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ネズ

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ネズ
盆栽に仕立てたネズミサシ
1. ネズ(大阪府)
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 裸子植物 gymnosperms
: マツ綱 Pinopsida
: ヒノキ目 Cupressales[注 1]
: ヒノキ科 Cupressaceae
亜科 : ヒノキ亜科 Cupressoideae
: ビャクシン属(ネズミサシ属) Juniperus
: Juniperus sect. Juniperus[5]
: ネズ J. rigida
学名
Juniperus rigida Siebold & Zucc. (1846)[6]
シノニム
和名
ネズ、ネズミサシ、ムロ[8]、ムロノキ[8]、イガムロ[8]、イヌヒムロ[8]、ネズミスギ[8]、ネズスギ[8]、ネズマツ[8]、モロノキ[9]、モロギ[9]
英名
temple juniper[10], needle juniper[1]

ネズ[11](杜松[12]学名: Juniperus rigida)は、裸子植物マツ綱ヒノキ科ビャクシン属(ネズミサシ属)に属する常緑針葉樹の1種である。ネズミサシ(鼠刺[13])ともよばれ、これを標準名としていることも多い。別名として、他にムロ(榁)[14]トショウ(杜松)[12]などがある。低木から高木で小枝は垂下し、触ると痛い尖った針葉が3輪生する。雌雄異株であり、"花期"は春、球果は翌年以降に熟し、多肉質で液果状(漿質球果)。本州、四国、九州、朝鮮半島、中国北部に分布し、尾根筋など痩せた土地に生育する。木材、薬用(球果は杜松子とよばれる)、観賞用(盆栽など)として利用される。ハイネズと同種とされることがあり、その場合、ここで解説しているネズの学名は Juniperus rigida var. rigida となる。

特徴

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常緑低木から高木針葉樹であり、ふつう高さ5–7メートル (m) ほどであるが、大きなものは高さ 10 m、幹の直径45センチメートル (cm) ほどになる[7][11][15][16](図1, 2)。枝を四方に伸ばし、小枝は垂下することが多い[15][17](下図2, 3)。小枝には稜があり、断面は三角形、赤褐色で無毛[7][11]樹皮は灰褐色から赤褐色、薄くはがれる[7][11][15][16]

2a. 樹形
2b. 樹形
2c. 樹皮

は針葉、3輪生し、長さ10–25ミリメートル (mm)、幅約 1 mm、濃緑色、硬く先端は尖り、触れると痛い[7][11](下図3)。葉の断面は逆三角形、表面に1本の深い白色気孔帯があり、裏側に樹脂道がある[11][15][16][18]

3a. "雄花"
3b. 未熟な球果

ふつう雌雄異株だがまれに雌雄同株、"花期"は4月ごろ、"雄花"、"雌花"とも前年枝の葉腋につく[7][11][16]。"雄花"、"雌花"とも鱗片葉をつけた小枝の先端に頂生する[11]雄球花("雄花")[注 2]は楕円形、長さ 4–5 mm、輪生する3個の小胞子葉("雄しべ")からなり、小胞子葉の背軸面には4–7個の花粉嚢がある[7][11][16](上図3a)。雌球花[注 3]は3個の鱗片(果鱗)からなり、3胚珠がある[11]。雌球花は翌年または翌々年の10月ごろに成熟し、裂開せず鱗片は合着して多肉質の漿質球果になり、球形から卵形、直径 6–10 mm、はじめは緑色だが熟すと黒紫色になり、表面は白いロウ質で覆われる[7][11][15][16][22](上図3b)。種子は球果1個あたりふつう2–3個、卵状三角形で長さ 4–5 mm、樹脂塊がついている[11][16]染色体数は 2n = 22[16]

分布・生態

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本州岩手県以南)、四国九州朝鮮半島中国北部、ロシアに分布する[7][11][16]。瀬戸内地方に多い[22]。日当たりがよく花崗岩質など痩せた尾根やアカマツ林内、砂地などに見られる[7][11][15][16][17]松枯れによってマツが消えた跡地に増えることもある[23]

病虫害は少ないが、ヒノキ樹脂胴枯病が発生することがある[17]。またナシに大きな被害を与える赤星病菌の中間宿主となるため、ナシの産地では植栽が規制されていることがある[17]

人間との関わり

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利用

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4. ネズの盆栽

は芳香・光沢があり、心材は淡褐色で辺材との境界は明瞭、緻密で重硬、気乾比重は0.54、樹脂が多く耐朽性が高いため、床柱のような装飾材や彫刻材、白檀の模擬材(和白檀とよばれる)に利用されるが、蓄材量が少ない[15][16][17][9]

古くは、種子から得られた油を灯火用や薬用に用いていた[16]。また、球果杜松子(トショウシ)とよばれ、中国では古くから漢方生薬として利用され、利尿リウマチに有効とされる[17]広島県立世羅高等学校アロマオイルの抽出と商品化に取り組んでいる[23]

庭木盆栽として利用されることがあり、園芸上では杜松(としょう)ともよばれる[17][9][22](図4)。

長野県青木村では、ネズを「村の木」としている[24]

名称

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針葉が硬く尖っているため、ネズミの通り道に置いておくことでネズミ除けになるという意味で「ネズミサシ(鼠刺)」の名前がつき、これが縮まって「ネズ」となったとされる[11][16][17]。ネズミサシを標準名としていることも多い[25][16][18]

古くは、「皆の木」を意味する「ムロノキ」とよばれ、『万葉集』でもいくつか詠まれている[18][26]。ただし、このように詠まれている木は瀬戸内海沿岸に生える大木であることから、実際には同属別種のイブキのことではないかともされる[27]

吾妹子わぎもこが 見しともの浦の むろの木は 常世とこよにあれど 見し人そなき

大伴旅人、『万葉集』巻3-446番

脚注

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注釈

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  1. ^ ヒノキ科イチイ科などとともにヒノキ目に分類されるが[2][3]マツ科(およびグネツム類)を加えた広義のマツ目(Pinales)に分類することもある[4]
  2. ^ "雄花"ともよばれるが、厳密にはではなく小胞子嚢穂(雄性胞子嚢穂)とされる[19]。雄性球花や雄性球果ともよばれる[20][21]
  3. ^ "雌花"ともよばれるが、厳密には花ではなく大胞子嚢穂(雌性胞子嚢穂)である[19][20]。送受粉段階の胞子嚢穂は球花とよばれ、成熟し種子をつけたものは球果とよばれる[20]

出典

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  1. ^ a b Farjon, A. (2023年). “Juniperus rigida”. The IUCN Red List of Threatened Species 2009. IUCN. 2024年1月3日閲覧。
  2. ^ Stevens, P. F. (2001 onwards). “Cupressales”. Angiosperm Phylogeny Website. 2023年2月20日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・邑田仁 (2013). 維管束植物分類表. 北隆館. p. 44. ISBN 978-4832609754 
  4. ^ 大場秀章 (2009). 植物分類表. アボック社. p. 18. ISBN 978-4900358614 
  5. ^ Adams, R. P. & Schwarzbach, A. E. (2012). “Taxonomy of Juniperus section Juniperus: Sequence analysis of nrDNA and five cpDNA regions”. Phytologia 94 (2): 280-297. https://www.phytologia.org/uploads/2/3/4/2/23422706/942280-297adamsschwarzbach_junsectjunrev_4-30.pdf. 
  6. ^ a b Juniperus rigida”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2024年1月3日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Juniperus rigida”. The Gymnosperm Database. 2024年1月5日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g 白井光太郎 (1933). “ネズミサシ”. 樹木和名考. 内田老鶴圃. p. 208 
  9. ^ a b c d ネズミサシ”. 木材図鑑. 府中家具工業協同組合. 2024年1月3日閲覧。
  10. ^ GBIF Secretariat (2022年). “Juniperus rigida Siebold & Zucc.”. GBIF Backbone Taxonomy. 2024年1月5日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 中川重年 (2000). “ネズ”. 樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物. 山と渓谷社. pp. 644–645. ISBN 978-4635070058 
  12. ^ a b 杜松」『動植物名よみかた辞典 普及版』https://kotobank.jp/word/%E6%9D%9C%E6%9D%BEコトバンクより2024年1月3日閲覧 
  13. ^ 鼠刺」『動植物名よみかた辞典 普及版』https://kotobank.jp/word/%E9%BC%A0%E5%88%BAコトバンクより2024年1月3日閲覧 
  14. ^ 」『動植物名よみかた辞典 普及版』https://kotobank.jp/word/%E6%A6%81コトバンクより2024年1月3日閲覧 
  15. ^ a b c d e f g 中川重年 (1994). “ネズミサシ”. 検索入門 針葉樹. 保育社. p. 65. ISBN 978-4586310395 
  16. ^ a b c d e f g h i j k l m n 大橋広好 (2015). “ネズミサシ”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. p. 40. ISBN 978-4582535310 
  17. ^ a b c d e f g h 佐藤重穂 (2020年4月9日). “今月の一枚(No.288):ネズ”. 森林総合研究所 四国支所. 2024年1月3日閲覧。
  18. ^ a b c 大澤毅守 (1997). “ネズミサシ”. 週刊朝日百科 植物の世界 11. pp. 196–200. ISBN 9784023800106 
  19. ^ a b 長谷部光泰 (2020). 陸上植物の形態と進化. 裳華房. p. 205. ISBN 978-4785358716 
  20. ^ a b c 清水建美 (2001). 図説 植物用語事典. 八坂書房. p. 260. ISBN 978-4896944792 
  21. ^ アーネスト M. ギフォードエイドリアンス S. フォスター『維管束植物の形態と進化 原著第3版』長谷部光泰鈴木武植田邦彦監訳、文一総合出版、2002年4月10日、332–484頁。ISBN 4-8299-2160-9 
  22. ^ a b c ネズhttps://kotobank.jp/word/%E3%83%8D%E3%82%BAコトバンクより2024年1月3日閲覧 
  23. ^ a b 【若者】広島県立世羅高校/ネズでアロマオイル 選手と里山を元気に『日本農業新聞』2020年5月11日
  24. ^ ねずみさし”. 長野県魅力発信ブログ. 長野県 (2014年2月23日). 2024年1月3日閲覧。
  25. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Juniperus rigida Siebold et Zucc.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年1月3日閲覧。
  26. ^ 万葉百科”. 奈良県立万葉文化館. 2024年1月5日閲覧。
  27. ^ 北村四郎・村田源 (1979). “ネズ”. 原色日本植物図鑑 木本編 2. 保育社. pp. 408–409. ISBN 978-4-586-30050-1 

関連項目

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外部リンク

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