だったん人の踊り
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Alexander Borodin - Prince Igor: Polovtsian Dances - Slaven Kulenović指揮、スロヴェニア国立マリボール歌劇場交響楽団、セルビア放送合唱団、クロアチア放送合唱団による演奏。当該指揮者自身の公式YouTube。 |
『だったん人の踊り』(だったんじんのおどり)または『ポロヴェツ人の踊り』(ポロヴェツじんのおどり、露: Половецкие пляски、英: Polovtsian Dances)は、ロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディンが作曲したオペラ『イーゴリ公』の第2幕に含まれる曲で、ボロディンの最も有名な曲のひとつであり、またクラシック音楽でも有数の人気曲である。
日本語の題名は『ダッタン人の踊り』『韃靼人の踊り』『ポロヴェッツ人の踊り』などとも記される。しばしばオーケストラのコンサートなどで、オペラとは独立に演奏される。ただし、オペラでは合唱を伴うが、演奏会では合唱のパートを省略することが多い。序曲や「ポロヴェツ人の行進」などと併せて『イーゴリ公組曲』とすることもある。
曲の内容
オペラの第1幕の終わりでイーゴリ公と息子のヴラヂーミルはコンチャーク・ハーンが率いるポロヴェツ人の捕虜となり、第2幕はポロヴェツ軍の野営地で展開する。第2幕の冒頭ではポロヴェツ人の娘たちが登場し、合唱に続いて第8曲「韃靼人の娘の踊り」を踊る。第2幕の終盤、イーゴリ公を懐柔しようとするが拒まれたコンチャーク・ハーンは奴隷たちに余興の踊りを命じ、第17曲の「韃靼人の踊り」が第2幕を締めくくる[1][2]。
ロシア国民楽派が考える音楽による「東方」を代表するものであり、東方の女性と騎馬民族の男性、奴隷の悲哀と遊牧民の開放感のような対比が音楽的にも巧みに組み合わされている[3]。『イーゴリ公』はボロディンの急死のために未完に終わりリムスキー=コルサコフとグラズノフによって補筆されたが、第17曲はボロディンが生前に管弦楽化まで終えていた部分の一つである[1]。
演奏会などでは第2幕終わりの第17曲のみを「韃靼人の踊り」として演奏する場合もあれば[4]、「韃靼人の娘の踊り」を合わせて演奏する場合もある[1]。演奏時間は第8曲が2分半程度、第17曲が11分程度。
- No.8, 韃靼人の娘の踊り["Пляска половецких девушек"]: Presto, 6/8,ヘ長調
- No.17, 韃靼人の踊り(合唱付き) ["Половецкая пляска с хором"]
- [a] 序奏: Andantino, 4/4,イ長調
- [b] 娘達の踊り[Пляска девушек плавная]: Andantino, 4/4, イ長調
- [c + a] 男達の踊り[Пляска мужчин дикая]: Allegro vivo, 4/4, ヘ長調
- [d] 全員の踊り[Общая пляска]: Allegro, 3/4, ニ長調
- [e] 少年達の踊り[Пляска мальчиков]と、男達の踊り[Пляска мужчин]: Presto, 6/8(2/4も一部含まれる), ニ短調・ハ長調
- [b’ + e’] 娘達の踊りと少年達の踊り Moderato alla breve, 2/2(12/8も一部含まれる), イ長調
- [e’’] 少年達の踊りと男達の踊り: Presto, 6/8(2/4も一部含まれる), ニ短調・ハ長調
- [c’ + a’’] 全員の踊り: Allegro con spirito, 4/4, イ長調
翻訳
オペラの対応する部分の歌詞は以下の通りである。
ロシア語原文[5] | ローマ字転写 | 英訳からの重訳[6] |
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Улетай на крыльях ветра
Пойте песни славы хану! Пой!
Видишь ли пленниц ты
Пойте песни славы хану! Пой!
(冒頭のНевольницы節と同じ)
Славой дедам равен хан наш, |
Uletay na kryl'yakh vetra
Poyte pesni slavy khanu! Poy!
Vidish' li plennits ty
Poyte pesni slavy khanu! Poy!
(冒頭のNevol'nitsy節と同じ)
Slavoy dedam raven khan nash, |
風の翼に乗って飛べ
ハーンを称える歌を歌え!歌え!
遠い海からの
ハーンを称える歌を歌え!歌え!
(冒頭の奴隷女たち節と同じ)
我らがハーン、コンチャック・ハーンは |
ポピュラー音楽への編曲
- Prince Igor (シセル)アメリカのラッパー ウォーレン・G とのデュエットで1998年ヨーロッパで1位
- ストレンジャー・イン・パラダイス(ミュージカル『キスメット』より)
- パラダイス・ア・ゴーゴー (Ten Seconds to Heaven) (ザ・ベンチャーズ)
- THE GARDEN OF EVERYTHING 〜電気ロケットに君を連れて〜(坂本真綾)
- AZURE (天野清継)
- La, la Maladie du Sommeil(桑島法子・橋本一子、『ラーゼフォン』より)
- 韃靼人踊 (鷺巣詩郎、『彼氏彼女の事情』より)
- Polovtsian Dances 〜OZ Ver.〜(『OZ -オズ-』より)
- Polovtsian Dances And Chorus (Naoto Suzuki feat. Martha、『Dance Dance Revolution Extreme 2』より)
- Song Of Our Homeland(izzy、『izzy Ascolta』より)
- 君はエプロン僕はパンタロン(明和電機)
- Strange Paradise(bond)
- 韃靼人の踊り(天地雅楽)
- ときめき人の踊り(実況おしゃべりパロディウス Stage2 BGM)
- ダッタン人の踊り(asianTrinity)
- LONELY WINDS OF WAR(MASTERPLAN、『Time To Be King』より)
- 韃靼人の踊りナイトラウンジ編 (杉ちゃん&鉄平、『マジカル・ミステリー・クラシック』より)
- ダッタン人の踊り(藤澤ノリマサ) - 藤澤のメジャーデビューシングル作。日本テレビの平日朝8時の番組「スッキリ!!」の2008年5月のテーマソングに起用した。
- だったん人の踊り(アンサンブル・プラネタ)
- 初めてのダンス(益田宏美、『誕生』より)
- CHEEKY(EL7Z UP)
登場作品
- 『響け!ユーフォニアム2』
- 劇中の2年前に行われた吹奏楽コンクールにおける南中学校吹奏楽部のコンクール自由曲として、また劇中の吹奏楽コンクールにおける関西地方での全国大会出場常連校「三強」の一つである大阪府代表・明静工科高校吹奏楽部のコンクール自由曲として、本曲の吹奏楽編曲版が登場する。
- なお原作における両校の自由曲はいずれも異なり、南中学校は「バレエ音楽『ダフニスとクロエ』第2組曲」の吹奏楽編曲版、明静工科高校吹奏楽部は「吹奏楽のための『大阪俗謡による幻想曲』」とされている。
- 『彼氏彼女の事情』
- ACT26.0 挿入曲
脚注
- ^ a b c Richard Taruskin「イーゴリ公」『新グローヴオペラ事典』スタンリー・セイディ編、日本語版監修:中矢一義、土田英三郎、白水社、2006年、76-81頁。
- ^ 井上和男「イーゴリ公」『作曲家別名曲解説ライブラリー (22) ロシア国民楽派』音楽之友社、2001年、108-111頁。
- ^ 森田稔「解説」『ボロディン:ポロヴェツ人の踊りと合唱(ダッタン人の踊り)』全音楽譜出版社、2018年、8-9頁。
- ^ Michael Steinberg. “Borodin: Polovtsian Dances from Prince Igor”. San Francisco Symphony. 2022年5月17日閲覧。
- ^ “Князь Игорь (Бородин)/Либретто — Викитека” (ロシア語). Ru.wikisource.org (2023年1月22日). 2023年8月30日閲覧。
- ^ “Alexander Borodin : Prince Igor : Opera in four acts and a prologue; Libretto by the composer after The Lay of the Host of Igor” (PDF). Brilliantclassics.com. 2016年12月20日閲覧。
参考文献
- Borodin, A. Le Prince Igor. Partition pour chant et piano. Edition M.P. Belaieff. (Russian, French, and German text.)
外部リンク
- イーゴリ公の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 宮澤淳一「楽曲紹介 (PDF) 」- 東京フィルハーモニー交響楽団
- 曲目解説:第253回定期演奏会 - ウェイバックマシン(2022年5月27日アーカイブ分) - 大阪交響楽団
- Prince Igor: an opera in four acts with a prologue (Fred Rullman, 1915. Translated libretto in Italian and English) - archive.org