高橋英夫 (評論家)
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高橋 英夫 (たかはし ひでお) | |
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誕生 |
1930年4月30日 東京府北豊島郡滝野川町田端 |
死没 | 2019年2月13日(88歳没) |
職業 |
ドイツ文学者 翻訳家 文芸評論家 |
言語 | 日本語 |
国籍 | 日本 |
最終学歴 | 東京大学文学部独文学科卒業 |
活動期間 | 1955年 - 2019年 |
ジャンル | 文芸評論 |
代表作 |
著作 『批評の精神』(1970年) 『志賀直哉』(1981年) 『偉大なる暗闇 師岩本禎と弟子たち』(1984年) 『疾走するモーツァルト』(1987年) 『時空蒼茫』(2005年) 翻訳 『ホモ・ルーデンス』(1963年) 『影のない女』(1967年) |
主な受賞歴 |
亀井勝一郎賞(1970年) 日本翻訳文化賞(1972年) 芸術選奨文部大臣賞(1975年) 読売文学賞(1982年) 平林たい子文学賞(1984年) 日本芸術院賞(1997年) 旭日中綬章(2005年) 藤村記念歴程賞(2006年) やまなし文学賞(2008年) 伊藤整文学賞(2010年) |
デビュー作 |
著作「折口学の発想序説」(1968年) 翻訳『リルケ詩集』 (1955年) |
ウィキポータル 文学 |
高橋 英夫(たかはし ひでお、1930年(昭和5年)4月30日 - 2019年(平成31年)2月13日)は、日本の文芸評論家、日本芸術院会員。位階は従四位。
来歴・人物
[編集]東京府北豊島郡滝野川町田端(現:東京都北区田端)に生まれる。1947年、第一高等学校に入学(一高最後の卒業生)、1950年東京大学文学部独文科に入学、1953年卒業、大学院に進み、指導教授の手塚富雄の勧めでヘルダーリンの詩を訳し(のち河出書房新社「全集1 詩集」)、手塚との共訳でマルティン・ハイデッガー 『乏しき時代の詩人』(理想社)、東京府立五中同期からの友人粕谷一希の勧めで、ヨハン・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』を訳し、後者は林達夫の指導を受け没時まで師事した。
1964年から立教大学非常勤講師を30年務める。1966年から武蔵野音楽大学非常勤講師を15年務める。1968年『中央公論』に「折口学の発生序説」を発表。以後文芸評論を書き続ける[注釈 1]。1970年、最初の著書『批評の精神』を刊行した。1972年から東大独文科非常勤講師を2年間務め、1973年から明治大学非常勤講師を3年間務めた[注釈 2]。1994年に後藤明生の誘いにより近畿大学文芸学部教授に就く(1998年まで)[1]。1997年、日本芸術院会員となる。
2019年2月13日に老衰により死去。88歳没[2]。叙従四位[3]。
受賞歴
[編集]- 1970年、『批評の精神』で亀井勝一郎賞。
- 1972年、カール・ケレーニイ『神話と古代宗教』の翻訳で日本翻訳文化賞。
- 1975年、『役割としての神』で芸術選奨文部大臣賞。
- 1982年、『志賀直哉 近代と神話』で第33回読売文学賞。
- 1984年、『偉大なる暗闇 師岩元禎と弟子たち』で平林たい子文学賞。
- 1997年、日本芸術院賞。
- 2005年、旭日中綬章[4]。
- 2006年、『時空蒼茫』で藤村記念歴程賞。
- 2008年、『音楽が聞える』でやまなし文学賞。
- 2010年、『母なるもの―近代文学と音楽の場所』で伊藤整文学賞。
著書
[編集]- 『批評の精神』中央公論社〈中公叢書〉 1970、講談社文芸文庫(新編) 2004
- 『詩人の館』青土社 1972
- 『見つつ畏れよ』新潮社 1973
- 『役割としての神』新潮社 1975
- 『元素としての「私」 私小説作家論』講談社 1976
- 『原初への渇望』潮出版社 1977
- 『詩神の誘惑』小沢書店 1978
- 『神話の森の中で』河出書房新社 1978、小沢書店(小沢コレクション)1997
- 『現代作家論』講談社 1979
- 『昭和批評私史』小沢書店 1979
- 『小林秀雄 歩行と思索』小沢書店 1980、新装版(小沢コレクション)1985
- 『志賀直哉 近代と神話』文藝春秋 1981
- 『幻聴の伽藍 迷宮・夢・音楽』小沢書店 1982
- 『忘却の女神 随想集』彌生書房 1982
- 『幻想の変容』講談社 1983
- 『偉大なる暗闇 師岩元禎と弟子たち』新潮社 1984、講談社文芸文庫 1993
- 『悦楽と探求 1980-1983』小沢書店 1984
- 『河上徹太郎』小沢書店 1984
- 『見えない迷宮』青土社 1985
- 『花田清輝 20世紀思想家文庫』岩波書店 1985
- 『起源からの光 神話・中世・現代』小沢書店 1985
- 『異郷に死す 正宗白鳥論』福武書店 1986
- 『疾走するモーツァルト』新潮社 1987、講談社学術文庫 1999、講談社文芸文庫(新編)2006
- 『夢幻系列 漱石・龍之介・百閒』小沢書店 1989
- 『ミクロコスモス 松尾芭蕉に向って』講談社 1989、講談社学術文庫 1992
- 『濃密な夜 私の音楽生活 1970~1991』小沢書店 1991
- 『ブルーノ・タウト』新潮社 1991、講談社学術文庫 1995、ちくま学芸文庫 2005
- 『西行』岩波新書 1993
- 『小林秀雄 声と精神』小沢書店 1993
- 『昭和作家論103』小学館 1993
- 『琥珀の夜から朝の光へ 吉田健一逍遥』新潮社 1994
- 『芭蕉遠近』小沢書店 1994
- 『志賀直哉 見ることの神話学』小沢書店 1995
- 『今日も、本さがし』新潮社 1996
- 『花から花へ-引用の神話 引用の現在』新潮社 1997
- 『変容する文学のかたち』翰林書房 1997
- 『持続する文学のいのち』翰林書房 1997
- 『尾崎一雄回想』日本古書通信社「こつう豆本」 1998 限定本
- 『わが林達夫』小沢書店 1998
- 『ドイツを読む愉しみ』講談社 1998
- 『京都で、本さがし』講談社 1999
- 『小説は玻瑠の輝き』翰林書房 2000
- 『友情の文学誌』岩波新書 2001
- 『わが読書散歩』講談社 2001
- 『神を見る 神話論集1』ちくま学芸文庫 2002
- 『神を読む 神話論集2』ちくま学芸文庫 2002
- 『藝文遊記』新潮社 2003
- 『本の引越し』筑摩書房 2004
- 『果樹園の蜜蜂 わが青春のドイツ文学』岩波書店 2005
- 『時空蒼茫』講談社 2005
- 『ロマネスクの透明度 近・現代作家論集』鳥影社 2006
- 『洋燈の孤影 漱石を読む』幻戯書房 2006
- 『音楽が聞える 詩人たちの楽興のとき』筑摩書房 2007
- 『母なるもの 近代文学と音楽の場所』文藝春秋 2009
- 『文人荷風抄』岩波書店 2013
- 『五月の読書』岩波書店 2020。遺著、解説堀江敏幸
- 『高橋英夫著作集―テオリア』全8巻、長谷川郁夫編、河出書房新社 - 2021年春~2022年夏に刊
- 批評の精神 - 林達夫、小林秀雄、河上徹太郎、吉田健一 論
- 神話と文学 - ケレーニイ、柳田國男、折口信夫 論
- 偉大なる暗闇 - 近代日本とドイツ文学論
- モーツァルト - 他は「母なるもの」抄版
- 西行と芭蕉
- ブルーノ・タウト - 他は「ドイツを読む愉しみ」新編
- 藝文遊記 - 他は「時空蒼茫」
- 読書随想 - 年譜・著作目録
主な訳書
[編集]- ハイデッガー『乏しき時代の詩人』手塚富雄共訳 「選集」理想社 1958、新版1972。ヘルダーリン論
- ヨハン・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』中央公論社 1963、新装版1971。中公文庫 1973、改版2019
- シュライエルマッハー『宗教論 宗教を軽んずる教養人への講話』筑摩書房 1963。筑摩叢書(改訳版)1991
- ホフマンスタール 『影のない女』 集英社「世界文学全集」1967、新版1978
- 『ホフマンスタール選集2 小説・散文』に収録、河出書房新社 1972
- エミール・シュタイガー『詩学の根本概念』 叢書・ウニベルシタス 法政大学出版局 1969
- カール・ケレーニイ『神話と古代宗教』 新潮社 1972、復刊1992。ちくま学芸文庫(改訳版)2000
- カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 神々の時代』 中央公論社 1974
- カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 英雄の時代』(植田兼義共訳)、中央公論社 1974
- カール・ケレーニイ『トリックスター』晶文社 1974 - 分担訳
- ゲーテ『プロメテウス』『プロゼルピーナ』-「ゲーテ全集4 戯曲」潮出版社 1979、新装版2003
主な編著
[編集]- 『志賀直哉随筆集』岩波文庫 1995
- 尾崎一雄 『暢気眼鏡・虫のいろいろ 他十三篇』岩波文庫 1998
- 『中島敦全集 別巻』筑摩書房 2002。編集委員
- 正宗白鳥 『新編作家論』岩波文庫 2002
- 『林達夫芸術論集』講談社文芸文庫 2009
- 『読書清遊 富士川英郎随筆選』講談社文芸文庫 2011
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ この頃、『早稲田文学』編集長立原正秋より原稿執筆依頼あり。「いまは書くものがありませんから」と断ったところ、立原は経緯を公表し、感謝の意を示した。
- ^ 雑誌『ユリイカ』1974年10月号に掲載した論考「われ語る、ゆえにわれ在り―小林秀雄と吉田健一」にて、吉田による『小林秀雄文庫』解説(中央公論社 全5巻、1954年2月-1955年2月)を引用し、「(小林の「平家物語」)に至って、批評といふものに対する一つの見方が拒否され、迷夢が破られている。そしてそれは、批評するといふことが或る対象をだしに使って自分に就て語ることだといふ考へである。これは曾て小林氏自身がどこかで書いたことになつてゐて、或はさういふことがあつたかも知れない。併し批評は或る対象をだしにして自己を語ることではないのであつて、『当麻』以後の小林氏の評論がそのことを何よりもはつきり示している。自分といふものは、言葉でわざわざ描くに価する程貴重な存在ではない……(以下略)」という叙述を「全くその通り」と肯定。これを吉田は、河上徹太郎との対談「時代を生きる」で、「高橋ヒデオさんが取り上げてくだすって」と報告した。『都築ケ岡から』に収録、毎日新聞社、1975年4月 p.328
出典
[編集]- ^ 『批評の精神』講談社文芸文庫版、附載年譜。なお解説は三浦雅士(青土社での初期の担当編集者)
- ^ “文芸評論家の高橋英夫氏死去”. 時事通信 (2019年2月20日). 2019年2月20日閲覧。
- ^ 『官報』7473号、平成31年3月25日
- ^ “平成17年秋の叙勲 旭日中綬章受章者” (PDF). 内閣府. p. 3 (2005年11月3日). 2006年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月21日閲覧。