リアルさ
リアルさ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 09:37 UTC 版)
「ダナエ (レンブラントの絵画)」の記事における「リアルさ」の解説
ダナエの物語は芸術の主題としてよく用いられ、古くはオウィディウスの文学『変身物語』(『転身物語』)や多くの絵が残された。中世までの絵画表現では図像的であったりキリスト教の受胎告知と結びついたような教条的表現に留まっていたが、16世紀のヤン・ホッサールトがモニュメンタルな作品を提示し、コレッジョが豊かな色彩で表現した官能的な作品をカール5世に献上するために描いた。ティツィアーノ・ヴェチェッリオも複数のダナエを描き、彫刻に対する彩色の優位やデッサンの重要性等の論議を起こした。 このような流れの中、レンブラントはさらに現実性を重視した『ダナエ』を描いた。これは初の油彩ヌード画である1630年の『アンドロメダ (Andromeda Chained to the Rocks) 』で既に見られ、流れるような曲線で構成した彫刻的像ではなく現実の人物のような直線的な体の線を用いた描写である。また、皮膚も油の少ない絵具で意図的にざらざらした表面を生かした筆致で描いている。これも現実の肌がどのようなものかを意識し、リアルな印象を与えようと意図した。この荒々しいタッチはレンブラントの独創ではないが、色彩とともに彼がリアルで官能的なヌード画を描くために工夫を重ねた結果である。 レンブラントは、ヌード画が作者の技術を示す格好のモチーフと考えていた。これは、古くはガイウス・プリニウス・セクンドゥスの『博物誌』に描かれたアペレスの故事、神殿に奉納されたニキアスのヌード画、ヴィレム・ファン・ハーヒト『コルネリス・ファン・デル・ヘーストの収集室』 の正面に据えられた絵(ハーヒト画の『ダナエ』)に見られるように過去から存在した考え方であるが、レンブラントはこれを受け継ぎつつも、形式や理想化を廃し、優れた絵画は実物を凌駕するという理念を『ダナエ』にて具現化させた。この絵は破産するまでレンブラントは所有していたが、彼は自らの力量を顧客に示すために『ダナエ』を見せるために手放さず自宅に飾っていたのではという説もあり、1656年に纏められた彼の財産リストには「ダナエーが描かれた大きな絵(347番)」という記述がある。
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