嫦娥1号
嫦娥1号(じょうがいちごう/Chang'e I)は、中華人民共和国初の月周回衛星。中国の神話の中の人物嫦娥から命名された。嫦娥1号は、高度約200キロメートルのところを1年間にわたって周回し、科学的な探査を行った。探査機の運搬ロケットには長征3A型が使用され、2007年10月24日18時5分に四川省の西昌衛星発射センターから打ち上げられた。衛星の総重量は2,350 kg。大きさは2000mm×1720mm×2200mm。太陽電池パネルを展開すると全長18m。嫦娥一号は中国嫦娥計画の最初の段階のプロジェクトである。2004年1月の開始以来、このプロジェクトには14億元が費やされた。
嫦娥1号 | |
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嫦娥1号のCG | |
所属 | 中国国家航天局 |
公式ページ | CLEP |
国際標識番号 | 2007-051A |
カタログ番号 | 32274 |
目的 | 月の周回観測 |
観測対象 | 月 |
計画の期間 | 約1年間 |
打上げ機 | 長征3A |
打上げ日時 | 2007年10月24日 18時05分 (CST) |
軌道投入日 | 2007年11月5日 |
機能停止日 | 2009年3月1日(月面衝突) |
物理的特長 | |
衛星バス |
東方紅3号衛星平台 DFH-3 Comsat bus |
質量 | 2,350kg |
主な推進器 | 490Nエンジン |
軌道要素 | |
周回対象 | 月 |
軌道 | 円軌道 |
高度 (h) | 平均200km |
軌道傾斜角 (i) | ~90度 |
軌道周期 (P) | 約127分 |
観測機器 |
探査内容
編集- 月面の3次元映像の取得
- CCD立体カメラとレーザ高度計を用いて月全体の立体地図を制作する。月の地質構造の変化の研究に役に立つ。将来月着陸地点の選択のために有用な参考データとなる。
- 月面に存在する元素の分布の調査(アルミニウム、カルシウムなどを含めた元素14種類)。また画像分光器を利用して造岩鉱物(カンラン石、輝石、斜長石など)の月面における量と分布の調査。
- 月の表土(レゴリス)の厚さの調査(ヘリウム3存在量の確認)
- 月と地球の間の環境の調査(太陽高エネルギー粒子測定器と太陽風粒子測定器を利用して太陽風のデータの記録、また太陽活動が月と地球の間の環境に与える影響を観測)
4つの主要探査以外に
後期
- 月到達までの道のりで軌道変更の回数を減らすことができたため、嫦娥一号は1年余りの運用に十分な燃料を節約できた。計画運用期間が終わった時、さらに高精度な月面画像の獲得のため、衛星の軌道を100kmに調整できるかもしれない。また嫦娥一号を月にぶつける計画もある。[3]
- 2009年3月1日、嫦娥1号は計画の最終段階として15時36分より減速を開始、16時13分に月面の豊かの海に落下した。国防科学技術工業委員会(中国)によれば、これは計画された制御された衝突であった。[4] 衝突地点は南緯1度30分 東経52度22分 / 南緯1.50度 東経52.36度。[5][6][7] その軌道ミッション中、プローブは1400ギガビットまたは175ギガバイト(GB)のデータを送信した。[8]
搭載機器
編集嫦娥1号は全部で130kgの機器を搭載している。そのうち8台の主要機器が含まれる[9]。
- CCD立体カメラ
- 月面の立体映像の撮影に用いる。解像度は120m。
- レーザ高度計
- 月面の三次元画像生成の補助に用いる。月面の光を反射しない地区(例えば両極)では、地形図作成の主要な機器となる。解像度は1m。
- 画像分光器
- 月面の光波の分布を調べる
- ガンマ線分光器
- X線分光器
- ケイ素、アルミニウム、マグネシウムの分布を調べる
- マイクロ波測定器
- 月の表土の厚さ及び、月の裏面の輝度、温度と月両極の地上の情報を取得する(月周回衛星では世界初の試みとなる)
- 太陽高エネルギー粒子測定器
- 衛星周囲の高エネルギー帯電粒子のエネルギーを測定する。
- 太陽風粒子測定器(低エネルギーイオン測定器)
- 地球から月、及び月付近の空間の環境を測定する。嫦娥一号で最も早く運用を開始した機器の一つ。
補助機器
- 大容量メモリー
- 48GB。各種機器が出力したデータを一時的に保存。
- スターセンサー、紫外線センサー
- 衛星の位置測定に使用
地上設備
編集嫦娥一号の位置測量のための設備
このほか、欧州宇宙機関の通信施設も借用している。
その他
編集歌曲の搭載
編集東方紅1号が地球に歌曲『東方紅』を送信した前例から、今回の嫦娥1号にもいくつかの楽曲が載せられ、地上に送信されることになった[10]。2006年7月7日、国防科学技術工業委員会は30曲の歌曲を選んで載せることを決定し、その後中央電視台、中国音楽家協会と共同で全国人民投票活動を行った[11]。10月、国防科学技術工業委員会が提出した150余りのあらかじめ準備された曲から、30曲の歌が選ばれた。またこれ以外に2曲が特別に載せられることになった。
関連した出来事
編集- 2007年10月初旬、西昌衛星発射センターで嫦娥一号打ち上げ現場見学チケットが販売された。定価800元/人。定員は2000席前後。中国人民のみ購入できた。
- 嫦娥一号の打ち上げ成功を受けて、24Kの金メッキを施された1/30スケールの嫦娥一号の模型が王府井の工美大厦で公開された。
- 「嫦娥一号航天印」という純銀製の印章が11月6日に北京にある中華世紀壇で公開された。高さ9.5cm。重量1380gのこの印章には56個のダイアモンドがちりばめられている。
- 嫦娥一号の打ち上げを記念して、中国航天博物館監修の純金記念硬貨セットが3,000セット発売された。値段は1セット12,800元。ただしこの記念硬貨は一般の硬貨として使うことはできない。
失踪疑惑
編集11月12日新華社通信が報道した「嫦娥一号地上と45分間通信が断絶」の記事を受けて、ネットでは嫦娥一号が失踪したのではといううわさが広まった。17日、月探査計画の責任者がデマの打消しのためメディアに登場した。一時的な通信断絶は想定内で、通信が断絶しても衛星は自律運行ができるという。
脚注
編集- ^ “月球探测进展与我国的探月行动”. 自然杂志 27 (5): 253-257. (2005).
- ^ 「嫦娥一號」的任務 Archived 2007年10月27日, at the Wayback Machine.
- ^ “嫦娥一号”有望主动撞月 获取更多月球信息[リンク切れ]
- ^ “China lunar probe mission ends with planned crash”. USA Today. Associated Press. (2009年3月2日) 2009年3月2日閲覧。
- ^ “NASA NSSDC Master Catalog – Chang'e 1”. 2011年1月1日閲覧。
- ^ “Chang'e-1 impacts Moon (coordinates)”. 中国人民日報 (2 March 2009). 2011年1月1日閲覧。
- ^ “Smackdown”. Aviation Week & Space Technology 70 (10): p. 16. (9 March 2009)
- ^ “Chang'e-1 - eoPortal Directory - Satellite Missions”. directory.eoportal.org. 2021年11月18日閲覧。
- ^ “嫦娥一号绕月探测——中国航天迈向深空”. 科技导报 25 (5): 47-52. (2007).
- ^ 嫦娥一号将载31首中华经典曲目"奔月"
- ^ 国防科工委决定搭载歌曲奔月