボレルと Phragmén による次の定理はボレル総和法に対する収束判定法を与える。
- 定理 (Hardy 1992, 8.8)
- (B)の意味において、級数 A(z) は int(ΠA) 上総和可能であり、C ∖ ΠA 上発散する。
境界上の点 z ∈∂ ΠA での総和可能性については、その点における級数の性質に依存する。
例1
正の整数 mに対し、ωi (i = 1, 2, …, m) は1の m 乗根を表すとする。次の級数
は開球 B(0, 1) ⊂ C 上収束する。C 上の関数として A(z) は SA = {ωi | i = 1, 2, …, m} を特異点に持ち、したがってボレルポリゴン ΠA は原点を中心とし、1 ∈ C を辺の中心とする正m角形 として与えられる。
例2
次の形式的べき級数
は |z| < 1 で収束する(たとえば、幾何級数との比較判定法による)。しかし、ある非負整数 nに対して z2n = 1 を満たすような任意の z ∈ C に対しては収束しないことが示される[2]。このような z は単位円上で稠密に存在するため、A(z) を B(0, 1) ⊂ C の外部へ解析接続することはできない。従って、A(z) を解析接続できる最大の星型領域は S = B(0, 1) であり、ここからボレルポリゴン ΠA は ΠA = B(0, 1) となる。特に、ボレルポリゴンは必ずしも多角形とはならないことが判る。
タウバー型定理
タウバー型定理は、ある総和法の収束性が別の総和法の収束性を導く条件を提示する。ボレル総和に対する主なタウバー型定理は、弱-ボレル総和法での総和可能性から級数の収束性が導かれる十分条件を与える。
- 定理 (Hardy 1992)
- A(z) が z0 ∈ C において(wB)の意味で収束してとなり、かつすべての k ≥ 0 において
- が成立するとき、が成立してかつ |z| < |z0| を満たすすべての z で収束する。
応用
ボレル総和は、場の量子論における摂動展開へ応用される。特に、2次元ユークリッド場の理論では、しばしばボレル総和法を利用することで摂動級数からシュウィンガー関数を復元できることがある(Glimm & Jaffe 1987)。ボレル変換の特異点には、場の量子論におけるインスタントンやリノーマロンと関連するものもある(Weinberg 2005)。
脚注
- ^ Hardy, G. H. (1992). Divergent Series. AMS Chelsea, Rhode Island.
- ^ “Natural Boundary”. MathWorld. 19 October 2016閲覧。
参考文献
- Borel, E. (1899), “Memoire sur les series divergentes”, Ann. Sci. Ec. Norm. Super., Series 3 16: 9?131, doi:10.24033/asens.463
- Glimm, James; Jaffe, Arthur (1987), Quantum physics (2nd ed.), Berlin, New York: Springer-Verlag, doi:10.1007/978-1-4612-4728-9, ISBN 978-0-387-96476-8, MR887102
- Hardy, Godfrey Harold (1992) [1949], Divergent Series, New York: Chelsea, ISBN 978-0-8218-2649-2, MR0030620
- Reed, Michael; Simon, Barry (1978), Methods of modern mathematical physics. IV. Analysis of operators, New York: Academic Press [Harcourt Brace Jovanovich Publishers], ISBN 978-0-12-585004-9, MR0493421
- Sansone, Giovanni; Gerretsen, Johan (1960), Lectures on the theory of functions of a complex variable. I. Holomorphic functions, P. Noordhoff, Groningen, MR0113988
- Weinberg, Steven (2005), The quantum theory of fields., II, Cambridge University Press, ISBN 978-0-521-55002-4, MR2148467
- Zakharov, A. A. (2001) [1994], "Borel summation method", Encyclopedia of Mathematics, EMS Press