ニューカレドニアの生物多様性を脅かすもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/11 09:25 UTC 版)
「ニューカレドニアの生物多様性」の記事における「ニューカレドニアの生物多様性を脅かすもの」の解説
ニューカレドニアの生物多様性は、多くの要因によって脅かされている。 多くの島嶼の生物相と同じく、ニューカレドニアの生物種も、外来のネズミ、ネコ、イヌ、ブタなどに張り合えるだけの対応力に乏しい。そうした外来動物はカグーなどの在来種を脅かしている。 辺鄙な地域では今なお狩猟も問題だが、それ以上に固有種の生息地喪失に関与しているのは、伐採による森林破壊、島の主産業である採鉱、広範な地域を巻き込む抑制できない火事、乾燥した硬葉植物の生育地を狭めている農業、さらには都市開発などの要因である。 1500年以降に絶滅した種は確認されていないが、ニューカレドニアクイナ(New Caledonian Rail, クイナ科)とアカジリムジインコ(New Caledonian Lorikeet, ヒインコの仲間)の二種は100年以上目撃されておらず、絶滅していないとしても、極めて危機的な状況にあると考えられている。同じような状況であると思われていたズクヨタカ科のニューカレドニアズクヨタカ(New Caledonian Owlet-nightjar)については、2006年に島の辺鄙な区域で発見されたことが報告された。 オウカンミカドヤモリにしても、1994年に再発見されるまでは絶滅したものと思われていた。 ニューカレドニアの生態系は、多くの国際機関からも優先的に保護されるべきと認識されており、フランス政府にも積極的に働きかけが行われている。しかしながら、その努力は今まであまり実りが大きかったとはいえず、ニューカレドニアに残る自然地域の決定的な保護には失敗してきた。例えば、これらの生きた化石の生態系に地球規模での重要性が与えられ、世界遺産に登録されることで保護の必要性を認識してもらおうと試みられてきた。しかし、その試みは、島の主産業である採鉱や開発推進派の意向を強く受けた地元行政府の反対にあってきた。昨今の採掘は生態系の極度に重要な地域で行われてきているが、世界規模の世論の圧力によって、採鉱企業は自発的に採掘後の環境のリハビリテーションを行うようになっている。しかし、そうした採鉱後の活動を考慮に入れてさえも、採鉱活動は生物多様性に満ちた地域の荒廃に結び付いているのである。世界遺産に登録されれば、制約のない採鉱活動に強い衝撃を与えることになるだろうが、他方でニューカレドニアの経済的な安定に響くことになる。求められるのはバランスのとれた思慮ぶかいアプローチである。 地元での保護努力は草の根レベルでは行われてきたが、暫定的なものであり、上で述べたような地方の繁栄や安定にとって重要な採鉱(および他の開発計画)と衝突するときには、常に挫かれてきた。 21世紀にはいると、全地球的に認識されているこの地方の自然保護に対する地元の行政府の優先度を高めようとする動きも見られるようになっているが、公には強い反対にあっており、提唱者たちが暴力の被害に遭う場合もある。甚だしい例は2001年のゴールドマン環境賞受賞者ブルーノ・ファン・ペテゲム(Bruno Van Peteghem)の場合である。彼はニューカレドニアの裁判所で、行政担当者たちはこの地方のサンゴ礁を守るための法律を遵守せねばならないとする決定を勝ち取ったが、その結果家は放火され、家族ともども再三に渡り脅迫されることになった。最終的に当時の行政府責任者ジャック・ラフール(Jacques Lafleur)は 、国営航空会社でのファン・ペテゲムの雇用を打ち切ることで事実上の退去処分を行い、彼の反対意見を封殺することに成功した。 なお、ニューカレドニアのサンゴ礁(ニューカレドニア・バリア・リーフ)は2008年に世界遺産に登録された。
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