高等学校 生物/生態系
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※ この解説は、 旧生物ⅠB、旧生物Ⅱ、中学校理科のWikibooks を敬体に直したものです。そのため、現在の高校や大学受験では、不適切な可能性があります。
生物の内容が全範囲 完成次第、適切な内容に書き換えようと思います。(作成者より)
本章では、生物基礎・生物両方とも共通する内容となります。
食物連鎖
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動物性プランクトンは、エサとして、植物性プランクトンを食べています。 具体的に言うと、ミジンコやゾウリムシなどの動物性プランクトンは、ケイソウやアオミドロなどの植物性プランクトンを食べます。
そして、動物性プランクトンも、メダカなどの小さな魚に食べられます。
メダカなどの小さな魚も、さらに大きな魚に、エサとして食べられます。
- 植物プランクトン(ケイソウなど) → 動物プランクトン(ミジンコなど) → 小型の魚(メダカなど) → 中型の魚 →大型の魚など
というふうに、より大型の生き物などに食べられていきます。
生きてる間は食べられずに寿命を迎えて死んだ生物も、微生物などにエサとして食べられていきます。
このように、生き物同士が、「食べる・食べられる」 の関係を通じて関わり合っていることを 食物連鎖(しょくもつれんさ、food chain) といいます。食べる側を捕食者(ほしょくしゃ、predator)といい、食べられる側を被食者(ひしょくしゃ)といいます。ミジンコとメダカの関係で言えば、メダカが捕食者、ミジンコが被食者です。捕食者も、さらに上位の捕食者によって食べられて、捕食者から被食者へとなる場合もよくあります。このように、捕食者-被食者の関係は、立場によって変わる相対的なものです。
実際には、捕食者が1種類の生物だけを食べることはまれで、2種類以上のさまざまな種類の生物を食べます。食べられる側も、2種類以上の捕食者によって食べられます。このため、食物連鎖は、けっして1本道のつながりではなく、網状のつながりになっており、この食物連鎖の網状のつながりを食物網(しょくもつもう、food web)といいます。
食物連鎖は、なにも水中の生き物だけでなく、陸上の生き物にも当てはまる考え方です。
植物など、光合成を行って有機物を合成する生物のことを 生産者(せいさんしゃ、producer) と言います。動物のように、別の生物を食べる生き物を 消費者(しょうひしゃ、consumer) といいます。消費者は、生産者の合成した有機物を、直接もしくは間接に摂取していると見なす。 動物は、他の動物もしくは植物を食べているので、動物は全て消費者です。肉食動物(carnivore)も草食動物(herbivore)も、どちらとも消費者です。 消費者のうち、草食動物のように、生産者を直接に食べる生物を一次消費者(primary consumer)といいます。その一次消費者を食べる肉食動物を二次消費者(secondary consumer)といいます。二次消費者を食べる動物を三次消費者といいます。さらに三次消費者を食べる生物を四次消費者といいます。
なお、二次消費者を食べる三次消費者が一次消費者を食べるような場合もあります。このように、実際には、必ずしも直接に1段階下位の生物を食べるとは限りません。
いっぽう、菌類(きんるい)や細菌類(さいきんるい)のように、(落ち葉や 動物の死がい や 動物の糞尿(ふんにょう)などの)動植物の遺体や排泄物などの有機物を分解して無機物にする生物を分解者(ぶんかいしゃ、decomposer)と言います。
菌類とは、いわゆるカビやキノコのことです。シイタケやマツタケは菌類です。アオカビやクロカビは菌類です。
細菌類とは、例えば、大腸菌(だいちょうきん)、乳酸菌(にゅうさんきん)、納豆菌(なっとうきん)などが菌類です。
分解によって、有機物は、二酸化炭素や水や窒素化合物などへと分解されます。さまざまな分解者によって有機物は分解されていき、最終的には無機物へと変わる。
これら、菌類や細菌類は、普通は、葉緑体を持っていないので、光合成によって栄養を作ることが出来ません。 菌類は葉緑体を持っていないため、菌類は植物には、含めません。細菌類も、同様に、植物に含めません。
菌類の栄養の取り方は、カビ・キノコともに、菌糸をのばして、落ち葉や動物の死骸などから、養分を吸収しています。
- 菌類
-
アオカビ
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シイタケ
- 細菌類
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乳酸菌
-
大腸菌
生態ピラミッド
[編集]- 生物量(せいぶつりょう)
- ある生物の集まりを、質量で表したものを生物量(せいぶつりょう、英:biomass バイオマス) といいます。
- 生物量ピラミッド
一般的に、長期的に見れば、一次消費者の個体数は、生産者よりも少ありません。なぜなら、一次消費者が一時的に生産者よりも増えても、食べ物の植物が足りずに一次消費者は死んでしまうからです。同様に、二次消費者の個体数は、一次消費者よりも少ありません。
なので、本ページの図のように、生産者の個体数と一次消費者・二次消費者・三次消費者・ … の個体数を積み上げていくと、三角形のピラミッド型の図になります。このような個体数を生産者・一次消費者・二次消費者・ … と積み上げた図を個体数ピラミッドといいます。
同様に、生物量について、積み上げた図を生物量ピラミッド といいます。
個体数ピラミッドや生物量ピラミッドをまとめて、生態ピラミッドといいます。
これらのピラミッドのように、生態系を構成する生物を、生産者を底辺として、一次消費者・二次消費者・ … と食物連鎖の段階によって段階的に分けることができ、これを栄養段階(えいよう だんかい)といいます。
栄養は、おおむね、
- 生産者 → 第一次消費者 → 第二次消費者 → 第三次消費者 → ・・・
というふうに、移動していきます。そして、消費者も一生の最期には死ぬから、死んで分解されるので、栄養は分解者へと移動します。
栄養素として食べられる物質も、このように循環していきます。
- ※ ここまで、おおむね中学の範囲です。
- ※ 高校の範囲
物質は、生物どうしでは上記の食物連鎖のように循環をしますが、しかしエネルギーは循環せず、最終的には地球外(宇宙空間)に熱エネルギーなどとして出て行きます(※ 東京書籍、数研出版、実教出版、啓林館の見解)。 (※ 第一学習社の教科書を紛失したので、第一は分かりません。)
生物の利用するエネルギーのおおもとは、ほとんどが太陽からの光エネルギーですので、光エネルギーが光合成などによって有機物に変えられるなどして化学エネルギーとして変換され、消費などによって熱エネルギーとして排出さて、その熱エネルギーが宇宙に放出されている、というような出来事になっています。
つまり、エネルギーは生態系の中を循環はしていません。
このようなことから、検定教科書では「エネルギーは生態系の外に放出される」とか「エネルギーは生態系外に出ていく」などのように説明しています。
- ※ 検定教科書ではいちいち説明してませんが、いわゆる上空の「宇宙空間」は、生態系外として分類されます。
物質生産
[編集]生産者の物質生産
[編集]ある生態系の一定面積内において、一定期間において生産者が光合成した有機物の総量を総生産量(そう せいさんりょう)といいます。生産者である植物は、自身の生産した有機物の一部を、自身の呼吸で消費しています。呼吸によって使われた有機物の量を呼吸量といいます。 総生産量から呼吸量を差し引いた量を、純生産量(じゅん せいさんりょう)といいます。
- 純生産量 = 総生産量 - 呼吸量
純生産量の一部は、落ち葉となって枯れ落ちたり( 枯死量、(「こしりょう」) )、あるいは一時消費者によって捕食されたりする( 被食量、(「ひしょくりょう」) )ので、生産者の成長に使える量は、純生産量よりも低くなります。
純生産量から、枯死量と被食量を差し引いた量を、成長量(せいちょうりょう)といいます。
- 成長量 = 純生産量 ー (枯死量+被食量)
植物が成長に使える有機物の総量が、成長量です。
消費者の物質生産
[編集]消費者である動物は、食べた有機物の一部を、消化・吸収せずに排泄します。食べた有機物の総量を摂食量(せっしょくりょう)といいます。消化吸収せずに排出したぶんの量を、不消化排出量(ふしょうか はいしゅつりょう)といいます。 消費者の同化量は、摂食量から不消化排出量を差し引いた量ですので、次の式になります。
- 同化量 = 摂食量 ー 不消化排出量
さらに、ある動物の群れを、集団全体で見ると、その群れの一部の個体は、食物連鎖で、より上位の個体によって捕食されます。なので、群れの成長に使える有機物の総量から、被食量を差し引かねば、なりません。さらに、動物には寿命があり、かならずいつかは死滅します。死滅するぶんの量が死滅量です。
これらを考慮すると、消費者の成長量は、次の式になります。
- 成長量 = 同化量 ー ( 呼吸量 + 被食量 + 死滅量 )
ある環境において、生産者の被食量は、一次消費者の摂食量と等しい。
同様に、一時消費者の被食量は、二次消費者の摂食量と等しい。
生物濃縮
[編集]食物連鎖で生物間を移動する物質は栄養素だけではなく、生命には望ましくない有害物も、食物連鎖を移動していきます。 例えば、かつて農薬として使用されていたDDTは、自然界では分解されにくく、脂肪に蓄積しやすく、そのため食物連鎖を通じて高次の消費者へも取り込まれ、動物に害をおよばしました。
生物内で分解・排出できない物質は、体内に蓄積しやすいという特徴があります。さらに、その生物を食べる消費者の体には、もっと多く蓄積しやすい。このため、生態ピラミッドで上位の生物ほど、高濃度で、その物質が存在しているという現象が起き、この現象を生物濃縮(せいぶつ のうしゅく、biological concentration)といいます。
毒性のある物質で、生物濃縮を起こす物質によって、高次の消費者を死亡させたり、高次の消費者の生命が脅かされた事例が過去に起きましました。 生物濃縮を起こす、危険物質は、DDTのほか、PCB(ポリ塩化ビフェニル)や有機水銀などです。
現在、アメリカおよび日本などでは、DDTの使用は禁止されています。
生物どうしのつり合い
[編集]何らかの理由で、生産量ピラミッド中での、ある生物の個体数の比率が変わっても、時間が経てば、もとどおりに近づいていきます。
- なぜなら、例えばある草食動物が増えても、植物は増えないので、そのうち食料としての植物が不足していきます。また、その草食動物を食料として食べる別の肉食動物も、そのうち増えてしまいます。
- そうすると、草食動物の食料としての植物不足と、草食動物を食べる肉食動物の増加により、つぎは、草食動物が食べられて減ってしまいます。
そのため、次第に、元通りに近づいていきます。
他の場合も考えてみましょう。
つりあいの状態から、なんらかの理由で、肉食動物が増えた場合も考えよう。仮に、この状態を「(肉食動物=増)」と書くとしましょう。
- 肉食動物が増えると、草食動物は食べられるので、草食動物は減っていきます。(草食動物=減) そして肉食動物は、植物を食べないので、まだ個体数は変わりません。
- 次に、草食動物が減ったぶん、植物が増えます。(植物=増) また、草食動物が減ったぶん、肉食動物が減ってしまいます。(肉食動物=元通り)
- 次に、植物が増えたぶん、草食動物が増えます。(草食動物=元通り)
- 草食動物が元通りになったので、その分、食べられる植物の量が増えるので、植物の量が元通りになります。(植物=元通り)
このように、食物連鎖を通じて、個体数の比率は調節されています。
- 食べられる生物の増減にともない、食べる側の動物の個体数は、少し遅れて増減します。
- もし、食べられる生物が増えると、食べる側の動物の個体数は、少し遅れて増える。
- もし、食べられる生物が減ると、食べる側の動物の個体数は、少し遅れて減る。
(※ 画像を募集中。カナダでの、オオヤマネコ(捕食者)とカンジキウサギ(被食者)の個体数のグラフなどを作成してください。)
- 環境によるピラミッドの変化
環境破壊や森林伐採などで、ある地域で、大規模に森林が破壊されてしまうと、生産量ピラミッドの最下段の生産者が減ってしまうので、上の段の消費者の動物も、その地域では生きられなくなってしまう。
人工的な環境破壊のほかにも、火山の噴火、山くずれ、洪水などの自然災害で、生物の量が大幅に減る場合もあります。
外来生物
[編集]現在の日本に生息している ブラックバスの一種(オオクチバス) や アメリカザリガニ やブルーギル などは、もともとの生息環境は外国ですが、人間の活動によって日本国内に持ち込まれ、日本に定着した生物です。このような外部から、ある生態系に持ち込まれた生物を、外来生物(がいらい せいぶつ)といいます。
ある生態系に、遠く離れた別の場所から持ち込まれた外来生物が入ってきてしまうと、(天敵がいない等の理由で外来生物が大繁殖しやすく、その結果、)持ち込まれた先の場所の生態系の安定が崩れます。なぜなら、その外来生物の天敵となる生物が、まだ、持ち込まれた先の場所には、いないからです。
このため、外来生物を持ち込まれた場所では、外来生物が増えてしまい、従来の生物で捕食対象などになった生物は減少していく場合が多くあります。 その結果、外来生物によって(捕食対象などになった)従来の生物が単に減るだけでなく、絶滅ちかくにまで従来の生物が大幅に激減する場合もあります。(※ 検定教科書ではここまで書いていませんが、共通テストでここまでの知識を要求します。)
外来生物の例として、オオクチバス(ブラックバスの一種) や ブルーギル という肉食の魚の例があり、これら肉食の外来生物の魚が在来の魚の稚魚を食べてしまうので、在来の魚の個体数が減少してしまうという問題も起きています。 一説では、湖沼によっては、オオクチバスやブル-ギルなどの繁殖した湖沼にて従来の魚が激減しているという(※ 数研出版の教科書がその見解)。
社会制度としては、上述のように外来生物が従来の生物に多大な悪影響を及ぼしかねないので、日本では法律で外来生物の持込みが規制されています。生態系を乱す恐れの特に高い生物種を「特定外来生物」に指定して、飼育や栽培・輸入などを規制したり、他にも日本政府は生物多様性条約の批准を受けて日本国内で『生物多様性国家戦略』などの構想を打ち立てたりしています。
植物でも、セイタカアワダチソウ や セイヨウタンポポ などの外来生物があります。
沖縄のマングース(ジャワマングース)も外来生物で、ハブの捕獲の目的で沖縄へと持ち込まれた。しかし、ハブ以外の生物も捕食してしまい、オキナワの固有種のアマミノクロウサギやヤンバルクイナなどを、マングースが捕食してしまうという問題が起こりました。また、ハブは夜行性で、そのためマングースとは行動時間が一致せず、ハブ捕獲の効果も低いことが分かりました。
現在、環境省は、対策として、沖縄でマングースを捕獲しています。
日本の外来生物には、これらのほか、アライグマ、カミツキガメ、ウシガエル、セイヨウオオマルハナバチなどが外来生物です。
中規模攪乱説
[編集]台風や山火事、土砂崩れや噴火など、環境に変化を与える現象を 攪乱(かくらん、かく乱) といいます。 たとえば、台風で、熱帯のサンゴ礁が傷付くのも攪乱です。
種の多様性について、いちばん多様性を多くする攪乱の規模は、攪乱が中程度の場合で、この理論を 中規模攪乱説(ちゅうきぼ かくらんせつ) といいます。
たとえば熱帯のサンゴ礁では、中規模の台風が起きた方が、サンゴの種の多様性が高まることが知られています。オーストラリアのヘロン島でのサンゴ礁の調査で、このような中規模攪乱説どおりの事例が知られています。
たとえば右の図のような地域の場合、30%くらいの被度で、もっとも種数が多くなります。
攪乱が強すぎると、攪乱に強い種しか生き残れありません。 攪乱が弱すぎると、通常時の競争に強い種しか、生き残れありません。
人間が森林を伐採したりするなどの、人為的なことも攪乱です。
森林の場合、攪乱がないと、陰樹ばかりになります。攪乱が起きて、噴火などで、いったん樹木が焼き払われると、そのあとの地には、まず陽樹が生えてくるようになります。
里山(さとやま)など、人里ちかくの森林では、かつては人々が林業などで木材として森林資源を利用してたので、かく乱が適度に行われていました。ですが、最近では林業の後継者不足や経営難などで放置される森林も増えており、そのため木材として伐採されなくなり、攪乱されなくなったので、種の多様性が低下していると主張する者もいます。種の多様性確保のため、適度に木材などの森林資源を理容すべきだと主張する者もおり、日本国での小中高の公教育での検定教科書なども、そのような立場に立っています。
持続可能な社会のためには、持続可能な生態系が必要です。人間が食べる動植物は、生態系があるからこそ生存できるのです。もし、動植物がいなくなれば、人間にとっても食べ物が無くなり、人間も滅ぶ。生態系の維持のためには、根本的な対策は、人間が、資源の消費や森林伐採された土地の利用などに基づいた現代の文明を見直して、消費を控え、持続可能な文明へと変えていく必要があるのかもしれありません。そのためには我慢をする事が今後の人類には必要で、今後はおそらく現代のような放漫な消費ができなくなり、かつて住宅地や工業用地などとして開発された土地のいくつかを農地や雑木林などにも戻す必要もあるかもしれありません。現時点で存在している里山を維持するだけでは、すでに宅地化などの開発によって消失した里山は、復活しないのです。 また国によっては人口も減らす必要もあり、おそらく今後は人間が不便も感じることもあるでしょう。
学校教科書は、政治的に中立でなければならないので、具体的な環境対策には踏み込めありません。しかし、自然環境は、そのような人間の都合になどには、合わせてくれないのです。たとえば日本ではニホンオオカミや野生トキなど日本の固有種の動物のいくつかが絶滅しましたが、けっして自然環境は、日本人に合わせて、ニホンオオカミなどの生物の絶滅のスピードを緩めてなんて、くれなかったのです。日本の政治家や学校などが、「日本は素晴らしい国」だと言っても、日本での動植物の生態の歴史の観点から見れば、日本国および日本人は、ニホンオオカミや野生トキなどを絶滅させた環境破壊を行ったという、不名誉な実績のある国および国民なのです。人間の学生が「環境問題や環境の生物学について、勉強しよう」などと考えている間にも、人類が生態系に負荷を与える活動を続けていくかぎり、生物種は絶滅に近づいていくのです。
商人や、一部の政治家や有権者にとっては、人間が資源を消費をするほうが商人が売買をしやすく、そのため税収も増えるので、彼らには都合が良い。しかし、そのような人間中心の都合に、生態系は合わせてくれありません。
乱獲や農薬の乱用によって、絶滅したり激減した生物種も、世界の自然界には、事例が多くなっています。
自然界だけが日本人の都合になんて合わせてくれないどころか、人間社会の内部ですら、日本以外の外国は、日本国の都合になんて合わせてくれません。例えば、魚などの海洋資源の漁獲の規制のありかたについての問題は、魚は各国の領海や沿岸を移動するため、漁獲資源は世界的な感心後とで、諸国が自国の立場を主張するので、たとえ他国の立場も尊重することはあっても、けっして他国の立場には従わありません。だから世界各国の主権国家は、日本国の命令には従わないので、仮に日本が自国の漁獲を伝統文化などと主張しても、外国からすれば、「日本の文化」などと主張するだけでは根拠不十分として、それだけでは日本国の主張には従ってくれません。また、ヨーロッパの国では、環境問題が国を越えて影響を与えることもあり、環境問題は国際問題として取り組むべきだと、考えられています。
さらに、実は農地などの里山ですら人間が利用しやすいように環境を改変した人工的な環境で、決して本来の自然環境ではなく、農地などは人間にとって不要な森林を「開墾」(かいこん)などといって森林伐採するなどして環境破壊されたあとの状況なのです。(農業が森林伐採を伴うことは、検定教科書でも説明されています。[1])よく書籍などでは、途上国での焼畑(やきはた)農法が環境破壊として問題視されますが、何も農業による環境破壊は、焼畑に限った話ではないのです。水田も、森林伐採をした結果の場所なのです。ただし、アスファルトやコンクリートなどで舗装したりするのと比べれば、農地などの里山のほうが生態系への負荷が少なく、里山のほうがアスファルト舗装よりかは種の多様性が大きくてマシである、ということです。
また、ひとまとめに「農地」と言っても、現代の農法は、江戸時代などの古くからの農法とは異なり、現代では農業に化学肥料や農薬などを用いる場合が多く、暖房や照明なども用いる場合があり、現代の農法の多くは石油資源などの消費に頼った農法です。現代の食生活は、現代の農法を前提としており、その農法は、資源の消費を前提としています。いつの日か、人類は、食生活を見直す必要があるのかもしれません。
レッドデータブック
[編集]絶滅のおそれのある生物種を絶滅不安種(ぜつめつきぐしゅ、an endangered species [2])といいます。絶滅不安種のリストをレッドリストといい、それらをまとめた本をレッドデータブックといいます。 世界各国の政府や環境団体などは、絶滅を防ぐための取り組みとして、レッドデータブックをまとめています。日本では、環境省によりレッドデータブックが作成されています。
動植物への乱獲などによる絶滅を防ぐため、絶滅不安種の取引を規制する条約としてワシントン条約などがあります。
生物多様性
[編集]干潟
[編集]干潟は、渡り鳥の生息地になっていたり、貝などの生息地になっています。現在では、干潟は自然保護の観点から、環境保護をされています。だが昔は、干潟はたんなるドロの多い場所と考えられており、そのため、干拓や埋立て工事などによって、多くの干潟が消失しました。
環境問題
[編集]環境ホルモン
[編集]- ※ 理科の検定教科書では『環境ホルモン』はあまり紹介されていません。
- 実教出版『生物基礎』で環境ホルモンが紹介されています。
- チャート式では紹介されています。
- 科目『政治経済』の検定教科書などで紹介されている場合があります。
- wikibooks『高等学校政治経済/経済/公害と環境保全』の環境ホルモンの説明を参照してください。
オゾンホール
[編集]かつて冷蔵庫などの冷媒として利用されていたフロンガスという物質が原因で、オゾン層が破壊され減少していることが1980年代に分かりました。 オゾン層は紫外線を吸収する性質があるので、オゾン層が破壊されると、地上にふりそそぐ紫外線が増え、生物が被害を受ける。
温室効果ガス
[編集]大気中で二酸化炭素の濃度が上がると、地球の気温が上昇すると考えられています。大気中の二酸化炭素には、赤外線を吸収する性質があるので、その結果、熱を吸収する働きがあります。なので、二酸化炭素が増えると、地上の熱が宇宙に逃れず地球の周囲に閉じ込められるので、地上の気温が上がる、と考えられています。これが、温暖化の原因と考えられています。また、大気中の二酸化炭素が、熱を閉じ込める作用のことを 温室効果(おんしつ こうか) と言います。二酸化炭素など、熱を閉じ込める温室効果のある気体のことを温室効果ガスと言います。
地球温暖化(ちきゅう おんだんか) の主な原因は、石油などの化石燃料(かせき ねんりょう)の大量使用によって、排気にふくまれる二酸化炭素(にさんかたんそ)により、空気中の二酸化炭素が増加したためと考えられています。他にも、森林伐採などによって光合成によって固定される炭素の総量が低下した結果も含まれる、という考えもあります。
もし、温暖化が進行して、南極の大陸上の氷や氷河の氷が溶ければ、海面上昇します。低地が水没します。海抜の低いツバル、モルディブ、キリバスの国は、海水面が上がれば、国土の多くが水没してしまう恐れがあります。 なお、北極の氷が溶けても、もともと北極海に浮かんでいる氷が水に変わるだけなので、海面は上昇しありません。
また、温暖化によって、熱帯で生息していた蚊の分布域が広がることが心配されています。マラリアを媒介する蚊のハマダラカの生息域が広がる恐れが有る。
酸性雨
[編集]酸性雨の原因は、化石燃料の排気にふくまれる窒素酸化物などの物質が、雨の酸性化の原因と考えられています。酸性雨により、森林が枯れたり、湖や川の魚が死んだりする場合もあります。
森林伐採
[編集]耕作や工業用地化や住宅地化を目的にした森林伐採などで、世界的に森林面積が減少しています。森林の減少により光合成量が減るので、温暖化の原因にもなっていると考えられています。また、動物の生息域が減るので、生態系の保護の観点からも、森林破壊が問題です。
なお、温暖化の化石燃料以外の他の原因として、森林伐採などによる森林の減少によって、植物の光合成による二酸化炭素の吸収量が減ったのも理由の一つでは、という説もあります。
また、過度の森林伐採などにより、土壌の保水性が失われたために、その土地で植物が育たなくなる砂漠化(さばくか)も起きています。
※ 水系の環境
[編集]補償深度
[編集]- ※ 啓林、数研の専門『生物』に記載あり。
植物プランクトンによる光合成量と消費量のつりあう水深のことを補償深度(ほしょう しんど)といいます。
補償深度は、外洋で水深100メートルまでに存在しています。
富栄養化
[編集]- ※ 中学でも社会科で「富栄養化」を習っていますが、中学理科では実は習ってありません。
- ※ 啓林、数研の専門『生物』に記載あり。
湖の水質で窒素やリンなどの濃度の高くなると、硝酸塩やリンは植物プランクトンにとっての栄養でもあるので、植物プランクトンにとっての栄養に富んだ湖になるので、そのような窒素やリンの濃度の高い湖の事を富栄養湖(ふえいよう こ)といいます。生活排水や農業廃水などに含まれるリンや窒素(ちっそ)化合物などの成分の流入によって、富栄養湖になっている場合もあります。
また、湖や海などが、そのように窒素やリンなどの濃度の高い水質になる事を富栄養化(ふ えいようか, entrophication)といいます。
一方、窒素やリンなどの濃度の低い湖のことは「貧栄養湖」(ひん えいようこ)という(※ 数研の教科書で紹介)。
検定教科書によっては「窒素」ではなく「硝酸塩」(しょうさんえん)と書いてある場合もあるが(たとえば啓林館)、これは硝酸は窒素化合物だからです。(※ 高校の『化学基礎』や『専門化学』などで硝酸を習う。)
ここでいう「塩」は、けっして塩化ナトリウムのことではありません。そうではなく、「陽イオンと陰イオンとの化合物」というような意味での「塩」です。
「硝酸塩」と書く場合は、「リン」のほうも「リン酸塩」と書いたほうがバランスが取れるでしょう。(実際、啓林館の教科書はそうです。)
つまり、上記の富栄養湖の記述を「硝酸塩」および「リン酸塩」を使って言い換えると、下記のような言い回しになります。
硝酸塩やリン酸塩の濃度の高い湖の事を富栄養湖(ふえいよう こ)といいます。
のような記述になろでしょう。
さらに、これら硝酸塩やリン酸塩をまとめて、「栄養塩」もしくは「栄養塩類」という事もあります。「栄養塩」という語句を使って上記文を言い換えれば、
硝酸塩やリン酸塩などの栄養塩の濃度の高い湖の事を富栄養湖(ふえいよう こ)といいます。
のような記述にでも、なるでしょう。
なお、「栄養塩」という用語は、けっしてプランクトン限定ではなく、一般の樹木や草などの植物の生育に必要な硝酸塩やリン酸塩などのことも「栄養塩」という(※ 数研の検定教科書『生物基礎』でも、植物の遷移の単元でそういう用語を使っている)。
さて、「栄養」と聞くと、よさそうに聞こえるが、これはプランクトンにとっての栄養という意味ですので、水中の水草や魚などにとっては、プランクトンの増大が害になっている場合もあります。
なぜなら、プランクトンにより日照がさえぎられるので(植物プランクトンは光の届く水面近くにいるので)、湖の底にある水草は光合成をできなくなります。
- ※ 一説には、大量のプランクトンのせいで水中の酸素量の低下などを引きおこされ、酸欠状態になるとも言われている(数研の見解)。
- なお、プランクトンが死亡した際、分解が起こるために酸素が大量に消費されるとも言われている(数研、啓林の見解)。
- ※ 「植物プランクトンが光合成するから、酸欠にならないのでは?」という疑問も持たれる読者もいるかもしれませんが、現象的な事実として、魚介類の死が起こされるので、水中が酸欠になっていると考えるのが妥当でしょう。検定教科書では、増えすぎたプランクトンが(何らかの理由で)大量に死に、その死の前後に酸素が消費されると記述されている(啓林、数研の『生物基礎』の教科書に記載あり)。
- ※ その他、プランクトン自体がエラに詰まる害も、啓林が紹介しています。
自然界の河川や海水にも、栄養が溶けており、それらは水中の生物の生存にも必要な場合もあるし、プランクトンが少なすぎても、それを食べる魚介類が増えない(※ 数研の見解 )。また、微生物がそれら水中の窒素やリンを消費するなどして、ある程度の範囲内なら窒素やリンなどは自然に分解消費されていく(自然浄化)
しかし栄養が過剰になりすぎると、プランクトンの大量発生などにより水系の生態系のバランスが崩れ、水草の現象や魚介類の大量死などの原因にもなります。過去には、過剰に富栄養化した湖や沿岸などで、魚介類の大量死が発見される場合もありました。(※ 数研の『生物基礎』に記述あり。)
赤潮(あかしお、red tide)という海水面の赤くなる現象の原因も、水質の富栄養化です。(※ 数研の『生物基礎』に記述あり。)
なお、淡水では、富栄養化により(赤潮ではなく)水面の青緑色になる「水の華」(みずのはな)が発生する(「アオコ」ともいう)。
なお、プランクトンとは、水中を浮遊する微生物の総称で、そのうち光合成をするものが植物プランクトンとして分類されています。水中の、光合成しない浮遊微生物は動物プランクトンに分類されます。
- ※ 東京湾などの内湾や瀬戸内海など、海水の内海・内湾で、赤潮が発生することがあり、社会問題にもなった(数研『生物基礎』、169ページ)。
- アオコ、「水の華」について
(※ 範囲外、資料集などに記載あり) アオコの植物プランクトンは、シアノバクテリア類です。(たぶん暗記は不要。市販の受験問題集でも、ここまで問われていない(※ 旺文社の入試標準問題精講で確認)。)
なお、「シアノバクテリア」という品種名ではなく、ミクロキスティスなどの品種名で、そのミクロキスティスがシアノバクテリア類に含まれるという事(※ 数研の資料集『生物図録』229ページにそう書いてある)。
- 赤潮
(赤潮のプランクトンの名称については、資料集などに記載がありません。)
赤潮で、色が赤く見える原因は、その赤潮を起こすプランクトンの色がわずかに赤いからで、そのプランクトンが大量発生しているから赤く見えるという仕組みです。[3]。
※ つまり、決して、塩化ナトリウムの化学変化などで赤いわけではないようであるという事を、wikibooksでは言いたいです。
- 環境省のサイトによると、赤潮のプランクトンの種類は何種類もあるので、暗記は不要でしょう。
- アオコの発生場所
※ 入試には出ませんが、河川では水が流れてしまうので、プランクトンも流れてしまうためか、アオコは発生しないのが通常です(※ 教科書では、いちいち説明されていませんが、丸暗記をしないで済ませるために、こんくらい分析しましょう)。
- 赤潮の発生場所
また、赤潮の発生しやすい場所は、沿岸部や内海です。検定教科書でも、「内海」だと明記しているものもある(数研出版など)。つまり、外洋では、赤潮は発生しづらい(※ 教科書では、いちいち説明されていない)。
おそらくですが、沿岸から遠いと、栄養塩が陸地から流れてこなかったり、もしくは栄養塩が滞留しづらいからでしょう。(※ 丸暗記せず、分析して理解するようにしましょう。)
BODおよびCOD
[編集]有機物による水質の汚染の具合を定量的に測定するための指標として、BODおよびCODというのがあります。
- ※ 啓林館『生物基礎』、P211の図表の解説文にBODの説明があります。
- ※ 実教出版『生物基礎』、『実験』の解説文にCODの説明があります。
BODは、生物学的酸素要求量というもので、その水の単位量あたりの有機物を分解するのに、水中の微生物が必要とする酸素量が、どの程度かというものです。
一方、CODは、化学的酸素要求量というもので、その水の有機物を酸化剤で酸化分解するのに必要な、化学計算に換算した際の酸素量のことをいいます。
BODおよびCODは、数値が大きいほど、有機物による汚染がひどい事を表します。
- ^ 本川達雄ほか、『生物基礎』、啓林館、令和2年用、平成28年検定、令和元年発行、
- ^ 荻野治雄『データベース4500 完成英単語・熟語【5th Edition】』、桐原書店、2020年1月10日 第5版 第6刷発行、P.288
- ^ 赤潮の正体 プランクトン大発生 | ミクロワールド | NHK for School 2020年8月20日に閲覧して確認