その七
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 06:15 UTC 版)
そんなあの方の物忌の終わる日を、私は空しく待ったが、夜が更けてもあの方は来なかった。翌朝、道綱が、理由を聞きに出かけていったが、あの方の返事は、急に気分が悪くなり苦しくなったというものだった。私はそんな見え透くような嘘の言葉なら聞かない方がよかった、もっと私の気持ちを労わってくれるような、せめて、「急に差し障りが出来たのでいかれなくなってしまった。もしか都合がついたらすぐ行こうと思っていたので、車の用意もそのままにさせて置いた」くらいのことを言ってくれてもよいものをと、がっかりする。やはり、少しはあの方の心に変化があったかと考えたのは思い過ごしで、相変わらず以前のままだったらしい、と私は思い、そして私だけは少なくとも、山から帰って来てからはもう昔のような自分ではなくなりかけているのだった。
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