第104回全国高校ラグビー大会京都府予選決勝(10日、京都工学院10-8京都成章、たけびしスタジアム京都)全国優勝4度を誇る伏見工を前身とする京都工学院が10-8で京都成章に競り勝ち、2015年度以来9大会ぶり21度目、2016年に現校名に変更されてからは初めての花園出場を決めた。チームの礎を築いた『泣き虫先生』こと、山口良治総監督(81)は「うれしい。ありがとうしかない」と歓喜の涙を流した。京都成章の連続出場は10大会で止まった。
あの伝統の赤いジャージーが花園に帰ってくる。ノーサイドの瞬間、京都工学院の選手たちは両腕を突き上げ、スタンドは歓喜に揺れた。2000年度の花園優勝キャプテンだった大島淳史監督は、声を詰まらせた。
「生徒たちが本当に一生懸命、頑張ってくれました」
10年連続で決勝で激突し、8年連続ではね返されてきた最大のライバルの壁をついに突き破った。
勝因は粘り強いディフェンスだ。ボール保持率は京都成章が上回ってていたが、倒されてもすぐに起き上がり、相手の連続攻撃を止め続ける。すると、3-3の後半17分、敵陣ゴール前でパスを受けたFB広川陽翔主将(3年)が鋭いステップで内に切れ込み、勝ち越しのトライ(ゴール成功)。その後、1トライを返され、2点差に迫られたが、勝利への執念で守り切った。
1975年にラグビー部監督に就任し、4度の全国優勝に導いただけじゃなく、荒れていた学校をラグビーで立て直し、テレビドラマ「スクール☆ウォーズ」のモデルにもなった山口総監督は「選手がやるのはそれ(タックル)しかない。徹底してくれた」とたたえ、「あの赤いジャージーが花園に出るだけで、多くのみなさんに喜んでもらえることでしょう」と感極まった。
校名が「京都工学院」に変わっても伏見工時代の赤いジャージーに黒パンツ、何より「信は力なり」の精神は変わらない。山口総監督の教え子だった大島監督も、泥臭く、相手に向かっていくスタイルを徹底し、ディフェンスを強化。今年5月の京都府総体で京都成章に59-8で8年ぶりに勝利した。何より花園へ「勝ちたい気持ちで上回った」と胸を張った広川主将は、その意味を「仲間を信じ、自分を信じ、やってきたことを信じること」と言い切った。
試合後、涙、涙で抱き合った大島監督と選手たち。この冬は花園の大舞台で歓喜の涙を流す。(月僧正弥)
■京都成章の連続出場「10」で止まる 終盤の反撃も及ばず、11大会連続17度目の花園出場はならなかったが、関崎大輔監督は「子供たちは力を出し切った」とたたえた。5月の京都府総体で大敗した相手に果敢に挑み、2点差まで迫った。伝統のタックルも随所にみられたが、スクラムでは圧倒され、勢いに乗れなかった。「もっと強くなるしかないですね」と巻き返しを誓った。