メントールのソースを表示

{{Otheruseslist|環式モノ[[テルペノイド]]|『[[オデュッセイア]]』の登場人物|メントール (ギリシア神話)|カメラメーカー|メントール・カメラファブリーク・ゴルツ&ブロイトマン}}
{{redirect|メンソール|かつて「メンソール」の芸名で活動していたお笑い芸人|メンソールライト}} 
{{ Infobox 化合物
| name=''l''-メントール
| 画像=[[Image:Menthol structure.png|100px|''l''-メントールの構造式]] [[Image:(-)-menthol-3D-qutemol-ballandstick.png|130px|分子模型]]
| IUPAC名= ''p''-メンタン-3-オール（許容慣用名より誘導）、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール（系統名）| 別名=(1''R'',2''S'',5''R'') -メントール
| 分子式= C<sub>10</sub>H<sub>20</sub>O| 分子量=156.27
| 組成式= | 式量=
| 形状= 無色結晶| CAS登録番号=[2216-51-5]| SMILES=
| 密度= 0.890| 相=固体
| 水への溶解度= <!--g/100 mL ( ℃)-->
| 溶媒2= | 溶解度2= <!--g/100 mL ( ℃)-->
| 溶媒3= | 溶解度3= <!--g/100 mL ( ℃)-->
| 融点= 42&ndash;45| 融点注=
| 沸点= 212| 沸点注=
| pKa= | pKb=
| 旋光度= &minus;50 (10% エタノール、18 ℃)| 粘度= | 屈折率= 
| 出典=<!--en:menthol: density, mp,bp,[alpha].-->
}}
'''メントール''' ({{lang-en-short|menthol}}、{{lang-zh-short|薄荷醇}}) は環式モノ[[テルペノイド|テルペン]]、[[アルコール]]の一種の[[有機化合物]]。[[IUPAC命名法]]の系統名は '''2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール''' (2-isopropyl-5-methylcyclohexanol) <!--5-methyl-2-(1-methylethyl)cyclohexanol はCAS名-->、母骨格が''p''-[[メンタン]]というIUPAC許容慣用名を持つため、そこから '''''p''-メンタン-3-オール''' (menthan-3-ol) という名称も誘導される。和名では'''薄荷脳'''という。メンソールなどとも呼ばれる。

ハッカ臭を持つ、揮発性の無色結晶である。メントールにはいくつかの[[ジアステレオマー]]、[[鏡像異性体]]がある。そのうちの ''l''-メントールは[[歯磨き粉]]や[[チューインガム]]などの[[菓子]]類、口中清涼剤などに多用されるほか、局所血管拡張作用、皮膚刺激作用等を有するため、医薬品にも用いられる。

[[ハッカ属]]の植物に多く含まれる。

== 歴史 ==
日本では2000年以上前からその存在が知られていたとされる<ref>Simonsen, J. L. (1947). ''The Terpenes'', 2nd ed. Cambridge: Cambridge University Press, vol. I, pp. 230-249.</ref>。一方、西洋では1771年にガンビウス (Gambius) によって初めて単離された<ref>(1771). ''Adversoriorum varii argumentii''. Leiden: Liber unus, p. 99.</ref>。天然には (&minus;)-メントールは[[ハッカ油]]中に少量の[[メントン]]、酢酸メンチルなどと共に存在する。この異性体は ''l''-メントール、(1''R'',2''S'',5''R'') -メントールとも呼ばれる。日本のメントールは1位の[[エピマー]]である (+)-ネオメントールも少量含んでいる。

== 構造 ==
天然メントールは純粋な[[エナンチオマー]]として存在し、ほとんどの場合 (1''R'',2''S'',5''R'') 異性体である（下図左下）。ほかの立体異性体として以下のようなものがある。
:[[Image:Mentholisomere.svg|400px|メントールの8つの異性体]]
(&minus;)-メントールのイソプロピル基はメチル基、ヒドロキシ基の両方に対し ''trans'' に位置し、下図のように表される。
:[[Image:Menthol structures.svg|300px|メントールの構造]]
6員環部分がいす型配座をとった場合に、3つのかさ高い置換基が全てエカトリアル位に位置する最安定配座をとることができるため、(&minus;)-メントールとそのエナンチオマーは上図の8つの異性体の中で最も安定である。

[[ラセミ体]]のメントール（racemic menthol）は2つの晶形を持ち、融点はそれぞれ 28 ℃、38 ℃である。純粋な (&minus;)-メントールは4つの晶形を持つ。最も安定なのは α 形で、これは幅の広い針状晶である。

== 生理作用 ==
メントールを[[皮膚]]に接触させると冷やりとした感覚を得る。これは実際に温度が低下するためではなく、冷感を引き起こす[[TRPM8]](transient receptor potential melastatin 8)と呼ばれる[[受容体活性化チャネル]]をメントールが刺激することによる。この機構は[[カプサイシン]]が同じファミリーの[[イオンチャネル]]である[[TRPV1]]を刺激して発熱感をもたらす作用に類似している<ref>富永真琴 「[http://wwwsoc.nii.ac.jp/psj/jpsj/065045/0650450130.pdf 生体はいかに温度をセンスするか- TRP チャネル温度受容体-]」 『日生誌』 2003年65巻4・5号130頁。</ref>。なお、人工的に合成された{{仮リンク|アイシリン|en|Icilin}}（1-(2-ヒドロキシフェニル)-4-(3-ニトロフェニル)-3,6-ジヒドロピリミジン-2(1H)-オン）は、メントールの約200倍の冷感作用を持つ。

メントールは選択的にκオピオイド受容体を作動させることによって鎮痛作用を持つ<ref>Galeottia, N., Mannellia, L.D.C., Mazzantib, G., Bartolinia, A., Ghelardini, C. (2002). "Menthol: a natural analgesic compound". ''Neuroscience Letters'' 322 (3): 145-148.</ref>。

[[イブプロフェン]]と共に外用薬に配合されたメントールは、局所血管拡張作用によって皮膚のバリア機能を低下させ、イブプロフェンの消炎鎮痛作用を増強する<ref>Braina, K.R., Greena, D.M., Dykesb, P.J., Marksb, R., Bola, T.S.(2006). "The Role of Menthol in Skin Penetration from Topical Formulations of Ibuprofen 5% in vivo". ''Skin Pharmacol Physiol'' 19: 17-21.</ref>。

(&minus;)-メントールの毒性は低く、[[半数致死用量]]は 3,300 mg/kg （ラット、経口）、15,800 mg/kg （ウサギ、皮膚）である。

== 利用 ==
リップクリームや咳止めなど、軽い咽頭炎や口・喉の弱い炎症を短期間軽減する[[大衆薬]]に含まれる。かゆみを止める鎮痒薬にも分類される。また、[[筋肉痛]]や[[捻挫]]などの症状を緩和する配合剤や、鬱血除去薬などにも含まれている。一部銘柄の[[タバコ]]では、香り付けや、喫煙による喉や呼吸器の炎症を軽減する目的で添加剤として使われている。また、一般的なうがい薬の成分でもある。

メントールを含む健康食品や漢方薬としてハッカ油が市販されており、これは東洋医学で消化不良、悪心、咽頭炎、[[下痢]]、[[風邪]]、[[頭痛]]の処置に用いられる。また、害虫などの生物に対しての忌避効果があるとされ、メントール入りの忌避剤が市販されている。

メントールは酢酸メンチルなどのメンチルエステルの合成に用いられる。メンチルエステルは花の、特に[[バラ]]の香りを出すのに使われる。

[[有機化学]]では[[不斉合成]]において[[キラル補助基]]として用いられる。例えば、スルフィニルクロリドとメントールから調製したスルフィン酸エステルは、[[アルキルリチウム|有機リチウム試薬]]や[[グリニャール試薬]]と反応させて光学活性な[[スルホキシド]]を合成するのに使われる。光学活性な[[カルボン酸]]をメンチルエステルとして[[光学分割]]するのにも用いられる。

== 合成法 ==
他の広く用いられる[[天然物]]と同様、需要量は天然からの供給量を大きく超過する。[[高砂香料工業]]による94% eeの''l''-メントールの製造過程には[[野依良治]]らによって開発された不斉反応が含まれる。
:<imagemap>
Image:Menthol synthesis.png|600px|メントールの不斉合成

rect 6 14 131 92 [[ミルセン]]
rect 136 46 201 63 [[ジエチルアミン]]
rect 468 110 628 180 [[シトロネラール]]
rect 387 112 458 135 [[臭化亜鉛]]

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#Notes:
#Details on the new coding for clickable images is here: [[mw:Extension:ImageMap]]
#[https://web.archive.org/web/20080327003154/http://tools.wikimedia.de/~dapete/ImageMapEdit/ImageMapEdit.html?en This image editor] was used. 
</imagemap>
まず[[ミルセン]]からアリルアミンを合成し、[[BINAP]] の[[ロジウム]]錯体触媒で不斉異性化させ、加水分解して[[シトロネラール|(''R'')-シトロネラール]]とする。これを[[臭化亜鉛]]で環化させて[[イソプレゴール]]とし、水素化して(1''R'',2''S'',5''R'')-メントールを得る。

メントールは[[ラセミ体]]としてであれば[[チモール]]や{{仮リンク|プレゴン|en|Pulegone}}を水素化することによっても得られる。

== 反応 ==
普通の2級アルコールの様に、様々な反応が適用できる。[[クロム酸酸化|クロム酸]]などの酸化剤でメントンへと酸化されるが、条件によってはさらに酸化が進行して開環が起こる。2% [[硫酸]]で容易に脱水されて3-メンテンを与える。[[五塩化リン]]と反応させれば塩化メンチルとなる。
:[[Image:Menthol reactions.png|400px|メントールの反応]]

== 参考文献 ==
<div class="references-small"><references /></div>

== 関連項目 ==
* [[ラセミ体メントール]]
* [[TRPチャンネル]]

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:めんとる}}
[[Category:鎮痛薬]]
[[Category:脂肪族アルコール]]
[[Category:第二級アルコール]]
[[Category:モノテルペン]]
[[Category:フレーバー]]
[[Category:食品添加物]]
[[Category:シクロヘキサノール]]