ヘンリック・イプセン
ヘンリック・イプセン Henrik Ibsen | |
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ペンネーム |
ブリニョルフ・ビャルメ (初期のペンネーム) |
誕生 |
ヘンリック・ヨーハン・イプセン Henrik Johan Ibsen 1828年3月20日 スウェーデン=ノルウェー、シーエン |
死没 |
1906年5月23日(78歳没) ノルウェー、クリスチャニア |
墓地 | ヴォル・フレールセルス墓地 |
職業 | 劇作家、詩人、舞台監督 |
言語 | デンマーク・ノルウェー語(リクスモール、のちのブークモール) |
国籍 | ノルウェー |
活動期間 | 1848年 - 1899年 |
ジャンル |
自然主義演劇 リアリズム演劇 |
代表作 |
ブラン ペール・ギュント 人形の家 幽霊 民衆の敵 野鴨 ロスメルスホルム ヘッダ・ガーブレル |
デビュー作 | カティリーナ |
配偶者 | スザンナ・トーレセン |
子供 | シーグル・イプセン(長男、外交官) |
影響を受けたもの
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署名 | |
ウィキポータル 文学 |
ヘンリック(ヘンリク)・イプセン(Henrik Johan Ibsen ノルウェー語: [ˈhɛ̀nrɪk ˈɪ̀psn̩]、1828年3月20日 - 1906年5月23日)は、ノルウェーの劇作家、詩人、舞台監督。近代演劇の創始者であり、「近代演劇の父」と称される[1]。シェイクスピア以後、世界でもっとも盛んに上演されている劇作家とも言われる。
8歳のとき家が破産。劇場の座付作者兼舞台監督、演劇指導者などになった。
代表作には、『ブラン』『ペール・ギュント』(1867年に執筆。1874年にグリーグに劇音楽の作曲を依頼する。)『人形の家』『野鴨』『ロスメルスホルム』『ヘッダ・ガーブレル』などがある。自身はノルウェーを嫌い、長くドイツやイタリアで生活したため、ノルウェーの国民作家という意識は薄かったが、現在は国の象徴、そして世界史上最も重要な劇作家の一人として尊敬され、長らくノルウェーの最高額面の1000クローネ紙幣にその肖像が描かれていた。
執筆言語
[編集]イプセンの執筆言語は「ノルウェー語[2]」、「デンマーク語[3]」、「デンマーク・ノルウェー語[4]」、「ブークモール[5]」、「リクスモール[6]」などと言われる場合があるが、これは19世紀までノルウェーでは宗主国の言語であるデンマーク語が書き言葉として使用されていたためである[3]。言語学者のクヌート・クヌーツェンは19世紀後半に書き言葉を徐々にノルウェー化することを提唱し、この言語はやがてリクスモール、のちにブークモールと呼ばれるようになった[5]。イプセンはこのデンマーク語がノルウェー式に変化しつつある時代のリクスモール(のちのブークモール)で著作を執筆していた[5][6]。21世紀に使用されているノルウェー語とは大きく異なるため、ノルウェーで上演を行う時も戯曲テクストを現代の観客にわかるよう変更する必要がある場合が多い[7]。
世界への影響
[編集]イプセンの劇は同時代の多くの人にスキャンダラスと考えられた。当時は家庭生活や礼儀についてのヴィクトリア朝的価値観がヨーロッパで大きく広まっており、それらに対するいかなる挑戦も不道徳的で非常識とされていたためである。イプセンは生活状況や道徳問題についての批評的な眼や疑問を紹介するため、主に現代劇に基礎を置いた。ヴィクトリア朝の演劇には、悪の力に立ち向かう高潔な主人公が期待されており、あらゆる劇は善が幸福をもたらし、不道徳は苦痛のみをもたらすという、道徳的にふさわしい結末で終わった。イプセンはこの考えと当時の信仰に挑み、観客の持つ幻想を破壊した。
日本の新劇運動はイプセン劇の上演から始まったといえる(参照:市川左團次 (2代目) 、文芸協会)。『人形の家』の主人公ノラ(ノーラ[8])は当時の「新しい女」として語られた。その作品群は今日でも演劇界に影響を与え続けている。中国においても、『新青年』第四巻六号(1918年6月)がイプセン特集を組むなど、五四運動期に熱狂的に紹介され、女性解放運動に大きな影響を与えたほか、話劇の形成にも直接の影響を与えた。
2007年にはノルウェー政府により国際イプセン賞が創設された。
作品
[編集]- カティリーナ(Catilina, 1850年)
- 勇士の塚(Kjæmpehøjen, 1850年)
- ノルマ、または政治家の恋(Norma eller en Politikers Kjaerlighed, 1851年)
- 聖ヨハネ祭の夜(Sancthansnatten, 1852年)
- エストロートのインゲル夫人(Fru Inger til Østeraad, 1854年)
- ソールハウグの宴(Gildet paa Solhoug 1855年)
- オーラフ・リッレクランス(Olaf Liljekrans, 1856年)
- ヘルゲランの勇士たち(Hærmændene paa Helgeland, 1857年)
- 愛の喜劇(Kjærlighedens Komedie, 1862年)
- 王位請求者たち(Kongs-Emnerne, 1863年)
- ブラン(Brand, 1865年)
- ペール・ギュント(Peer Gynt, 1867年)
- 青年同盟(De unges Forbund, 1869年)
- 皇帝とガリラヤ人(Kejser og Galilæer, 1873年)
- 社会の柱(Samfundets støtter, 1877年)
- 人形の家(Et dukkehjem, 1879年)
- 幽霊(Gengangere, 1881年)
- 民衆の敵(En Folkefiende, 1882年)
- 野鴨(Vildanden, 1884年)
- ロスメルスホルム(Rosmersholm, 1886年)
- 海の夫人(Fruen fra havet, 1888年)
- ヘッダ・ガーブレル(Hedda Gabler, 1890年)
- 棟梁ソルネス(Bygmester Solness, 1892年)
- 小さなエヨルフ(Lille Eyolf, 1894年)
- ヨーン・ガブリエル・ボルクマン(John Gabriel Borkman, 1896年)
- わたしたち死んだものが目覚めたら(Når vi døde vågner, 1899年)
日本語訳書
[編集]- 1980年代以降刊の書籍のみ
- 原千代海訳 『イプセン戯曲全集』(全5巻) 未來社 1989年
- 『イプセンの手紙』 未來社 1993年
- 原訳は『野鴨』『人形の家』『ヘッダ・ガーブレル』『幽霊』が、岩波文庫で刊行。1996年
- 毛利三彌訳 『イプセン戯曲選集 現代劇全作品』 東海大学出版会 1997年
- 新版『イプセン現代劇 上演台本集』 論創社 2014年
- 毛利訳は『人形の家』、『ヘッダ・ガブラー』、『野がも』が、2020年より論創社でシリーズ刊行
- 【笹部博司の演劇コレクション[1]】A6判(文庫本)2008年
- 『野鴨』『ちっちゃなエイヨルフ』『ロスメルスホルム』
- 『ジョン・ガブリエルと呼ばれた男』『民衆の敵』『ヘッダ・ガブラー』を刊行
- 演劇企画製作会社「メジャーリーグ」 [2]での上演台本
脚注
[編集]- ^ On Ibsen's role as "father of modern drama," see “Ibsen Celebration to Spotlight 'Father of Modern Drama'”. Bowdoin College (2007年1月23日). 2007年3月27日閲覧。; on Ibsen's relationship to modernism, see Moi (2006, 1-36)
- ^ “ヘッダ・ガーブレル”. 新国立劇場 (2010年). 2019年3月7日閲覧。
- ^ a b Lawson, Mark (2014年10月29日). “The master linguist: the problem with translating Ibsen” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2019年3月10日閲覧。
- ^ Erica Wagner. “Mind out of time: what Ibsen can tell us about today” (英語). www.newstatesman.com. The New Statesman. 2019年3月10日閲覧。
- ^ a b c Sanders, Ruth H.. The languages of Scandinavia : seven sisters of the North. Chicago: University of Chicago Press. p. 129. ISBN 9780226493893. OCLC 972309349
- ^ a b Fred Rush, "Two Pistols and Some Papers: Kierkegaard’s Seducer and Hedda’s Gambit", in Kristin Gjesdal, ed., Ibsen's Hedda Gabler: Philosophical Perspectives (Oxford University Press, 2017), 194 - 214, DOI: 10.1093/oso/9780190467876.003.0010, p. 206.
- ^ Erica Wagner. “Mind out of time: what Ibsen can tell us about today” (英語). www.newstatesman.com. The New Statesman. 2019年3月10日閲覧。
- ^ 「日本では、長く(ノラ)と呼ばれてきたが、劇中、なんども(ノーラノーラ)と繰り返し呼ばれ、いわばこの劇の弾んだリズムを作るもとにもなっているから、原語どおりの長母音の発音が望ましい。」論創社版(2020年4月刊)毛利三彌訳『人形の家』p155注4