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現存しない星座

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
現存しない星座の一つ、アルゴ座
1684年のActa Eruditorumに掲載されたGladii Electorales Saxonici

現存しない星座では、様々な理由により星座として認識されなくなった、または国際天文学連合(IAU)の公式の星座に採用されなかった、歴史的な星座について説明する[1]。1930年以前、これらの現存しない星座の多くは、少なくとも1つ以上の国や文化で伝統的なものだった。その中には、数十年しか続かなかったものもあれば、何世紀にもわたって言及されたものもあった。それらの全ては、現在では古典的または歴史的価値をだけを持つものと認識されている[2]。現存しない星座の多くは、物、人、あるいは神話や実在の生き物の名前にちなむ複雑なラテン語名を持っていた[2]。扱いにくい名前を持つ星座は便宜上短縮された。例えば、Scutum SobiescianumはScutum(たて座)に、Mons MensaeはMensa(テーブルさん座)に、Apparatus SculptorisはSculptor(ちょうこくしつ座)に省略された。

北半球の空の現存しない星座のいくつかは、伝統的な明るい星座の間の隙間を埋めるためだけに作られた。南半球の空では、赤道以南に到達した航海者によって15世紀ごろから新しい星座が作られるようになった。イギリス、フランス、オランダ、ドイツ、イタリアなどのヨーロッパ諸国は、自分たちが作った星座を普及させようとした。異なる星座の間で領域が重なり同じ星を含む場合もあった。これらの星座は、古い本、星図星表によく見られる。

現代の88個の星座の名称と略称は1922年のIAU総会で認証され、星座の境界線はウジェーヌ・デルポルトの案を下に1930年に国際的な合意のもとでIAUによって標準化された[2][3]。現存していない星座のほぼ全ては、境界に赤経赤緯の線に従わない部分があるため、現代の星座と指定された境界が異なる[4]

注目すべき現存しない星座

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アルゴ座

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アルゴ座 (Argo) あるいはアルゴ船座 (Argo Navis) は、トレミーの48星座の中で唯一公式の星座から除外された星座である。星座が大きすぎるため、りゅうこつ座ほ座とも座の3つに分割された[5]

壁面四分儀座

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壁面四分儀座[6] (Quadrans Muralis) は1795年に作られ、現存する星座うしかい座りゅう座の間に置かれた。しぶんぎ座流星群はこの星座にちなんで名付けられたものである。

ブランデンブルクのおうしゃく座

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エリダヌス座53番星は、かつて所属していたブランデンブルクのおうしゃく座[7] (Sceptrum Brandenburgicum) から、王笏を意味するSceptrumの別名で呼ばれている[8][9]

現存しない星座の一覧

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日本語名 ラテン語名 意味 作成年 作成者 備考
アンティノウス座[10] Antinous アンティノウス 132年 ハドリアヌス[11]
蜜蜂座(北天) Apes 蜜蜂 1612年 ペトルス・プランシウス ヤコブス・バルチウスにより雀蜂→蠅と変更され、ジェミーソン星図でMusca Borealisとされる
蜜蜂座(南天) Apis 蜜蜂 1598年 ペトルス・プランシウス みなみばえ座(省略してはえ座)に改称
アルゴ座 Argo Navis アルゴー船 2世紀 プトレマイオス りゅうこつ座ほ座とも座に分割
ロバ座、飼い葉桶座 Asselli, Praesepe ディオニューソスロバ飼い葉桶 紀元前3世紀 アラトス[12][13] ロバ座は現在のかに座γ星かに座δ星。飼い葉桶座は現在のプレセペ星団
ボルタ電池座 Battery of Volta ボルタ電池 1807年 トマス・ヤング
子蟹座 Cancer Minor 小さいカニ 1613年 ペトルス・プランシウス
カプラ、ハエディ Capra, Haedi 山羊アマルテイアとその子 紀元前3世紀 アラトス[14] カプラはカペラと周辺の星。ハエディはぎょしゃ座ζ星ぎょしゃ座η星
ケルベルス座 Cerberus ケルベロス 1690年 ヨハネス・ヘヴェリウス
フィルミアンの冠座 Corona Firmiana かんむり座をザルツブルク大司教レオポルト・アントン・フォン・フィルミアン英語版を讃えて改称 1730年 Corbinianus Thomas
監視者メシエ座 Custos Messium シャルル・メシエを讃えたもの 1775年 ジェローム・ラランド[15]
デルタ座 Deltoton さんかく座の旧名 1540年 ペトルス・アピアヌス[16]
猫座 Felis ネコ 1799年 ジェローム・ラランド
フリードリヒの栄誉座 Frederici Honores フリードリヒ大王を讃えて 1787年 ヨハン・ボーデ[17]
雄鶏座 Gallus 雄鶏 1613年 ペトルス・プランシウス
Gladii Electorales Saxonici ザクセン選帝侯領の紋章の交差した剣 1684年 ゴットフリート・キルヒ
軽気球座 Globus Aerostaticus 軽気球 1798年 ジェローム・ラランド[18]
ヨルダン座 Jordanus ヨルダン川 1613年 ペトルス・プランシウス
Leo Palatinus ライン宮中伯カール・テオドールとその妻エリーザベト・アウグステを称えるライオン 1785年 Karl-Joseph König
測程索座 Lochium Funis 測程索 1801年 ヨハン・ボーデ[19] 1888年にEliza A. BowenがLinea Nauticaに改称[20]
ゆり座 Lilium フルール・ド・リス 1679年 オギュスタン・ロワーエ、Ignace-Gaston Pardies
Linum Piscium 魚を結ぶ線 1590年 トーマス・フッド英語版 1801年にボーデによってLinum AustrinumとLinum Boreumから改称。Lineolaとしても知られる
電気機械座 [21] Machina Electrica 摩擦起電機ライデン瓶 1800年 ヨハン・ボーデ[22]
帆柱座 Malus マスト 1844年 ジョン・ハーシェル
大理石の彫刻座 Marmor Sculptile 大理石の彫刻 1810年 William Croswell コロンブスの胸像
マエナルス山座 Mons Maenalus メナロ山 1690年 ヨハネス・ヘヴェリウス[23]
北蠅座 Musca Borealis 北のハエ 1822年 アレクサンダー・ジェイミソン
梟座 Noctua フクロウ 1822年 アレクサンダー・ジェイミソン
印刷室座 Officina Typographica 印刷室 1801年 ヨハン・ボーデ[24]
フラミンゴ座 Phoenicopterus フラミンゴ 17世紀初頭[25] ペトルス・プランシウス/Paul Merula つる座の旧称
Piscis Notus 紀元前3世紀 アラトス
ポロフィラックス Polophylax 天の南極の守護者 1592年 ペトルス・プランシウス
帝国宝珠座 Pomum Imperiale レオポルト1世宝珠 1688年 ゴットフリート・キルヒ
パエトーン座 Phaethon パエトーン 中世 アラトス/ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス
Pluteum 胸墻英語版 1881年 Richard Andree がか座の旧称
ジョージの琴座 Psalterium Georgii ジョージ3世プサルタリー 1781年 マクシミリアン・ヘル英語版[26] ラランドによってHarp Georgiiに改称
壁面四分儀座 Quadrans Muralis 壁面四分儀 1795年 ジェローム・ラランド[27]
Quadratum 菱形 1706年 Carel Allard レチクル座の旧称
Ramus Pomifer 実がなっているリンゴの枝 1690年 ヨハネス・ヘヴェリウス[28]
チャールズの樫の木座 Robur Carolinum ロイヤル・オーク 1679年 エドモンド・ハレー[29]
バラ座 Rosa バラ 1536年 ペトルス・アピアヌス
南の矢座 Sagitta Australis 南の 1613年 ペトルス・プランシウス
ブランデンブルクの王笏座 Sceptrum Brandenburgicum ブランデンブルク選帝侯の王笏 1688年 ゴットフリート・キルヒ[30]
おうしゃく座 Sceptrum et Manus Iustitiae 王笏と正義の手 1679年 オギュスタン・ロワーエ
モモンガ座 Sciurus Volans モモンガ 1810年 William Croswell[31] 現在はきりん座の一部
蛇紋座 Serpentarius 大蛇紋 年不明
ウーラニアーの六分儀座 Sextants Uraniae ウーラニアー六分儀 1690年 ヨハネス・ヘヴェリウス ろくぶんぎ座(Sextans)の旧称
Siren, Ceneus, Lang セイレーンラピテース族カイネウスオオハシ科 17世紀初頭[32] 不明/ウィレム・ブラウ英語版
日時計座 Solarium 日時計 1822年 アレクサンダー・ジェイミソン
ヴェロニカのヴェール座 Sudarium Veronicae ヴェロニカのヴェール英語版 1643年 Antoine Marie Schyrle de Rheita[33]
馴鹿座 Tarandus または Rangifer トナカイ 1736年 ピエール・シャルル・ルモニエ[34]
ポニアトフスキーのおうし座 Taurus Poniatovii ポニャトフスキの紋章の牡牛 1777年 マルチン・ポツォブト=オドラニツキー英語版[35]
Tarabellum and Vexillum ドリル旗弁英語版 12世紀 マイケル・スコット[36]
ハーシェルの望遠鏡座 Telescopium Herschelii ハーシェル望遠鏡 1781年 マクシミリアン・ヘル英語版[37] 1801年にボーデによってTubus Herschelii Majorから改称
Tubus Herschelii Minor ハーシェル反射望遠鏡 1781年 マクシミリアン・ヘル英語版
チグリス座 Tigris チグリス川 1613年 ペトルス・プランシウス
南極の三角座 Triangulus Antarcticus みなみのさんかく座(Triangulum Australe)の旧称 1589年 ペトルス・プランシウス
大三角座 Triangulum Majus 大きな三角 1690年 ヨハネス・ヘヴェリウス さんかく座の旧称
小三角座 Triangulum Minus 小さい三角 1690年 ヨハネス・ヘヴェリウス[38]
つぐみ座 Turdus Solitarius チャイロコツグミ 1776年 ピエール・シャルル・ルモニエ[39] 後にふくろう座に改称
壺座 Urna みずがめ座の壺 1596年 Zacharias Bornmann
雀蜂座 Vespa スズメバチ 1624年 ヤコブス・バルチウス[40] きたばえ座の旧称
メカジキ座 Xiphias メカジキ 年不明

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ The Constellations”. IAU-International Astronomical Union. 2018年4月1日閲覧。
  2. ^ a b c Ian Ridpath. “Constellation names, abbreviations and sizes”. 2018年4月1日閲覧。
  3. ^ Marc Lachièze-Rey; Jean-Pierre Luminet; Bibliothèque Nationale de France. Paris (16 July 2001). Celestial Treasury: From the Music of the Spheres to the Conquest of Space. Cambridge University Press. p. 80. ISBN 978-0-521-80040-2. https://books.google.com/books?id=0ZFXiNn62ZEC&pg=PA80 
  4. ^ Constellation boundaries.”. 2018年4月1日閲覧。
  5. ^ Star Tales - Argo Navis”. www.ianridpath.com. 2019年3月24日閲覧。
  6. ^ 原恵 2007, p. 274.
  7. ^ 原恵 2007, p. 268.
  8. ^ Barentine, John C. (2015). The Lost Constellations: A History of Obsolete, Extinct, or Forgotten Star Lore. New York, New York: Springer. p. 365. https://books.google.com.au/books?id=u_7NCgAAQBAJ&pg=PA365 
  9. ^ IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2017年6月30日閲覧。
  10. ^ 原恵 2007, pp. 278–279.
  11. ^ Allen 2013, p. 40.
  12. ^ Page:Popular Science Monthly Volume 30.djvu/774 - Wikisource, the free online library”. en.wikisource.org. 2019年3月27日閲覧。
  13. ^ Star Tales - Cancer”. www.ianridpath.com. 2019年3月27日閲覧。
  14. ^ AMALTHEA (Amaltheia) - Goat Nurse of Zeus in Greek Mythology”. www.theoi.com. 2019年3月27日閲覧。
  15. ^ Allen 2013, p. 191.
  16. ^ Astrocultura UAI - Unione Astrofili Italiani- Sezione Mitologia Costellazioni estinte obsolete”. astrocultura.uai.it. 2019年3月27日閲覧。
  17. ^ Allen 2013, p. 221.
  18. ^ Allen 2013, p. 237.
  19. ^ Allen 2013, p. 65.
  20. ^ Astrocultura UAI - Unione Astrofili Italiani- Sezione Mitologia Costellazioni estinte obsolete”. astrocultura.uai.it. 2019年3月27日閲覧。
  21. ^ 原恵 2007, p. 276.
  22. ^ Allen 2013, p. 289.
  23. ^ Allen 2013, p. 290.
  24. ^ Allen 2013, p. 297.
  25. ^ Star Tales - Grus”. www.ianridpath.com. 2019年3月27日閲覧。
  26. ^ Allen 2013, p. 347.
  27. ^ Allen 2013, p. 348.
  28. ^ Allen 2013, p. 242.
  29. ^ Allen 2013, p. 349.
  30. ^ Allen 2013, p. 360.
  31. ^ Kanas, Nick (2007). Star maps: history, artistry, and cartography. New York, New York: Springer. p. 131. ISBN 0-387-71668-8. https://books.google.com.au/books?id=bae3LP4tfP4C&pg=PA131 
  32. ^ Gent, R.H. van. “A Pair of Puzzling Star Maps and Two Unknown Constellations”. www.staff.science.uu.nl. 2019年3月27日閲覧。
  33. ^ Astrocultura UAI - Unione Astrofili Italiani- Sezione Mitologia Costellazioni estinte obsolete”. astrocultura.uai.it. 2019年3月27日閲覧。
  34. ^ Allen 2013, p. 377.
  35. ^ Allen 2013, p. 413.
  36. ^ Nuova pagina 1”. Atlascoelestis.com. 2018年8月5日閲覧。
  37. ^ Allen 2013, p. 414.
  38. ^ Allen 2013, p. 417.
  39. ^ Allen, 2013 & p418.
  40. ^ Allen 2013, p. 292.

参考文献

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外部リンク

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関連項目

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