ホームタウン
ホームタウン(英: hometown)とは、JリーグやB.LEAGUEなどのスポーツクラブが、本拠地としている地域のことを指す。
用法
編集プロ野球などでいうフランチャイズ(地域保護権)とは、似ているがかなり異なる。
「フランチャイズ」は試合の開催などの興行活動を独占的に行うことのできる営業権、興行権の意味合いが強い。これに対して「ホームタウン」には興行権の意味は含まれない。「ホームタウン」はクラブチームがその地域社会と密着して活動しているという意味合いが強い。
なお、一般的には「故郷、育った町」という意味である。
Jリーグ
編集Jリーグでは、ホームタウンを「クラブと地域社会が一体となって実現する、スポーツが生活に溶け込み、人々が心身の健康と生活の楽しみを享受することができる町」と定義している。
プロ野球のフランチャイズは都道府県を単位としているが、Jリーグでは基本的に市町村単位でホームタウンが制定されている。参加各チームはホームタウンのスタジアムで全主催ゲームの80%を開催することが義務付けられている[注 1]。また、1999年からは同一都道府県の複数の市区町村をまたいだり、また本拠となる都道府県全域をホームタウンとすることができる「広域ホームタウン」が認められるようになった。ただし、鹿島アントラーズはJリーグに加盟した1992年当初から特例で広域ホームタウンが認められていた。
ちなみに、現在J3を含むJリーグ会員クラブで、全県ホームタウンとなっているのは札幌、仙台、秋田、山形、岩手、福島、群馬、FC東京、東京V、新潟、甲府、富山、金沢、名古屋、岐阜、鳥取、岡山、山口、徳島、愛媛、長崎、大分、琉球の23クラブで、「岩手県全県」を本拠地としている岩手、「東京都全域」を本拠地としているFC東京と東京V、「新潟県全県」を本拠地としている新潟、「山口県全県」を本拠地としている山口の5クラブを除いては、この中からのメインのホームタウン自治体を定めている。後述の表参照。
なお、やむを得ない事情でホームタウンを移転する場合は、実施する1年前までにJリーグの理事会、実行委員会の承認を得ることが義務付けられている。
過去にJリーグのクラブでホームタウンを移転した例はヴェルディ川崎が2001年に川崎市→東京都に移し、それを機にチーム名を「東京ヴェルディ1969」に変更した事例があるのみ。コンサドーレ札幌(川崎市→札幌市)、水戸ホーリーホック(土浦市→水戸市)、大宮アルディージャ(旧・浦和市→旧・大宮市=現在は合併によりさいたま市)、アビスパ福岡(藤枝市→福岡市)の各クラブはそれぞれJリーグ加盟前にホームタウンを移動している。
また、ホームタウンとなっている自治体全てがマッチスポンサーとなっているホームゲームがあるクラブがあれば、全てのホームゲームがホームタウンの自治体の一部分が持ち回りでマッチスポンサーを担当するクラブ[注 2] も存在する。
なお、2021年10月16日のスポーツニッポンに、2022年度のシーズンで「ホームタウン制度の廃止を検討している」[1] との報道があったが、Jリーグチェアマン・村井満はこのスポニチの報道は事実無根として否定した[2]。
ホームタウン一覧
編集Jリーグ
編集Jリーグ百年構想クラブ
編集ここでは、将来的にJリーグ参戦を目指すJリーグ百年構想クラブを取り上げる。
クラブ名 | 所在都道府県 | ホームタウン | 所属 |
---|---|---|---|
コバルトーレ女川 | 宮城県 | 女川町 | 東北1部 |
ラインメール青森FC | 青森県 | 青森市 | JFL |
クリアソン新宿 | 東京都 | 新宿区 | |
栃木シティFC | 栃木県 | 栃木市 | 関東1部 |
VONDS市原 | 千葉県 | 市原市 | |
南葛SC | 東京都 | 葛飾区 | |
東京23フットボールクラブ | 東京都 | 23特別区 | |
ヴィアティン三重 | 三重県 | 桑名市、東員町、いなべ市、木曽岬町、朝日町、川越町、菰野町 | JFL |
高知ユナイテッドSC | 高知県 | 高知市、南国市を中心とする全県 | |
ヴェルスパ大分 | 大分県 | 別府市、由布市 | |
沖縄SV | 沖縄県 | うるま市 | 九州 |
B.LEAGUE
編集B.LEAGUEでは発足初年度となる2016-17シーズンの加盟要件としてホームタウンを定め、その地域内にホームアリーナを設置することを挙げ、B1ではホームゲームの8割、B2では6割をホームアリーナで開催することを原則としている[3]。なお、青森、愛媛の2クラブは2016-17シーズンでは特定のホームタウンを定めておらず、ホームアリーナも指定していなかったが、翌2017-18シーズンからそれぞれ指定した。
クラブはホームタウンにおいて、社会貢献活動を含めて地域社会と一体となったクラブ作りを行い、スポーツの普及および振興に努めなければならないとしており、地域に密着した活動が求められている[4]。また、ホームタウンの変更は原則としてできないが、理事会の承認を受けて同一の都道府県内にある市区町村をホームタウンに追加することは可能である。やむを得ない理由により、ホームタウンを変更する場合には、変更の日の1年以上前までに理事会に申請し、その承認を得なければならない[4]。
ホームタウン一覧
編集所属、地区は2023-24シーズンのカテゴリ[5]。
B1リーグ
編集クラブ名 | 所在都道府県 | ホームタウン | 地区 |
---|---|---|---|
レバンガ北海道 | 北海道 | 札幌市 | 東 |
仙台89ERS | 宮城県 | 仙台市 | 東 |
秋田ノーザンハピネッツ | 秋田県 | 秋田市 | 東 |
茨城ロボッツ | 茨城県 | 水戸市 | 東 |
宇都宮ブレックス | 栃木県 | 宇都宮市 | 東 |
群馬クレインサンダーズ | 群馬県 | 太田市 | 東 |
千葉ジェッツふなばし | 千葉県 | 船橋市 | 東 |
アルバルク東京 | 東京都 | 渋谷区 | 東 |
サンロッカーズ渋谷 | 中 | ||
横浜ビー・コルセアーズ | 神奈川県 | 横浜市 | 中 |
川崎ブレイブサンダース | 川崎市 | 中 | |
富山グラウジーズ | 富山県 | 富山市 | 中 |
信州ブレイブウォリアーズ | 長野県 | 長野市 | 中 |
三遠ネオフェニックス | 愛知県 | 豊橋市[注 4] | 中 |
シーホース三河 | 刈谷市 | 中 | |
ファイティングイーグルス名古屋 | 名古屋市 | 中 | |
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ | 西 | ||
京都ハンナリーズ | 京都府 | 京都市 | 西 |
大阪エヴェッサ | 大阪府 | 大阪市 | 西 |
島根スサノオマジック | 島根県 | 松江市 | 西 |
広島ドラゴンフライズ | 広島県 | 広島市 | 西 |
佐賀バルーナーズ | 佐賀県 | 佐賀市 | 西 |
長崎ヴェルカ | 長崎県 | 長崎市 | 西 |
琉球ゴールデンキングス | 沖縄県 | 沖縄市 | 西 |
B2リーグ
編集クラブ名 | 所在都道府県 | ホームタウン | 地区 |
---|---|---|---|
青森ワッツ | 青森県 | 青森市 | 東 |
岩手ビッグブルズ | 岩手県 | 盛岡市 | 東 |
パスラボ山形ワイヴァンズ | 山形県 | 天童市 | 東 |
福島ファイヤーボンズ | 福島県 | 郡山市 | 東 |
アルティーリ千葉 | 千葉県 | 千葉市 | 東 |
越谷アルファーズ | 埼玉県 | 越谷市 | 東 |
新潟アルビレックスバスケットボール | 新潟県 | 長岡市 | 東 |
ベルテックス静岡 | 静岡県 | 静岡市 | 西 |
滋賀レイクスターズ | 滋賀県 | 大津市 | 西 |
西宮ストークス | 兵庫県 | 神戸市 | 西 |
バンビシャス奈良 | 奈良県 | 奈良市 | 西 |
愛媛オレンジバイキングス | 愛媛県 | 松山市 | 西 |
ライジングゼファーフクオカ | 福岡県 | 福岡市 | 西 |
熊本ヴォルターズ | 熊本県 | 熊本市 | 西 |
B3リーグ
編集クラブ名 | 所在都道府県 | ホームタウン | B.LEAGUE 準加盟 |
---|---|---|---|
さいたまブロンコス | 埼玉県 | さいたま市 | ○ |
東京八王子ビートレインズ | 東京都 | 八王子市 | ○ |
アースフレンズ東京Z | 大田区 | ○ | |
SHINAGAWA CITY BASKETBALL CLUB | 品川区 | × | |
東京ユナイテッドバスケットボールクラブ | 江東区 | × | |
立川ダイス | 立川市 | ○ | |
横浜エクセレンス | 神奈川県 | 横浜市 | ○ |
湘南ユナイテッドBC | 藤沢市・茅ヶ崎市・寒川町 | × | |
金沢武士団 | 石川県 | 金沢市 | × |
福井ブローウィンズ | 福井県 | 福井市 | × |
豊田合成スコーピオンズ | 愛知県 | 清須市 | × |
岐阜スゥープス | 岐阜県 | 岐阜市 | ○ |
ヴィアティン三重バスケットボール | 三重県 | 四日市市 | × |
トライフープ岡山 | 岡山県 | 岡山市・津山市 | ○ |
山口パッツファイブ | 山口県 | 宇部市 | ○ |
徳島ガンバロウズ | 徳島県 | 徳島市 | × |
香川ファイブアローズ | 香川県 | 高松市 | ○ |
鹿児島レブナイズ | 鹿児島県 | 鹿児島市 | ○ |
その他の種目
編集- フットサルのFリーグでは、クラブ数が少ないため、リーグ開始当初は3回総当りを採用しており、それぞれのホームタウンでの1回ずつにプラスし、リーグ主管によるセントラルマッチ(中立地開催)での1回総当りを加えていたが、2013-14年シーズンのみ4回総当たり(便宜上2ステージ制)となり、原則的には「ホーム・アンド・アウェー2回ずつ」になったが、従来通りリーグ主管中立開催試合(同シーズン12試合)も継続した。
- バレーボール・Vリーグでは、「ホームタウン」制度として、そのクラブの練習所のある所在地を本拠地として位置づけているものがあるが、プロ野球やJリーグのような完全なホーム・アンド・アウェーではなく、中立地でのセントラル開催が多い。
- バスケットボール女子のWリーグでは、ホームタウン制度を採用しており本拠地での試合を「ホームタウンゲーム」として行っているが、完全なホーム・アンド・アウェーとはなっていない。
ホームタウンに準ずる地域
編集競技によっては、リーグ機構が定める正式なホームタウン以外に、加盟するクラブ独自の判断で自治体をホームタウンに準ずる扱いとするケースが有る。
Jリーグに於ける例
編集Jリーグでは、一部のクラブで「フレンドリータウン」などの名称で、正式なホームタウンの近隣・関係が深い市区町村をクラブ独自の判断でホームタウンと同等又は準ずる扱いを行っている。
前述通り発足当初のJリーグはホームタウンを原則として1市区町村だけとし、J2発足のタイミングで広域ホームタウンの規制が緩和されたこともあり、この仕組みが全クラブに拡がるまでには至らなかったものの、福岡県では県内市町村の「フレンドリータウン」化が進められている。また水戸ホーリーホックのように、後に正式なホームタウンに昇格させた例もある。
「全県ホームタウン」制を導入するクラブでも、「中心自治体」を明示している場合や都道府県自治体レベルだけでホームタウンを設定している場合、それ以外の市区町村は「フレンドリータウン」に近い扱いとなる。一例としてFC東京と東京ヴェルディ1969は、東京都庁がホームタウン自治体窓口となっているため、理論上はFC町田ゼルビアのホームタウンである町田市や小笠原村もホームタウンに含まれるが、都内の全市区町村はホームタウンとして明示されていないため、ホームスタジアムや練習場がある多摩東部の各市は関係クラブ独自の判断でホームタウンの「中心自治体」と同等の扱いにしている[6][7]。
都道府県 | クラブ | 名称 | 対象市区町村 | 備考 |
---|---|---|---|---|
千葉県 | 柏レイソル | ホームタウンエリア[8] | 野田市、流山市、松戸市、我孫子市、 鎌ケ谷市、印西市、白井市 |
|
東京都 | FC東京 | (ホームタウン)株主6市[6] | ||
東京ヴェルディ1969[7] | 出資協定エリア | 稲城市(拠点所在)、多摩市、日野市、立川市 | 左記以外の市区町村でも活動 | |
連携協定エリア | 板橋区、北区、足立区 | |||
静岡県 | アスルクラロ沼津 | パートナーシップ協定締結自治体[9] | ||
福岡県 | アビスパ福岡 | フレンドリータウン[10] | 飯塚市と遠賀町は重複。 左記全自治体と協定締結 | |
ギラヴァンツ北九州 | フレンドリータウン[11] |
B.LEAGUEに於ける例
編集都道府県 | クラブ | 名称 | 対象市区町村 | 備考 |
---|---|---|---|---|
茨城県 | 茨城ロボッツ[12] | マザータウン | 日立市、那珂市、つくば市、神栖市 | |
フレンドリータウン | 常陸太田市、常陸大宮市、ひたちなか市、笠間市、行方市、 石岡市、小美玉市、土浦市、牛久市、つくばみらい市、 龍ケ崎市、大子町、城里町、東海村、大洗町 | |||
埼玉県 | 越谷アルファーズ | フレンドリータウン | 松伏町[13] | |
千葉県 | 千葉ジェッツふなばし | フレンドリータウン | 千葉市[14] | |
静岡県 | ベルテックス静岡 | フレンドリータウン | 沼津市[15] | |
福岡県 | ライジングゼファーフクオカ | フレンドリータウン | 北九州市も試合開催時に協力[21] |
脚注
編集注釈
編集- ^ ただし2020年に関しては新型コロナウイルス感染拡大により、この規定が適用されない。
- ^ FC岐阜の場合は、岐阜県のマスコットキャラクターのミナモもクラブマスコットを勤めているため、この措置が採られている。この場合は、「ホームタウンデー」と呼ばれている。
- ^ 1992~95年までは横浜市をホームタウンとしながら、当時の九州地区にはJクラブがなかった事やスポンサーが全日空であった事などを踏まえて、九州3県(長崎県、熊本県、鹿児島県)を特別活動地域に指定し、天皇杯以外の横浜F主催ゲームも含めてホームタウンと同じ権限を持って活動していた。ただ、1996年に福岡がJリーグに昇格した為に特別活動地域のカテゴリーは消滅し、チームそのものも1998年に横浜マリノス(当時)へと吸収合併された。
- ^ リーグの発表による。同クラブは愛知県東三河地域・岡崎市と静岡県浜松市近郊・湖西市をホームタウンとしており、前身となる浜松・東三河フェニックス時代はこの地域をホームタウンとして活動していた。
出典
編集- ^ Jリーグ 来季ホームタウン制撤廃へ 創設時の理念「地域密着」から新様式に 今月中にも正式決定(スポーツニッポン)
- ^ Jリーグが一部報道“ホームタウン制度撤廃”を否定「撤廃・変更の事実は一切ない」(ゲキサカ)
- ^ a b Bリーグ規約(PDF) B.LEAGUE公式サイト
- ^ クラブ B.LEAGUE公式サイト
- ^ a b “(2022年8月10日発表)ホームタウン6市によるFC東京応援企画「FC東京ユニフォームデー」”. 調布市 (2022年8月10日). 2024年5月24日閲覧。
- ^ a b “HOMETOWN 『東京ヴェルディは、東京都全体をホームタウンとしています』”. 東京ヴェルディ株式会社. 2024年5月24日閲覧。
- ^ “ホームタウン”. 株式会社日立柏レイソル. 2024年5月24日閲覧。
- ^ “ホームタウン”. アスルクラロスルガ株式会社. 2024年5月24日閲覧。
- ^ “オフィシャルスポンサー一覧→フレンドリータウン”. アビスパ福岡株式会社. 2024年5月24日閲覧。
- ^ “ホームタウン / フレンドリータウン”. 株式会社ギラヴァンツ北九州. 2024年5月24日閲覧。
- ^ 『行方市・龍ケ崎市 フレンドリータウン協定締結のお知らせ』(プレスリリース)株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメント、2024年5月2日 。2024年5月24日閲覧。
- ^ 『松伏町とフレンドリータウン協定締結のお知らせ』(プレスリリース)株式会社アルファーズ、2021年2月1日 。2024年5月24日閲覧。
- ^ 『「千葉ジェッツ」が市長を表敬訪問します』(PDF)(プレスリリース)千葉市市民局生活文化スポーツ部スポーツ振興課、2023年10月2日 。2024年5月24日閲覧。
- ^ 『ベルテックス静岡×沼津市 フレンドリータウン協定締結式を行いました!』(プレスリリース)株式会社VELTEXスポーツエンタープライズ、2022年6月24日 。2024年5月24日閲覧。
- ^ 『【新宮町】フレンドリータウン協定締結のお知らせ』(プレスリリース)ライジングゼファーフクオカ株式会社、2024年1月24日 。2024年5月24日閲覧。
- ^ 『【篠栗町】フレンドリータウン協定締結のお知らせ』(プレスリリース)ライジングゼファーフクオカ株式会社、2024年4月10日 。2024年5月24日閲覧。
- ^ 『【志免町】フレンドリータウン協定締結のお知らせ』(プレスリリース)ライジングゼファーフクオカ株式会社、2024年3月26日 。2024年5月24日閲覧。
- ^ 『【粕屋町】フレンドリータウン協定締結のお知らせ』(プレスリリース)ライジングゼファーフクオカ株式会社、2024年2月21日 。2024年5月24日閲覧。
- ^ 『飯塚市とのフレンドリータウン協定締結のお知らせ』(プレスリリース)現・ライジングゼファーフクオカ株式会社、2018年8月29日 。2024年5月24日閲覧。
- ^ “北九州市で活躍するトップスポーツチームを応援しよう!”. 北九州市. 2024年5月24日閲覧。