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'''ヒレハリソウ'''(鰭玻璃草、領巾張草{{sfn|近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著|2010|p=81}}; [[学名]]: {{Snamei|Symphytum officinale}})は、[[ムラサキ科]]{{仮リンク|ヒレハリソウ属|en|Symphytum}}の多年生草木である。別名は、英名の'''コンフリー''' (Comfrey) で知られている。 |
'''ヒレハリソウ'''(鰭玻璃草、領巾張草{{sfn|近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著|2010|p=81}}; [[学名]]: {{Snamei|Symphytum officinale}})は、[[ムラサキ科]]{{仮リンク|ヒレハリソウ属|en|Symphytum}}の多年生草木である。別名は、英名の'''コンフリー''' (Comfrey) で知られている。日本で現在見られるものは純粋なヒレハリソウではなく、[[オオハリソウ]]との雑種起源のもの(学名: ''Symphytum'' × ''uplandicum''<!-- {{AU|Nyman}} (1961)--><ref>{{YList|id=12297|taxon=Symphytum x uplandicum Nyman コンフリー(標準)〈オオハリソウ×ヒレハリソウ〉|accessdate=2023-02-19}}</ref>)ばかりである<ref name="YList"/>。 |
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[[カール・フォン・リンネ|リンネ]]の『[[植物の種]]』([[1753年]]) で[[記載]]された植物の一つである<ref>{{Cite book|last=Linnaeus|first=Carolus|year=1753|title=Species Plantarum|location=Holmia[Stockholm]|publisher=Laurentius Salvius|page=136|url=https://www.biodiversitylibrary.org/page/358155|ref=harv|language=la}}</ref>。 |
[[カール・フォン・リンネ|リンネ]]の『[[植物の種]]』([[1753年]]) で[[記載]]された植物の一つである<ref>{{Cite book|last=Linnaeus|first=Carolus|year=1753|title=Species Plantarum|location=Holmia[Stockholm]|publisher=Laurentius Salvius|page=136|url=https://www.biodiversitylibrary.org/page/358155|ref=harv|language=la}}</ref>。 |
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== 特徴 == |
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[[英名]]'''コンフリー'''の名前でよく知られている{{sfn|近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著|2010|p=81}}、庭木や鉢植えでよく見かける[[多年草]]である。夏に垂れ下がって咲く淡紅色の[[花]]から、玻璃草(はりくさ)とも呼ばれ、下葉に魚の[[ヒレ]]のようなものがあることから、[[和名]]'''ヒレハリソウ'''の由来になっている{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。中国植物名([[漢名]])は、西門肺草(せいもんはいそう) |
[[英名]]由来の'''コンフリー'''の名前でよく知られている{{sfn|近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著|2010|p=81}}、庭木や鉢植えでよく見かける[[多年草]]である。夏に垂れ下がって咲く淡紅色の[[花]]から、玻璃草(はりくさ)とも呼ばれ、下葉に魚の[[ヒレ]]のようなものがあることから、[[和名]]'''ヒレハリソウ'''の由来になっている{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。[[英語]]では common comfrey (コモン・コンフリー)、[[フランス語]]では grande consoude (グラン・コンソーデ)という{{sfn|講談社編|2013|p=23}}。また中国植物名([[漢名]])は、聚合草 (ju he cao) <ref name="YList"/>、西門肺草(せいもんはいそう){{sfn|貝津好孝|1995|p=64}}という。 |
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ヨーロッパから[[西アジア]](コーカサス地方)、[[シベリア]]西部の地域の原産といわれている{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。日本ではヨーロッパ原産の[[帰化植物]]として{{sfn|近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著|2010|p=81}}、広く栽培されたり、野生化して道ばたなどでも見かける{{sfn|貝津好孝|1995|p=64}}{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。草丈は30 - 90センチメートル (cm) になる。全体に白い短粗毛が生えていて、茎に翼がある{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。葉は卵形披針状で、下部の葉は大きくて[[葉柄]]があるが、上葉には葉柄はなくなって、茎に流れて翼となる{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。 |
ヨーロッパ([[地中海沿岸]])から[[西アジア]]([[コーカサス地方]])、[[シベリア]]西部の地域の原産といわれている{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}{{sfn|講談社編|2013|p=23}}。日本ではヨーロッパ原産の[[帰化植物]]として{{sfn|近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著|2010|p=81}}、広く栽培されたり、野生化して道ばたなどでも見かける{{sfn|貝津好孝|1995|p=64}}{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。草丈は30 - 90センチメートル (cm) になる。全体に白い短粗毛が生えていて、茎に翼がある{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。葉は卵形披針状で、下部の葉は大きくて[[葉柄]]があるが、上葉には葉柄はなくなって、茎に流れて翼となる{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。 |
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初夏の6-8月ころ、枝先に淡青色から淡紅色(まれに白色)の釣り鐘形の花を垂れ下げる{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}{{sfn|近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著|2010|p=81}}。花は短い花柄で下向きについて、花冠は筒状、先の半分は釣鐘状にふくれ先端が5裂する{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。 |
花期は初夏の6 - 8月ころで、枝先に淡青色から淡紅色(まれに白色)の釣り鐘形の花を垂れ下げる{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}{{sfn|近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著|2010|p=81}}。花は短い花柄で下向きについて、花冠は筒状、先の半分は釣鐘状にふくれ先端が5裂する{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。 |
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茎に翼がない[[オオハリソウ]]との雑種[[ロシアコンフリー]]が多くなっていて、茎の翼の幅が狭く、次の葉の付け根まで達しないことや、花筒の先端部分がヒレハリソウより大きく鐘状にふくらんでいることで見分けられる{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。 |
茎に翼がない[[オオハリソウ]]との雑種[[ロシアコンフリー]]が多くなっていて、茎の翼の幅が狭く、次の葉の付け根まで達しないことや、花筒の先端部分がヒレハリソウより大きく鐘状にふくらんでいることで見分けられる{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。 |
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== かつての利用方法 == |
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根、根茎などに[[アルカロイド]]である[[コンソリジン]]、[[シンフィトシノグロシン]]などと、[[粘液質]]、[[タンニン]]などを含んでいる{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。タンニンには[[収斂作用]]があり、過去には[[下痢止め]]に内服されたり、[[湿疹]]、[[かぶれ]]などの湿布に活用されていた{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。生葉には、水分90%と、粗[[蛋白質]]約2.4%、粗[[脂肪]]約0.2%、[[ミネラル]]、[[ビタミン]]群の[[ビタミンA]]、[[ビタミンB1]]、[[ビタミンB2]]、[[ビタミンC]]、[[ニコチン酸]]、[[バントテン酸]]、[[ビタミンB6]]、[[ビタミンB12]]などを含み、滋養保険、[[青汁]]原料、食用などに広く用いられた{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。欧米では根茎を主に外用とし、内用は毒性があるので多用しない{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。かつて、日本では葉を強壮食品、根は浴湯料とした{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。浴湯料としては、若々しい皮膚にするので、美容効果があるとみなされた{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。 |
根、根茎などに[[アルカロイド]]である[[コンソリジン]]、[[シンフィトシノグロシン]]などと、[[粘液質]]、[[タンニン]]などを含んでいる{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。タンニンには[[収斂作用]]があり、過去には[[下痢止め]]に内服されたり、[[湿疹]]、[[かぶれ]]などの湿布に活用されていた{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。生葉には、水分90%と、粗[[蛋白質]]約2.4%、粗[[脂肪]]約0.2%、[[ミネラル]]、[[ビタミン]]群の[[ビタミンA]]、[[ビタミンB1]]、[[ビタミンB2]]、[[ビタミンC]]、[[ニコチン酸]]、[[バントテン酸]]、[[ビタミンB6]]、[[ビタミンB12]]などを含み、滋養保険、[[青汁]]原料、食用などに広く用いられた{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。欧米では根茎を主に外用とし、内用は毒性があるので多用しない{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。かつて、日本では葉を強壮食品、根は浴湯料とした{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。生長した葉はかたく青臭い香りがあるが、若葉はほとんどクセがなく各種ビタミンを含むことから一時は健康野菜として注目され、若芽を[[天ぷら]]、[[お浸し]]、[[和え物]]、汁の実などに利用した{{sfn|講談社編|2013|p=23}}。浴湯料としては、若々しい皮膚にするので、美容効果があるとみなされた{{sfn|馬場篤|1996|p=97}}。 |
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民間療法では、[[下痢]]止めの[[生薬]]として、秋に根や根茎を掘って洗い、日干ししたものをコンソリダ根、またはコンフリーと呼んで、煎じて3回に分服する用法が知られていた{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。また、湿疹、かぶれに、煎じ液を用いて冷湿布とした{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。滋養保険に生の葉を青汁にしたり、 |
民間療法では、[[下痢]]止めの[[生薬]]として、秋に根や根茎を掘って洗い、日干ししたものをコンソリダ根、またはコンフリーと呼んで、煎じて3回に分服する用法が知られていた{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。また、湿疹、かぶれに、煎じ液を用いて冷湿布とした{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。アルカロイドの一種に強い抗菌作用があるといわれ、湿布薬として傷口につけることが多かった{{sfn|講談社編|2013|p=23}}。滋養保険に生の葉を青汁にしたり、天ぷらやお浸しなどとして調理し食用にされていた{{sfn|田中孝治|1995|p=108}}。しかし、当時から食べて薬効を得るには強すぎるともいわれていた{{sfn|講談社編|2013|p=23}}。 |
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かつては、何にでも効くという触れ込みでで広まっていったが、今では見る影もなくなっている{{sfn|貝津好孝|1995|p=64}}。薬草は本来、症状や体質によって使い分けていかなければならないものであるが、それを無視した事例であると言える{{sfn|貝津好孝|1995|p=64}}。 |
かつては、何にでも効くという触れ込みでで広まっていったが、今では見る影もなくなっている{{sfn|貝津好孝|1995|p=64}}。薬草は本来、症状や体質によって使い分けていかなければならないものであるが、それを無視した事例であると言える{{sfn|貝津好孝|1995|p=64}}。 |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite book|和書|author =貝津好孝|title = 日本の薬草|date=1995-07-20|publisher = [[小学館]]|series = 小学館のフィールド・ガイドシリーズ|isbn=4-09-208016-6|page =64|ref=harv}} |
* {{Cite book|和書|author =貝津好孝|title = 日本の薬草|date=1995-07-20|publisher = [[小学館]]|series = 小学館のフィールド・ガイドシリーズ|isbn=4-09-208016-6|page =64|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author =講談社編|title = からだにやさしい旬の食材 野菜の本|date=2013-05-13|publisher = [[講談社]]|isbn=978-4-06-218342-0|page =23|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author =近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著|title = 花と葉で見わける野草|date = 2010-04-10|publisher = [[小学館]]|isbn = 978-4-09-208303-5|page =81|ref =harv}} |
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* {{Cite book|和書|author =田中孝治|title =効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法|date=1995-02-15|publisher =[[講談社]]|series=ベストライフ|isbn=4-06-195372-9|page =108|ref=harv}} |
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2023年2月18日 (土) 16:18時点における版
ヒレハリソウ | |||||||||||||||||||||
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ヒレハリソウ
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Symphytum officinale L. (1753)[1] | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ヒレハリソウ |
ヒレハリソウ(鰭玻璃草、領巾張草[2]; 学名: Symphytum officinale)は、ムラサキ科ヒレハリソウ属の多年生草木である。別名は、英名のコンフリー (Comfrey) で知られている。日本で現在見られるものは純粋なヒレハリソウではなく、オオハリソウとの雑種起源のもの(学名: Symphytum × uplandicum[3])ばかりである[1]。
リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[4]。
特徴
英名由来のコンフリーの名前でよく知られている[2]、庭木や鉢植えでよく見かける多年草である。夏に垂れ下がって咲く淡紅色の花から、玻璃草(はりくさ)とも呼ばれ、下葉に魚のヒレのようなものがあることから、和名ヒレハリソウの由来になっている[5]。英語では common comfrey (コモン・コンフリー)、フランス語では grande consoude (グラン・コンソーデ)という[6]。また中国植物名(漢名)は、聚合草 (ju he cao) [1]、西門肺草(せいもんはいそう)[7]という。
ヨーロッパ(地中海沿岸)から西アジア(コーカサス地方)、シベリア西部の地域の原産といわれている[5][6]。日本ではヨーロッパ原産の帰化植物として[2]、広く栽培されたり、野生化して道ばたなどでも見かける[7][8]。草丈は30 - 90センチメートル (cm) になる。全体に白い短粗毛が生えていて、茎に翼がある[5][8]。葉は卵形披針状で、下部の葉は大きくて葉柄があるが、上葉には葉柄はなくなって、茎に流れて翼となる[8]。
花期は初夏の6 - 8月ころで、枝先に淡青色から淡紅色(まれに白色)の釣り鐘形の花を垂れ下げる[5][2]。花は短い花柄で下向きについて、花冠は筒状、先の半分は釣鐘状にふくれ先端が5裂する[8]。
茎に翼がないオオハリソウとの雑種ロシアコンフリーが多くなっていて、茎の翼の幅が狭く、次の葉の付け根まで達しないことや、花筒の先端部分がヒレハリソウより大きく鐘状にふくらんでいることで見分けられる[8]。
歴史
ヨーロッパでは、古くから根や葉を抗炎症薬や骨折を治すのに伝統的に用いていた。 サラセンズ・ルートという名前で昔から知られ、イギリスには十字軍遠征から戻った兵士が伝えたと言われている。接骨剤としてもちいるため、中世ヨーロッパでは農家などに大きく広まった[9]。
日本へは観賞用として明治時代に導入され[2]、家畜の飼料や食用として利用された。昭和40年代に健康食品として一時期大ブームとなり、植えられたものが一部野生化した[2]。日本では、葉を天ぷらなどにして食べることが多かった。また、胃潰瘍や大腸炎などの病気に、コンフリーの錠剤やハーブティーを飲むことがあったが、大量に服用すると肝臓を傷めるという事で現在では行われていない[9]。
かつての利用方法
根、根茎などにアルカロイドであるコンソリジン、シンフィトシノグロシンなどと、粘液質、タンニンなどを含んでいる[5]。タンニンには収斂作用があり、過去には下痢止めに内服されたり、湿疹、かぶれなどの湿布に活用されていた[5]。生葉には、水分90%と、粗蛋白質約2.4%、粗脂肪約0.2%、ミネラル、ビタミン群のビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ニコチン酸、バントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12などを含み、滋養保険、青汁原料、食用などに広く用いられた[5]。欧米では根茎を主に外用とし、内用は毒性があるので多用しない[8]。かつて、日本では葉を強壮食品、根は浴湯料とした[8]。生長した葉はかたく青臭い香りがあるが、若葉はほとんどクセがなく各種ビタミンを含むことから一時は健康野菜として注目され、若芽を天ぷら、お浸し、和え物、汁の実などに利用した[6]。浴湯料としては、若々しい皮膚にするので、美容効果があるとみなされた[8]。
民間療法では、下痢止めの生薬として、秋に根や根茎を掘って洗い、日干ししたものをコンソリダ根、またはコンフリーと呼んで、煎じて3回に分服する用法が知られていた[5]。また、湿疹、かぶれに、煎じ液を用いて冷湿布とした[5]。アルカロイドの一種に強い抗菌作用があるといわれ、湿布薬として傷口につけることが多かった[6]。滋養保険に生の葉を青汁にしたり、天ぷらやお浸しなどとして調理し食用にされていた[5]。しかし、当時から食べて薬効を得るには強すぎるともいわれていた[6]。
かつては、何にでも効くという触れ込みでで広まっていったが、今では見る影もなくなっている[7]。薬草は本来、症状や体質によって使い分けていかなければならないものであるが、それを無視した事例であると言える[7]。
栽培
やや湿り気のある土壌を選び、丈夫でどんな環境でも育ちやすいので、野生化している[8]。繁殖は株分けで行われている[8]。
毒性
厚生労働省は、2004年6月14日、コンフリーを含む食品を摂取して肝障害(肝静脈閉塞性疾患で、主に肝臓の細静脈の非血栓性閉塞による肝硬変又は肝不全及び肝臓癌)を起こす例が海外で多数報告されているとして、摂取を控えるよう注意を呼びかけると共に、2004年6月18日食品としての販売を禁止した[10]。加熱によって、毒性が軽減されるというデータはない[11]。
この症状は、ピロリジジンアルカロイドのエチミジン(echimidine)[12] とシンフィチン(Symphytine)[13][14] によって引き起こされる。最も濃度が高いのは根である。シトクロムP450によるアルカロイドの体内変換が原因と考えられ、急性毒性が有るほか胎盤を通じた胎児(新生児)への影響が報告されている[15]。
画像
-
茎の拡大
-
白い花の品種
-
受粉し肥大した種
-
種子
脚注
- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Symphytum officinale L. ヒレハリソウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年2月19日閲覧。
- ^ a b c d e f 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 81.
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Symphytum x uplandicum Nyman コンフリー(標準)〈オオハリソウ×ヒレハリソウ〉”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年2月19日閲覧。
- ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 136
- ^ a b c d e f g h i j 田中孝治 1995, p. 108.
- ^ a b c d e 講談社編 2013, p. 23.
- ^ a b c d 貝津好孝 1995, p. 64.
- ^ a b c d e f g h i j 馬場篤 1996, p. 97.
- ^ a b 北野佐久子『基本ハーブの事典』東京堂出版、2005年、46 - 47頁
- ^ シンフィツム(いわゆるコンフリー)及びこれを含む食品の取扱いについて(その2) 厚生労働省
- ^ シンフィツム(いわゆるコンフリー)及びこれを含む食品の取扱いについて 厚生労働省
- ^ Echimidine Planta Analytica
- ^ 藤井義晴, 「未利用植物の有効利用と調理科学への期待」『日本調理科学会誌』 2008年 41巻 3号 p.204-209, 日本調理科学会, doi:10.11402/cookeryscience1995.41.3_204。
- ^ I Hirono(廣野 巖). Edible Plants Containing Naturally Occurring Carcinogens in Japan. Jpn J Cancer Res. 1993 Oct;84(10):997-1006. PMID 8226284
- ^ 佐竹元吉, 「植物性の健康食品の安全性について」『食品衛生学雑誌』 51巻 6号 2010年 p.408-414, 日本食品衛生学会, doi:10.3358/shokueishi.51.408。
参考文献
- 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、64頁。ISBN 4-09-208016-6。
- 講談社編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日、23頁。ISBN 978-4-06-218342-0。
- 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、81頁。ISBN 978-4-09-208303-5。
- 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、108頁。ISBN 4-06-195372-9。
- 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、97頁。ISBN 4-416-49618-4。
関連項目
外部リンク
- 第1回かび毒・自然毒等専門調査会 開催日:2004年4月28日 内閣府・食品安全委員会
- ヒレハリソウ(コンフリー) 静岡県立大学薬草園