日本の探査機「SLIM」が月面着陸成功、搭載カメラ「SORA-Q」の撮影成否は1~2週間後に判明

2024年1月20日 20時53分
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「SLIM(スリム)」が20日、日本の探査機として初の月面着陸を成功させた。成功は旧ソ連、アメリカ、中国、インドに続き5カ国目となる。

◆祈るタカラトミー担当者「きっと完遂してくれる」

 スリムが着陸した証しを静止画で記録するカメラマン役として搭載された、超小型変形ロボット「SORA-Q(ソラキュー)」は、スリムからの分離が確認された。月面で計画どおり変形したか、撮影に成功したかのデータ解析には1~2週間ほどかかるという。JAXAは記者会見で「分離後に機能したかどうか、現段階で判断できない」とした。

ソラキューの月面での活動イメージ=JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学提供

 ソラキューの研究は2016年に始まり、JAXAが他分野の知見を取り入れようと始めた事業に、タカラトミー(東京都葛飾区)が応募。乗り物から人型ロボットに変形する「トランスフォーマー」の玩具の技術などをヒントにした。
 開発に携わったタカラトミーの赤木謙介さん(42)は20日未明、取材に「本当に月にたどり着いたという現実を、かみしめきれていない。ミッションをきっと完遂してくれているだろう」と願った。
 ソラキューの雄姿を画像で見ることはできず、数時間のバッテリーが尽きた後は、月面に残る。JAXA主任開発研究員の平野大地さんは昨年12月の会見で「皆さんが宇宙飛行士になって回収してくれるのを待っている」と子どもたちに夢を託した。(加藤健太)

【解説】ピンポイント着陸成功か、技術を生かす長期的戦略を

 JAXAのスリムが、日本初の月面着陸を成し遂げた。近年、月に水や鉱物資源が存在する可能性が明らかになり、宇宙開発の拠点としての月探査が国際的に活発化。スリムが挑んだ誤差100メートル以内の「ピンポイント着陸」の技術を生かす戦略が求められる。
 月面着陸は旧ソ連の探査機が初成功して半世紀以上がたつ現代でも、難易度が高い。日本の宇宙ベンチャーispace(アイスペース)が昨年4月、ロシアが昨年8月に挑み、いずれも失敗した。

月面探査機「SLIM」によるピンポイント着陸について記者会見で語る、JAXAの山川宏理事長=20日、JAXA相模原キャンパスで

 スリムが計画通りのコースで降りたことなどから、ピンポイント着陸は「ほぼできただろう」(国中均理事)とJAXAはみている。山川宏理事長も記者会見で「降りたい所に降りるのは、月探査で非常に重要な技術になる。技術的な背景をもって国際協力することができる」と自信を見せる。
 科学技術ジャーナリストの松浦晋也さんは「重要なのはピンポイント着陸技術を使い、次にどんな価値のある探査をするかだ」と指摘する。現時点では、この技術をどんなミッションで活用するか、具体的な構想は決まっていない。国際競争力を高め、宇宙開発の世界で先頭集団を走るためには、長期的な戦略を持つことが不可欠だ。(小沢慧一)

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