耳なし芳一
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耳なし芳一(みみなしほういち)は、安徳天皇や平家一門を祀った阿弥陀寺(現在の赤間神宮、山口県下関市)を舞台とした物語、怪談。小泉八雲の『怪談』にも取り上げられ、広く知られるようになる。
八雲が典拠としたのは、一夕散人(いっせきさんじん)著『臥遊奇談』第二巻「琵琶秘曲泣幽霊(びわのひきょくゆうれいをなかしむ)」(1782年)であると指摘される[1][2]。
『臥遊奇談』でも琵琶師の名は芳一であり、背景舞台は長州の赤間関、阿弥陀寺とある。これは現今の下関市、赤間神社のことと特定できる。
昔話として徳島県より採集された例では「耳切り団一」[3]で、柳田國男が『一つ目小僧その他』等で言及している。
物語
阿弥陀寺に芳一という盲目の琵琶法師が住んでいた。芳一は平家物語の弾き語りが得意で、特に壇ノ浦の段は「鬼神も涙を流す」と言われるほどの名手であった。
類話
上記の話が、一般的に「耳なし芳一」と言われるものであるが、これ以外にも幾つかの類話が存在しており、部分部分で話が違っていたり、結末が異なったりする。
寛文3年(1663年)に刊行された『曽呂利物語』の中では、舞台は信濃、善光寺内の尼寺となっているうえ、主人公は芳一ではなく「うん市」という座頭である。
派生
「耳なし芳一」を扱った作品
- 小説『怪談』(Kwaidan、小泉八雲)の「耳無芳一の話」
- 映画『怪談』(1964年東宝映画、小林正樹監督)中の「耳無し芳一」:芳一役は中村賀津雄。
- ドラマ『日本の面影』(1984年NHK総合:第4回の劇中劇として登場。芳一役は小林薫。)
- アニメ『まんが日本昔ばなし』(愛企画センター、グループ・タック、MBS毎日放送制作)の一話、「耳なし芳一」
- アニメ『ドラえもん』 221話(2011年8月19日放送)「暑い夏にはおはなしバッチ」中でジャイアンが「耳なし芳一」の話のバッチを付ける。
- 漫画『快僧のざらし』(山上たつひこ) ギターの弾き語りがうまい主人公の小坊主のざらしが寺で演奏していると、妖しい美女が現れて芸能界入りを請われる。だが実はその女の正体は……そして、のざらしが出かけた先は……というパロディ作品。
- 漫画『耳ナシ芳一』(丸尾末広)
- 特撮『仮面ライダー (スカイライダー)』 43話「怪談シリーズ 耳なし芳一 999の耳」
- 舞台 『耳なし芳一』(声劇和楽団)
「耳なし芳一」からアイディアをとっている作品
- 映画『コナン・ザ・グレート』(1982年ユニバーサル・ピクチャーズ、ジョン・ミリアス監督)作中で主人公コナンが瀕死の重傷を負って全身に呪文を書いて死神の脅威から護られて復活を果たすシーンがあるが、このシーンは日本の「耳なし芳一」という物語を題材にしたと監督自ら語っている。
- 映画『邪(Xie)』(1980年香港映画、桂治洪監督)
- 楽曲『芳一受難』(2016年、人間椅子アルバム『怪談 そして死とエロス』収録)
「耳なし芳一」にちなんだ命名
- コローニ(コローニ・C4) - 1991年に参戦していたF1マシンの1つ。チームが同年の日本グランプリに参戦する為の資金を集めるべく個人スポンサーを募った。その結果、多くの個人名がマシンにびっしりと書かれてしまったため「耳なし芳一」と揶揄された。
参考文献
- ^ Mori, Senzo(森銑三) (1994) (snippet). 森銑三著作集: 続編. 11. 中央公論社. ISBN 978-4-12-403084-6
- ^ Miyata, Nao(宮田尚) (2006), ““芳一ばなし”から「耳なし芳一のはなし」へ(From the Original Japanese Stories of “Hoichi” to Hearn's English Adaptation “The Story of Mimi-nashi-Hoichi”)” (pdf), 梅光学院大学・女子短期大学部 論集 39 山口県大学共同リポジトリ
- ^ Narita, Mamoru(成田守) (1985) (snippet). 盲僧の伝承: 九州地方の琵琶法師. 三弥井書店. ISBN 978-4-12-403084-6, p.89
- 『耳無芳一の話』戸川 明三訳:新字新仮名(青空文庫)
- Isseki, Sanjin(一夕, 散人) (1782) (pdf). 琵琶秘曲泣幽霊(Biwa no hikyoku yūrei wo nakashimu). 2. 京都: 菊屋安兵衛 ヘルン文庫