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星団

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

星団(せいだん、star cluster)は、同じガスから誕生した、互いの重力相互作用によって結びついた恒星の集団[1][2]。その特徴から散開星団 (: open cluster) と球状星団 (: globular cluster) に分類される。

星団の種類

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散開星団

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プレヤデス星団 (M45)

数十から数百の恒星が最大で50光年ほどの範囲に集まっている星団[3]銀河円盤渦状腕に存在することから galactic cluster とも呼ばれ[3]地球からは天の川の近くに多く見られる。同じ星間分子雲から誕生して数百万年から数千万年しか経っていない「種族I」の恒星で構成されている[4]。よく知られている散開星団として、プレヤデス星団[5]ヒアデス星団が挙げられる[3]

散開星団の分類には、「星団中心部の集中度」「星団に属する星々の明暗の幅」「星団に属する星の数」の3つの要素で分類する「トランプラー分類 (: Trumpler classification)」が用いられる[6]

ヒアデス星団やおおぐま座運動星団のように、収束点 (: convergent point) と呼ばれる天球上のある一点に向って動いているように見える恒星からなる散開星団は「運動星団 (: moving cluster, moving group)」と呼ばれる[7][8]。おおぐま座運動星団は、おおぐま座α星η星を除く北斗七星の5つなどが属する、地球に最も近い星団である。

主な散開星団[9]
名称 別名 星座 視直径 距離 年齢 恒星の数 画像
M45 プレヤデス星団
Pleiades
おうし座 約430 光年 1億3500万歳 50
M44 プレセペ星団
Praesepe
Beehive
かに座 70′ 約610 光年 7億2900万歳 70
Melotte 25 ヒアデス星団
Hyades
おうし座 5.5° 約150 光年 7億8700万歳 55
M7 トレミー星団
Ptolemy's Cluster
さそり座 80′ 約300 光年 2億9900万歳 120
Melotte 111 かみのけ座星団
Coma Berenices Cluster
かみのけ座 約310 光年 4億4900万歳 863

球状星団

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ヘルクレス座球状星団 (M13)

数万から数百万の恒星が直径100-300光年のほぼ球状の領域に密集している星団[10]銀河ハローに分布しており、銀河形成の初期段階、あるいは銀河同士の衝突合体に伴って生成されたと考えられている[11]。主に「種族II」に分類される金属量[注 1]の少ない年老いた星で構成されており、誕生から100億年以上経過した星も多い[11]。天の川銀河内にある球状星団までの距離決定と年齢の推定には、球状星団によく見られることから「星団型変光星 (cluster variables)」とも呼ばれていたこと座RR型変光星周期-光度関係が用いられる[12][13]

球状星団の分類には、星団中心部への恒星の集中度によって12段階に分類する「シャプレー・ソーヤー集中度分類 (: Shapley-Sawyer Concentration Class)」が用いられる[14]

主な球状星団

研究対象としての星団

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球状星団M3の色-等級図。

散開星団や球状星団は、恒星進化の理論を検証するために重用されており、「星の進化の実験室」と呼ばれることもある[15]。これは、

  1. 同じ星団に属する星は、どれもほぼ同じ時期に誕生したと見なせる。
  2. 同じ星団に属する星は、地球からの距離がどれもほぼ同じと見なせる。
  3. 同じ星団に属する星は、同じ分子雲から誕生したため、誕生時の金属量もほぼ同一と見なせる。

といった、星団に属する星に共通して見られる特徴による。すなわち、星団では様々な質量を持つ星が同じ分子雲からほぼ同時期に生まれたと見なせるため、現在の光度やスペクトルを観測することで、異なる質量を持つ恒星がそれぞれどのように進化するのかという恒星進化の理論を検証するのに都合が良い[16]。また、同じ星団の星はどれも地球からほぼ同じ距離にあると見なせるため、HR図の縦軸の絶対等級見かけの等級に、横軸の有効温度色指数に置き換えた「色-等級図 (color magnitude diagram)」を用いて、星団までの距離や年齢を推定することができる[16]

脚注

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注釈

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  1. ^ 水素ヘリウム以外の元素の存在量のこと。

出典

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  1. ^ Ian Ridpath 2018, p. 861.
  2. ^ 星団”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2018年4月20日). 2022年3月6日閲覧。
  3. ^ a b c Ian Ridpath 2018, p. 699.
  4. ^ 散開星団”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年9月30日). 2022年3月6日閲覧。
  5. ^ プレヤデス」『日本大百科全書(ニッポニカ)』https://kotobank.jp/word/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%A4%E3%83%87%E3%82%B9コトバンクより2022年3月12日閲覧 
  6. ^ Ian Ridpath 2018, p. 912.
  7. ^ 運動星団”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2018年4月11日). 2022年3月12日閲覧。
  8. ^ Ian Ridpath 2018, p. 666.
  9. ^ Catalog of Optically Visible Open Clusters and Candidates”. OPEN CLUSTERS AND GALACTIC STRUCTURE. 2022年3月13日閲覧。
  10. ^ Ian Ridpath 2018, p. 472.
  11. ^ a b 球状星団”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年9月30日). 2022年3月6日閲覧。
  12. ^ 星団型変光星”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年9月8日). 2022年3月10日閲覧。
  13. ^ 安田直樹 著「6.2.2 1次距離指標」、谷口義明岡村定矩祖父江義明 編『4 銀河I』(第2版第1刷)日本評論社〈シリーズ現代の天文学〉、2018年8月25日、199頁。ISBN 978-4-535-60754-5 
  14. ^ Frommert, Hartmut (2014年2月19日). “Concentration Classes of Globular Clusters”. SEDS Messier Database. 2022年3月12日閲覧。
  15. ^ 有本信雄 著「5.1.2 銀河の進化の実験室」、祖父江義明、有本信雄、家正則 編『5 銀河II』(第2版第1刷)日本評論社〈シリーズ現代の天文学〉、2018年3月15日、181頁。ISBN 978-4-535-60755-2 
  16. ^ a b 沢武文 著「23 星団の色-等級図」、福江純、沢武文、高橋真聡 編『極・宇宙を解く-現代天文学演習』(初版)恒星社厚生閣、2020年2月10日、95頁。ISBN 978-4-7699-1643-7 

参考文献

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関連項目

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