高等工業学校
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高等工業学校(こうとうこうぎょうがっこう、英語: Higher Technical School, Higher Engineering School, Technical College, College of Engineering等)は、第二次世界大戦後の学制改革が行われるまで存在した日本の旧制高等教育機関の一つで、工業に関する専門教育を施した旧制専門学校(実業専門学校)である。略して「高工」(こうこう)とも呼ばれる。
なお、この項目では厳密な意味での高等工業学校のみならず、高等工芸学校・鉱山専門学校(鉱専)および1940年代以降に新設された工業専門学校(工専)についても広義の「高等工業学校」ととらえ一括して言及することとする。
概要
[編集]- 1939年、勅令で、室蘭・盛岡・多賀・大阪・宇部・新居浜・久留米の7高等工業学校が新設され、計25校となった。
- 第二次世界大戦以前はほとんどが官立校であった。
- 1944年に高工(高等工芸学校を含む)は工業専門学校(工専)と改称された。さらにこれ以降、公立・私立の工専が多数設立された。
- 学制改革にあたりほとんどが新制の4年制大学工学部および工学関連学部の母体となり、一部は新制の短期大学工業科となった。
- 新制高等学校である「工業高等学校」や一部専修学校が校名使用する「工業専門学校」と混同しないように注意を要する。また戦後設立された工業高等専門学校とは異なる。
主要な高等工業学校
[編集]校名はすべて設立当時の名称で、丸括弧内は設立年と後身の大学・学部。後身校の変遷の経緯について省略したものは→→で示した。
附属専門部
[編集]大学専門部 (旧制)も参照のこと。
- 官立高等学校工学部
- 帝国大学・官立大学附属専門部
- 私立大学専門部
官立校
[編集]国内(内地)の学校の場合、後身校となる新制国立大学への包括は特に断らない限り1949年5月であり、学校としての廃止は1951年3月である。
- 熊本高等工業学校(1906年3月・熊本大学工学部)
- 1897年4月:五高工学部として設置。
- 1906年3月:五高より分離し熊本高等工業学校として独立。
- 1944年4月:熊本工業専門学校と改称。
- 1949年5月:新制熊本大学工学部に合流。
- 米沢高等工業学校(1910年3月・山形大学工学部)
- 1944年4月:米沢工業専門学校と改称。
- 1949年5月:新制山形大学工学部に合流。
- 秋田鉱山専門学校(1910年3月・秋田大学鉱山学部→工学資源学部→理工学部)
- 1949年5月:新制秋田大学鉱山学部に合流。
- 横浜高等工業学校(1920年1月・横浜国立大学工学部→横浜国立大学理工学部)
- 1944年4月:横浜工業専門学校と改称。
- 1949年5月:新制横浜国立大学工学部に合流。
- 明治専門学校(1921年3月官立移管・九州工業大学)
- 1907年7月:私立明治専門学校として設立。
- 1921年7月:官立移管。
- 1944年4月:明治工業専門学校と改称。
- 1949年5月:新制九州工業大学工学部に改組。
- 大阪高等工業学校(1939年5月・浪速大学工学部→大阪府立大学工学部→工学域→大阪公立大学工学部)
- 大阪高工(1901年設立)の大阪工大昇格後、大阪には官公立の高工が不在の状態が続いたため地元財界などの要請を背景に設立された。
- 1944年4月:大阪工業専門学校と改称。
- 1949年5月:新制浪速大学工学部に合流。
- 和歌山工業専門学校(1944年4月・廃止)
- 彦根工業専門学校(1944年4月・廃止)
公立校
[編集]- 東京府立高等工業学校(1940年1月・東京都立大学 (1949-2011)工学部→首都大学東京都市教養学部理工学系・都市環境学部→東京都立大学 (2020-)システムデザイン学部・都市環境学部)
- 1943年7月:東京都立高等工業学校と改称。
- 1944年4月:東京都立工業専門学校と改称。
- 1949年4月:新制東京都立大設立にともない吸収。
- 1951年3月:廃止。
- 東京府立化学高等工業学校(1942年2月・東京都立大学工学部→首都大学東京:都市教養学部理工学系・都市環境学部→東京都立大学システムデザイン学部・都市環境学部)
- 1943年7月:東京都立化学高等工業学校と改称。
- 1944年4月:東京都立化学工業専門学校と改称。
- 1949年4月:新制都立大設立にともない吸収。
- 1951年3月:廃止。
- 岐阜県立高等工業学校(1942年12月・岐阜医工科大学工学部→岐阜県立大学工学部→岐阜大学工学部)
- 愛知県立高等工業学校(1943年2月・名古屋工業大学)
- 東京府立航空高等工業学校(1943年3月・東京都立大学工学部→首都大学東京:都市教養学部理工学系・都市環境学部→東京都立大学システムデザイン学部・都市環境学部)
- 1943年7月:東京都立航空高等工業学校と改称。
- 1944年4月:東京都立航空工業専門学校と改称。
- 1946年2月:東京都立理工専門学校と改称。
- 1949年4月:新制都立大設立にともない吸収。
- 1951年3月:廃止。
- 大阪府立堺高等工業学校(1943年3月・浪速大学工学部→大阪府立大学工学部→工学域→大阪公立大学工学部)
- 1946年3月:大阪府立堺工業専門学校と改称。
- 1946年3月:大阪府立化学工業専門学校と改称。
- 1949年4月:新制大阪府立浪速大設立にともない吸収。
- 1951年3月:廃止。
- 大阪市立都島高等工業学校(1943年3月・大阪市立大学理工学部→理学部・工学部)
- 1945年4月:大阪市立都島工業専門学校と改称。
- 1949年4月:新制大阪市大設立にあたり吸収。
- 1951年3月:廃止。
- 兵庫県立高等工業学校(1944年1月・姫路工業大学→兵庫県立大学工学部・兵庫県立大学環境人間学部環境デザイン)
- 1944年4月:兵庫県立工業専門学校と改称。
- 1949年2月:新制姫路工大設立にあたり吸収。
- 1951年3月:廃止。
- 大阪府立航空高等工業学校(1944年2月・浪速大学工学部別科→大阪府立大学工業短期大学部第一部→大阪府立大学工学部→工学域→大阪公立大学工学部)
- 1945年8月:大阪府立第三工業専門学校と改称。
- 1946年6月:大阪府立機械工業専門学校と改称。
- 1949年4月:新制浪速大設立にともない堺高工・淀川高工とともに吸収。
- 1951年3月:廃止。
- 大阪府立淀川高等工業学校(1944年2月・浪速大学工学部別科→大阪府立大学工業短期大学部第二部)
- 1946年6月:大阪府立電機工業専門学校と改称。
- 1946年11月:大阪府立淀川工業専門学校と改称。
- 1949年4月:新制浪速大設立にともない堺高工・府立航空高工とともに吸収。
- 1951年3月:廃止。
- 東京都立機械高等工業学校(1944年3月・東京都立大学工学部→首都大学東京:都市教養学部理工学系・都市環境学部→東京都立大学システムデザイン学部・都市環境学部)
- 1944年4月:東京都立機械工業専門学校と改称。
- 1949年4月:新制都立大設立にともない吸収。
- 1951年3月:廃止。
- 広島市立工業専門学校(1945年1月・広島大学工学部)
- 1949年5月:新制広島大学設立により官立広島高工とともに吸収。
- 1951年3月:廃止。
- 鹿児島県立工業専門学校(1945年1月・県立鹿児島大学工学部→→鹿児島大学工学部)
- 1949年2月:新制県立鹿児島大学に昇格。
- 1951年3月:廃止。
- 滋賀県立彦根工業専門学校(1947年11月・滋賀県立短期大学工学科→滋賀県立大学工学部)
- 詳細は「官立校」の彦根工業専門学校の項を参照のこと。
私立校
[編集]- 明治専門学校(1907年7月・九州工業大学)
- 詳細は「官立校」の明治専門学校の項を参照のこと。
- 武蔵高等工業学校(1940年4月・武蔵工業大学→東京都市大学工学部・知識工学部→理工学部・情報工学部・建築都市デザイン学部)
- 1929年4月:武蔵高等工科学校として設立。
- 1940年4月:実業学校令・専門学校令による武蔵高等工業学校設立。
- 1944年4月:武蔵工業専門学校と改称。
- 1949年4月:新制武蔵工業大学に昇格。
- 関西高等工業学校(1940年4月・摂南工業大学→大阪工業大学(新制))
- 芝浦工業専門学校(1944年3月・芝浦工業大学)
- 法政大学航空工業専門学校(1944年3月・法政大学工学部→法政大学理工学部・法政大学デザイン工学部・法政大学生命科学部)
- 関東学院航空工業専門学校(1944年3月・関東学院大学工学部→関東学院大学理工学部・関東学院大学建築・環境学部)
- 1945年:関東学院工業専門学校と改称。
- 1949年4月:新制関東学院大の発足にともない吸収される。
- 1951年3月:廃止。
- 東北学院航空工業専門学校(1944年・廃止)
- 東北学院(東北学院大学の前身)により設立。
- 1945年:東北学院工業専門学校と改称。
- 1947年:廃止。
- 1962年:東北学院大学はあらためて工学部を創設。
- 大日本滑空工業専門学校(1948年・廃止)
- 1941年:大日本飛行協会により大日本飛行協会中央滑空訓練所設立
- 1944年:大日本滑空工業専門学校と改称
- 1945年10月:筑波工業専門学校と改称。
- 1948年:法政工業専門学校に吸収[8]。
- 1949年:廃止。
- 研数専門学校工科(事実上廃止)
- 学校法人は研数学館予備校に転換
外地校
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
- 京城鉱山専門学校(ソウル大学校工科大学と併合)
- 朝鮮総督府所管学校。
その他
[編集]その他、旧制の工学系大学専門部・高工・工専以外の学校(旧制大学)は以下の通りである。
脚注
[編集]- ^ 『日本大学百年史』 第五巻、106頁
- ^ 『日本大学百年史』 第三巻、183頁
- ^ a b 早稲田大学百年史 総索引年表/年表 昭和二十年~二十九年
- ^ a b c 『立命館百年史』 通史二、264-265頁
- ^ 『立教学院百二十五年史』 資料編第1巻、31頁
- ^ 『法政大学八十年史』 498頁
- ^ 『法政大学八十年史』 499頁
- ^ 『法政大学八十年史』 539頁
- ^ 新沢佳大・前川禎治 『柏崎編年史(下)』 1970年、102頁。
- ^ 『柏崎編年史(下)』 127頁。
- ^ a b 神奈川県立教育センター (編) 『神奈川県教育史 : 通史編 下巻』 1979年、139頁。
- ^ 『新制大学の誕生』 上、137頁
- ^ 羽田貴史 『戦後大学改革』 1999年、153頁。
- ^ nate.com 大同工業専門学校の項(韓国語)。
関連書籍
[編集]- 海後宗臣(監修) 『日本近代教育史事典』 平凡社、1971年
- 『日本近現代史辞典』 東洋経済新報社、1978年
- 尾崎ムゲン作成「文部省管轄高等教育機関一覧」参照
- 国立教育研究所(編) 『日本近代教育百年史』(第10巻:産業教育(2)) 教育研究振興会、1974年
- ノーベル書房(編)『写真集 旧制大学の青春』氷川書房、1984年
- 秦郁彦(編)『日本官僚制総合事典;1868 - 2000』 東京大学出版会、2001年
- 「主要高等教育機関一覧」参照
- 天野郁夫 『新制大学の誕生』 上・下、名古屋大学出版会、2016年
関連項目
[編集]- 学制改革
- 旧制専門学校 - 専門学校令 - 高等商業学校- 高等農林学校 - 旧制医学専門学校 - 外国語学校 (旧制) - 大学専門部 (旧制)
- 師範学校(実業学校教員養成所) - 旧制高等学校 - 旧制大学
- 日本の理工科学校
- 東京職工学校 - 東京工業大学
- 旧外地の高等教育機関 - 日本統治時代の台湾の高等教育機関 - 満州国・関東州の高等教育機関