ヒトゲノムとは? わかりやすく解説

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ひと‐ゲノム【人ゲノム】

読み方:ひとげのむ

human genome人間ヒト)のもつすべての遺伝子情報。約30億個のDNAデオキシリボ核酸)の塩基配列情報として記録されている。ヒトゲノム計画によって2003年4月解読完了し、ヒトゲノム全体含まれる遺伝子数は約2万から3個であると推定された。

[補説] ふつう「ヒトゲノム」と書く。


ヒトゲノム(ひとげのむ)

ヒト個体作るために必要なすべての遺伝子のこと

分子生物学によると、遺伝子DNAデオキシリボ核酸)が担っていることが明らかになっている。DNAとは、リン酸炭素のほか、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の塩基構成される二重らせん状の物質のことである。これら4種類塩基配列によって遺伝情報暗号化されている。

人の遺伝子10万個は、およそ30塩基対DNA記録されていると考えられている。DNA塩基配列がどの遺伝子対応するのかを調べ、人のすべての遺伝子解読することを「ヒトゲノム計画」と呼んでいる。

ヒトゲノム計画のほかにも、イネ遺伝情報解読するイネゲノム計画」などが進められている。これらの遺伝子技術応用されると、医療現場での治療農作物品種改良に役立つと期待されアメリカ中心に日本ヨーロッパなどで、一足早い成果目指し研究が行われている。

(2000.01.16更新


ヒトゲノム

英訳・(英)同義/類義語:human genome

ヒトゲノム30塩基対あり、2003年に全配列解読宣言された。

ヒトゲノム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/11 02:23 UTC 版)

図は代表的なヒト二倍体核型(karyotype)。23番染色体は男(XY)と女(XX)の両方を示す。染色体はセントロメアで整列させている。ミトコンドリアのゲノムは示していない。

ヒトゲノムは、その名の通りヒトHomo sapiens、人間)のゲノム、すなわち、遺伝情報の1セットである。ヒトゲノムはゲノムとミトコンドリアゲノムから成る。

ヒトゲノムの構成要素の割合を示す。

概要

核ゲノムは約31億塩基対あり、細胞核内で23-24種の線状DNAに分かれて染色体を形成している。最も大きいものが2億5千万塩基対で、最も小さいものが5500万塩基対である。

染色体は22種類の常染色体とXとYの2種類の性染色体に分類される。核を持たない赤血球をのぞく体細胞は2倍体であり、同じ種類の常染色体を2本ずつ、性染色体を2本(女性はXとX、男性はXとY)の合計46本の染色体を持っている。生殖細胞は1倍体であり、常染色体を1本ずつ、性染色体を1本の合計23本の染色体を持っている。なお、細胞核中のゲノムは(フラクタル構造の一種である)ヒルベルト曲線と類似した、コンパクト形に折りたたまれていることが近年になって判明した[1]

ミトコンドリアゲノムは16569塩基対の環状DNAで、ミトコンドリアの中に多数存在している。体細胞も生殖細胞も約8000個ずつ持っている。

近年の研究では、ゲノム中のほとんどのノンコーディングDNA英語版が生化学的活性(遺伝子発現調整、染色体の構造形成、エピジェネティクスのコントロールなど)を持っていることが示唆されている。

研究史

ヒトゲノムの塩基配列の解読を目的とするヒトゲノム計画1984年に最初に提案され、解読作業は1991年から始まった。2000年6月26日にドラフト配列の解読を終了したのち、2003年4月14日に解読完了が宣言され、この時点でのヒトの遺伝子数の推定値は3万2615個であった。しかし、その後の解析によりこの推定値が誤りであることが判明し、新たな推定値は2万2287個であると2004年10月21日付の英科学誌『ネイチャー[2]に掲載された。

ただし、本計画により解読された配列は、標準配列(複数国、複数人のゲノムDNAの混合試料)のユークロマチン領域を中心とする全ゲノムの99%の領域について、多数決的に決められたものである。このため、実際の遺伝子数は個人差などにより多少の変動が見込まれる。また、標準配列についてもヘテロクロマチン領域を中心とした未解読の領域や重複領域等について解析が継続されており、2004年の報告(HGSC Build 35)以降も定期的に修正報告がなされている。

このように少ない遺伝子からヒトの複雑な体や脳が構築されているという事実は、科学者にさえ驚きと狼狽を与えた。その後、イネ科の植物の遺伝子がヒトよりずっと多いことや、下等生物と考えられていたウニの遺伝子の数がヒトとほとんど同じであり、しかも70%がヒトと共通していることなどが判明すると、人間が遺伝子の数で他の生物より優位にあるはずだという予想は、間違いであることが確定的となった。このようにヒトゲノムの解読が終了はしたが、まだまだ全てを理解したとは言えないのである。

また「ゲノム」は1倍体(半数体)の全DNA配列であり、ヒトは2組のゲノムをもつ。このため、個人のゲノムにおいても父親と母親に由来する配列間でもある程度の差異(平均1,000塩基に1カ所程度)がある。個人ゲノム配列の解析は医学研究に重要な意味をもつことから、2008年より1000人ゲノムプロジェクトも開始された。

ゲノム医療

ゲノム解析の結果を、病菌の原因解明や新薬開発につなげることを「ゲノム医療」といい、日本では2023年6月、ゲノム医療法が成立した[3](正式名称は「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」)。イギリスやアメリカ合衆国も2010年代から、ゲノム医療を国家戦略として推進している[3]

個人ごとの違いに合わせて、最適な治療法を探るオーダーメイド医療も研究されている[4]

出典

関連項目

外部リンク


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