ゆうぜん‐ぞめ〔イウゼン‐〕【友禅染】
友禅染
友禅染
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/01 21:03 UTC 版)
江戸時代中期に京都で始められた友禅染の技法は、限りなく絵画に近い文様表現を可能にし、日本染織史に新たな時代を画すものとなった。友禅の技法は元禄(1688 - 1704年)頃に完成した。友禅という名称は、京都知恩院の門前通りで扇の絵付けをしていた絵師の宮崎友禅という人物にちなむものだが、友禅の生没年は不明で伝記もはっきりしない。天和2年(1682年)刊行の井原西鶴『好色一代男』など、当時の著作物に、友禅の絵付けした扇が当時の流行であったことが記され、友禅が実在の画工であったことは確かである。貞享3年(1686年)刊行の『諸国ひいながた』という小袖雛形本(衣装デザイン見本帳)には「ゆふぜんもよう」(友禅模様)の文字がある。こうしたことから、友禅染とは、宮崎友禅という一人の人物が発明したものではなく、染料や染色技術の進歩によって生み出された新しい技法、新しいデザインの染物に、当時評判の絵師であった宮崎友禅の名を冠したものと考えられている。友禅染の技術的特色は、糊防染と色挿しにある。古い時代の染物は、布自体を染料の液に漬けて染める漬け染めであったが、江戸時代になって、刷毛で布面に色を塗る、引き染めが可能な染料が開発されたことにより、絵画的な模様染めが可能となった。伝統技法による手描き友禅の製作は、下絵描き、糸目糊、地入れ、色挿し、蒸し、伏せ糊置き、引き染めという複雑な工程を経る。まずは仮縫いした布地に青花という、水洗いすれば完全に落ちる青色の色素で模様の下描きをする。この下描き線に沿って、糸目糊を置く。糸目糊とは、もち米を主材料とした糊を、渋紙で作り、口金を付けた細い筒の先から絞り出して線を描くことで、これによって模様を区切り、染料が隣の区画に流れ出さないようにする。次の地入れとは、布海苔と豆汁(ごじる)を混ぜたものを布面に塗って、染料の定着を良くし、色のにじみを防止する作業である。そのあと、色挿しといって、模様に染料で色付けをする。色挿しした布を高温で蒸した後、今度は伏せ糊といって、さきほど色挿しした模様面に糊を置く。これは後ほど地の部分を染める際に模様部分を防染するためである。地色は以上の作業が終わった後、刷毛で引き染めとする。生地は、江戸時代中期になると、綸子地に替わって、友禅染に適した縮緬地が多く用いられるようになる。
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