※本稿は、マックス・ルガヴェア、ポール・グレワル『脳が強くなる食事 GENIUS FOODS』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
食事は脳に影響を与える
90年代半ばに、ある発見がなされ、それが脳に関する科学者や医者の常識をくつ返した。
その発見とは、人間が生きているかぎり、新しい脳細胞が永続的に生成される、というものだ。ダーウィンが提唱した進化の偉大なる産物、つまり脳を受け継ぐ人類にとって、それは確かに歓迎すべきニュースだった。その前までは脳細胞の新生、いわゆる「神経発生」は、成長過程でのみ起きると考えられていたからだ。
それから20年以上が過ぎた今、徐々に解明される新たな知見のおかげで、あなたは今の生活をすっかり方向転換できる――つまり脳を守り、強化することができるのだ。
アルツハイマー病の研究を例に取ろう。アルツハイマー病は、神経細胞がどんどん死んでいく神経変性疾患で、アメリカでは500万人以上がこの病気を発症している(その数は、今後数年のうちに3倍になると予想されている)。そして食事が、この病気に何かしら影響を与えていると考えられるようになったのは、ごく最近のことだ。事実、この病気は1906年にドイツ人医師、アロイス・アルツハイマーが初めて記録したのだが、今、症状として知られているものの9割は、ここ15年ほどでわかってきたものだ。
今回は、脳に欠かせない重要な成分である多価不飽和脂肪酸について解説しよう。
食事から摂取する多価不飽和脂肪酸は、脳をはじめ体内のいたるところに存在している。最もよく知られる多価不飽和脂肪酸は、オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸だ。この2つは身体にとって必須の成分だが、体内で合成できない。そのため食品から摂らなければならない。
「よい脂肪」であるオメガ3系脂肪酸と同様、オメガ6系脂肪酸も脳を正常に働かせるための必須の成分だが、現代のアメリカ人は、これをリノール酸という形で過剰に摂取している。
このオメガ6系脂肪酸は、もともと自然食品を通して、わずかな量しか摂られていなかったが、ほんの数十年のあいだに、アメリカ人のカロリー摂取量への多大な貢献者となってしまった。オメガ6系脂肪酸は、主に穀物油や種子油に含まれている脂肪酸で、今や摂りすぎの傾向にある。
具体的にいうとベニバナ油、ヒマワリ油、キャノーラ油、コーン油、大豆油だ。