ジョン・サールの間接言語行為論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/15 22:24 UTC 版)
「言語行為」の記事における「ジョン・サールの間接言語行為論」の解説
ジョン・サールは、間接言語行為という用語を間接「発語内」行為の意味で使用した。この場合の間接言語行為は、大まかに言えば聴衆を前提として発話する行為である。サールは「間接言語行為では、聴衆の一般的な合理性や推論能力と共に、言語的にも非言語的にも共通の予備知識を根拠として、話者は実際に語った以上のことを聴衆に伝達する」としている。従って、そのような言語行為を説明するには、合理性や言語学的側面だけでなく、共有されている予備知識を分析する必要があるだろう。 間接言語行為に関連して、サールは発語内行為を一次 'primary' と二次 'secondary' に分類した。一次発語内行為は間接的なもので、発話そのものには現れない。二次発語内行為は直接的なもので、発話に現れる(Searle 178)。次のような例がある。 話者 X: 「今すぐ発たないとショーに遅れるよ」 話者 Y: 「まだ、準備できていない」 ここで、一次発語内行為としては Y は X の示唆を拒否している。二次発語内行為としては、Y は単にまだ出発できないと言っているだけである。このように発語内行為を2つに分けて考えることで、サールは1つの発話を我々が2つの意味で理解し、どちらの意味に対して応答すべきかも知っていることを説明した。 サールの間接言語行為論では、話者が何かを発話し、そこに追加の意味を込める方法を説明しようとしている。これは相手が話者の発話が何を意味しているかを理解できなかった場合、証明不可能とされていた。サールは、間接言語行為の意味を相手が理解する方法についていくつかの示唆を与えた。上記の例の言外のプロセスを示すと次のようになる。 ステップ1: X が提案をし、Yが発語内行為 (2) によって応答する。 ステップ2: X は Y が対話する用意があるから、応答をしたのだと判断する。 ステップ3: (2) の文字通りの意味は、会話としてはふさわしくない。 ステップ4: X は Y が対話する意図があると見ているので、(2) には別の意味があると推測する。 ステップ5: 共有する予備知識に基づき、X は Y の準備ができるまで出発できないと知っている。従って、Y は X の提案を拒否したのである。 ステップ6: X は Y が文字通りの意味以外のことを言ったと知り、その一次発語内行為は X の提案の拒絶であったに違いないと判断する。 サールは、これと同様のプロセスを、任意の間接言語行為に対して一次発語内行為を見出すモデルとして適用することが可能であると示唆した(178)。この論証についての証明は、一連の「観測」によって行われる(ibid., 180-182)。 サールは発語内行為を次のように分類した。 assertives 話者が命題が真であることを主張する言語行為 directives 相手に何らかの行動をとらせる言語行為(要求、命令、助言など) commissives 話者が将来の行動を約束する言語行為(約束、誓いなど) expressives ある提案・命題に対する話者の態度や感情を表現する言語行為(祝辞、謝罪、感謝など) declaratives 何らかの宣言を現実化する言語行為(洗礼、判決、結婚式での聖職者など)
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