働かざる者食うべからず
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「働かざる者食うべからず」(はたらかざるものくうべからず、英語: He who does not work, neither shall he eat.)とは、労働に関する慣用句である。
意味
働こうとしない怠惰な人間は食べることを許されない。食べるためにはまじめに働かなければならないということ。
歴史
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新約聖書の『テサロニケの信徒への手紙二』3章10節には「働きたくない者は食べてはならない」という一節がある。
εἴ τις οὐ θέλει ἐργάζεσθαι μηδὲ ἐσθιέτω 「働こうとしない者は、食べることもしてはならない」
これが「働かざる者食うべからず」という表現で広く知られることとなった。ここで書かれている「働こうとしない者」とは、「働けるのに働こうとしない者」であり、病気や障害、あるいは非自発的失業により「働きたくても働けない人」のことではないとされている[1]。
ソビエト社会主義共和国連邦(現在のロシア連邦)およびソビエト連邦共産党(前身はボリシェヴィキ、現在はロシア連邦共産党)の初代指導者ウラジーミル・レーニンは、同党の機関紙「プラウダ」第17号(1919年1月12日発行)に寄稿した論文「競争をどう組織するか?」の中で、「『働かざるものは食うべからず』は社会主義の実践的戒律である」と述べた。レーニンがこの言葉を使った際には、不労所得で荒稼ぎする資産家達を戒める意味合いがあった。
1918年制定のロシア社会主義連邦ソヴェト共和国憲法(いわゆる「レーニン憲法」)の第18条では、次のように書かれている。
Российская Социалистическая Федеративная Советская Республика признает труд обязанностью всех граждан Республики и провозглашает лозунг: «Не трудящийся, да не ест!» 「ロシア社会主義連邦ソヴェト共和国は、労働を共和国のすべての市民の義務であるとみとめ、『はたらかないものは、くうことができない』というスローガンをかかげる。」[2]
その後、1936年制定のソビエト社会主義共和国連邦憲法(スターリン憲法)第12条にも記載された。
Труд в СССР является обязанностью и делом чести каждого способного к труду гражданина по принципу: «кто не работает, тот не ест». В СССР осуществляется принцип социализма: «от каждого по его способности, каждому — по его труду». 「ソビエト社会主義共和国連邦においては、労働は、『働かざる者は食うべからず』の原則によって、労働能力のあるすべての市民の義務であり、名誉である。ソビエト社会主義共和国連邦においては、『各人からはその能力に応じて──各人にはその労働に応じて』という社会主義の原則が行われる。」[3]
1977年制定のブレジネフ憲法ではこの言葉はなくなった。
Статья 14. Источником роста общественного богатства, благосостояния народа и каждого советского человека является свободный от эксплуатации труд советских людей. В соответствии с принципом социализма «От каждого — по способностям, каждому — по труду» 「第14条 社会的富の拡大と人々およびすべてのソビエト人の幸福の源は、搾取のないソビエト人民の労働である。『それぞれからは自分の能力に応じて、それぞれへは自分の仕事に応じて』という社会主義の原則に従う」
参考文献
- 用例でわかる故事ことわざ辞典 学研辞典編集部 2005年 ISBN 978-4053017994
脚注
- ^ 松永晋一 『テサロニケ人への手紙』 日本基督教団出版局、1995年、249頁。ISBN 4818402001。
- ^ 岩波文庫人権宣言集p.283
- ^ 岩波文庫人権宣言集p.292