カンムリカイツブリ
カンムリカイツブリ | |||||||||||||||||||||||||||
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カンムリカイツブリ(夏羽) Podiceps cristatus
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保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Podiceps cristatus (Linnaeus, 1758) | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
カンムリカイツブリ | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Great Crested Grebe | |||||||||||||||||||||||||||
亜種 | |||||||||||||||||||||||||||
カンムリカイツブリ(冠鳰、学名:Podiceps cristatus)は、カイツブリ目カイツブリ科カンムリカイツブリ属に分類される鳥類の1種。
分布
[編集]アフリカ大陸の一部、ユーラシア大陸の中部以南、イギリス、オーストラリア、日本、ニュージーランド(南島)。北半球のものは冬に一部南下する。
日本では、冬季に基亜種が九州以北に冬鳥として飛来するが、青森県の下北半島や滋賀県の琵琶湖など本州の湖沼でも少数繁殖する。琵琶湖では2007年に越冬する個体数1,176が確認されている[2]。
形態
[編集]全長56cm (46-61cm)。翼開長85cm (85-90cm)。体重596-1,490g[3]と、カイツブリ目では北アメリカのクビナガカイツブリ類に次ぐ大形種であり[4]、日本では最大種となる[5]。
頸部は非常に長い。上面は黒褐色、下面は白い。頭頂には黒い羽毛が伸長した冠羽がある。種小名 cristatus は「冠のある」の意で、和名や英名(crested)と同義。眼先は黒い。小雨覆や次列風切には白い斑紋が入る。
虹彩は暗赤色。嘴は長くまっすぐで先がとがり、淡桃色。
夏季には冠羽が発達した夏羽になり、頬から後頭にかけて黒い縁取りのある赤褐色の飾り羽が生じる。冬季には冬羽として冠羽はあまり発達せず、頬の羽毛は白い。幼鳥は冠羽があまり発達せず、頬の羽毛が白く黒い斑紋が入る。雌雄同色[5][6]。
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成鳥と雛
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雛の頭部
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冬羽
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Museum specimen
生態
[編集]流れの緩やかな河川、湖沼、湿原などに生息するが、冬季には河口、港湾、沿岸部にも生息する。
食性は動物食で、魚類、両生類、水生昆虫などを食べる[5]。潜水して獲物を捕食するのに30秒以上潜ることもある[4]。
水面を蹴って滑走してから飛び立ち、長い頸を伸ばして小刻みな翼動で直線的に飛ぶ。
繁殖期には縄張りを形成する。雌雄が「カッカッ」と鳴き頭部をもたげながら接近し、向かい合って左右に頸部を振る。その後に羽づくろいをしたり、互いに巣材を回収するという複雑な求愛行動を行う。非繁殖期には単独か数羽で生活する[7]。
水辺近くの水生植物などに固定された水生植物の葉や茎を組み合わせた逆円錐状の直径70-90cmほどの浮巣[8]を雌雄で作り、日本では3-8月に、1回に3-5個の卵を年に1-2回産む。雌を主として[9]雌雄交代で抱卵し、抱卵期間は27-29日。雛は孵化してから約2週間は親鳥の背に乗ることが多く、約10週間育雛され[9]、70-90日で飛翔できるようになる。生後2年で性成熟する。
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水上に浮巣を作る
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潜水して魚を捕獲する
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雛への給餌
人間との関係
[編集]イギリスでは19世紀、帽子の羽根飾りや、皮ごと手を暖めるマフ (Muff) にするため大量に捕獲され、激減したことがある[4]。
兵庫県西宮市で回収されたカンムリカイツブリから、2011年(平成23年)3月2日に高病原性鳥インフルエンザウイルス・強毒タイプが確認された[10]。
亜種
[編集]- Podiceps cristatus cristatus (Linnaeus, 1758) 基亜種カンムリカイツブリ[14] - 旧北区、東洋区。
- Podiceps cristatus infuscatus (Salvadori 1884) - エチオピア区。
- Podiceps cristatus australis (Gould 1844) - オーストラリア、タスマニア、ニュージーランド南島。
保全状況評価
[編集]国際自然保護連合(IUCN)により、レッドリストの軽度懸念(LC)の指定を受けている[1]。
日本では個体数が少ないものの冬季に飛来する個体数が1970年代から増加傾向にあり[8]、青森県下北半島や琵琶湖で少数が繁殖している[5][6]。繁殖する個体群は開発などによる生息地の破壊が懸念されている。環境省により「青森県のカンムリカイツブリ繁殖個体群」がレッドリストの地域個体群(LP)の指定を受けている[15]。また以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている[16]。
- 絶滅危惧II類 - 埼玉県[17]、長野県
- 準絶滅危惧 - 秋田県、東京都北多摩(区部は留意種)、石川県、徳島県[19]、福岡県[20]
- Dランク - 岩手県
- 注目 - 群馬県
- 要注目 - 大阪府[23]
- 情報不足- 長崎県
脚注
[編集]- ^ a b “IUCN 2012.2 IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.2. (Podiceps cristatus)” (英語). IUCN. 2012年12月13日閲覧。
- ^ “琵琶湖と生物・水鳥” (PDF). 滋賀県. 2012年12月13日閲覧。
- ^ Brazil, Mark (2009). Birds of East Asia. Princeton University Press. p. 90. ISBN 978 0 691 13926 5
- ^ a b c 三省堂編修所・吉井正 『三省堂 世界鳥名事典』、三省堂、2005年、147-148頁。ISBN 4-385-15378-7。
- ^ a b c d ひと目でわかる野鳥 (2010)、42頁
- ^ a b 山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥 (2006)、23頁
- ^ 水辺の鳥 (2002)、13頁
- ^ a b 散歩で楽しむ野鳥の本 (2008)、45頁
- ^ a b 高野伸二 『カラー写真による 日本産鳥類図鑑』、東海大学出版会、1981年、188-189頁。
- ^ “兵庫県西宮市における高病原性鳥インフルエンザウイルス・強毒タイプの確認に伴う環境省の対応について”. 環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護業務室 (2011年3月2日). 2012年12月14日閲覧。
- ^ Clements, James (2007). The Clements Checklist of the Birds of the World (6th ed.). Ithaca, NY: Cornell University Press. p. 8. ISBN 978-0-8014-4501-9
- ^ “Podiceps cristatus” (英語). バードライフ・インターナショナル. 2012年12月13日閲覧。
- ^ “Podiceps cristatus (Linnaeus, 1758)” (英語). ITIS. 2012年12月13日閲覧。
- ^ 日本鳥学会(目録編集委員会) 編『日本鳥類目録 改訂第7版』日本鳥学会、2012年、38-39頁。ISBN 978-4-930975-00-3。
- ^ “カイツブリ目 カイツブリ科 絶滅のおそれのある地域個体群(LP)”. 環境省. 2012年12月13日閲覧。
- ^ “日本のレッドデータ検索システム「カンムリカイツブリ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2012年12月13日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
- ^ “埼玉県レッドデータブック2008動物編” (PDF). 埼玉県. pp. 84 (2008年). 2012年12月13日閲覧。
- ^ “北海道レッドデータブック・カンムリカイツブリ”. 北海道 (2001年). 2012年12月13日閲覧。
- ^ “徳島県版レッドデータブック” (PDF). 徳島県. pp. 73 (2011年8月). 2012年12月13日閲覧。
- ^ “福岡県の希少野生生物 RED DATA BOOK 2011 FUKUOKA・カンムリカイツブリ”. 福岡県 (2011年). 2012年12月13日閲覧。 - 2001年版では絶滅危惧II類。
- ^ “青森県レッドデータブック(2010年改訂版)” (PDF). 青森県. pp. 200 (2010年). 2012年12月13日閲覧。
- ^ “千葉県レッドデータブック動物編(2011年改訂版)” (PDF). 千葉県. pp. 113 (2011年). 2012年12月13日閲覧。
- ^ “大阪府レッドデータブック・カンムリカイツブリ”. 大阪府 (2000年3月). 2012年12月13日閲覧。
参考文献
[編集]- 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社、2008年、114-115頁。ISBN 978-4-635-07017-1。
- 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥 増補改訂版』、文一総合出版、2009年、27頁。ISBN 978-4-8299-0142-7。
- 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥類I』、平凡社、1986年、50-51、176頁。ISBN 4-582-54507-6。
- 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会、2007年、26-27頁。ISBN 978-4-931150-41-6。
- 中村登流監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年、141、185頁。
- 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、19頁。ISBN 4-582-54230-1。
- 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、15頁。
- 叶内拓哉、安部直哉『山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥』(第2版)山と溪谷社、2006年10月1日。ISBN 4635070077。
- 大橋弘一、Naturally『散歩で楽しむ野鳥の本(街中篇)』山と溪谷社、2008年10月21日。ISBN 978-4635596206。
- 高木清和『フィールドのための野鳥図鑑-水辺の鳥』山と溪谷社、2002年2月1日。ISBN 4635063321。
- 中川雄三(監修) 編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年1月。ISBN 978-4415305325。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- IUCN Red List - Home Page -
- BirdLife International 2008. Podiceps cristatus. In: IUCN 2009. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2009.1.
- 環境省 自然環境局 生物多様性センター
- カンムリカイツブリ (日本野鳥の会)